平成23年6月12日

[流れ星]

     第258回数学的な応募問題解答

      <解答募集期間:515日〜612

[束]

「大学への数学」のショートプログラムを読んでいたら面白い問題がありました。

紹介します。

問題1:二次の係数がそれぞれ2、−1の2次関数のグラフを下図のようにそれぞれ

y=f(x)、y=g(x)とする。図でCDEはy軸に平行な線分とする

とき、CD:DE比を求めよ。

 

 

問題2:下図で、y=2x・・・@ y=−x+4x−5・・・Aと直線x=kの交点を

P,Qとする。Pにおける@の接線とQにおけるAの接線の交点をRとするとき、

Rの軌跡の方程式を求めよ。ただし、軌跡の限界は求めなくて良い。

   

 

NO1「uchinyan  05/15 1629分受信

uchinyan  05/16 1355分受信 更新6/12

 

少し一般的に解いておきましょう。

 

問題1

題意がいまいちあいまいですが,図の状況からして,

y = f(x) y = g(x) が,AB という二つの交点をもつ場合を考えることにします。

このとき,交点では f(x) = g(x) ですが,これは二次方程式で二つ実解αβをもつことになり,

交点は,A(α,f(α))B(β,f(β)),ただし,f(α) = g(α)f(β) = g(β),です。

すると,f(x)g(x) の二次の係数を a-bab は正の実数,として,

AB の式は,f(x) g(x) から作られる次の式になります。

y = (b * f(x) + a * g(x))/(a + b)

実際,この式は二次の項がキャンセルするので一次式で,

x = α のとき,y = (b * f(α) + a * g(α))/(a + b) = ((b + a) * f(α))/(a + b) = f(α)

x = β のとき,y = (b * f(β) + a * g(β))/(a + b) = ((b + a) * f(β))/(a + b) = f(β)

となり,確かに,AB を通ります。

これより,α < x = k < β として,g(k) > f(k) なので,

C(k,g(k))D(k,(b * f(k) + a * g(k))/(a + b))E(k,f(k))

CD = g(k) - (b * f(k) + a * g(k))/(a + b) = (g(k) - f(k)) * b/(a + b)

DE = (b * f(k) + a * g(k))/(a + b) - f(k) = (g(k) - f(k)) * a/(a + b)

CDDE = ((g(k) - f(k)) * b/(a + b))((g(k) - f(k)) * a/(a + b)) = ba

になります。つまり,D CE ba に内分する点です。

この問題では,a = 2b = 1 なので,CDDE = 12 ですね。

 

(考察1)

問題1:において,b < 0 でも,交点が二つある場合には b ≠ -a なので,AB の式は同じです。

そこで,やはり,C(k,g(k))D(k,(b * f(k) + a * g(k))/(a + b))E(k,f(k)) とおけます。

しかし,a > |b| ならば,上から DCE になり,α < x = k < β として,g(k) > f(k) で,

CD = (b * f(k) + a * g(k))/(a + b) - g(k) = (g(k) - f(k)) * (-b)/(a + b)

DE = (b * f(k) + a * g(k))/(a + b) - f(k) = (g(k) - f(k)) * a/(a + b)

CDDE = ((g(k) - f(k)) * (-b)/(a + b))((g(k) - f(k)) * a/(a + b)) = (-b)a

になります。

これは,D CE (-b)a に外分する点になっていることを意味しています。

同様なことは,0 < a < |b| a < 0 の場合にもいえます。

 

問題2

y = f(x) = 2x^2y = g(x) = - x^2 + 4x - 5 とします。

P(k,f(k)) における接線の式は,y = f'(k) * x + (f(k) - k * f'(k))

Q(k,g(k)) における接線の式は,y = g'(k) * x + (g(k) - k * g'(k))

そこで,交点 R(x,y) は,

f'(k) = g'(k) のときは平行になって交点はないので,f'(k) ≠ g'(k) の範囲で,

f'(k) * x + (f(k) - k * f'(k)) = g'(k) * x + (g(k) - k * g'(k))

x = k - (f(k) - g(k))/(f'(k) - g'(k))

y = (f'(k)g(k) - f(k)g'(k))/(f'(k) - g'(k))

 

具体的には,k ≠ 2/3 で,

x = k - (3k^2 - 4k + 5)/(6k - 4) = (3k^2 - 5)/2(3k - 2)

y = ((- 4k^3 + 16k^2 - 20k) - (- 4k^3 + 8k^2))/(6k - 4) = (4k^2 - 10k)/(3k - 2)

これらから k を消去すればいいです。

2(3k - 2)x = 3k^2 - 53k^2 - 6xk + (4x - 5) = 0

(3k - 2)y = 4k^2 - 10k4k^2 - (3y + 10)k + 2y = 0

そこで,

(24x - 9y - 30)k - (16x - 6y - 20) = 0

(8x - 3y - 10)(3k - 2) = 0

ここで,k ≠ 2/3 だったので,

8x - 3y - 10 = 0

になります。つまり,これが R(x,y) の軌跡の方程式になります。

これは,元の二つの二次関数の二次の項を消去した式になっています!

 

なお,k は実数なので,xy の式を k の二次方程式

3k^2 - 6xk + (4x - 5) = 0

4k^2 - (3y + 10)k + 2y = 0

と見たとき,それぞれの判別式が正又は 0 が必要ですが,

9x^2 - 3(4x - 5) = (3x - 2)^2 + 11,これは常に正

(3y + 10)^2 - 32y = 9y^2 + 28y + 100 = 9(y + 14/9)^2 + 704/9,これは常に正

なので,条件はつかないと思われます。

(k -> 2/3 R は無限の彼方の点になります。)

 

(考察2)

問題2:を一般的に考えてみます。

 

一般には,y = f(x) = a(x - p)^2 + qa 0 でない実数,pq は実数,と書ける場合,

頂点 (p,q) が原点 (0,0) となるように座標軸を平行移動すれば,

常に,二つの二次関数は,ab 0 でない実数,cd を実数,として,

y = f(x) = ax^2y = g(x) = bx^2 + cx + d

と書けます。図形的な性質は座標軸の平行移動で変化しないので,この場合を考えれば十分です。

 

さて,交点が存在するためには,f'(x) g'(x) が等しくなってはいけないので,

(1) a = b かつ c ≠ 0

(2) a ≠ b かつ k ≠ c/2(a - b)

です。ただ,これらはまとめて議論ができて,

x = ((a - b)k^2 + d)/(2(a - b)k - c)

y = (ack^2 + 2adk)/(2(a - b)k - c)

(2(a - b)k - c)x = (a - b)k^2 + d

(2(a - b)k - c)y = ack^2 + 2adk

(2(a - b)k - c)(acx - (a - b)y) = acd - 2ad(a - b)k = - ad(2(a - b)k - c)

(2(a - b)k - c)(acx - (a - b)y + ad) = 0

(1)では c ≠ 0(2)では k ≠ c/2(a - b),より,R(x,y) の軌跡の方程式は,

acx - (a - b)y + ad = 0

という直線になります。これも,二つの二次関数から二次の項を消去した式になっています!

このことは,座標軸の平行移動を元に戻しても,直線は直線で,二次の項も変わらないので,受け継がれ,

求める軌跡は,二つの二次関数から二次の項を消去した直線の式になります!

(もちろん,式の係数は変わるので,図の位置関係は同じでも,見た目は別の直線になります。)

 

次に存在範囲ですが...

 

(1) a = b かつ c ≠ 0

x = - d/c

y = - (ack^2 + 2adk)/c = - a(k + d/c)^2 + a(d/c)^2

軌跡の直線は x = - d/c ですが,

a > 0 なら y <= a(d/c)^2a < 0 なら y >= a(d/c)^2 の範囲になります。

(- d/c, a(d/c)^2) は二つの二次関数,放物線,の交点,この場合は交点は一つ,なので,

軌跡は,交点を通り対称軸に平行な直線で,交点を含み放物線の凸より外側の部分,

ということになります。

(2) a ≠ b かつ k ≠ c/2(a - b)

a ≠ b なので,xy の式を k の二次方程式

(a - b)k^2 - 2(a - b)xk + (cx + d) = 0

ack^2 - 2((a - b)y - ad)k + cy = 0

と見ることができ,k は実数なので,それぞれの判別式が正又は 0 が必要で,

(a - b)^2 * x^2 - (a - b)(cx + d) >= 0((a - b)y - ad)^2 - (ac)(cy) >= 0

となります。つまり,

(a - b) * ((a - b)x^2 - cx - d) >= 0

及び acx - (a - b)y + ad = 0 の下で,

(a - b)^2 * y^2 - a(2(a - b)d + c^2)y + (ad)^2 >= 0

を解くことになります。y の式は,y = a(cx + d)/(a - b) なので,

(a(cx + d))^2 - a(2ad(cx + d) + ac^2(cx + d)/(a - b)) + (ad)^2 >= 0

(cx + d)^2 - (2d(cx + d) + c^2(cx + d)/(a - b)) + d^2 >= 0

c^2/(a - b) * ((a - b)x^2 - cx - d) >= 0

c^2 * (a - b) * ((a - b)x^2 - cx - d) >= 0

これは,c = 0 では常に成立し,c ≠ 0 では c^2 > 0 なので,先ほどの x の式に一致します。

そこで,先ほどの x の式

(a - b) * ((a - b)x^2 - cx - d) >= 0

だけを解けばいいことになります。

(2-1) a > b の場合

(a - b)x^2 - cx - d >= 0

この式の左辺は,ax^2 - (bx^2 + cx + d) と変形でき,

= 0 とおいたときの x は,二つの二次関数の共有点の x 座標になっています。

また,x^2 の係数 a - b > 0 に注意します。

(2-1-1) c^2 < 4(a - b)d の場合,二つの二次関数が共有点をもたない場合

x は,すべての値を取れます。

(2-1-2) c^2 >= 4(a - b)d の場合,二つの二次関数が共有点をもつ場合

x <= (c - √(c^2 - 4(a - b)d)/2(a - b)(c + √(c^2 - 4(a - b)d)/2(a - b) <= x

これは,二つの二次関数,放物線,の両方の凸より外側の領域,と解釈できます。

なお,二つの二次関数が接する場合には,x はすべての値を取れます。

(2-2) a < b の場合

(a - b)x^2 - cx - d <= 0

この式の左辺は,ax^2 - (bx^2 + cx + d) と変形でき,

= 0 とおいたときの x は,二つの二次関数の共有点の x 座標になっています。

また,x^2 の係数 a - b < 0 に注意します。

(2-2-1) c^2 < 4(a - b)d の場合,二つの二次関数が共有点をもたない場合

x は,すべての値を取れます。

(2-2-2) c^2 >= 4(a - b)d の場合,二つの二次関数が共有点をもつ場合

x <= (c - √(c^2 - 4(a - b)d)/2(a - b)(c + √(c^2 - 4(a - b)d)/2(a - b) <= x

これも,二つの二次関数,放物線,両方の凸より外側の領域,と解釈できます。

なお,二つの二次関数が接する場合には,x はすべての値を取れます。

以上ですべてです。

 

これらのことのうち,図形的に解釈したものは座標軸の平行移動frも変わりません。

そこで,まとめると,

R(x,y) の軌跡は,二つの二次関数から二次の項を消去した式で表される直線で,

二つの二次関数,放物線,両方の凸より外側の領域の部分,ということになります。

つまり,この直線のうち,

・二つの二次関数が共有点をもつ場合,

・・交点が二つのとき,その間を除いた部分

・・接するとき,すべての領域の部分

・・二つの二次関数の二次の項の係数が等しく交点が一つあるとき,

・・・二次の項 > 0 ならば,交点より下の部分

・・・二次の項 < 0 ならば,交点より上の部分

・二つの二次関数が共有点をもたない場合,すべての領域の部分

となるようです。

 

交点が二つある場合には,問題1:で見たように,

二つの二次関数から二次の項を消去した式は,その二つの交点を通る直線なので,

交点を結んだ直線のうち二つの放物線の外側,ともいえますね。

 

(感想)

これは,どちらも興味深い問題でした。

特に,問題2:で,二つの二次関数に交点が二つある場合に,

二つの二次関数から二次の項を消去した式がその二つの交点を通る直線になることは知っていましたが,

接線の交点の軌跡にもそれが現れるのは知りませんでした。

勉強になりました。

 

NO2「MVH       06/10 1239分受信 更新6/12

 

 

皆さん、答えがわかったら、一部でも構いませんから、解答とペンネームを添えて、
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