私のクラスの生徒は教材費に五百円払う必要があります。そこで、五百円玉しか持 っていないn人の生徒と、千円札しか持っていないn人の合計2n人の生徒がいま 担任の私はつり銭を準備していませんでした。つり銭が不足しないように生徒から もらう方法は全部で何通りありますか。ただし、生徒の2n人に区別しないで、 お金の出し方で考えてください。 |
問題の中で、500円玉を払うのをA,1000円玉を払うのをBとします。釣り銭がない
ので、常にAの数がBの数より等しいか大きければよいのです。
n=1のとき、AB の1通り
n=2のとき、AABB,ABAB の2通り
n=3のとき、
AAABBB,AABABB,AABBAB,ABAABB,ABABAB
の5通り ここで、考え方を変えて、
これをAを→、Bを↑と表せば、→がn個、↑ がn個の同じものを一列に並べる方
法と考えます。だから、碁盤の目をした最短経路の問題に変化していきます。分かり
易くするために、求める数をK(n)とすると、K(1)=1,K(2)=2,K(3)=5
は図を書いて、分かるとします。
このK(n)の数列をカタラン数と言います。
n=4のときを描きます。
図のような△ABCの最短経路の道筋がK(4)になります。
<考え方からの副産物>
K(4)を求めるのに、
(@)B1を通るとき、Aから B1を通り、△B1DBの最短
経路K(3)の道筋
(A)B1を通らず、B2を通るとき、△GHLの最短経路K(1)か
ら、道路LB2を通 り、△B2EBの最短経路K(2)の道筋
(B)B1、B2を通らず、B3を通るとき、△GIMの最短経路K(2)から、
道路MB3を通り、△B3FBの最短経路K(1)の道筋
(C) 最後に、B1,B2、B3を通らず、Bに行く場合は
△GCFの最短経路K(3) に等しい。
よって、K(4)= K(3)+K(1)K(2)+K(2)K(1)+ K(3)
=5+1×2+2×1+5=14 になります。
これは、一般に K(0)=1と決めておけば、
K(n)=K(0)K(n−1)+K(1)K(n−2)+K(2)K(n−3) +・・・+K(n−1)K(0)
という、漸化式が成り立ちます。
また、こんな数え方(書き込み方式)もできます。
14B
↑
5→14F
↑ ↑
2→5→9E
↑ ↑ ↑
1→2→3→4D
↑ ↑ ↑ ↑
A→1→1→1→1C
さらに、斜めの線に関しての対称性に気がつけば、
K(4)= 1×1+3×3+2×2=14
K(5)= 1×1+4×4+5×5=42
K(6)= 1×1+5×5+9×9+5×5=132
したがって、カタラン数K(n)は何個かの平方数の和でできています。
さて、本題に入ります。n=4で描きます。
□DACBの最短経路の道筋は、階乗の記号を使えば、
(4+4)!÷(4!×4!)=70 通り あります。
ここから、対角線ABと交わる経路が不適ですから、この不適な経路を求めます。
例えば、図の太線の経路は不適ですが、これを直線T1T4について対称移動します。
ただし、直線T1T4に始めて出会った点から後の部分のみを対称に曲げて図の太い波
線を考えると、全ての不適な経路は□AEFGの最短経路の数に等しくなります。
いくつかの数の積は、2つずつの数の積の計算を繰り返して行っている。だから、
どの2つずつの積を作っていく方法の数はどうなるかという問題(カタランの問題)
が、1838年にカタランによって論じられた。n個の数の順序が変わらない積の総
をC(n)とし、n個の数の順序を変えても良い積の総数をR(n)とする。
具体例をn=1,2,3,4で見ます。
@ n=1のとき、C(1)=1、R(1)=1と考えておく。
A n=2のとき、数をa,bと書くと、積は ab,ba の2通りで、
C(2)=1、R(2)=2 となる。
B n=3のとき、数をa,b,cと書くと、積は
(ab)c,a(bc),(ac)b,a(cb),(ba)c,b(ac),
(bc)a,b(ca),(ca)b,c(ab),(cb)a,c(ba)
12通りで、C(3)=2、R(3)=12 だとわかる。
C n=4のとき、数をa,b,c,dと書くと、数の順序がa,b,c,dとなる積は
((ab)c)d,(ab)(cd),(a(bc))d,a((bc)d),a(b(cd))
の5通りなので、C(4)=5、R(4)=C(4)×(4!)=5×24=120。
*注:前述のk(n)とC(n)の関係はC(n)=K(n−1) です。
*参考:n≧2のとき、次の性質があります。
1) R(n+1)=(4n−2)R(n)
2) R(n)=2・6・10・14・・・(4n−6)
3) C(n)= R(n)/n!
4) C(n+1)={(4n−2)/(n+1)}C(n)
5) K(n+1)={(4n+2)/(n+2)}K(n)・・・(漸化式の発見)
*注: E(n)=C(n−1)=K(n−2)の関係となる。
参考:1758年にセニェールが発見した漸化式
最後に、カタラン数列を書きます。{1,2,5、14,42,132,・・・} 平成11年6月23日 そこで、今日は先日、次のような質問を受けましたので、追加説明します。 「平面上で、凸n角形を対角線において3角形に分割する方法の数E(n)はどうして、カタラン数に なるのでしょうか。」 凸n角形を三角形に分割する仕方はちょうどカタラン数をなしています。 もちろん、n=3からスタートしていきましので、E(n)=K(n−2)ずらしてあります。 カタランの漸化式は次になります。 E(n)=E(2)E(n−1)+E(3)E(n−2)+E(4)E(n−3)+・・・+E(n−1)E(2) ここで、n=7の図をみてください。 7角形A1A2・・・A7を考えてみます。辺A6A7を注目ください。 (1)△A1A6A7を含む分割の仕方は残りの6角形の仕方の数E(6)に等しい (2)△A2A6A7を含む分割の仕方は残りの3角形と5角形の分割の仕方を組み合わせたもので、 その数はE(3)E(5)である。 (3)△A3A6A7を含む分割の仕方は残りの4角形と4角形の分割の仕方を組み合わせたもので、 その数はE(4)E(4)である。 (4)△A4A6A7を含む分割の仕方は残りの5角形と3角形の分割の仕方を組み合わせたもので、 その数はE(5)E(3)である。 (5)△A5A6A7を含む分割の仕方は残りの6角形の仕方の数E(6)に等しい ただし、図の中はE(n)=f(n)で表現してあります。 したがって、E(2)=1と便宜上して、E(3)=1です。 E(7)=E(2)E(6)+E(3)E(5)+E(4)E(4)+E(5)E(3)+E(5)E(2) そして、一般に、 E(n)=E(2)E(n−1)+E(3)E(n−2)+E(4)E(n−3)+・・・+E(n−1)E(2) が成立します。 ここから、この分割がカタラン数をなしていきます。オイラーは偉大ですね。
なぜ、日常生活のこれらの現象が1つの数列として、見なされるか不思議です。