平成13年8月26日

<美しい数学の話>

第39話 「面積比」

  8月16日に、次のような問題が「ヴェイユ」さんから投稿されました。
「今からちょうど10年前(後で8年前と訂正が入った)、私が中学2年生(現在大学生(数学科)です)の時に気付いた事実を問題として載せて頂ければ光栄に思います。初等幾何(したがって中学生の知識で解ける)ものです。
三角形ABCにおいて線分AB上に点D、線分BC上に点Eをとる。さらに直線AEと直線CDの交点をFとする。
このとき 三角形ABC:三角形DBE=三角形AFC:三角形DFE であることを示せ。」                              

 

 この特殊な場合である、DEとACが平行の場合や、□ADECが円に内接する場合は教科書にも書いてある通り上の命題は確かに成立しています。しかし、実は殆ど無条件に成り立つというのがこの命題の主張するところです。お忙しいとは思いますがぜひ御一考願います。
                              

NO1<水の流れ>解答 8月26日発信
証明: 三角形ABCにおいて,BD:DA=s:(1-s),BE:EC=t:(1-t)とする。
また、EF:FA=x: (1-x), DF:FC=y:(1-y)とする。ここで、三角形BEFの面積を便宜的にと仮定する。

三角形CEF=(1-t)/tで、三角形ACF=(1-t)/t・(1-x)/x・・・「1」
一方、三角形ABF=(1-x)/x で、三角形ADF=(1-s)・(1-x)/x、三角形ACF=(1-s)・(1-x)/x・(1-y)/y・・・「2」
ここで、「1」=「2」より,y=t(1−s)/(1−st)、1−y=(1−t)/(1−st)と得る。
ゆえにDF:FC=t(1−s):(1−t)
 
同じく、今度も三角形BDFの面積を便宜的にと仮定する。
三角形ADF=(1-s)/sで、三角形ACF=(1-s)/s・(1-y)/y・・・「3」
一方、三角形BCF=(1-y)/y で、三角形CEF=(1-t)・(1-y)/y、三角形ACF=(1-t)・(1-y)/y・(1-x)/x・・・「4」
ここで、「3」=「4」より,x=s(1−t)/(1−st)、1−x=(1−s)/(1−st)と得る。
ゆえにEF:FA=x: (1-x)=s(1−t):(1−s)
 さて、次に、 またも三角形ABCの面積を便宜的にと仮定すると、下の三角形の面積は、
三角形ABE=t、三角形AEC=1−t、三角形BDE=st、三角形AFC=(1-t)(1-s)/1-st
三角形ADE=t(1-s)、三角形DEF=t(1-s)s(1-t)/1-st
したがって、三角形BDE:三角形ABC=st:1
     三角形DEF:三角形AFC==t(1-s)s(1-t)/1-st:(1-t)(1-s)/1-st
            =st:1
 ゆえに。三角形BDE:三角形ABC=三角形DEF:三角形AFC   証明終わり
参考:BFを延長して、ACとの交点をGとおく。チェバの定理より
AD/DB・BE/EC・CG/GA=1から、CG/GA=s(1-t)/t(1-s)
また、メネラウスの定理を用いて、
(1)三角形ABEと直線CDから、AD/DB・BC/CE・EF/FA=1から、
   EF/FA=s(1-t)/(1-s)
(2)三角形ADCと直線BGから、CG/GA・AB/BD・DF/FC=1から、
   DF/FC=t(1-s)/(1-t)
としても得られます。しかし、中学生の知識とありますから。
<記述者:水の流れ>

NO2<ヴェイユ>さんの解答 8月28日発信
 
すみません。私の問題はメネラウスの定理を習って辺の比の積が1になることに感動して、色々いじっていて気付いたものです(1は何回かけても1なので)。一般にはメネラウスの定理は中学では習わないかも知れないということまで考慮していませんでした。それでも一応基本的な知識に分解すれば解けることは確かですがそうするとえらく難しい問題になってしまうかもしれませんね。
当時私がした証明は以下の通りです。記号は「美しい数学の話」と同じ物を使います。

証明;メネラウスの定理より
FE/AF・BC/BE・GA/CG=1
FD/CF・BA/BD・GC/AG=1
両者の辺々を掛け合わせると
(BC・BA)/(BD・BE)=(FA・FC)/(FD・FC)
を得る。これは
△ABC/△DBE=△AFC/△DFE
ということと同じ。即ち命題は示された。(証明終)

です。このように丁寧に取り上げてくださったことはとても感激しておりますが、こちらの勝手な思い込みから不愉快な思いをされたのではないかととても心配です。
以後このような時は十分気をつけさせていただきます。
あと、ご覧の様に証明は分かってしまえばとても単純なのですが、何故これが私が今まで見たどの本にも書かれていないのかは未だに不思議で仕方ありません

NO3<水の流れ>一部訂正 8月28日発信
太郎さんは、何も思っていませんよ。考えることは好きですから。この問題を考えて、
第82回の応募問題を思いついたのですから、ありがたいです。
 さて、ヴェイユさんの解法をみて、その簡単さに驚きました。確かに成り立ちますね。
実は、「メネラウスの定理」、「チェバの定理」を使用していいかどうかは悩みました。
 だから、あのような解法になった次第です。ヴェイユさんは多分優秀な中学校出身(中高一貫制?)かな。
 一カ所訂正しておきますよ。
(BC・BA)/(BD・BE)=(FA・FC)/(FD・FC)  ではなく、最後記号は、
(BC・BA)/(BD・BE)=(FA・FC)/(FD・FE) になりますよ。
これからも、よろしくお願いします

<自宅>  mizuryu@aqua.ocn.ne.jp