平成15年9月28日

[流れ星]

        第125回数学的な応募問題解答

          <解答募集期間:9月7日〜9月28日>

不定方程式

   

太郎さんは、先日「中尾」さんから、「楕円曲線の整数点」(7日訂正)の問題を頂きました。それで、許諾を得て、今回の問題にしました。

問題1: 不定方程式x^2-3y^4=1の整数解(x,y)を|x|,|y|<= 10の範囲で探しなさい。

    計算機が使用可能なら、|x|,|y|<= 100の範囲まで広げると、どうなりますか?

問題2: 不定方程式x^2-3y^4=1の整数解(x,y)は、Q1で求めたものに限ることを示し
     なさい。

問題3: 不定方程式x^2-3y^4=1の有理数解(x,y)で、整数解ではないものを、少なく
     とも1個見つけなさい。

問題4:不定方程式x^2-3y^4=1の有理数解(x,y)は無数に存在することを示しなさい。

<中尾さんからのコメント:問題2, 問題4はは少し難しいと思います。楕円曲線の面白さが少しでも分かっていただければ良いと思います。>(7日修正)


NO1「Kashiwagi」さん 9/07: 18時48分 受信 更新9/28
お世話になります。今回の問題はお手上げです。問1.はどうにか解けましたが、
問3.は苦労に苦労を重ね・・・・。Excellを添付させて頂きます。それにしても難しいですね。
<水の流れ>から、Excellの計算表は割愛させてもらいます。
問1. (1,0)(-1,0)
          (2,1)(2,-1)(-2,1)(-2,-1)
          (7,2)(7,-2)(-7,2)(-7,-2)
  問3. (-122/121,3/11)(-122/121,-3/11)(122/121,3/11)(122/121,-3/11)

NO2の1「kasama」さん   9/12: 00時20分 受信 更新9/28
今回はかなりの難問ですね。問題1は直感でなんとかなりましたが、その他は難しいです。いろいろな文献を調査したところ、x2-3y4=1の整数解は
Ljunggren(1936)によって、(±1,0),(±2,±1),(±7,±2)の10個であることが証明されているようですね。x2-3y4=1の有理点を求める手法も確立されているようでした。
 今回も勉強と考えて、単に答えを作成するのでなく、深く理解した上で、答案を作成したいので、もうしばらく時間を下さい。

NO2の2「kasama」さん   9/19: 15時41分 受信 更新9/28
あれから色々と考えてみましたが、半分GiveUpしそうです(もう少し頑張ってみようと思いますが・・・)。

 初等整数論の範囲内で解けるものなのかどうかもよくわかっていません。
H.Nakao's Elliptic Curves Topics」(上記の文章にある「中尾」さんが公開されているページですか?)によると、x^2-3y^4=1をThue方程式に帰着させて、
Pari/gpで整数解を求めていました。内容を理解するのがやっとの状態です。

NO3「UnderBird」さん 9/22: 17時01分 受信 更新9/28
問題1 (x,y)=(±1,0),(±2,±1),(±7,±2)
問題3 (x,y)=(122/121,3/11)
問題2と4は色々考えましたが・・・・。
ところで、どのような流れで x^2-3y^4=1 という式が出てきたのか
その辺りに詳しい本やHPなどがあったら見てみたいです。

<中尾さんからのコメント> 9/23: 23時16分 受信 更新9/28
今回の出題のヒントになったのは、[3](p43, Lemma 4.6),[6],[7],[9]です。出題背景について説明します。

Pell方程式
       x^2-3y^2=1 -------- (1)
は簡単に解けます。基本解は2+1*sqrt(3)であり、無数に解を持ちます。

そこで(1)の左辺を4次式に拡張することを考えます。

(1)に、x,yが共に平方数という条件を加えると、Thue方程式
      x^4-3y^4=1 --------- (2)
となりますが、これは、自明な整数解(±1,0)しか持ちませんので、あまり面白くありません。

(1)にxが平方数という条件を加えると、
      x^4-3y^2=1 --------- (3)
となり、Cohnの定理[9](P121, Lemma 1)より、(3)の正整数解(x,y)は、
      x^2+y*sqrt(3)=2+sqrt(3)または(2+sqrt(3))^2
を満たさなければなりません。これはx,yが正整数であることに反するので、(3)は自明な整数解(±1,0)しか持たないことが分かり、あまり面白くありません。

(1)にyが平方数という条件を加えると、
      x^2-3y^4=1 --------- (4)
となり、自明でない整数解を持つことが簡単に分かります。

Siegelの定理から楕円曲線(4)の整数点は有限個であるので、(4)の整数解も有限個であることが分かります。

[3]によると、W.Ljunggren(1936)によって、(4)の全ての整数解が求まっています。
よって、(4)の整数解を求めることが、興味深い問題となります。

また、Mordell-Weilの定理より、楕円曲線の有理点群は有限生成Abel群を成すので、(4)の有理数解を求めることは、楕円曲線(4)の有理点群を調べることに帰着できます。楕円曲線(4)をWeierstrass標準形に有理変換すると、整数点でない有理点が少なくとも1個あるので、その有理点は位数無限の点であり、したがって(4)の有理点が無数にあることが簡単に分かります。

楕円曲線論の入門書としては、[4]がお勧めです。

参考文献
[1]Nigel P. Smart, "The Arithmetic Resolusion of Diophantine Equations", LMSST 41, Cambridge University Press, 1998, ISBN0-521-64633-2.
[2]Henri Cohen, "A Course in Computational Algebraic Number Thoery", GTM 138, Springer-Verlag New York Inc., 1996, ISBN-387-55640-0.
[3]Takaaki Kagawa, "Elliptic curves with everywhere goood reduction over real quadraric fields", March 1998, p1-60.
[4]Joseph H. Silverman, John Tate(著), 足立 恒雄, 木田 雅成, 小松 啓一, 田谷 久雄(訳), "楕円曲線論入門", シュプリンガー・フェアラーク東京, 1995,ISBN4-431-70683-6, {3900円}.
[5]Joseph H. Silverman, "The Arithmetic of Elliptic Curves", GTM 106,Springer-Verlag New York Inc., 1986, ISBN0-387-96203-4.
[6]Michael A. Bennett, Gary Walsh, "The Diophantine Equation b^2X^4-dY^2=1", 1991, p1-10.
[7]Michael A. Bennett, Gary Walsh, "Simultaneous quadratic quations with few or no solutions", 1999, p1-10.
[8]J.H.E.Cohn, "The Diophantine Equation x^4+1=Dy^2",Math. of Comp, Vol.66(1997), No.219, p1347-1351.
[9]Gary Walsh, "A note on a theorem of Ljunggren and the Diophantine equations x^2-kxy^2+y^4=1,4", Arch. Math. 73(1999), p119-125.
 [10]I.Connell, "Elliptic Curve Handbook", Aug, 1997, p105-111.
[11]L.C.Washington, "Elliptic Curves: Number Theory and Cryptography", Capman Hall/CRC, 2003, ISBN1-58488-365-0.


NO2の3「kasama」さん   9/27: 02時11分 受信 更新9/28
【問題1】

不定方程式x2-3y4=1をx2=1+3y4と変形します。|x|≦10なので、右辺のyは1+3y4≦100を満たさなければなりません。yの候補として{-2,1,0,1,2}があります。それぞれに対して、xを求めると、整数解は (x,y)=(-7,-2)(7,-2)(-2,-1)(2,-1)(-1,0)(1,0)(-2,1)(2,1)(-7,2)(7,2)
となります。|x|≦100の範囲まで広げて、簡単なプログラムで整数解を検索しましたが、結果は同じでした。
【問題2】
H.Nakao's Elliptic Curves Topics(http://www.kaynet.or.jp/~kay/misc/index.html)」からの引用ですが、私が理解できた範囲内で記述します。
まず、 x2-3y4=1 ・・・ (1) xy0か否かで場合分けします。
@xy=0の場合

 y=0とするとx=±1x=0とするとyの整数解は存在しません。よって、整数解は(x,y)=(±1,0)です。

Axy0の場合

xy0(x,y)(1)式の解であれば、(±x,±y)(1)式の解なので、xyはどちらも正整数として解いても構いません。
(1)式を変形すると、

(x-1)(x+1) = 3y4 ・・・ (2) です。y>0x+1>0ですから、x-1>0です。ここで、最大公約数を求めると、

(x-1,x+1)=(2,x+1)=1,2 なので、(2,x+1)=1(2,x+1)=2の場合に分け考えます。

A−1 (2,x+1)=1の場合

x+1x-1は正整数で、(2)式より互いに素な正整数abに対して、
y=ab
・・・ (3)
と表されます。すると、
x-1=3a
4x+1=b4 ・・・ (4)
または、
x-1=a
4x+1=3b4 ・・・ (5)
です。

x-1=3a4x+1=b4の場合

xを消去すると、b4-3a4=2

ですが、これはZ/3Zの範囲内で整数解が存在しないので整数解がありません。

x-1=a4x+1=3b4の場合

xを消去すると、 b4-3a4=2 です。このThue方程式はpari/gpで解くと、 gp > thue(thueinit(b^4-3),-2) %6 = [[-1, 1], [1, -1], [-1, -1], [1, 1]]

となりますから、

(a,b)=(1, 1)(1, -1)(-1, 1)(-1, -1) です。a,bは正整数なので、有効な解は(a,b)=(1,1)で、(3)(5)式より、

(x,y)=(2, 1)

です。

A−2 (2,x+1)=2の場合

x+1x-1は正整数で、(2)式より互いに素な正整数a、bに対して、

y=2ab ・・・ (6)

と表されます。すると、

x-1=32a4x+1=23b4 ・・・ (7)

または

x-1 = 323a4x+1 = 2b4 ・・・ (8)

または、

x-1 = 2a4x+1 = 323b4 ・・・ (9)

または、

x-1 = 23a4x+1 = 32b4 ・・・ (10)

です。

x-1=32a4x+1=23b4の場合

xを消去すると、 4b4-3a4 = 1  です。ここで、

u=2a-bv=-a+b

と変換して、Thue方程式に帰着させます。つまり、 u4+20u3v+78u2v2+116uv3+61v4=1

となり、pari/gpで解くと、 gp > thue(thueinit(u^4+20*u^3+78*u^2+116*u+61),1) %8 = [[1, 0], [-1, 0], [-3, 2], [3, -2]]

となりますから、

(u,v) = (±1,0),(3,-2),(-3,2)

ここで、a=u+vb=u+2vなので、

(a,b) = (1,1),(-1,-1),(-1,1),(1,-1)

です。ここで、a、bは正整数なので、有効な解は(a,b)=(1,1)であり、(6)(7)式より、

(x,y) = (7,2) です。

 
x-1 = 323a4x+1 = 2b4の場合

同様にxを消去すると、

b4-12a4=1 です。このThue方程式はpari/gpで解くと、 gp > thue(thueinit(b^4-12),1) %9 = [[1, 0], [-1, 0]] となりますから、

(a,b)=(0,±1) です。しかし、a,bは正整数なので、整数解はありません。

 x-1 = 2a4x+1 = 323b4の場合

同様に、 a4-12b4=-1

ですが、これはZ/3Zの範囲内で整数解が存在しないので整数解がありません。

 x-1 = 23a4x+1 = 32b4の場合

同様に、 3b4-4a4=1 ですが、これもZ/3Zの範囲内で整数解が存在しないので整数解がありません。

 以上より、正整数解は(2,1)(7,2)です。これに負の場合を加えて、(x,y)=(-7,-2)(7,-2)(-2,-1)(2,-1)(-2,1)(2,1)(-7,2)(7,2)となります。

Bまとめ

@Aより、整数解は(x,y)=(-7,-2)(7,-2)(-2,-1)(2,-1)(-1,0)(1,0)(-2,1)(2,1)(-7,2)(7,2)10個です。
【問題3】

有理数解は

[-122/121, 3/11]

[-122/121, -3/11]

[122/121, 3/11]

[122/121, -3/11]

などですが、論理を理解していませんので、説明がご勘弁下さい。

kasama」さんのコメント   9/27: 02時11分 受信 更新9/28
私の一日」でヒントを頂きありがとうございました。

 お陰様で解決できましたと言いたいところですが、ご指摘の参考文献を理解するにはしばらく時間が必要かと思います。もっとも、その前に学生時代に勉強し
た群論や整数論などを復習することから始めねばと思っていますが・・・、もう少し真面目に勉強していればと今になって後悔しております。大人になって、群論、整数論などの知識が必要とは思ってもいませんでしたので・・・

 問題1は何とかなりましたが、問題2は「H.Nakao's Elliptic Curves Topics」(出題者のページ?)を参考にさせてもらいました。
不定方程式をThue方程式に帰着させて整数解を求める方法でした。問題解決の過程で、いろんな文献を調査したり、pari/gpをダウンロードして実際に動作させてみりして大変勉強になりました。先生には、このような機会を作ってくれたことに感謝しております。

 問題3、4は今後の私の解決すべき重要な課題の1つとさせて下さい。
 問題を解決するために、超えなければならないハードルは私にとって決して低くないと考えていすが、大人だから勉強をしなくても良いとは思っていませんので、地道にやっていくつもりです。

<中尾さんからの問題と解法> 
9/28: 22時52分 受信 更新9/29

楕円曲線C:3*x^4-2*y^2=1の有理点を計算してみました。

楕円曲線Cは、以下の双有理変換により、楕円曲線E:v^2=u^3+3*uにQ-isomorphic
となります。

  u=3*(x+1)^2/(3*x^2-2*y-1)
  v=6*(x+1)(3*x^3-3*x*y-y+1)/(3*x^2-2*y+1)^2

  x=(u^2-2*v-3)/(u^2-6*u+3)
  y=(u^4+6*u^3-6*u^2*v+12*u*v-18*u-18*v-9)/(u^2-6*u+3)^2

楕円曲線Eのねじれ点群E_{tors}(Q)はZ/2Zで、生成元は(0,0)です。
E(Q)/E_{tors}(Q)のrankは1で、生成元は(1,-2)です。

楕円曲線Cの有理点(x,y)で、x,y>0なるものをいくつか計算すると、
[1, 1],
[3, 11],
[19/25, 13/625],
[449/167, 246121/27889],
[22689/21961, 530296679/482285521],
[3367187/3471863, 10962489040931/12053832690769],
[1530685763/451080529, 2865966685391834149/203473643642919841],
[1452093826017/1907347561775,
227402986796438787254063/3637974721409037441150625],
[5131770262974881/2106541832462927,
32100744059569082693820895834319/4437518491916266405538829407329],
....
となります。
<水の流れのコメント> 
9/29記述
いつもいつも誠にありがとうございます。本当に、感謝しています。これからも よろしく お願いします。

NO4「中川幸一」さん  9/28: 23時20分 受信 更新9/30

    <自宅>  mizuryu@aqua.ocn.ne.jp