平成12年3月23日

<美しい数学の話>

第19話 「第2種スターリング数S(n,k)」NO2

  第46回の応募問題の「無限級数の和」の中にでてくる「第2種スターリング数」について、知っていることを

第18話美しい数学の話「第2種スターリング数」NO1から引き続き、今日は、積率母関数(指数型母関数)の話をします。

NO5.積率母関数の定義(指数型母関数) (3月13日記入) 

皆さん!数列{a,a,a,a ・・・,an ,・・・}に対して、次の関数G(x)をこの数列の指数型母関数と呼ぶ。

(x)=a/0!+(a/1!) x+(a/2!) x+(a/3!) x+・・・+(a/n!) x+・・・  

 例えば、数列{1,1,1, ・・・,1 ,・・・}の指数型母関数は、

(x)=1/0!+(1/1!) x+(1/2!) x+(1/3!) x+・・・+(1/n!) x+・・・=e  

すなわち、e の無限級数展開です。

 また、有限数列{ ・・・,k ,・・・,}の指数型母関数は

(x)=(1+x) であることを示そう。 ただし、k は順列の記号である。

 この場合の指数型母関数は、定義から

(x)=/0!+(/1!) x+(/2!) x+・・・+(k /k!) x+・・・+(/n!) x

   =CC x+C+・・・+Ck +・・・+C    である。

よって、(1+x)CC x+C+・・・+Ck +・・・+C   これは、2項定理のことである。

NO6.積率母関数の演算(指数型母関数) (3月14日記入)

  通常の母関数の場合と同様に、指数型母関数も和や積が意味を持ちます。

では、指数型母関数の和や積を行なった結果、どのような形の指数型母関数になるか調べます。

 まず、数列{a,a,a,a ・・・,ak ,・・・}および数列{b,b,b,b ・・・,bk ,・・・}

の指数型母関数をそれぞA(x),B(x)とすると、次のような関係式になります。

(x)=a/0!+(a/1!) x+(a/2!) x+(a/3!) x+・・・+(a/k!) x+・・・  

(x)=b/0!+(b/1!) x+(b/2!) x+(b/3!) x+・・・+(b/k!) x+・・・  

 このとき、A(x)+B(x)は次のようになる。

(x)+B(x)=(a+ ) /0!+{(a1+ 1) /1!}x+{(a2+ 2) /2!}x+・・・+{(a+bk) /k!} x+・・・ 

したがって、指数型母関数の和A(x)+B(x)は

数列{a+ ,a1+ 1,a2+ 2 ・・・,a+bk ,・・・}の指数型母関数に等しくなる。

 次に、指数型母関数の積A(x)・B(x)について考える。

積A(x)・B(x)=(a/0!・b/0!)+(a1/1!・b/0!+a/0!・b/1!)x

+(a2/2!・b/0!+a1/1!・b/1!+a/0!・b/2!)x+・・・

+{煤ij=0・・・k)a/j!・bk−j/(k―j)!}xk+・・・

=1/0!(a)+1/1!{1!/1!0!(a1)+1!/0!1! (a01) }x

/2!{2!/2!0!(a2)+2!/1!1! (a11)+2!/0!2!(a02) }x+・・・

1/k![煤ij=0・・・k)k!/{j!・(k―j)!}× a・bk−j]xk+・・・

/0!(C)+1/1!(C1)+C (a1) }x

/2!{C(a2)+C (a11)+C(a02) }x+・・・

1/k!{煤ij=0・・・k)C・bk−j}xk+・・・

したがって、指数型母関数の積A(x)・B(x)は、数列

(C),C1C1C2C11C02,・・・

,煤ij=0・・・k)C・bk−j,・・・)

の指数型母関数に等しくなる。

NO7.積率母関数と組み合わせの意味(指数型母関数) (3月22日記入)

ここで、異なるn個のものから、重複を許さない形で順列を作る作り方を表す指数型母関数は、

(1+x)CC x+C+・・・+Ck +・・・+C   

   /0!+(/1!) x+(/2!) x+・・・+(k /k!) x+・・・+(/n!) x

だから、この式の展開式の  /r!の項の係数は、r となる。

 次に、このことを重複順列の場合へと拡張する。まず最初に、1種類の物しかなくその物をr個まで取ってよいとすると、

それによって作られる順列を表す指数型母関数は

1+x/1!+x/2!+x/3!+・・・+x/r!  となる。

なぜなら、このような条件を満たす長さkの順列は1通りあるからである。(0≦k≦r)

 したがって、1種類の物しかなくその物をいくつ取ってもよい場合には、それによって作られる順列の数を表す指数型母関数は

1+x/1!+x/2!+x/3!+・・・+x/r!+・・・=e  となる。

 よって、異なるn個の物から重複を許して作られる順列の数を表す指数型母関数は、この式のn乗で表すことができて、

(1+x/1!+x/2!+x/3!+・・・+x/r!+・・・)=(e 

                                 = nx 

                                 = 煤ir=0・・・∞)(/r!)x となる。

したがって、 /r! の項の係数 r が、異なるn個の物からr個取る重複順列の数となる。

 これは、すでに知っている重複順列の数の結果 nr  と同じになる。

例題1:3個のサイコロを振って出る目の数が作る順列の数を指数型母関数を用いて、求めよ。

解答 1から6のそれぞれの目に関して、同じ目が何度でも出る可能性があるので、指数型母関数は、

1+x/1!+x/2!+x/3!+・・・+x/r!+・・・  になる。

したがって、次のように上式を6個かけ合わせた式が全体の指数型母関数となる。

(1+x/1!+x/2!+x/3!+・・・+x/r!+・・・)=(e 

                                  = 煤ir=0・・・∞)(/r!)x 

よって、この式の /3! の項の係数   が求める順列の数となる。

なお、この場合にはサイコロのおのおの目は0回から3回までしか出せないので、指数型母関数は正確には、

(1+x/1!+x/2!+x/3!)6       と書かなければならないが、 /3! のように低い次数の項の係数を求める場合には、上のような無限級数の形で書いても後の計算結果は変わらず、しかもその方が計算が簡単になるので、このような表現はしばしば便宜的に使われる。

問題1:3個のサイコロを振って出る目の数が作る順列のうちで、5が少なくても1回は出るような順列の数を指数型母関数を用いて、求めよ。

聡明な読者諸君!これを解いてみてください。

<参考文献:「やさしい組み合わせ数学:西岡弘明著(コロナ社)>

 <自宅>  mizuryu@aqua.ocn.ne.jp

 

 


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