平成15年11月16日

[流れ星]

        第127回数学的な応募問題解答

          <解答募集期間:10月26日〜11月16日>

[間接証明]

   

先日生徒に、「間接証明として、背理法、対偶による証明、同一法があるが、次のレームス・シュタイナー問題にチャレンジしてみなさい」
と言いました。ここで、平面幾何の問題です。もちろん、直接証明でも間接証明でも解けますからね。

三角形ABCにおいて、BC=a,CA=b,AB=cとする。AB、AC上に点D、Eを角C,角Bを2等分するようにとる。
  BE=CDならばAB=AC が成立することを証明せよ。

NO1「中川幸一」さん  10/26: 06時24分 受信 更新11/16

NO2「kasama   10/28: 23時41分 受信 更新11/16
<コメント>
いつも楽しい問題を出題して頂きありがとうございました。仕事が一段落したので、問題に取り組んでみました。
 簡単に見えたので、数日間未着手のままでした。しかし、ご指摘のようにやってみると意外と苦労しました。
「直接証明」と「間接証明」の2つをやろうと思ったのですが、とてもそんな余裕はありませんでした。
 今日のところは、「直接証明」だけとなってしまいました。で、「直接証明」の解答をお送り致しますが、ほとんど力技でやったようなもので、
数式ソフトのご厄介になりました。
 これから、間接証明を考えてみますが、うまくやると直接証明よりスマートにできそうに思いますが・・・

【直接証明】

@AECEADBDの長さを算出

【補足1】より、 AE=bc/(a+c)CE=ab/(a+c)  AD=bc/(a+b)BD=ac/(a+b)

ABECDと他辺の長さ関係

【補足2】と@より、 

BE2=ac-AECE

   =ac-ab2c/(a+c)2

   =(ac(a+c)2-ab2c)/(a+c)2

   =ac{(a+c)2-b2}/(a+c)2

   =ac(a+c-b)(a+c+b)/(a+c)2・・・(1)

同様に、CDについても

    CD2=ab(a+b-c)(a+b+c)/(a+b)2・・・(2)

となります。

BBE=CDAB=ACの証明

さて、BE=CDBE2-CD2=0ですから、A(1)(2)式を代入すると、

    BE2-CD2=ac(a+c-b)(a+c+b)/(a+c)2-ab(a+b-c)(a+b+c)/(a+b)2=0

     (a+b)2ac(a+c-b)(a+c+b)-(a+c)2ab(a+b-c)(a+b+c)=0

     a(a+c+b){(a+b)2c(a+c-b)-(a+c)2b(a+b-c)}=0

ここで、a(a+c+b)>0ですから、

    (a+b)2c(a+c-b)-(a+c)2b(a+b-c)=0

について考えます。後は腕力で(と言っても、素手でやるのは大変なので、Mathmediaの力を借りて)、上式を展開すると、

    -a3b-a2b2+a3c-3ab2c-b3c+a2c2+3abc2+bc3=0 となり、c-bで括りだすと

    (c-b){a3+a2b+(a2 + 3ab + b2)c + bc2}=0 となります。ここで{}の中は正なので   c-b=0  c=b

です。以上より、BE=CDならAB=ACとなります。

【間接証明(2003.11.10追加)】

BE=CD⇒AB=ACの対偶をとって、AB≠AC⇒BE≠CDの証明に挑戦してみました。【直接証明】のBを逆順に辿って矛盾を言えば良いのですが、別の観点から考えてみました。間接証明は直接照明するのが困難な場合に利用されるのですが、以下に述べるものはもとても面倒だったので、本来の趣旨に反しているでしょう。やり方は、傳CEと傳CDに正弦定理を適用して、BE-CDを考えAB≠AC(∠B≠∠C)⇒BE-CD≠0を導きます。方針は立つのですが、実際にやってみると、これがなかなかうまくいかず、試行錯誤を繰り返して、三角関数の変形と格闘する羽目になりました。

@正弦定理の適用

∠B = 2α、∠C =2βとします。AB≠ACなのでα≠βですが、α<βとしておきます。

すると、傳CEに正弦定理の適用して、

a/sin{2π-(α+2β)} = BE/sin(2β)

⇒1/BE = -sin(α + 2β)/a・sin(2β) ・・・ (1)

同様に、傳CDについても

a/sin{2π-(2α+β)} = CD/sin(2α)

⇒1/CD = -sin(2α + β)/a・sin(2α) ・・・ (2)

です。なお、sin(2α)>0、sin(2β)>0です。

 

A証明の準備

BEとCDは逆数にして引算すると、(1)、(2)式より

1/BE - 1/CD

= - sin(α + 2β)/a・sin(2β) + sin(2α + β)/a・sin(2α)

  = {sin(2α + β)・sin(2*β) - sin(2α)・sin(α + 2β)} / a・sin(2α)・sin(2β)

1/BE - 1/CD≠0を言えば良いので、{}の中だけに着目します。和・差⇔積の変換公式の1つである

sin(α)・sin(β)=-{cos(α+β)-cos(α-β)} / 2

を利用すると、{}は

 {} = -{cos(2α+3β)-cos(2α-β)}/2 + {cos(3α+2β)-cos(α-2β)} / 2

となり、順序を変更して整理すると、

 {} = {cos(3α+2β)-cos(2α+3β) + cos(2α-β)-cos(α-2β)} / 2

さらに、定式の{}の中だけを対象にします。再び、別の和・差⇔積の変換公式である

cos(α)-cos(β) = -2・sin{(α+β)/2}・sin{(α-β)/2}

を利用すると、{}は

 {} = -2・sin{5(α+β)/2}・sin{(α-β)/2} - 2・sin{3(α-β)/2}・sin{(α+β)/2}

   = -2・[sin{5(α+β)/2}・sin{(α-β)/2} + sin{3(α-β)/2}・sin{(α+β)/2}]

また、[]の中だけ考えて、

(α+β)/2=A、(α-β)/2=B ・・・ (3)

とすると、

[] = sin(5A)・sin(B) + sin(3B)・sin(A) ・・・ (4)

となります。結構ダラダラと式を変形しましたが、これで準備完了であります。α<βのとき、上式(4)つまりBEとCD差が0でないことを証明します。

 

Bα<β⇒BE-CDの証明

三角形の性質から、0<2α<2β<2π、0<2α+2β<2πなので、(3)式のA、Bのとり得る範囲は

 0<A<π/4、-π/4<B<π/4

ですので、

 0<sin(A)<1/√2、-1/√2<sin(B)<1/√2 ・・・ (5)

です。次に(4)式を展開(3・5倍角の公式利用)すると(本当は手でやるのはチョット・・・なので、数式ソフト利用して)、

 (4)式 = -20・sin3(A)・sin(B)-4・sin3(B)・sin(A)+8・sin(A)・sin(B)+16・sin5(A)・sin(B)

となるようです。4・sin(A)・sin(B)で括り出して整理すると

 (4)式 = 4・sin(A)・sin(B)・{4・sin4(A)-5・sin2(A)-sin2(B)+2}

ここで、sin(A)・sin(B)>0だから、またまた、{}の中だけ考えて、範囲(5)を意識しながら整理すると、

 {} = 4・[sin2(A)-1/2]2 + 4・sin2(A)-1 -5・sin2(A)-sin2(B)+2

     = 4・[sin2(A)-1/2]2 - sin2(A) - sin2(B) + 1

     = 4・[sin2(A)-1/2]2 + [1/2-sin2(A)] + [1/2-sin2(B)]

となり、[]2と[]は正なので、{}>0です。つまり、α<β⇒BE-CD≠0です。よって、AB≠AC⇒BE≠CDです。

参考までに、4・sin4(A)-5・sin2(A)-sin2(B)+2は下図のような外観です。実は、まずこれを描画して、4・sin4(A)-5・sin2(A)-sin2(B)+2が0より大きいだろうとあたりをつけました。

    

NO2「kasama   10/28: 23時41分 受信 更新11/16 続き

 【補足1】

ABCにおいて、Aの2等分線とBCとの交点をDとすると、BD:DCAB:ACです。

最近の中学生はこの定理を知っているみたいですね(メネラウスの定理なんかも知っているようです。私は中学校で習った記憶はないのですが・・・単に授業を聞いていなかっただけかも?)。なので、ほとんど既成事実に近いですが、参考までに証明を記載しておきます。

【証明】 =2θとすると、  2×ABD=ABADsinθ2×ADC=ACADsinθです。
一方、2つの三角形の高さは等しいですから、

    ABD:ADC=BD:DC です。つまり、

    BD:DC=ABADsinθ/2:ACADsinθ/2=AB:AC となります。

【補足2】上図において、  AD2=ABAC-BDDC です。

【証明】 ABDADCに余弦定理を適用します。すると、

    BD2=AB2+AD2-2ABADcosθ

    CD2=AD2+AC2-2ADACcosθ です。少し変形して

 

とやって、cosθを消去すると

    AC(AB2+AD2-BD2)=AB(AD2+AC2-CD2)

     AD2(AC-AB)= ABAC2-ABCD2-ACAB2+ACBD2

     AD2(AC-AB)= ABAC(AC-AB)-ABCD2+ACBD2

となりますが、ABCD2+ACBD2の部分は補足1に記載したように

    BD:DC= AB:AC  BDAC=DCAB

     DC2ABBDACDCACBD2=DCABBD ですから、

    AD2(AC-AB)= ABAC(AC-AB)-BDDC(AC-AB)

と整理できます。

@ACABの場合

    両辺からAC-ABをはらって、AD2= ABAC-BDDCとなります。

AACABの場合

    BD=CDADB=ADC=π/2で三平方の定理から

    AD2= AB2-BD2

NO3「Kashiwagi10/30: 7時50分 受信
NO3「Kashiwagi」11/01: 22時20分 受信
NO3「Kashiwagi」11/02: 12時29分 受信 更新11/16
127回

【直接証明】.

題意よりAB、AC、BE及びCDの長さを各々、x、yとすると、角の二等分の性質よりAE=bc/(a+c),AD=bc/(a+b)となる。

ここで△ABCと△ABEに余弦第二定理を適用すると

a=b+c−2bccosA    …・ @

=c+b/(a+c)−2bccosA/(a+c) …・ Aとなる。

@及びAからcosA を消去すると

=c+b/(a+c)−(ac−bc−c)/(a+c) …・Bを得る。

全く同様な事を △ABCと△ACDに適用すると

=b+b/(a+b)−(a2b−b3−bc2)/(a+c)…・Cとなる。

ここでBE=CDであるからx=y即ち、x=yであるから、
B及びCより c+b/(a+c)−(ac−bc−c)/(a+c)

=b+b/(a+b)−(ab−b−bc)/(a+c)となる。

この式を計算すると、

(c−b)〔bc+b(a+c)a(a+c)abc〕=0となる。

ところで、あ、b、cは各々正の数であるから〔〕ないは正、即ち0でない。

因って、c−b=0が成り立ち、c=b 即ち、AB=ACである。

 

【間接照明】

例えば∠Aが30°、∠Cが90°、AB=2、AC=√3、BC=1の直角三角形を考えると、AB≠ACである。

又、BE=x、CD=yとすると、△EBCは∠EBC=30°の直角三角形であるから

x=2√3/3となる。

又、Dより辺BCに平行な線DFを引くと、DFF=y/√2である。

因って、△ADEは∠Aが30°の直角三角形であるから、y=(3√2−√6)/2

となる。即ち、x≠y、BE≠CDとなる。
つまり、AB≠ACならば各々の角の二等分線であるBEとCDの間にはBE≠CDが成り立つ。

これは題意の対偶が成立する事を意味する。

因って、BE=CDならAB=CDが成立する。

NO4「toru     10/30: 11時52分 受信 更新11/16
第127回解答
直接法 AE=bc/(a+c)、ΔABEに余弦定理を適用して、
BE^2=c^2+b^2c^2/(a+c)^2-2bc^2/(a+c) cos A
ΔABCに余弦定理を適用したcosA=(b^2+c^2-a^2)/2bcを上の式に代入して計算、
 BE^2=c^2+b^2c^2/(a+c)^2-2bc^2/(a+c) cos A=ac((a+c)^2-b^2)/(a+c)^2
bとcを入れ替えれば CD^2= ab((a+b)^2-c^2)/(a+b)^2
BE^2=CD^2とすると
ac((a+c)^2-b^2) (a+b)^2= ab((a+b)^2-c^2) (a+c)^2  両辺をaで割って整理すると、
(b-c) (a+c)^2(a+b)^2+bc(b(a+b)^2-c(a+c)^2)=0 さらに
(b-c) ((a+c)^2(a+b)^2+bc(a^2+2a(b+c)+b^2+bc+c^2))=0 、2番目のカッコ内は正で
あるから、b-c=0 でAB=AC
 
間接法 AB≠ACならばBE≠CDを示す。
Cを通りBEと平行な直線をひき、ABの延長との交点をFとすると、角BCF=角
BFC=角B/2よりBF=a、ΔABEとΔAFCの相似から
BE=c/(a+c)×CF 
同様にBを通りCDに平行な直線を引きACの延長との交点をGとするとCG=aで
CD=b/(a+b)×BG 
AB>ACの時、角B<角Cで、角FBC>角GCBだから二等辺三角形、ΔBFC
とΔCGBを比べて、CF>BG---1) 
またc>b⇒a/c<a/b⇒(a+c)/c<(a+b)/b⇒c/(a+c)>b/(a+b)--2)
1)2)を辺辺かければ、BE>CD
AB<ACなら同様にBE<CDとなるから、AB≠ACならばBE≠CDは示され
た。

もうちょっとうまい方法がありそうな気がしつつ、なかなかうまくいきませんでした。

NO5「H7K」      10/30: 21時59分 受信
NO5「H7K」      11/02: 22時19分 受信
NO5「H7K」      11/04: 22時44分 受信 更新11/16

記号凡例:ang:∠ in:∈ //:平行記号
D' : DD'//BC,D' in AC.
E' : EE'//BC,E' in AB.
すると,平行線の錯角よりang D'DC=ang DCB=ang DCA,よってDD'=CD',同様にEE'=BE'.
さて,DD'がEE'より上方に来ると仮定.
仮定より,明らかにDD'<EE',またDD'がEE'より上方にあるためには
BE sin ang EBC= BE in ang ABE<CD sin ang DCB=CD sin ang DCAが必要,
よって0<ang DCA , ang ABE<90°よりang DCA>ang ABE.

次に、 CD =2DD'cos ang DCA= BE=2EE'cos ang ABE,
(以下証明: DD'//BCよりang D'DC=ang DCB=ang DCA,よってDD'=D'C.
 ここで,ΔDD'CについてD'からCDに垂線を下ろす(足をRとする)と,DR=RC,ang D'RD=ang D'RC=90°であるから,
 DR=DD'cos ang D'DC=DD'cos ang DCA,RC=D'Ccos ang DCA=DD'cos ang DCA,よってCD=2DD'cos ang DCA.
 同様にBE=2EE'cos ang ABE.)

 さて,DD'=CD/(2cos ang DCA),EE'=BE/(2cos ang ABE)であるので,
EE'>DD'であるためには,cos ang DCA>cos ang ABEが必要.
0<ang DCA,ang ABE<90°より,明らかにang DCA<ang ABE,矛盾.//
ang DCA,ang ABE<90°より,ang DCA>ang ABE.

一方,DD'とBCの距離をd,EE'とBCの距離をeとすると,明らかにd>e,
D'からBCへ垂線をおろしその足とCの距離をf,
E'からBCへ垂線をおろしその足とBの距離をgとすると,
三平方の定理よりCD'^2=DD'^2=d^2+f^2,BE'^2=EE'^2=e^2+g^2だが,
DD'<EE',d>eより,g>f,
ここで,ang ABE,ang DCA<45°のときは,e/g=tan 2ang ABE>d/f=tan 2ang DCAよりang ABE>ang DCA,矛盾.
そうでない時は,angle B,angle Cのどちらかが鈍角となる.
ang B>90°のとき,CD^2-d^2>BC^2>BE^2-e^2となり矛盾.
ang C>90°のとき,ang ABE>ang DCAが明らかにわかるので,矛盾.
よって,DD'はEE'より上方にない.
DD'が下方に来る時も同様.//

No6「三角定規」 11/01: 16時47分 受信 更新11/16

    <自宅>  mizuryu@aqua.ocn.ne.jp