平成19年6月10日

[流れ星]

     第191回数学的な応募問題解答

      <解答募集期間:5月20日〜6月10日

[連勝連敗の平均]

皆さん、今年のゴールデンウィーク中にプロ野球セリーグは9連戦が行われました。このときチームによって連勝や連敗が多く起きました。巨人の場合は××○○○×○○×、横浜は○○○雨○○××○、中日は×××××○○○×、阪神は×××雨××××雨、広島は○○○×○○○○雨、ヤクルトは○○×○××××○でした。ここで、連勝連敗という連続数の平均を考えました。例えば、巨人の場合は(2+3+1+2+1)÷5=1.8 です。

ここで次のような問題を作成しました。皆さん!考えてください。

 

あるチームがn(n≧2)試合野球を行ったとき、この連続数の平均の期待値を求めてください。
ただし、勝敗の起こる確率は55分とし、引き分けはないものとします。

問題1:n=2、3、4のときの期待値を求めよ。

問題2:一般のときの期待値をnで表せ。

 

NO1uchinyan05/20 1606分受信 更新6/10

<コメント:第191回数学的な応募問題への解答 を送ります。
きれいな結果になるのですね。>

第191回数学的な応募問題
[連勝連敗の平均]

問題1
勝ちを,負けを×,で,表します。
連続数の平均の定義,期待値の定義に従って,地道に計算します。

(1) n = 2
の場合
○○
 連続数の平均 2/1 = 2,確率 1/4
○×
 連続数の平均 (1 + 1)/2 = 1,確率 1/4
×○
 連続数の平均 (1 + 1)/2 = 1,確率 1/4
××
 連続数の平均 2/1 = 2,確率 1/4
したがって,
期待値
= 2 * 1/4 + 1 * 1/4 + 1 * 1/4 + 2 * 1/4
= 6/4
= 3/2

(2) n = 3
の場合
○○○
 連続数の平均 3/1 = 3,確率 1/8
○○×
 連続数の平均 (2 + 1)/2 = 3/2,確率 1/8
×○○
 連続数の平均 (1 + 2)/2 = 3/2,確率 1/8
○×○
 連続数の平均 (1 + 1 + 1)/3 = 1,確率 1/8
××○
 連続数の平均 (2 + 1)/2 = 3/2,確率 1/8
○××
 連続数の平均 (1 + 2)/2 = 3/2,確率 1/8
×○×
 連続数の平均 (1 + 1 + 1)/3 = 1,確率 1/8
×××
 連続数の平均 3/1 = 3,確率 1/8
したがって,
期待値
= 3 * 1/8
+ 3/2 * 1/8 + 3/2 * 1/8 + 1 * 1/8
+ 3/2 * 1/8 + 3/2 * 1/8 + 1 * 1/8
+ 3 * 1/8
= 14/8
= 7/4

(3) n = 4
の場合
○○○○
 連続数の平均 4/1 = 4,確率 1/16
○○○×
 連続数の平均 (3 + 1)/2 = 2,確率 1/16
×○○○
 連続数の平均 (1 + 3)/2 = 2,確率 1/16
○○×○
 連続数の平均 (2 + 1 + 1)/3 = 4/3,確率 1/16
○×○○
 連続数の平均 (1 + 1 + 2)/3 = 4/3,確率 1/16
○○××
 連続数の平均 (2 + 2)/2 = 2,確率 1/16
××○○
 連続数の平均 (2 + 2)/2 = 2,確率 1/16
○××○
 連続数の平均 (1 + 2 + 1)/3 = 4/3,確率 1/16
×○○×
 連続数の平均 (1 + 2 + 1)/3 = 4/3,確率 1/16
○×○×
 連続数の平均 (1 + 1 + 1 + 1)/4 = 1,確率 1/16
×○×○
 連続数の平均 (1 + 1 + 1 + 1)/4 = 1,確率 1/16
○×××
 連続数の平均 (1 + 3)/2 = 2,確率 1/16
×××○
 連続数の平均 (3 + 1)/2 = 2,確率 1/16
××○×
 連続数の平均 (2 + 1 + 1)/3 = 4/3,確率 1/16
×○××
 連続数の平均 (1 + 1 + 2)/3 = 4/3,確率 1/16
××××
 連続数の平均 4/1 = 4,確率 1/16
したがって,
期待値
= 4 * 1/16
+ 2 * 1/16 + 2 * 1/16 + 4/3 * 1/16 + 4/3 * 1/16
+ 2 * 1/16 + 2 * 1/16 + 4/3 * 1/16 + 4/3 * 1/16 + 1 * 1/16 + 1 * 1/16
+ 2 * 1/16 + 2 * 1/16 + 4/3 * 1/16 + 4/3 * 1/16
+ 4 * 1/16
= 30/16
= 15/8

問題2
問題1:からすると,n の場合の期待値は,(2^n - 1)/2^(n-1) になりそうです。
実際,そうなることを以下で示します。

まず確率は,明らかにすべての勝敗パターンに対して 1/2^n です。
次に,それぞれの連続数の平均を考えます。
分子は,勝ち負けの試合数の合計ですが,これは結局,総試合数になるので,n です。
分母は,連続する勝ち負けの個数です。これは,n 試合を,幾つの組に分けるかに対応します。
これを k とします。すると,ぞれぞれの連続数の平均は,n/k です。
これに確率を掛けて足し上げたものが期待値です。
期待値 = 納分け方の和] (n/k * 1/2^n) = 1/2^n * (納分け方の和] n/k)
ここで,について少し詳しく見てみます。
k
は,n 試合を連続する勝ち負けの組に分けたときの組の数でした。
これは,○×の図式で考えると,n-1 個の試合の隙間に仕切り線を k-1 個入れて交互に連続する
勝ち負けを並べる,と考えられます。
そこで,分け方は,(n-1)C(k-1) 通りあります。
ただし,分けただけでは,(最初に)勝ちか負けかは決めていないので,これを決めるために 2 倍します。
は,これを,k = 0,全勝又は全敗,から k = n-1,一試合ごとに交互に勝ち負けする,まで,
足し上げればいいことになります。つまり,
期待値
= 1/2^n * (納
分け方の和] n/k)
= 1/2^n * 納k=0,n-1] n/k * (n-1)C(k-1) * 2
= 1/2^(n-1) * 納k=0,n-1] n/k * (n-1)!/(n-k)!(k-1)!
= 1/2^(n-1) * 納k=0,n-1] n/(n-k)!k!
= 1/2^(n-1) * 納k=0,n-1] nCk
ここで,二項定理より,
納k=0,n] nCk = 納k=0,n] nCk * 1^(n-k) : 1^k = (1 + 1)^n = 2^n
なので,
納k=0,n-1] nCk = 2^n - 1
したがって,
期待値 = 1/2^(n-1) * (2^n - 1) = (2^n - 1)/2^(n-1)
になります。

(
感想)
最初難しそうに思ったのですが,問題1:を解いている間にいろいろと見えてきました。
やはり,手を動かすことは大切ですね。

 

 

NO2Toru    05/21 1612分受信 更新6/10

問題1 n=2  ○○--2 ○×--1 ×○--1 ××--1 でそれぞれの確率1/4
    2x1/4+1x1/4+1x1/4+2x1/4= 1.5
        n=3   ○○○---3
 ○○×---(2+1)/2=3/2   ○×○--1 ○××--3/2
     ×を入れ替えたものとペアに考えれば
       3x1/4+3/2x1/4+1x1/4+3/2x1/4=7/4=1.75
       n=4   ○○○○---4 ○○○×--2 ○○×○---4/3
 ○×○○--4/3
             ○○××---2  ○×○×--1 ○××○--4/3 
 ○×××--2
     ×を入れ替えたものとペアにして
       4x1/8+2x1/8+4/3x1/8+4/3x1/8+2x1/8+1x1/8+4/3x1/8+2x1/8=15/8=1.875
問題2

 
連続数の平均の分子はn、分母はnをいくつに区切ったかの数字になっている、n
k個に区切る場合の数は、n-1 C k-1通り
×を入れ替えたものをペアとしてしまえば?個に区切られる確率は 
n-1Ck-1
2^(n-1) でこの時の連続数の平均はn/k  よって期待値は
Σ(k=1
n)  (n/k) n-1Ck-12^(n-1) = 1/2^(n-1) Σ(k=1n)nCk= 1/2^(n-1)
(2^n-1) =2-1/2^(n-1)


n
が大きくなれば2にどんどん近づくのですね。なかなか面白い結果でした。
 
ペンネーム Toru

NO3「ぐーてん」05/22 1155分受信 更新6/10

<コメント:いつも拝見させていただいております。
今回も、得意の|方式;でがんばってみました。
答えの数式のシンプルさをみると、もっとエレガントな解法がある気がしてなりませんが。>

 

 (1) のとき,勝敗パターンは(勝勝),(勝負),(負勝),(負負)の4通り

それぞれの連続数の平均値は,(2, 1, 1, 2

期待値は,

*のとき,勝敗パターンは(勝勝勝),(勝勝負),(勝負勝),(勝負負),(負勝勝),(負勝負)
,(負負勝),(負負負)の8通り

それぞれの連続数の平均値は,

期待値は,

*のとき,勝敗パターンは(勝勝勝勝),(勝勝勝負),(勝勝負勝),(勝勝負負),(勝負勝勝),
(勝負勝負),(勝負負勝),(勝負負負),(負勝勝勝),(負勝勝負),(負勝負勝),(負勝負負),
(負負勝勝),(負負勝負),(負負負勝),(負負負負)の16通り

それぞれの連続数の平均値は,

期待値は,

 

(2) n試合を行って,勝敗が入れ替わった回数を回とおくと,連勝,連敗のパターンによらず,
題意の「連続数の平均値」は,と計算される

n連勝またはn連敗した場合は,連勝・連敗を1度もしなかった場合(勝負勝負‥勝負勝のよ
うな場合)はとなるので,kは任意のn以下の自然数をとる

n試合の勝敗のパターンは通り

このうち勝敗が回入れ替わるパターンの数をとおき,これをn個の「○」と個の
「|」並び方の数で考える

例:○○|○○○|○|○○|○;勝勝負負負勝負負勝,負負勝勝勝負勝勝負

例のように,1通りの○と|の並び方は,常に2通りの勝敗パターンを意味する

また,「|」と「|」の間には1個以上の「○」が入り,最初と最後には「○」を並べる

従って,最初の「○」は固定として無視し,残りを個の「|○」と個の「○」の並び方と考えて,



 

 

 

 

従って求める期待値は,

 

 

 

 

 

 

 

 

NO4kashiwagi05/25 0953分受信 更新6/10

<コメント:お世話になります。直ぐに先生の問題を拝見し、面白いし、非常にユニークな
平均の考えを理解しようと早速取り組みました。意外とすらすらはかどり・・・・・。本当
は 帰納法で証明せねばいけないのでしょうが・・・・。 この平均の考えを先生はどのよう
なところから思いついたのでしょうか・・・・。 >

1.題意から一覧表を作成すると、

勝敗

平均

確率

期待値

2

 

 

2

1/4

×

 

 

1

×

 

 

1

×

×

 

 

2

3

 

3

1/8

×

 

3/2

×

 

1

×

×

 

3/2

×

 

3/2

×

×

 

1

×

×

 

3/2

×

×

×

 

3

4

4

1/16

×

2

×

4/3

×

×

2

×

4/3

×

×

1

×

×

4/3

×

×

×

2

×

2

×

×

4/3

×

×

1

×

×

×

4/3

×

×

2

×

×

×

4/3

×

×

×

2

×

×

×

×

4

2. 上記結果より、 が求めるものである。 

 

No5「新俳人澄朝」5/25 1313分受信 更新6/10

新俳人澄朝のコメント:いつも楽しい問題を有り難うございます。
 一般的 n についての処理に少し戸惑いましたが
 何とかという感じです。私の解答のセット数に関わ らず連勝連敗の合計数は常に
n に気付いたときは久しぶりに数学問題で感動しました。また、次回も楽しみにしています。>

 

 

 

NO6kasama  05/28 1441分受信 更新6/10

【問題1】対戦内容を整理して表にすると、以下のようになります。

n=2

n=3

n=4

対戦

平均

2

×

1

×

1

×

×

2

合計

6

期待値 3/2

対戦

平均

3

×

3/2

×

1

×

×

3/2

×

3/2

×

×

1

×

×

3/2

×

×

×

3

合計

14

期待値 7/4

対戦

平均

4

×

2

×

4/3

×

×

2

×

4/3

×

×

1

×

×

4/3

×

×

×

2

×

2

×

×

4/3

×

×

1

×

×

×

4/3

×

×

2

×

×

×

4/3

×

×

×

2

×

×

×

×

4

合計

30

期待値 15/8

【問題2】n試合の中での連勝連敗は、例えばn個のボールの間を板で隔てて、いくつかに分割することと同じと考えられます。

ボール

・・・

連勝連敗

×

×

×

・・・

×

分割数で場合分けして各平均値を求めると、以下のようになります。

分割数

場合数

平均値

1

n-1C0

n-1C0n/1

2

n-1C1

n-1C1n/2

3

n-1C2

n-1C2n/3

n

n-1Cn-1

n-1Cn-1n/n

次に、上表の平均値の和を計算すると、
 平均値の和=
n-1C0n/1+n-1C1n/2+n-1C2n/3++n-1Cn-1n/n
 =
nC1+nC2+nC3++nCn=(nC0+nC1+nC2+nC3++nCn)-nC0=(2n-1)
となります。ここで、連勝と連敗は入れ替えてもよいので、平均値の和は上記の2倍あることに注意すると、
 期待値=2×平均値の和÷場合数=2(2
n-1)/2n=(2n-1)/2n-1
となります。

<「kasama」のコメント:いつも問題作成お疲れ様です。
先日からプロ野球の交流戦が始まりましたね。プロ野球再編問題に端を発したこの戦い方も今年で早3年
目になるそうですね。GW時点では巨人が強かったですが、交流戦が終わる頃にはどうなっているのでし
ょう。さて、今回は連勝・連敗の期待値についてですね。大変興味深いと思います。>

 

 

NO7「三角定規」06/04 2328分受信 更新6/10

   191 解答(三角定規)

 

1.(1) n2 のとき

   ○○,×× の場合,平均連続数=2/12

  ○×,×○ の場合,平均連続数=(11)/21

 

 

 (2) n3 のとき

   <1> 勝敗パタンが変わらない場合(○○○,×××),平均連続数=3/13

   <2> 勝敗パタンが1回だけ変わる場合(○○×,○××,×○○,××○)

      平均連続数=(21)/23/2

  <3> 勝敗パタンが2回変わる場合(○×○,×○×),平均連続数=(111)/31

 

 

 

 (3) n4 のとき

   <1> 勝敗パタンが変わらない場合(○○○○,××××),平均連続数=4/14

   <2> 勝敗パタンが1回だけ変わる場合,平均連続数=4/22

    (○○○×,○○××,○×××,×××○,××○○,×○○○)

  <3> 勝敗パタンが2回変わる場合,平均連続数=4/3

        (○○×○,○×○○,○××○,××○×,×○××,×○○×)

   <4> 勝敗パタンが3回変わる場合(○×○×,×○×○),平均連続数=4/41

       

 

 

 

 

 

2.1(1)(2)(3)の結果より

 勝敗パタンがk回(k01,…,n1)変わる場合,平均連続数=n /(k1) で,勝敗のパタンは 2n-1Ck 通りあるから,

 

 

 

 

<「三角定規さんのコメント:結局解答が出来てみると,平均連続数の期待値はほぼ で,
これは,「2連勝・2連敗はわりと頻繁に起こる」 われわれの日常の経験とよく合致するのですね。
でも,「頻繁」 とまではいえなくとも,『4連勝』,『3連敗』,…,って結構起こっていますよね>