平成15年12月7日

[流れ星]

        第128回数学的な応募問題解答

          <解答募集期間:11月16日〜12月7日>

[三角形の内心]

   

最近、平面幾何の問題を良く取り扱います。そこで、BC=a,CA=b,AB=cとする三角形ABCにおいて、内心をIとし、
∠A,∠B,∠Cの2等分線が対辺BC,CA,ABと交わる点をそれぞれD,E,Fとするとき、次の問題に答えよ。

問題1:P=(AI/AD)・(BI/BE)・(CI/CF)としたとき、Pをa、b、cで表せ。

問題2:不等式 (1/4)<P≦(8/27)を証明せよ。

<原典:『IMO 1991 ProblemA1』の問題です。12月6日記入>

NO1「中川幸一」 11/15: 23時46分 受信 更新12/7

NO2―1「H7K」      11/16: 13時56分 受信 更新12/7
1.
AI/AD=AI/(AI+ID)=AB/(AB+BD)=AB/(AB+BC*AB/(AB+AC))=c/(c+ac/(b+c))
=(b+c)/(a+b+c)
...確か、「三角形ABCについて,∠Aの二等分線と
BCの交点をFとすると,BF:CF=AB:AC」とかいう定理があったと思う.
同様に考えて、
P=(a+b)(b+c)(c+a)/(a+b+c)^3.
2.
相加相乗平均不等式より,
(a+b)+(b+c)+(c+a)>=3((a+b)(b+c)(c+a))^(1/3).
両辺を3乗して,
(2(a+b+c))^3=8(a+b+c)^3>=27(a+b)(b+c)(c+a).
よって,P<=8/27 (a=b=cのとき)
三角不等式より,a+b>c,よってa+b+c<2(a+b)であるので,
P=(a+b)(b+c)(c+a)/(a+b+c)^3
>(a+b)(b+c)(c+a)/4(a+b)(b+c)(a+b+c)
=(a+c)/4(a+b+c)>1/4.

NO2―2「H7K」      11/16: 17時07分 受信 更新12/7
さっきのやつに補足.
>三角不等式より,a+b>c,よってa+b+c<2(a+b)であるので,
>P=(a+b)(b+c)(c+a)/(a+b+c)^3
>>(a+b)(b+c)(c+a)/4(a+b)(b+c)(a+b+c)
>=(a+c)/4(a+b+c)>1/4.
a=c>>bとすると,Pは限りなく1/4に近く出来ます.
しかし,最初の不等号を=にするためには,a+b=c,b+c=aでなければ
ならないため,当然b=0となり矛盾.
また,最後の不等号についても,b=0でないと=にできません.
似た変形として,
P=(a+b)(b+c)(c+a)/(a+b+c)^3
>(a+b)(b+c)(c+a)/8(a+b)(b+c)(c+a)=1/8
がありますが,P>1/4なので,意味ないですね.

NO2−3「H7K」      11/17: 16時11分 受信 更新12/7
<水の流れ> P>1/4の証明ですが、納得できたようですが、ちょっと 強引な感じがします。
両辺の差をとって、三角不等式から 正である証明を用意しています。


4(a+b)(b+c)(c+a)-(a+b+c)^3
=4(a^2b+a^2c+b^2a+b^2c+c^2a+c^2b+2abc)-(a^3+b^3+c^3+3(a^2b+a^2c+b^2a+b^2c+c^2a+c^2b)+6abc)
=a^2(b+c-a)+b^2(c+a-b)+c^2(a+b-c)+2abc
ここで,三角不等式より,b+c-a>0,c+a-b>0,a+b-c>0より,
a^2(b+c-a)+b^2(c+a-b)+c^2(a+b-c)+2abc>0.
よって,両辺を(a+b+c)^3で割り,4P-1>0,これはP>1/4を意味する.//

NO3「toru     11/18: 10時45分 受信 更新12/7
問題1 BD:DC=c:b よりBD=ac/(b+c)で、AI/AD=AB/(AB+BD)=(b+c)/(a+b+c) 
同様に BI/BE=(c+a)/(a+b+c), CI/CF=(a+b)/(a+b+c) だから
P=(b+c)(c+a)(a+b)/(a+b+c)^3

問題2 Pは相似な三角形では同じ値をとるから、a+b+c=1としても一般性を失わない。
この時a,b,cが三角形を構成するための条件はb+c>a,c+a>b,a+b>c a+b+c=1からcを消去して、
これはa<1/2,b<1/2,(a+b) >1/2 これをab平面で考えれば(a,b)は(1/2,0),(1/2,1/2),(0,1/2)の三点を頂点とする三角形の内部を動き、
この時のP=(1-a)(1-b)(a+b) のとる範囲を考えることになる。三角形の辺上の点も含めて閉領域とすれば、
連続関数Pはこの領域内で最大値と最小値をとる。
Pa=(1-b)(1-2a-b)=0, Pb=(1-a)(1-a-2b)=0(Pa,Pbは偏微分)とするとa=1/3,b=1/3 ,
よってPが最大値、最小値をとるのは、a=1/3,b=1/3か三角形の周上の点に限られる。
三角形の周上の点ではa=1/2 or b=1/ 2 or  a+b=1/2 であるが、
どの場合も P=1/2 (1-t)(1/2+t)=1/2(9/16-(t-1/4)^2 )(0≦t≦1/2) の形になり
これは t=1/4で最大値9/32, t=0 or 1/2で最小値1/4 をとる。
a=1/3,b=1/3の時 P=8/27,1/4<9/32<8/27であるから、閉領域では1/4≦P≦8/27 周上の点を除いた領域では、
1/4<P≦8/27

 cを消去するのをやめて、平面a+b+c=1の上で考えれば(a,b,c)は(1/2,1/2,0)
,(1/2,0,1/2) ,(0,1/2,1/2)を頂点とする三角形の内部を動く。
F(a,b,c,λ)=(1-a)(1-b)(1-c)-λ(a+b+c-1)としてラグランジュの方法を使えば臨界点を求めるのにa,b,cを平等に扱ったまま行けます。
周辺の点はどれかを1/2と置いて、一変数減らしてまたラグランジュの方法を使う。この方がスマートな気がする反面、
あまりに大仰な気もして、一応解答のようにしておきました。                           ペンネーム Toru

NO4―1「kasama   11/19: 00時44分 受信 更新12/7
<コメント:
今回も興味深い問題ですね。平面幾何ですから、図を描きながら直感的な理解で取り組めるところが楽しいと思います。
生徒さんには人気のある問題ではないでしょうか。
 さて、問題1だけですが、何とかできた?つもりですので、回答を転送させて頂きます。
当初、正弦定理など三角関数を利用してやろうとしたのですが、どうもうまくいかず(角度をうまく消去できない)、
前回みたいに苦労しそうだったので、今回は各辺の長さを無理矢理求めて関係式Pを導出しました。
まさに腕力でやったという感じです。
 初歩的なやり方でありましたが、コツコツやれば(と言っても、数式ソフトを利用しましたが・・・)、まあ確実に解けるところが利点かなと感じました。>
【問題1】

@AD、BE、CFとIA、IB、ICの長さの算出

少し手抜きして、第127回数学的な応募問題解答のNo2にある【直接証明】の結果を利用させて頂きます。

まず、

 AF=bc/(a+b)、BF=ac/(a+b)

 BD=ac/(b+c)、CD=ab/(b+c)

 AE=bc/(a+c)、CE=ab/(a+c)

でした。そして

 AD2=bc-BD・CD=-a2bc/(b+c)2+bc ・・・(1)

 BE2=ac-AE・CE=-ab2c/(a+c)2+ac ・・・(2)

 CF2=ab-AF・BF=-abc2/(a+b)2+ab ・・・(3)

となりました。これが前回の結果です。

さて、補足1の(5)〜(6)式より、内心Iと各頂点A、B、Cの距離は

IA2=bc(b+c-a)/(a+b+c) ・・・(4)

IB2=ac(a+c-b)/(a+b+c) ・・・(5)

IC2=ab(a+b-c)/(a+b+c) ・・・(6)

です。

 

APの関係式の導出

Pは2乗した方が扱い易いので、

 P2=IA2/AD2・IB2/BE2・IC2/CF2

として、@の(1)〜(6)式を代入して整理すると(数式整理ソフトを使用しました)、

 P2=(a+b)2(a+c)2(b+c)2/(a+b+c)6

となるようです。よって、Pは

 P=(a+b)(a+c)(b+c)/(a+b+c)3

と表されます。

 

 

【補足1 内心と各頂点との距離】  

上図のように内心Iから各辺に下ろした垂線の足をD、E、Fとします。すると、以下のような合同な3組の直角三角形ができます(図を描くのが下手なのでそう見えないかもしれません。ご勘弁下さい)。

 △AIF≡△AIE

 △BIF≡△BID

 △CID≡△CIE

さて、△ABCの面積Sは

S=△AIF+△AIE+△BIF+△BID+△CID+△CIE

  =(△AIF+△BIF)+(△BID+△CID)+(△CIE+△AIE)

  =△AIB+△BIC+△AIC

です。内心の性質から垂線の長さはすべて等しくID=IE=IF=lですから、上式は

 S=cl/2 + al/2 + bl/2

  =l(a+b+c)/2

 ⇒ l=2S/(a+b+c) ・・・(1)

となります。次に、AFの長さを求めます。上で述べた三角形の合同の関係に注意すると、

 △AIF≡△AIEよりCE=b-AE=b-AF(∵AF=AE)

 △BIF≡△BIDよりBD=a-CD=a-b+AF(∵CE=CD)

 △CID≡△CIEよりAF=c-BD=c-a+b-AF(∵BD=BF)

つまり、

 AF=(c-a+b)/2 ・・・(2)

となります。同様にして、

 AD=(a-b+c)/2 ・・・(3)

 AE=(b-a+c)/2 ・・・(4)

となります。

三平方の定理から

IA2=l2+ AF’2={2S/(a+b+c)}2+{(c-a+b)/2}2

となります。さらに、ヘロンの公式

 S=√(s(s-a)(s-b)(s-c))、s=(a+b+c)/2

を適用して整理すると(数式整理ソフトを利用させて頂きました。とても素手では・・・)、

IA2=bc(b+c-a)/(a+b+c) ・・・(5)

となるようです。同様にして、

IB2=ac(a+c-b)/(a+b+c) ・・・(6)

IC2=ab(a+b-c)/(a+b+c) ・・・(7)

を得ます。

NO4−2「kasama   11/20: 17時31分 受信 更新12/7
<水の流れ:
 いや、もっと簡単に「角の二等分線」の性質を使うとでてきますよ。>
kasama」*ご指摘頂きありがとうございました。「もっと簡単に」できると思いつつも良い考えが思い付かなかったので、
つい数式ソフトの力に頼ってしまいました。
 ご指摘のように「角の二等分線」の性質をうまく利用すると、不思議なくらい簡単にPを導出できました。ドキュメントを更新しましたので、お送り致します。>
【問題1(少しマシな方法)2003.11.20追記】

△ABCに角の2等分線の性質を適用します。すると、

IA:ID=c:BD ⇒ ID=IA・BD/c

となります。ここで、AD=IA+IDですから

 AD=IA+IA・BD/c

です。これをIA/ADに代入すると、IAが消去できて

IA/AD=IA/{IA+IA・BD/c}=c/(c+BD)

となります。第127回数学的な応募問題解答のNo2にある【直接証明】にあるように、BD=ac/(b+c)ですから、これを上式に入れて整理すると、

IA/AD=(b+c)/(a+b+c) ・・・(1)

が得られます。同様に、IB/BE、IC/CFについても

 IB/BE=(a+c)/(a+b+c) ・・・(2)

 IC/CF=(a+b)/(a+b+c) ・・・(3)

となります。(1)〜(3)式をP=AD・IB/BE・IC/CFに代入すると

 P=(a+b)(a+c)(b+c)/(a+b+c)3

となります。

NO5「UnderBird11/19: 13時09分 受信 更新12/7
第128回 「三角形の内心」

 

 
問題1

 角の二等分線の性質より、

 であるから、

 である。

また、 だから、

同様にして、

 

問題2

 より、相加相乗平均の関係を用いて

 が成り立つ。

すなわち、

よって、 等号成立は、の正三角形の時である。

 

また、 である。

分母であるから、 を証明する。

左辺

また、三角形の成立条件  から、2項ともに正であることがわかる。

以上より、 が成り立つ。

 

NO6―1「Kashiwagi11/20: 18時33分 受信更新12/7
128回解答

(1)   内心Iは三角形の二等分線の交点であるので、角の二等分による対辺の分割比は各々の側辺の比であるという定理を使用すると、

AI:ID =c:ca/(c+b)、

AI:AD =AI:(AI+ID)=(c+b):(c+b+a)となる。

他の二つの比についても同様な計算をすると、求めるPは

P =(a+b)(c+b)(c+a)/(c+b+a)である。

 

(2)   今、(a+b)=X(≧0)

(c+b)=Y(≧0)

(c+a)=Z(≧0)とおくと、

(c+b+a)=(X+Y+Z)/2となるので、

P =8XYZ/(X+Y+Z)3 となる。

ところで全ての数は正であるので、相加相乗平均の関係から

X+Y+Z)3 ≧27XYZ となる。因って、

P ≦8/27である。

 

 次にPの値が最小になる場合を考えると、それはひとつの辺aが限りなく0に近づく場合、即ちbとcが等しくなる時は

 P =(a+b)(c+b)(c+a)/(c+b+a)

   → bc(c+b)/(c+b)

    → b/(2b)2 → 1/4

 

因って、1/4 < P ≦8/27が成立する。

 

 

NO6−2「Kashiwagi11/21: 08時24分 受信 更新12/7
お世話になります。昨夜帰宅後じっくり考え、以下の様な論証に辿り着きま した。如何でしょうか?ご指導方宜しくお願い申し上げます。
理論を重視した場合、最大値は置き換えたXYZのうちまずYZを固定し、 Xのみ変数として微分を使い、
次にZを固定し、Yを変数にしてという形で解け ますが、
勿論等号はX=Y=Z、即ちa=b=cの場合ですね。
次に最小値の方ですが、分母、分子とも正の数であり、分子と分母を各々 aの2次及び3次関数とみなせば、aが最大の時に最小値をとる。
これは即ち、  b+cを限りなくaに近づけてやることに他なりません。
すると、bないしcのどちら かを0に近づければ、 a+b(b+c)(c+a)/(a+b+c)3 →2a3/8a3 →1/4となります。
もし、b=c=a/2とすると9/32となり1/4より大きくなるので最小ではありません。

NO7「たけクジラ」11/29: 16時00分 受信 更新12/7
はじめまして。今回から応募していきたいと思います。 ペンネームは「たけクジラ」です。

1
 →  →    →  →
CB = a   CA = b BE=1 EI=s AD=1 DI=t とする
→          →  →
CI=(a/(a+c))(1-s)b +sa
         →
  =(b/(b+c)(1-t)a+tb
→ 
a  b は一次独立より
(b+c)s=b(1-t)
(a+c)(b+c)s-(a+c)b=-ab(1-s)
s=b/(a+b+c)
同じように
t=a/(a+b+c)
よって
→              
CI=a(a+b+c)b +b/(a+b+c)a
          →  
ここで kCI=CF とおく。
FはAB上の点より
 →
 a , b の係数の和は1
よって k=(a+b+c)/(a+b)
以上、計算し与式に代入し
P=(a+b)(b+c)(c+a)/(a+b+c)^3

2
相乗平均相加平均の関係より                    
3・3乗根(a+b)(b+c)(c+a)≦2(a+b+c)
辺々1/3倍して3乗
(a+b)(b+c)(c+a)≦(a+b+c)^3(8/27)
(abc)^3>0
よって
P≦8/27


4(a+b)(b+c)(c+a)-(a+b+c)^3
=((a+b)^2-c^2)c+(a+b)(c^2-(a-b)^2)>0
ここで、a,b,cは三角形の辺なのでa+b>c  c>|a-b|
よって、P>1/4

よって、成立。

    

<自宅>  mizuryu@aqua.ocn.ne.jp