平成16年4月3日

[流れ星]

     第135回数学的な応募問題解答

      <解答募集期間:3月13日〜4月3日>
3次関数]  

  

太郎さんは大学入試問題集をみていて、以下の問題を見つけました。

 3次関数f(x)=ax+bx+cx+d は次の2つの条件を満たしているとき、この関数f(x)を求めよ。
 (1)f(1)=1,f(−1)=−1
 (2)区間−1<x<1で極大値1、極小値−1をとる
 
       <出典:1990年 
前期 東京大学 理類 2 番一部省略>


NO1「toru」   3/13: 21時16分受信

一般の3次曲線 y=f(x)=ax^3+bx^2+cx+dはX=x+b/3aと座標変換すれば2次の項を消すことができて、さらにy軸方向に平行移動すれば、Y=AX^3+CXと合同である。よって、曲線上の一点Pに対して点対称である。
 極大値が1、極小値が-1だから、Pのy座標は0である。更にy=f(x)は点(1,1),(-1,-1)を通るがこれら2点は極大極小をとる点より外側にありy座標の平均がPのy座標に一致するから、3次曲線の形を考えれば、互いに対称の位置にあってこれからP(0,0)であることが分かる。
 すなわちf(x)=ax^3+cxと考えてよい,f(1)=1よりa+c=1
またf(x)-1=ax^3+(1-a)x-1=(x-1)(ax^2+ax+1)=0が-1<x<1で重根を持つから、第二項の判別式a^2-4a=0,だからa=4  (a≠0)
 よってf(x)=4x^3-3x  逆にf’(x)=3(2x-1)(2x+1) f(-1/2)=1 f(1/2)=-1 で題意を満たす。答え f(x)=4x^3-3x

 条件をごりごり式にしてもできますが、なるべく計算を簡単にと考えて上記のようにしてみましたが、なんかちょっと定性的で厳密性にかけるような気がしないでもありません。ペンネーム Toru

toru」   3/15: 18時20分受信

 <水の流れ:そこで、このf(x)=4x^3-3x は何と呼ばれているでしょうか。今一度考えてくださいね。>

<コメント:名前のついた多項式と言っても、それほど知りませんが、x=cosθとしてみるとf(x)=cos3θとなりますから、3次のチェビシェフの多項式 T3(x)ということでしょうか?チェビシェフの多項式については、以前にここの問題(第71回、第115回)でちょっとだけ勉強した覚えがあります。
x=1〜-1に対応して、θ=0〜πとして、cos3θのグラフを書いてみれば、問題のような動きをするのは分かります。
出題者はこちらから発展させて作問したのでしょうか?>

<水の流れ:チェビシェフの多項式には特性があるから、ここから問題を作成したと思われます。>
                        
NO2「H7K」      3/14: 16時43分受信
条件(2)より,f'(1), f'(-1)>0, また-1<x<1においてfは単調ではない,ということがわかる.
すなわち,fの増減表は,ある-1<p<q<r<1を用いて,
x   ... -1 ...  p ... q ...  r ... 1 ...
f    ↑ -1  ↑  1  ↓    ↓ -1  ↑ 1  ↑
f'   +   +  +   0  -  -  -   0  +  +  +
f''  -   -  -   -  -  0  +   +  +  +  +
となることがわかる.(条件(1)より)
よって,f(x)=(x-1)(x-p)^2+1=(x+1)(x-r)^2-1.
∴ f(x)=ax^3-a(2p+1)x^2+a(p^2+2p)x-ap^2+1
       =ax^3+a(1-2r)x^2+a(r^2-2r)x+ar^2-1
これより,p=-1/2, r=1/2, a=4を得て,f(x)=4x^3-3x を得る.
%ところで,これはx=cos yとしたときの,cos 3yに等しいような気がする.

<水の流れ:この関数がcos3θ の3倍角にも気がつかれています。さすが、奥行きが深い洞察力です。
これも気がついてもらいたかったことです。で、この関数の名前は何と言われているでしょうか>
「H7K」      3/14: 22時33分受信
どこかで聞いたような気がする.確か,Chebyshevの多項式とかいったかな?第115回と関連が大いにありますね.
解法の間違い(1つaが抜けてしまってました^^;)を見つけたので,gifにして送ります.


NO3「kashiwagi」3/14: 19時15分受信
<コメント:今回の問題は3次関数の性質を知らないと難しいのでは・・・。最初は正攻法で責めたのですが、できず、ずるいのですが図書館で3次関数の性質を調べました。実際の入試では殆どの人が解けなかったのでは・・・。それともこれは受験生には常識なのでしょうか?>

135回解答

3次関数の以下の性質を使います。

@                    変曲点に関し極小値と極大値は対称である

A                    極小値と極大値と全く同じ値をとる2点もまた変曲点に関し対称である

B                    極小値と極大値、極小値と極大値と全く同じ値をとる2点、及び変曲点の5点は等間隔に並んでいる

 

問題の条件よりaは正でないと成立しない。

また、f(x)を2回微分し、その値を0と置いた時のxの値、−b/3aが変曲点のx座標である事は明らかである。ここでAの性質を使うと、

変曲点の座標は{(1−1)/2,〔f(1)+f(−1)〕/2}→(0,0)即ち原点である。

因ってb=d=0となる。

また、条件のf(1)=1とf(−1)=−1より

a+b+c+d=1

−a+b−c+d=−1 が成立する。因って、b+d=0、a+c=1

即ち、f(x)=ax+(1−a)xとなる。

これよりf’(x)=3ax+(1−a)となる。

ここで性質Bを使うと、

極小値と極大値を与える各々のx座標は、1と0の中間及び0と−1の中間であるから、

1/2と−1/2である。因ってf(x)=ax+(1−a)xのxに1/2を代入したものが極小値の−1となるから、方程式を解いてa=4を得る。
これはaが正という条件を満足する。 以上より求めるものは、f(x)=4x−3xとなる。

NO4「中川幸一」 3/15: 11時37分受信
<中川さんのコメント:元ネタの問題が分かったので, 余分なところまで解答を作っておきました。この元ネタは '90 前期 東京大学 理類 2 番 ですよね?>
<水の流れ:全くその通りです。どこの大学の入試問題と書くと 、答えも知れてしまうのではないかと懸念すたので、大学名を書きませんでした。>
<中川さんのコメント:そうですよね。解答を写されてしまうと意味がないので良い判断だと思います。(たとえ書いたとしても, ここの常連者は解答を調べようとはしないと思いますが…。)>


NO5「浜田明巳」 3/16: 11時47分受信
 f(x)=ax+bx+cx+d,a≠0
  x=αで極大値1,x=βで極小値−1(−1<α<1,−1<β<1)とする.
 3次関数のグラフは変曲点について対称なので,図のようになる.

  ∴a>0,−1<α<0<β<1
 yは奇関数となるので,変曲点は原点であり,α=−β
 2次の項の係数は0なので,b=d=0
  ∴f(x)=ax+cx
 点(1,1)を通るので,a+c=1
  ∴c=1−a
  ∴f(x)=ax+(1−a)x
  ∴f'(x)=3ax+1−a
 x=βでf'(x)=0なので,3aβ+1−a=0
 a>0から,β=(a−1)/(3a)>0
  ∴a>1
 β>0から,β={(a−1)/(3a)}1/2
 このとき,
  f(β)=β(aβ+1−a)
     ={(a−1)/(3a)}1/2・{a・(a−1)/(3a)+1−a}
     ={(a−1)/(3a)}1/2・{−2(a−1)/3}
     =−2(a−1)3/2/{3(3a)1/2}
     =−1
  ∴2(a−1)3/2=3(3a)1/2
  ∴4(a−1)=27a
  ∴4a−12a−15a−4=0
  ∴(a−4)(4a+4a+1)=0
  ∴(a−4)(2a+1)=0
 a>1から,a=4
  ∴f(x)=4x−3x………(答)

 ちなみに無縁解のa=−1/2は,この問題において,条件−1<α<1,−1<β<1をはずした場合の答である.

NO6「UnderBird」3/16: 18時27分受信
<コメント:とりあえず、3次関数の図形的性質を用いて解きました。(証明は略しましたが・・・)>
で極値をとるとすると、グラフまたは、増減表から で極大、で極小でなくてはならないことがわかる。

すなわち、で ・・・(1)

である。ここで、3次関数の性質[下図参照]

(変曲点に関して点対称であること、および変曲点と極値の関係)から、

     

変曲点が点の中点より原点であること、および、 極小値、条件 より、

    

を解くと、 すなわち、

UnderBird3/17: 10時49分受信
<コメント:この問題を解いていて、妙に引っかかっていた部分をご指摘いただいてすぐにチェビシェフ多項式を思い出しました。
この多項式について完全に理解しているわけではないのですが、添付ファイルNo.2送信させていただきます。
いつも興味ある問題ありがとうございます。これからもがんばってください。>

次のような解答を見つけました。

が極大、極小となるとする。

このとき、は、(重解),を解にもつから

 

同様に、

 

これより、だから、

係数を比較して、

よって、

すなわち、

 

これは、チェビシェフの多項式です。

チェビシェフの多項式「は、の多項式で表すことができる」

すなわち、「に対して、であるような多項式が存在する。」

実際にあらわすと、

性質として、

「最高次の係数が1であるn次多項式は、で、、 
等号が成り立つのは、チェビシェフ多項式の場合に限られる。」 ということに関連しています。
NO7「etudiant」 3/17: 03時22分受信
ペンネームはetudiantです。見直しをしてみたら全然違いましたね。我ながらひいてしまいました。今度は見直しをいたしました。見直しって必要ですね。

(第135回問題の解答) a=4,b=0,c=-3,d=0です。

<水の流れコメント:答えに至る過程を書いていただけるともっとよくなりますよ。>

 

NO8「GoBack   3/17: 14時23分受信
こんにちは。GoBackです。第135回解答を送りします。

解答:f(x)=4x^3-3x

まず,f(x)=ax^3+bx^2+cx+dとするとき,y=f(x)が点A(-b/3a, (2b^3-9abc)/27a^2+d)に関して自己対称図形であることをいう。
 点Aに関して,y=f(x)上の点P(x,y)と対称な点をQ(X,Y)とすると点Aは線分PQの中点であるから
x=-2b/3a-X,y=2(2b^3-9abc)/27a^2+2d-Y。これらをy=f(x)に代入して整理する
とY=aX^3+bX^2+cX+dとなるから,点Qもy=f(X)上にある。
ここでf'(x)=3ax^2+2bx+c=3a(x+b/3a)^2-(b^2-3ac)/3aであるからx=-b/3aは微分係数を最大または最小にする x である。
このとき f(-b/3a)=(2b^3-9abc)/27a^2+d。すなわち点Aもy=f(x)上の点である。
 条件よりy=f(x)は極値をもつからf'(x)=0は異なる2つの実数解x1,x2(x1<x2)をもつ。
このとき-1<x1<-b/3a<x2<1であるから,
条件f(1)=1,f(-1)=-1よりA((1+(-1))/2,(1+(-1))/2)すなわちA(0,0)である。
よってd=0。また再びf(1)=1,f(-1)=-1から,a+b+c+d=1,-a+b-c+d=-1であるからb=0,c=1-a。
よってf(x)=ax^3+(1-a)x。さらにx1,x2は実数であるからa>1でありx2=√(a-1)/3aより条件からf(√(a-1)/3a)=-1。
これより(a-4)(2a+1)^2=0,a>1よりa=4。したがってf(x)=4x^3-3x。これは題意をみたす。 以上です。よろしくお願いします。

GoBack   3/18: 23時38分受信
こんにちは。GoBackです。
2つ目の解答を送らせていただきます。

3次関数の対称性が既知のものとすると, 中央大学杉並高等学校T先生の研究している
性質「4つの平行四辺形」を用いて f(1)=1, f(-1)=-1, 極大値1,極小値-1から
f '(x)=p(x-1/2)(x+1/2)である。
よってf(x)=(p/3)x^3-(p/4)x+q
ただし,対称性からf(0)=0なのでq=0。 またf(1)=1からp=12。 以上より f(x)=4x^3-3x。

NO9「kasama   3/17: 23時12分受信
こんにちは、「kasama」です。 いつも楽しい問題を出題して頂きありがとうございます。
<コメント: 今回は大学入試問題ですね。一見簡単そうに見えますが・・・
与えられた条件を単純に方程式で表して、f(x)の係数を無理矢理に求めようとすると、たぶん試験時間内に正解を得るのは難しいような気がします。
 それで、3次関数は変局点に関して点対称であることを利用して、ほんの少しだけ工夫したのですが、計算が結構厄介でした。解答を作成してから、いろいろ調べてみましたが、3次関数を添付ファイル(第135回参考.gif)のように、合同な長方形に分割するのが最も簡単で早く解ける方法かと思います。「私の一日」に書いてある「UnderBird」さんはこのやり方でしょうか。
 私は大学入試から遠ざかっています。昨日行われた共通テストの数学もまあ1日あれば出来そうな問題ですが、制限時間でやるとなると、相当なテクニックが必要と思います。今回は、皆様の実践的な解法テクニックで勉強させて頂きます。 解答の公開を楽しみにしています。>

3次関数は変局点に関して点対称であることに着目して、次のようにやりました。

@変局点と極値との関係
題意により、極大値f(α)=1・極小値f(β)=-1が存在して(α<β)、f(-1)=-1、f(1)=1なので、
直感的に(下図参照)、変局点(Xm,Ym)は原点と考えられ、
 Xm = (α+β)/2 = 0、Ym = f((α+β)/2) = 0 です(下図参照)。



要は原点に対して点対象ですから、 d = 0 ・・・(1)です。
ついでに、この3次関数は右肩上がりですから a > 0 ・・・(2)です。以降は、x≧0で考えて構いません。

A極値について
f(x)には2つの極値が存在して、それらは、
 f'(x) = 3ax2 + 2bx + c = 0
の解ですが、@で述べた原点に関しての対象性を考えると、その2つの解は符号だけが異なり絶対値が等しくなければなりませんから、
 b = 0 ・・・(3)
でなければ不都合で、そのときのx座標の値βは
 β = √(-c/3a) ・・・(4) です。

Bその他の係数の算出
f(1)=1なので、
 a + c = 1 ⇒ c = 1 - a
(4)式に代入して
 β = √{(a-1)/3a} ・・・(5)
ここで、f(β)=-1なので、
 f(β) = aβ3 + (1-a)β = -1
(5)式を代入して、整理すると、
 a{(a-1)/3a}3/2 + (1-a){(a-1)/3a}1/2 = -1
 ⇒ (a-4)(16a3 - 48a2 + 21a -16)(1 + 2a)2 = 0
となり、有効な値は
 a = 4 ・・・(6)
です。よって、
 c = -3 ・・・(7)
Cまとめ
(1)、(3)、(6)、(7)より求める3次関数は f(x) = 4x3 - 3x です。



NO10「三角定規」 3/28: 14時31分 受信 更新4/3

    <自宅>  mizuryu@aqua.ocn.ne.jp