平成15年7月27日
[流れ星]
第122回数学的な応募問題解答
<解答募集期間:7月6日〜7月27日>
[増えた1cm2]
太郎さんは、月曜日第7限の「総合的な学習の時間」に1年生を対象にして、「楽しい数学」と称した講座を受け持っています。現在は「フィボナッチ数列」の調べ学習をしています。この中で、次のような課題を生徒に伝えています。
皆さんも、考えて、増えた1cm2 はどうしてか 考えてください。
参考:{an}:{1,1,2,3,5,8,13,21,34,55,89,・・・}をフィボナッチ数列という。
問題:最初 1辺が21cmの正方形を下の図のように4つの部分に分けました。三角形Aと三角形Bは合同、
三角形Cと三角形Dは合同です。次に、この4つを移動させて、[zu2]の図形を作りました。
見た目は長方形ですから、面積を考えてみると、横13cm、縦(13+21)cmになります。
4つの部分を移動しただけですから、面積は同じになるはずです。どうして、1cm2違うのでしょうか。
この違いは、「フィボナッチ数列」にどんな性質があるからでしょうか。
NO1「kiyo」さん 7/06:
13時32分 受信
いつもお世話になっています。kiyoです。
解答
F(n)=F(n-1)+F(n-2)
特性方程式は、
X^2-X-1=0
2根をα、β (α>β)
α*β=-1
F(n)=(α^n-β^n)/(α-β)
(1)
F(n+1)*F(n-1)-F(n)^2=(-1)^n (2)
(2)式を証明する。
左辺=((α^(n+1)-β^(n+1))/(α-β))*((α^(n-1)-β^(n-1))/(α-β))-((α^n-β^n)/(α-β))^2
=(α^(n-1)*β^(n-1)*(2*α*β-α^2-β^2))/(α-β)^2
=((α*β)^(n-1))*(-1)
=(-1)^n =右辺
「数学の部屋」の「今週の問題」で紹介されていました。
NO2「Kashiwagi」さん 7/06: 14時49分
受信
今回のフィボナッチ数列は非常に面白いですね。こんなところにまでフィボナッチ数列が関係しているとは・・・・。
後半の関係式は図を数枚描いているうちに分かりました。しかし、
証明は面倒なので勘弁して下さい。数学的帰納法を使うのでしょうね。宜しくご指導の程お願い申し上げます。
第122回解答
zu2の三角形Bの傾きを計算すると8/21である。又、台形Cの傾きは(13-8)/13=5/13であり、5/13>8/21である。もし、zu2の様な図形が描けるとすると、当然傾きは等しくなければならない。ところが等しくない、即ち、本当は台形Cが三角形Aと重なっており、面積は21×21である。
フィボナッチ数列の値を色々変えてzu1とzu2を作成してみると、以下の関係が成立する事が分かる。勿論、数学的帰納法で証明せねばいけないのでしょうが、そこまでは勘弁願います。
n≧2とすると、
nが偶数の時 an2
= an+1 ×an-1− 1
nが奇数の時 an2
= an+1 ×an-1+1
NO3「kibomasa」さん 7/07:
03時07分 受信
「問題122」の解答
図2において実は4点ABCDは一直線ではありません。以下のような理由におけるからです。
図1において、四角形Dを下記のように長方形と三角形に分割します。三角形の斜辺の傾きは「5/13」である。しかし、図Bにおいてはどうかというと、斜辺の傾きは「8/ 21」となることより
よって、図2における4点ABCDは直線ではなく、正確には平行四辺形ABCDをなす。その面積が1より、このような錯覚を引き起こした。
「kibomasa」さん 7/09: 23時06分 受信
フィボナッチ数列の定義より考えます。
ただしとする。
さて、この一般項を求める。
の解をα,βとする。
α+β=1,αβ=−1
特性方程式を用いることより
…@ と求められる。
ここでα=,β=とおくことにする。
さて、問題の図形において、下記のように辺の長さをおく。
ここで、それぞれの面積を求め、面積の差を考える。
(zu1)=,(zu2)= より
@を代入して、
( 一般には が成り立つわけである。)
さて、ここでの問題に関して、n=5、αβ=−1 より
(zu1)−(zu2)=−(−1)5=1
が成り立つ。
No4「H7K」さん 7/07: 19時00分 受信
[zu1][zu2]については,
「A・Bの斜辺の傾きとC・Dの傾きが違う為,[zu2]の「対角線」に見えるところには実は隙間があるのでなく、重なっているはずです。
一応図を作ってみました.
このことができるのはフィボナッチ数列の隣接3項をfn,f(n+1),f(n+2)としたとき
fn*f(n+2)=(f(n+1))^2+(-1)^n
という関係があることで分かる.
(f0=1,f1=1,f2=2,f3=3,...)
証明は数学的帰納法による.
「H7K」さん 7/07: 22時22分 受信
f(n+2)/fn=(f(n+1)+fn)/fn=f(n+1)/fn +1.
(f(n+1)/fn)^2=1+2 f(n-1)/fn+(f(n-1)/fn)^2.
より
f(n+2)/fn-(f(n+1)/fn)^2=f(n+1)/fn-f(n-1)/fn-f(n-1)/fn-(f(n-1)/fn)^2
=f(n-2)/fn-(f(n-1)/fn)^2
therefore,
f(n+2)fn-(f(n+1))^2=f(n)f(n-2)-(f(n-1))^2.
g(n):=f(n+2)fn-(f(n+1))^2とするとこれよりg(n)=g(n-2).
g(0)=1*2-1=1^2,g(1)=1*3-2^2=-1なので
g(n)=(-1)^n.//
----
NO5「kasama」さん 7/08: 23時24分 受信
今回は本当に興味深い問題だと思います。一
見、面積が増えて不思議?な気がしまして、しばらく考え込んでしまいました。
たぶん、表現は適切ではありませんが、フィボナッチ数列の
A(n)・A(n-2) - A(n-1) = ±1 (n > 2)
の性質を応用した問題と推側できます。的外れかもしれませんが、この推測が適当なものとして、調べた結果を記載します。
一部分、高校数学の範囲を超える知識を使ってしまいました(便利なので)。しかし、昔の高校生は行列式について多少知っていましたし、水の流れさんのHPにアクセスしてくる高校生はきっと優秀な人が多いでしょうから問題ないと判断させて頂きました。
私は専門家でありませんし、また勉強不足でもあるため(数学的な興味を一般人より持っているだけですので)、記載には多々不備があるかと思います。ご指摘頂けると有り難いです。
<水の流れ:コメント>いいえ、解法への過程はいろいろとありますから、構いません。
@図の面積の計算
まず、図1の面積は
面積1 = A(n)×{A(n-2) + A(n-1)} = A(n)^2 ・・・ (1)
ですから、第n項の値を2乗したものです。
また、図2の面積と思われるものは
面積2 = A(n-1)×{A(n-1) + A(n)} = A(n-1)×A(n+1) ・・・ (2)
なので、第n項の両隣の項を掛け合わせたものです。
A面積の差の計算と推測
@で求めた面積の差は
(n) = 面積2 - 面積1 = A(n-1)×A(n+1) - A(n)^2 ・・・ (3)
です。(n)の値を順に計算すると、
(2) = 1×1 - 1^2 = 1
(3) = 1×3 - 2^2 = -1
(4) = 2×5 - 3^2 = 1
・・・
となり、1と−1を繰り返すのではないかと推測できます。
B面積の差の関係
ここで、高校数学の範囲を少しだけ超えて議論します(ごめんなさい)。式(3)
は行列式の計算式によく似ていませんか?。実際のところ、以下の行列式そのも
のです。
|A(n-1) A(n) |
(n) = |
|
|A(n) A(n+1)|
上記の行列式に着目して、(n)と(n+1)の関係を調べます。
行列式の1列目に2列目を加えます(行列式の性質ですが、ある列に別の列にた
しても値は変わりません)。
|A(n-1) A(n) | |A(n-1)+A(n) A(n)
| |A(n+1) A(n) |
| | =
|
| = | |
|A(n) A(n+1)| |A(n)+A(n+1)
A(n+1)| |A(n+2) A(n+1)|
1列目と2列目を入れ替えます(この場合行列式の符号が反転します)。
|A(n+1) A(n) | |A(n)
A(n+1)|
| | =
-1×| |
= -(n+1)
|A(n+2) A(n+1)| |A(n+1) A(n+2)|
よって、面積差は1と−1を繰り返します。
C結論
n>2の場合、第n項の2乗とその両側(第n−1項、第n+1項)との差は
1または−1です。
<水の流れ:コメント>で、もう1つ秘密があるんですよ。どうして、図2が作れるかなんです。
この点を考えてください。 ヒントは2項の比にあります。
「kasama」さん 7/10: 20時52分 受信
そうですね。ご指摘のように図2を作れる理由までは考えていませんでした。
フィボナッチ数列と黄金比との関係は最も良く知られていますが、図2が作成
できることと何か関係あるような気がします。この辺りを調査してみます。
答えがわかりましたら、再度返答させて頂きます。そのときはよろしくお願い
致します。
「kasama」さん 7/11: 23時43分 受信
ご指摘頂いた2項の比について考えてみました。
フィボナッチ数列の性質の中で「2項の比」は最も大切なことですね。見落としていました。
いろんな文献や雑誌にフィボナッチ数列について書かれているのを良く目にします。
水の流れさんのHPでもフィボナッチ数列の一般項と母関数についての記載がありました(先日カタラン数を調べていたときに気付きました)。しかし、大人になって、今回のようにフィボナッチ数列についてあれこれと調べてみる機会はありませんでした(仕事で使う数学なんて程度が低いし範囲が限られていますからね・・・)。
調査の過程で、今まで知らなかったことにも気付きました。「あ〜フィボナッチ数列にそんな性質があるだ」など感激したことが多々ありました。良く知られてはいても、なかなか奥の深いものですね。
以下に、考えたことを記載させて頂きますが、不備など多々あるかと思います。ご指摘頂けると有り難いです。
図2の長方形のような図形を作るには、三角形A、Bと台形C、Dを長辺(最も長い辺)で張り合わせる必要があります。
図がないと説明し難いのですが、乱暴な言い方ですが、視覚的に三角形の長辺と台形の長辺の傾きがほぼ同じであれば、
長方形のような図形は作成できると考えました。
---- 以下は回答です ----------------------------------------------------
図形を移動させて、図2のような形を作ると、少し隙間ができてしまいますね。
何故なら、三角形と台形の最も長い辺(以下、長辺と呼ぶ)を繋ぎ合わせたときに、傾きが少し違うので、ピッタリとは張り合わせることができないからです。でも、直感的に数が大きくなると、隙間はだんだん小さくなってくるような気がしませんか?
隙間の具合は傾きに関係している訳で、各辺の長さが大きくなるにしたがい、三角形と台形の長辺の傾きがある一定値に近づくのでは?ということに着目してみました。
@三角形と台形の長辺の傾き
A(n)、A(n-1)、A(n-2)の3つの項を使って、図2を組み立てとき
三角形の長辺の傾きは
A(n-2)/A(n) = 1 - A(n-1)/A(n) ・・・(1)
一方、台形の長辺の傾きは
{A(n-1)-A(n-2)}/A(n-1) = 1 - A(n-2)/A(n-1)・・・(2)
となます。つまり、傾きは数列の隣り合う2項の比に関係しています。
A数列の隣り合う2項の比
まず、A(n) = A(n-1) + A(n-2)の両辺をA(n-1)で割ると、
A(n)/A(n-1) = 1 + A(n-2)/A(n-1)
となります。少し乱暴ですが(ある程度結果がわかっているので)、A(n)/A(n-1)
がn→∞のときにαに収束するものと考れば、
α = 1 + 1/α
です。α = (√5±1)/2となりますが、α=(√5-1)/2<1は不都合なので、α=(√
5+1)/2です。つまり、A(n)/A(n-1)はn→∞のときに(√5+1)/2に収束すると考えられます。
この比はいわいる黄金数だそうで、縦横の比が黄金比に近い長方形が最も美しいとされています。
B長辺の傾きと黄金比
@、Aの考察より、項が大きくなるにしたがい、式(1)、(2)は同じ値に近づきます。つまり、図2の長方形のような図形が限りなく長方形に近づきます。これが、図2を作成できる理由と考えられます。
NO6「toru」さん 7/15: 11時34分 受信
第122回問題に応募いたします。「総合学習」楽しそうですね。高校一年生といえば、15才か16才です、
そのころこんな先生がいれば,もっと数学が好きになっていただろうなと思います。
毎回,出題を楽しみにしています。問題作成たいへんでしょうが、これからも、よろしくお願いします。 ペンネーム Toru
解答 AとDをZU2のように並べた場合、四角形Dの一番小さい角α、三角形Aの直角以
外で大きい方の角をβとするとtanα=13/5<21/8=tanβ
よりα<βで斜辺はZU2のよ
うに一直線にはならずに、折れ線になる。B、Cに関しても同様で、まん中にすき間が
できる。この面積が1cm2ということですね。
フィボナッチの数列の第n項をa(n)とするとa(n+2)=a(n+1)+a(n)、a(1)=a(2)=1,
a(n)^2+a(n+1)^2=a(n)(a(n)+a(n+1))+a(n+1)(a(n+1)-a(n))=a(n)a(n+2)+a(n+1)a(n-1
) (n≧2)
(一辺がa(n)とa(n+1)の正方形を横に並べて、長方形二つに区切りなおした)より
a(n+1)^2-a(n)a(n+2)=-(a(n)^2-a(n+1)a(n-1))=(-1)^(n-1)(a(2)^2-a(1)a(3))=(-1)^
n (n=1でも成立)となるから、フィボナッチの数列の連続する3項をとる時、まん中
の項の平方と第1項と第3項の積の差の絶対値は常に1になっている。
「toru」さん 7/17: 12時20分 受信
御指摘の、フィボナッチの数列の2項間の比について少し考えてみましたので、再度
応募させて頂きます。なかなか美しい結果で、楽しませて頂きました。ありがとうご
ざいます。 ペンネーム Toru
前回求めた3項間の式a(n+1)^2-a(n)a(n+2)= (-1)^n の両辺を-a(n)a(n+1)で割って、
a(n+2)/a(n+1) -a(n+1)/a(n) = (-1)^(n-1)/a(n)a(n+1),
b(n)= a(n+1)/a(n), c(n)=1/a(n)a(n+1)とするとb(n+1)-b(n)= (-1)^(n-1) c(n),
b(1)=1、c(n)>0,で b(n)-1=c(1)-c(2)+c(3)-c(4)+------c(n-1) (n≧2)という交代級
数の形になっている。c(n)>c(n+1)より、
2=b(2)>b(4)> --- >b(2m)> --- >b(2m+1)> ---
>b(3)>b(1)=1が成り立ち、 n→∞の
時b(2m)-b(2m+1)=c(2m)→0よりb(n)は収束することが分かる。a(n+2)=a(n+1)+a(n)
をa(n+1)で割ってb(n+1)=1+1/b(n)の両辺でn→∞とすれば、b(n)が収束することは分
かっているのでこれをbとするとb=1+1/b (1<b<2)を解いてb=(1+√5)/2 つまり、
フィボナッチ数列の2項間の比の数列b(n)は1と2の間をだんだん振幅を小さくしな
がら振動し一点b=(1+√5)/2 へ近づいていくことが分かる。一直線に見えることを
言うためにはさらに収束のスピードが速いことを言う必要がありそうですが、
|b(n)-b|<c(n)=1/a(n)a(n+1)だから速そうですが、どんなものでしょう?