平成10年7月23日

   「和が一定で、それらの積が最大になる分割方法」

問題


「自然数Mをn個の自然数a(1),a(2),a(3),・・・,a(n)に分けて、
それらの積 a(1)a(2)a(3)・・・a(n) が最大となるような分け方を考えよ」



考え方:具体的にM=1から10までぐらい分割方法を考えて、まずは調べてみます。
自然数Mの分割した自然数の数列をa(1)≦a(2)≦a(3)≦・・・≦a(n)としても
一般性を失わない。(和の順序を問わない)


分割方法の数 積が最大となるn 数列 { a(1),a(2),・・・}
{ 1 } 注:特別扱い
{ 2 }
{ 3 }
1 、 2 {4} 、 {2 ,2}
{2,3}
11 {3,3}
15 2 、3 {3,4}、{2,2,3}
22 {2,3,3}
30 { 3,3,3}
10 42 3 、 4 {3,3,4}、{2,2,3,3}
11 { 2,3,3、3}
12 { 3,3,3,3}

<研究材料>
自然数Mの分割方法の数とその分割個数nは研究に値します。


以上から、次のことが予想されます。
(1)Mを3で割った剰余系で分類される。
(2)2≦a(i)≦ 4 注:M=1のときは特別扱いとする。
(3)2個の2(2×2=4)と1個の4は同じ積となる。
M=4,7,10、・・・・
(4)たかだか2個の a(i)が2(または1個のa(i) が4)で、他は全て3ばかり


<証明>(2)

積 a(1)a(2)a(3)・・・a(n) が最大となるように、nおよび a(1)、a(2)・・・、
a(n) を決めたとき、
(@)a(1)=1と仮定する。
このとき、数列 a(2)+1,a(3) ,a(4),・・・,a(n) は
{a(2)+1}+a(3) +a(4)+・・・+a(n)
= a(1)+a(2)+a(3) +a(4)+・・・+a(n) =M
をみたし、a(2)+1>a(1)a(2)=1・a(2)= a(2)
{a(2)+1}・a(3)・……・a(n) > a(1)・a(2)・a(3)・……・a(n)
よって、a(1)a(2)a(3)・・・a(n) の最大性に矛盾する。
以上より、2≦ a(1)≦a(2)≦a(3)≦・・・≦a(n)
(A)5≦ a(n) と仮定する。
このとき、数列 a(1),a(2),a(3),・・・,a(n−1),a(n)−2,2は
a(1)+a(2)+a(3)+・・・+a(n−1)+{a(n)−2}+2
= a(1)+a(2)+a(3)+・・・+a(n−1)+a(n)=M
をみたし、{a(n)−2}・2 =2a(n) −4=a(n) +{ a(n)−4}
> a(n) a(1)・a(2)・a(3)・……・a(n−1)・{a(n)−2}・2
> a(1)a(2)a(3)・・・a(n)
よって、a(1)a(2)a(3)・・・a(n) の最大性に矛盾する。
したがって、 a(1)≦a(2)≦a(3)≦・・・≦a(n)≦ 4

<証明>(3) 自明

<証明>(4)

a(1)=a(2)=a(3)=2 と仮定すると、
このとき、数列 3,3,a(4),a(5),・・・,a(n) は
3+3+a(4)+a(5)+・・・+a(n)
=2+2+2+a(4)+a(5)+・・・+a(n) =M
をみたし、3×3>2×2×2= a(1)a(2)a(3) より
3・3・a(4)・a(5)・……・a(n) > a(1)a(2)a(3)・・・a(n)
これも、a(1)a(2)a(3)・・・a(n) の最大性に矛盾する。
よって、2はたかだか2個、4は2と2に相当するので、ほかに2がないときに限り、
たかだか1個である。



以上より、



(2)、(3)、(4)はMの値にかかわらず成立します。
したがって、a(1),a(2),a(3),・・・,a(n) を次のように決定できます。
@ Mを3で割った余りが0のとき、
n=M/3で、a(1)=a(2)=a(3)=・・・=a(n)=3
A Mを3で割った余りが1のとき、
n=(M+2)/3で、a(1)=a(2)=2、a(3)=・・・=a(n)=3
または、
n=(M−1)/3で、a(1)=a(2)=・・・=a(n−1)=3,a(n)=4
B Mを3で割った余りが2のとき、
n=(M+1)/3で、a(1)=2,a(2)=a(3)=・・・=a(n)=3



そこで、 <研究結果>

以上のように、結果は“ほとんどのa(i)が3”ということになりました。3という値に意味が
あるのではないかと思い、a(1),a(2),a(3),・・・,a(n) を有理数まで、拡大します。
nを固定して、(相加平均)≧(相乗平均)を利用すると、

{a(1)+a(2)+a(3)+・・・+a(n)}/n
≧ {a(1)a(2)a(3)・・・a(n)}の正のn乗根 *記号でなく言葉でごめん
よって、 a(1)a(2)a(3)・・・a(n)≦[{a(1)+a(2)+a(3)+・・・+a(n)}/n]^n
={M/n}^n

ここで、 a(1)=a(2)=2、a(3)=・・・=a(n)=M/n のとき、等号が成立
次ぎに、{M/n}^n=f(n) とおいて、f(n)の定義域を正の実数の範囲まで、
拡大します。
f(x)= {M/x}^x と直して、対数を取って、
Y=logf(x)=x(logM−logx)
微分して、Y’={logf(x)}’= logM−logx−1= log(M/xe)
さらに、f(x)と Y=logf(x)の増減は一致するので、下の増減表を得る。


  M/e  
{logf(x)}’  
logf(x)   極大
f(x)   極大



よって、x= M/eのとき、f(x)は最大値をとる。

このとき、M/x=e 、そして、この実数xは、もともと自然数nだったから、
M/x≒M/n=a(i) (i=1,2,3,・・・,n)
超越数e=2,71828・・・ に最も近い整数が3ということです。



               自宅:mizuryu@aqua.ocn.ne.jp


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