平成18年11月1日

[流れ星]

     第180回数学的な応募問題解答

      <解答募集期間:10月1日〜10月31日

[半整数四角形の問題]

皆さん、「中尾さん」から頂いた問題にチャレンジください。

<お詫び:半整数四角形の問題でして、赤字一字を追加しました「中尾さん」からのご指摘でした。>

   (訂正 記 10月1日午後5時)

 

<中尾さんからのコメント:最近、教えて!gooで、「ラングレー問題(角度の問題の難問)を補助線なしで解きたい」
   http://oshiete1.goo.ne.jp/kotaeru.php3?q=2393833  を見かけたので、類似の問題を考えてみました。

 

問題

半整角四角形の問題

四角形ABCDにおいて、∠ABD=(5/2)°,∠DBC=(125/2)°,∠ACB=(165/2)°,∠ACD=5°のとき、∠ADBを求めよ。



<中尾さんから頂いた出題のコメント:平成18年10月22日 掲載>

整角四角形の問題で、角度の一部を半整数(整数+1/2)°に拡張してみました。
初等幾何学的に解くのは、かなり難しいと思います。
三角関数を使う方法でも計算の見通しを立てるのが難しいと思いますが、近似値を計算して答えを予想すれば、何とかなるかもしれません。
複素数(円分数)を使うと、円分体Q(ζ_{360})の元を計算するだけで、一般的に解けます。
また、類似の問題を作成する(探す)ことも、比較的簡単にできます。円分数や円分体の面白さが伝わるのではないかと思います。

参考文献として、以下を挙げておきます。

[1]http://ir.nul.nagoya-u.ac.jp/dspace/handle/2237/5211?mode=full
福谷 敏, "数学科 : 辺と対角線のなす角がすべて円の2n等分角になる四角形について 中学図形問題の教材研究:円分多項式を用いた代数的判定法の発見",
名古屋大学教育学部附属中高等学校紀要, 48(2003), p.131-136.
この文献は問題を解いた後で、Google検索して見つけました。
このLangleyの問題に円分数を利用することは、ごく自然なアイデアであり、独創的というほどのものではありません。

Langleyの問題について、初等幾何学的方法で、個別の問題をうまく補助線を引いて鮮やかに解くのも楽しみの1つですが、一般化した問題を一般的(アルゴリズム的)に解ける方法を示すことは、高等数学の威力の1つではないでしょうか?


NO1「uchinyan」10/02 17時52分受信更新11/1

第180回数学的な応募問題
[半整数角四角形の問題]

今回の出題の意図が今一つ分からないのですが、取り敢えず、リンク
http://oshiete1.goo.ne.jp/kotaeru.php3?q=2393833において議論されている、一般的な解を、三角関数で求めておきます。

∠ABD = a, ∠DBC = b, ∠ACB = c, ∠ACD = d として、∠ADB = x を求めてみます。
△ABC に正弦定理を適用して AB/sin(c) = AC/sin(a+b)
△ACD に正弦定理を適用して AC/sin(180-b-c-d+x) = AD/sin(d)
△ABD に正弦定理を適用して AD/sin(a) = AB/sin(x)
これらの式から、
AB/AC = sin(c)/sin(a+b)
AC/AD = sin(b+c+d-x)/sin(d)
AD/AB = sin(a)/sin(x)
ここで、
AB/AC * AC/AD * AD/AB = 1
なので、
sin(c)/sin(a+b) * sin(b+c+d-x)/sin(d) * sin(a)/sin(x) = 1
がいえます。これが、恐らく、リンク先で「チェバの定理の角度版」とか言っているものでしょう。
これから、
sin(a)sin(c)sin(b+c+d-x) = sin(a+b)sin(d)sin(x)
左辺の sin(b+c+d-x) に加法定理を使って、
sin(a)sin(c)(sin(b+c+d)cos(x) - cos(b+c+d)sin(x)) = sin(a+b)sin(d)sin(x)
sin(a)sin(c)sin(b+c+d)cos(x) = (sin(a)sin(c)cos(b+c+d) + sin(a+b)sin(d))sin(x)
sin(x)/cos(x) = tan(x) なので、
tan(x) = sin(a)sin(c)sin(b+c+d)/(sin(a)sin(c)cos(b+c+d) + sin(a+b)sin(d))
つまり、原理的には、arctan を tan の逆関数として、
x = arctan(sin(a)sin(c)sin(b+c+d)/(sin(a)sin(c)cos(b+c+d) + sin(a+b)sin(d)))
で、一般的に求まります。
ただし、もちろん、これが、手計算で計算できる保証はありません。一般にはコンピュータの手を借りることになります。

例えば、十進ベーシックの単純なプログラムで、

OPTION ANGLE DEGREES
DEF x(a,b,c,d) = ATN((SIN(a)*SIN(c)*SIN(b+c+d))/(SIN(a)*SIN(c)*COS(b+c+d)+SIN(a+b)*SIN(d)))
PRINT x(20,60,50,30)
PRINT x(5/2,125/2,165/2,5)
END

などとすればいいでしょう。

ちなみに、∠ABD = (5/2)°, ∠DBC = (125/2)°, ∠ACB = (165/2)°, ∠ACD = 5°のときは、
上記のプログラムの2番目の場合で、出力結果は、

 30
 27.5

なので、答えは、27.5° = (55/2)°になります。

結果からすると、tan(55/2) はよく知られた角度ではないので、三角関数を使い手計算で値を求めるのは難しそうです。
しかし、初等幾何でうまく求まるかどうかは、リンク先の議論の趣旨とは外れますが、検討してみる価値はありそうです。

uchinyan10/03 16時33分受信 更新11/1


(解法2)
まず、
∠ABD = 5/2 度、∠DBC = 125/2 度、∠ACB = 165/2 度、∠ACD = 5 度 から、
∠BAC = 180 - ∠ABD - ∠DBC - ∠ACB = 180 - 5/2 - 125/2 - 165/2 = 65/2 度
∠BDC = 180 - ∠DBC - ∠ACB - ∠ACD = 180 - 125/2 - 165/2 - 5 = 30 度
になります。また、∠ADB = x 度 とすると、0 < x < 180 で、
∠ADC = ∠ADB + ∠BDC = x + 30 度
∠DAC = 180 - ∠ADC - ∠DCA = 180 - (x + 30) - 5 = 145 - x 度
になります。
さて、(解法1)と少し違った三角形に対して、
△ABC において正弦定理を使って、BC/sin(65/2) = AC/sin(65), AC = BC * sin(65)/sin(65/2)
△DBC において正弦定理を使って、BC/sin(30) = DC/sin(125/2), DC = BC * sin(125/2)/sin(30)
△ACD において正弦定理を使って、AC/sin(x+30) = DC/sin(145-x), AC/DC = sin(x+30)/sin(145-x)
がいえます。これらから、BC, AC, DC を消去して、
sin(65)/sin(65/2) * sin(30)/sin(125/2) = sin(x+30)/sin(145-x)
sin(65/2) * sin(125/2) * sin(x+30) = sin(65) * sin(30) * sin(145-x)
ここで、
sin(125/2) = sin(90 - 55/2) = cos(55/2), sin(65) = 2 * sin(65/2) * cos(65/2), sin(30) = 1/2
より、
sin(65/2) * cos(55/2) * sin(x+30) = 2 * sin(65/2) * cos(65/2) * 1/2 * sin(145-x)
cos(55/2) * sin(x+30) = cos(65/2) * sin(145-x)
積を和に変換して
1/2 * {sin(x + 115/2) - sin(- x - 5/2)} = 1/2 * {sin(355/2 - x) - sin(x - 225/2)}
sin(x + 115/2) + sin(x + 5/2) = sin(355/2 - x) + sin(225/2 - x)
ここで、
sin(355/2 - x) = sin(180 - x - 5/2) = sin(x + 5/2)
なので、
sin(x + 115/2) + sin(x + 5/2) = sin(x + 5/2) + sin(225/2 - x)
sin(x + 115/2) = sin(225/2 - x)
0 < x < 180 なので、
57.5 = 115/2 < x + 115/2 < 180 + 57.5 = 237.5
-67.5 = -180 + 225/2 < 225/2 - x < 225/2 = 112.5
がいえて、
x + 115/2 = 225/2 - x
2x = 225/2 - 115/2 = 110/2 = 55
x = 55/2
になります。
つまり、∠ADB = 55/2 度 になります。

(感想)
ちょっと意外でしたが、三角関数の手計算で割と簡単に求まってしまいました。
ラングレーの問題として有名な、∠ABD = 20 度、∠DBC = 60 度、∠ACB = 50 度、∠ACD = 30 度
の方が、三角関数の解法は、難しいような気がします。

なお、初等幾何でできないか、検討していますが、なかなかうまくいきません...(^^;

 

NO2「πP」    10/07 02時06分受信

<水の流れ:正解までに到達していませんでした。勝手ながら、割愛させて頂きました。>

NO3「kasama  10/26 23時45分受信 更新11/1

<コメント:いろいろ考えてみましたが、添付ファイルのように、円分多項式を利用するのが手っ取り最も簡単だと思います。
補助線などを描いて、中学校の知識の範囲内で解くのは、かなり難しいです。三角関数を使うと、∠ACDは、
 tan(∠ACD)=(cos(4π/9)-cos(17π/36))/(1+cos(17π/36)√(3)-sin(4π/9))
を満たす値であることはわかります。数値計算させると27.500・・・゜ですが、論理値を求めるのは難しいですね。もう少し考えてみます>

 問題のコメントに書かれている方針にしたがって、円分多項式を利用した解法で解きます。
下図のような六角形D',D,B',B,C',Cに対して、複素平面の単位円上の点p
1,q1,p2,q2,p3,q3を割り当てます。
すると、異なる3直線p
1q1p2q2p3q3が一点Aで交わる条件は、
 p
1q1(q2+p2-p3-q3)+q2p2(p3+q3-p1-q1)+q3p3(p1+q1-q2-p2)
です(『円分多項式を用いた代数的判定法の発見』参照)。この条件のもとで、∠ABD=5/2゚、∠DBC=125/2゚、∠ACB=165/2゚、∠ACD=5゚のときの∠ADBを求めます。円周を等分して正n角形の適当な頂点を組み合わせて、条件に見合うものを探せば良いのですが、計算が大変なので、プログラムのやらせるのが簡単で良いと思います。例えば、72角形で探すと見つかりまして、∠ADB=55/2゚です。
(14:47) gp > dai180(72)
{22,33,45,70,71},ADB=55/2
(14:49) gp >


【プログラム】
参考までにpari/gpで記述したプログラムを載せておきます。
dai180(n)={
  local(g,n1,n2,n3,n4,n5,ADB);
  g = polcyclo(n,x);
  for(n1=1,n-5,
    for(n2=n1+1,n-4,
      if (angle(n,n2,n) == 165/2,  \\  ACB
        for(n3=n2+1,n-3,
          for(n4=n3+1,n-2,
            if (180-angle(n,n3,n4) == 125/2 && 180-angle(n,n4,n) == 5,  \\  DBC,ACD
              for(n5=n4+1,n-1,
                if (lift(Mod(x^n3*(x^n1+x^n4-x^n5-x^n2)+x^n1*x^n4*(x^n2+x^n5-1-x^n3)+x^n2*x^n5*(x^n3+1-x^n1-x^n4),g)) == 0,
                  if (180-angle(n,n4,n5) == 5/2,  \\  ABD
                    ADB = 180-angle(n,n1,n2);
                    print("{",n1,",",n2,",",n3,",",n4,",",n5,"},ADB=",ADB)
                  );
                );
              );
            );
          );
        );
      );
    );
  );
}
angle(n,a,b)={ 180*(a-b+n)/n; }

 

NO4「八木」   10/31 11時38分受信 更新11/1

 

 

 

 

 

 

 

 

 


a,b,c,dが任意の場合の一般解は

 

x=arctan[sin(b+c+d)/{sin(d)sin(a+b)/sin(c)sin(a)+cos(b+c+d)}]

 a,b,c,dに所定の数値を入れるとx=27.5度になります。

式の整理によりx=27.5度を得ることもできますがそれは省略させていただきます。

 

<水の流れ:素晴らしい結果ですね。驚きました。>

 

NO6「中尾さん」最初に頂いた解答   9/24 18時47分受信 更新11/1

[略解]
円分数ζをζ=e^(2πi/360)とする。
ζの最小多項式は、x^96 + x^84 - x^60 - x^48 - x^36 + x^12 + 1である。
また、arg(ζ)=1°である。

点A,B,C,Dを複素平面上に、A(α),B(0),C(1),D(β)のように配置する。
このとき、簡単な計算により、

     α = (1-ζ^(-165))/(1-ζ^(-295))
        =ζ^93 + ζ^91 + ζ^90 + ζ^88 + ζ^85 + ζ^79 - ζ^75 - ζ^70 - ζ^69 -
ζ^64 - ζ^57 - ζ^52 + ζ^50 - ζ^43 - ζ^40 - ζ^35 - ζ^31 - ζ^30 + ζ^21 +
ζ^20 + ζ^16 + ζ^15 + ζ^9 + ζ^7 + ζ^4,
     β = (1-ζ^(-125))/(1-ζ^(-300))
        =ζ^91 + ζ^79 + ζ^50 - ζ^43 - ζ^31 + ζ^7
となる。

このとき、ω=(β-0)/(β-α), γ=ω/ω~ (ω~はωの共役複素数)とすると、
arg(ω)=∠ADB, arg(γ)=2*arg(ω)である。

さらに、
ω=(β-0)/(β-α)
  =(ζ^91 + ζ^79 + ζ^50 - ζ^43 - ζ^31 + ζ^7)/((ζ^91 + ζ^79 + ζ^50 - ζ^43
- ζ^31 + ζ^7)-(ζ^93 + ζ^91 + ζ^90 + ζ^88 + ζ^85 + ζ^79 - ζ^75 - ζ^70 -
ζ^69 - ζ^64 - ζ^57 - ζ^52 + ζ^50 - ζ^43 - ζ^40 - ζ^35 - ζ^31 - ζ^30 +
ζ^21 + ζ^20 + ζ^16 + ζ^15 + ζ^9 + ζ^7 + ζ^4))
  =ζ^55 + ζ^50 + ζ^45 + ζ^40 + ζ^35 + ζ^30 + ζ^25 + ζ^20 + ζ^15 + ζ^10 +
ζ^5 + 1

γ=ω/ω~
 =(ζ^55 + ζ^50 + ζ^45 + ζ^40 + ζ^35 + ζ^30 + ζ^25 + ζ^20 + ζ^15 + ζ^10
+ ζ^5 + 1)/(ζ^(-55) + ζ^(-50) + ζ^(-45) + ζ^(-40) + ζ^(-35) + ζ^(-30) +
ζ^(-25) + ζ^(-20) + ζ^(-15) + ζ^(-10) + ζ^(-5) + 1)
  =ζ^55

となる。

したがって、
  ∠ADB = arg(ω) = arg(γ)/2 = 55*arg(ζ)/2 = (55/2)°
である。


皆さん、答えがわかったら、一部でも構いませんから、解答とペンネームを添えて、メールで送ってください。待っています。