平成12年2月8日
<母関数から、数列の一般項を求めよう>No1
<未だ見ぬ偉大な数学者たち>へ、
数列の一般項を求めるのに、その数列の母関数を用いると有効なことがあるので、考えてみよう。では、母関数とは何んであるか調べてみます。数列を a(0),a(1),a(2),a(3),・・・,a(n),・・・ と表します。
この数列に対して、無限級数:F(x)=a(0)+a(1)x+a(2)x2+a(3)x3+・・・+a(n)xn+・・・
を考え、この関数を母関数といいます。
無限級数をみれば収束するかどうかが気にかかるが、母関数では無関心であってよい。xは全く形式的に導入した変数に過ぎません。その名は関数せあるが、正体は代数学における単なる式と見てください。したがって、その計算も次のように形式的に考えてください。2つの無限級数を
F(x)=a(0)+a(1)x+a(2)x2+a(3)x3+・・・+a(n)xn+・・・
G(x)=b(0)+b(1)x+b(2)x2+b(3)x3+・・・+b(n)xn+・・・ としたとき、加法は
F(x)+G(x)={a(0)+b(0)}+{a(1)+b(1)}x2+{a(2)+b(2)}x3+・・・+{a(n)+b(n)}xn+・・・ と定める。
減法も同様。乗法は
F(x)G(x)=a(0)b(0)+{a(0)b(1)+a(1)b(0)}x+・・・+{a(0)b(n)+a(1)b(n-1)+…+a(n)b(0)}xn+・・・ と定める。
また、定数をかける場合は、
kF(x)=ka(0)+ka(1)x+ka(2)x2+ka(3)x3+・・・+ka(n)xn+・・・ となります。
さて、準備として、無限数列:1,1,1,1,・・・, の母関数から始めましょう。
y=1+x+x2+・・・+xr+・・・=1/(1−x) (等比級数の和の公式 |x|<1)
しかし、ここでは、収束は考えずに、形式的計算で考えます。yの両辺にxをかけて、
xy=x+x2+・・・+xr+・・・
次に、yからxyを引いて(1−x)y=1 ∴ 1/(1−x)
=1+x+x2+・・・+xr・・・@
これで、2つの方法で出したけれど、わっかたね。これが分かったら、自然数の数列の母関数を考えますよ。
自然数の列:0,1,2,3,・・・,n,・・・ の母関数は
y=x+2x2+・・・+(r-1)xr−1+・・・と予想できるでしょう。この両辺にxをかけて、
xy=x2+2x3+・・+(r-1)xr+・・・ 2式の差をとって、
(1―x)y=x+x2+x3+・・・+xr+・・・=1/(1−x)―1 (@から)
∴y=x/(1−x)^2=x+2x2+3x3+・・・+rxr+・・・=x/(1−x)2・・・A
さて、自然数の和の公式を求めてみます。Aの両辺に@の両辺をかけてみます。
x/(1−x)3=x+(1+2)x2+・・・+(1+2+3+・・・+r)
xr+・・・
この後は、左辺の分数式の無限級数を展開します。
(1−x)−3 の展開は2項定理を用いてみます。
(1+x)^n=C[n,0]+C[n,1]x+C[n,2]x2+・・・+C[n,r]xr+・・・+C[n,n]xn
ここで、C[n,r]は2項係数を表すこととします。さらに、nは負の数や分数の場合へ形式的に拡張したものを用いる。
(1−x)−3 の展開式で、xrの係数をB(r)で表すと、
B(r)=(−1)r×(-3)(-4)……(−3―r+1)/r!
分子の因数はr個であるから、その符号をかえれば(−1)rは消える。
B(r)=(3)(4)……(r+2)/r!=(r+1)(r+2)/2
したがって、x(1−x)−3のxrの係数は B(r―1)=r(r+1)/2 となって、
これは当然、、(1+2+3+・・・+r)に等しい。みんな、理解できたね。
次は、自然数の平方の和を求めるよ。
ここでも、自然数の平方の母関数が必要です。
y=x+22x2+・・・+r2xr+・・・
さあー、ここで、前と同じようにxyを作って、y−xyの差を計算します。ここで、xrの係数をみると、
r2―(r−1)2=2r−1になるから、
(1−x)y=x+3x2+・・・+(2r−1)xr+・・・
さらに、右辺は次のように2つの級数を差に分解できる。
(1−x)y=2(x+2x2+・・・+rxr+・・・)―(x+x2+・・・+xr+・・・)
これは、すでに求めた @、Aで表されるから、
(1−x)y=2x/(1−x)2−{1/(1−x)−1}
これをyについて解いてください。
y=(x+x2) /(1−x)3=x+22x2+・・・+r2xr+・・・ になったかな。
この級数の和を求めたいから、両辺に@:1/(1−x)
=1+x+x2+・・・+xr・・・@
かけて、右辺を計算してください。
(x+x2) /(1−x)4=A(1)x+A(2)x2+・・・+A(r)xr+・・・ とおくと、
ただし、A(r)=12+22+32 +・・・+r2 である。
さあー、(1−x)−4 に2項定理をもちいるぞー。ここで、xrの係数だけをみます。
また、x^rの係数をB(r)で書くと、A(r)=B(r―1)+B(r―2) になること分かるかな。
B(r)=(−1)r×(-4)(-5)……(−4―r+1)/r!
分子の因数はr個であるから、その符号をかえれば(−1)rは消える。
B(r)=(4)(5)……(r+3)/r!=(r+1)(r+2)(r+3)/3!
これをもとにして、B(r―1)、B(r―2)を計算します。
A(r)=B(r―1)+B(r―2)
=r(r+1)(r+2)/6―(r―1)r(r+1)/6
もう!できたぞ。よって、求める自然数の平方の和は
12+22+32 +・・・+r2 =r(r+1)(2r+1)/6 (答)
どう、きれいにでてきたでしょう。
このことを、同様に繰り返せば、自然数の3乗の和、4乗の和を順に求められるが、計算は楽ではないぞー。
一度、時間があったら実行してみてください。
今日は、これで終わりにします。次の時間は、あの有名な「フィボナッチ数列」と「カタラン数」の一般項を
母関数を用いて、導くことにしまーす。本日はお疲れさま!
<参考文献:「数学ひとり旅」石谷茂著:現代数学社>