問題1
三角形の頂点A,B,Cの位置に3校があり、この3校を連結するネットワーク(どの2校もネットワークを通して、行き来できるようにする)を結ぶ計画があります。 ただし、BC=akm,CA=bkm,AB=ckm です。 |
さて、いきなり三角形のときは、大変だから、正方形でみんな考えてください。
*既に、生徒に配布して置いた1辺が10cm正方形の厚紙で、いろいろな設計図を書き始める。)
書いたら、定規で長さを測ってください。グループで出し合ってください。
勿論、1辺をakmのときは、√(ルート)が必要になるからね。
問題2
正方形の頂点A,B,C,Dの位置に4校があり、この4校を連結するネットワーク(どの2校もネットワークを通して、行き来できるようにする)を結ぶ計画があります。 |
ここに、授業中に生徒が考えた設計図があります。
設計図の中で、一番短いのは対角線の×印のネットですね。
しかし、一番右は図だけで、長さは出ていませんね。
先生、定規で測ってみたら、どうですか。
そうだね、では測ってください。
対角線は1辺が10cmですから、だいたい、
2×10=28.3センチです。
よく、そこまで、測れたね。次ぎに、一番右隣りはどうですか?
先生!どうも28.3センチより短いみたいです。
そうですね。では、途中の交点はどこに取るとよいですか?
いろいろな、発想がでてきましたが、なぜ?と問われると答えられません。
先生!ギブアップです。教えてください。ここまで、考えたから。
それでは、みんなと一緒に考えてみましょう。
実は、三角形の場合を知って置く必要がありますので、順にいきよ。
まず、次の定理を証明します。
定理1 正三角形の内部の点から3辺までの距離の和は一定である。 |
<証明>
正三角形の1辺の長さをaとして、三角形の面積を考える。
△PBC+△PCA+△PAB=△ABC
(1/2)ax+(1/2)ay+(1/2)az=(1/2)ah
∴x+y+z=h
(ただし、hは△ABCの高さとする)
さて、この応用を用いて最短シャタイナー問題が解けます。
問題1 3角形の各頂点から距離の和が最小になる点を見つけよ。 (これはフランスの大数学者フェルマーがイタリーの物理学者トリチェリに出題) |
<証明>2つの3角形に分けて、結論が分かっていないので、この点が最小なることを証明します。
@3角形の角がすべて120゜以下の場合
A 3角形の1角が120゜より大きい場合
@の場合
与えられた3角形をABCとし、任意の点をPとする。
AP,BP,CPの交角がすべて120゜になるとき最小な点Qとなることを言う。
A,B,Cを通って,AQ,BQ,CQに垂直な直線を引いて3角形A’B’C’を作る。
この3角形は、∠AQB=∠BQC=∠CQA=120゜ より正三角形である。
任意の点Pから3辺B’C’,C’A’,A’B’に下した垂線の足をL、M、Nとすると、
PA+PB+PC≧PL+PM+PN=QA+QB+QC
(3角形の辺の長さの不等式と定理1から)
Aの場合は考慮中です。 <一応証明終わり>
次の外接円を加えます。
定理2
正3角形ABCの平面上の任意の点をPとして、次の不等式が成り立つ。 |
<証明>(*トレミーの定理の一般化したものを利用します)
任意の4点A,B,C,Pについて(4角形はねじれた場合も良い)、
四辺形ABCDについて、一般のトレミーの定理は
AC・BP+AB・CP≧BC・AP
(この証明はやらねば、これは複素数を用いて後でします。)
正3角形より、AC=AB=BC だから
BP+CP≧AP
他の2つの場合も同様です。 <証明終>
注:点Pが△ABCの外接円上にないとき
注意:この不等式の関係は円に外接する4角形のトレミーの定理から、等号が成り立つのは点Pが△ABCの外接円上にあるときに限る。
例えば、点Pが弧BC上にあるとき、
等式 BP+CP=AP が成り立ち、他の2つは不等式である。
これは、点Pが三角形ABCの外接円上にあるときに成り立つことをしめしています。
定理3 四辺形ABCDについて、一般のトレミーの定理は AB・CD+AD・BC≧AC・BD |
<証明> 複素数平面上で4点A、B、C、Dの座標をそれぞれα、β、γ、δ とする。
ここで、Z=(α−β)(γ−δ), W=(γ−β)(α−δ)とおくと、
Z−W=(α−β)(γ−δ)−(γ−β)(α−δ)
=(α−γ)(β−δ)となり、
|Z|+|W|≧|Z−W| <例の三角不等式>
注:一般に、複素数X、Yについて、
|X||Y|=|XY|は成立
ただし、等号は、4点A、B、C、D が同一円周上にあるとき成り立つ。
さあー、もう一息だから、みんな頑張ろうね。
最後の定理でーす。
定理4 △ABCの辺BC,CA,ABを1辺として正3角形CBD,ACE,BAFを△ABCの外側に作ると、次のことが成り立つ。
(1)DA=EB=FC |
<証明> この証明は 複素平面上で示します。
3点A、B、Cの座標をそれぞれα、O、γ とする。
(ただし,Oは原点とする。)
(*回転に威力を発揮するのが複素数です。)
さらに、3点D、E,Fの座標をそれぞれd,e,fとします。
点Fの座標は 線分BAを原点の周りに120゜回転させた点をGとし、ベクトル
∴ f=ωα+α=(ω+1)α=−αω2
点Dの座標は 線分BCを原点の周りに240゜回転させた点をHとし、ベクトル H(γω2),D(γω2+γ)
∴
点Eの座標は,線分ACを点Aの周りに120゜回転させた点をKとし、ベクトル
K{ω(γ−α )+α },E{ω(γ−α )+α+(γ−α )}
∴
これから、
同様にして、
以上から、
最後に、求める最短経路の長さは
A 3角形の1角が120゜より大きい場合
∠A>120゜ のとき、AB+AC が 最小になり、点Pは点A そのものです。
先生、もう疲れたー。
@3角形の角がすべて120゜以下の場合
さらに、この正三角形の外接円との交点をみつけてください。
A 3角形の1角が120゜より大きい場合
さて、元に、もどります。正方形ですが、
もう、分かったね。
注:a=100のとき、最短距離は273 になるよ。
<参考 文献> 数学ひとり旅 石谷 茂 現代数学社
G(ωα)、F(ωα+α)
d=γω2+γ
=(ω2+1)γ
=−ωγ
e=ω(γ−α )+γ
=(ω+1)γ−ωα
=−γω2−ωα
=o−e
=γω2+ωα
=ω(α+ωγ)
=ω
一度に証明できます。<*複素数の威力です。>
|DA|=|α+ωγ| ・・・(答)
じゃー、まとめるよ。
求める設計図は交角がすべて120゜となる点を探します。
その点は1つの辺を正三角形の1辺として、反対側に作り、もう1つの他の点と結びます。
これがもとめる中継点です。
最短距離はDA=EB=FCです。
∠A>120゜ のとき、AB+AC が 最小にになり、点Pは点Aそのものです。
[4(1/2÷cos30°)+{1−2(1/2×tan30°)}]a
=(1+) ・・・(答え)
これをもとに、正5角形、正6角形も考えてください。
よーし、これで、本日の<水の流れ>の授業を終わります。
岐阜県立海津北高等学校 数学科教諭 水野 隆生
自宅:mizuryu@aqua.ocn.ne.jp