平成14年8月31日

[流れ星]

        第103回数学的な応募問題解答

          <解答募集期間:8月11日〜8月31日>

[ネイピアの不等式]

   

太郎さんは、数学Vで、次のような不等式を扱ったことがあります。先日、参考書を眺めていたら、この不等式が「ネイピアの不等式」と呼ばれていることを知りました。

そこで、皆さんに、証明を次の3つの考え方で証明をしてください。

証明1:平均値の定理を用いて

証明2:微分を利用して

証明3:積分を利用して

NO1「H7K」さん           8/11:9時57分と23時19分受信 更新8/31

<平均値の定理を用いた解法>
ln xはx>0で連続なので,ラグランジュの平均値の定理より
(ln b-ln a)/(b-a)=(ln x)'=1/x , a<x<bなるxが存在.
よって,明らかに1/b<1/x=(ln b-ln a)/b-a<1/a.//

平均値の定理は知らなかったので、さっきネットで検索しました.

<微分を用いた解法>
p>1ならば 1/p<(ln p)/(p-1)<1を示せばよい.
(ln p)'=1/p,((p-1)/p)'=1/p^2,(p-1)'=1より
((p-1)/p)'<(ln p)'<(p-1)',
またp=1のとき,0=(p-1)/p=ln p=p-1が成立するので
任意のp>1について(p-1)/p<ln p<p-1
よって,1/p<(ln p)/(p-1)<1. //

 

<水の流れ:コメント>接線の傾きを利用してもらいたいなあー。

ln xのx=bにおける傾きは1/b
      x=aにおける傾きは1/a
      x=a->bへの平均の傾きは(ln b-ln a)/(b-a)
(ln x)'=1/xは単調減少なので、1/a>(ln b-ln a)/(b-a)>1/b.//

<水の流れ:コメント>積分は、ある図形の面積に着目してもらいたい。


int[x=1..p] 1/x dx=ln p
int[x=1..p] 1 dx=p-1
int[x=1..p] 1/x^2 dx=[-1/x]^p_1=1-1/p
で,任意のx>1について,1>1/x>1/x^2なので,1/p<(ln p)/(p-1)<1.//

NO2「KASHIWAGI」さん 8/11:20時37分受信 更新8/31

NO3「スモークマン」さん 8/16:16時50分受信 更新8/31

証明3:積分を利用して
y=1/x で、0<a<b のとき、(b-a)*1/b <∫1/x dx < (b-a)*1/a
 だから、1/b < (log b - log a)/(b-a) < 1/a

証明1+2:微分と平均値の定理を利用して
y=log x の、微分は、y=1/x だから、またいずれも0<x で
連続なので、平均値の定理より題意は明らか。

NO4「BossF (^o^)」さん  8/19:16時13分受信 更新8/31

ネイピアの不等式…このネイピアの由来は、なんでしょうか?

閑話休題
とりあえず、対数の底はネイピア数として考え
以下a,b は 0<a<b を満たすものとします。

証明1:平均値の定理を用いて
[解]
f(x)=lon x とおくと、
f(x) は [a,b] で連続、かつ (a,b) で微分可能ですから
平均値の定理より
任意のc ; a<c<b かつ {f(b)-f(a)}/(b-a)=f'(c) (=1/c)

また、y=1/x の単調性から 1/b<1/c<1/a
よって題意は示されました ■

証明2:微分を利用して
[解]
b-a>0 より
与式と同値
1-a/b<lon(b/a)<b/a-1

まず、左辺<中辺 を示します
f(x)=lon x + 1/x -1 (x>0) とおくと
f'(x)=1/x - 1/x^2
     =(x-1)/x^2
したがって、
f(1)=0,x>1でf'(x)>0 ですから
x>1 で f(x)>0   i.e. 左辺<中辺

次に、中辺<右辺 を示します
f(x)=x-1-lon x (x>0) とおくと
f'(x)=1 - 1/x
     =(x-1)/x
したがって、
f(1)=0,x>1でf'(x)>0 ですから
x>1 で f(x)>0   i.e. 中辺<右辺

            よって題意は示されました■

証明3:積分を利用して
[解]
f(x)=1/x としますと、その単調性より
[a,b] で 1/b< f(x) <1/a ですから、

∫(a,b)1/bdx <∫(a,b)f(x)dx <∫(a,b)1/adx
同値 (b-a)/b<lon b -lon a <(b-a)/a
同値 与式

     よって題意は示されました ■

NO5「浜田」さん      8/22:08時13分受信 更新8/31

証明1(平均値の定理利用)
 f(x)=logx(x>0)とする.
 f(x)はx>0で微分可能であるから,平均値の定理より,
  f'(c)={f(b)−f(a)}/(b−a)(0<a<c<b)
となるcが存在する.
 f'(x)=1/xであるから,
  1/c=(logb−loga)/(b−a)
 0<a<c<bであるから,
  1/b<1/c<1/a
  ゆえに 1/b<(logb−loga)/(b−a)<1/a

証明2(微分利用)
  1/b<(logb−loga)/(b−a),b−a>0
から,
  (b−a)/b<logb−loga
  ゆえに 1−a/b<log(b/a)
 x=b/a>1とすると,
  1−1/x<logx
  ゆえに logx−(1−1/x)>0
 故に,f(x)=logx−(1−1/x)=logx−1+1/xとすると,f(x)>0を証明すればよい.
  f'(x)=1/x−1/x^2=(x−1)/x^2>0(なぜなら x>1)
 故にf(x)は単調増加関数である.x>1であるから,
  f(x)>f(1)=0
  ゆえに 1/b<(logb−loga)/(b−a)………(1)

 次に,
  (logb−loga)/(b−a)<1/a,b−a>0
から,
  logb−loga<(b−a)/a
  ゆえに log(b/a)<b/a−1
 x=b/a>1とすると,
  logx<x−1
  ゆえに (x−1)−logx>0
 故に,g(x)=(x−1)−logxとすると,g(x)>0を証明すればよい.
  g'(x)=1−1/x=(x−1)/x>0(なぜなら x>1)
 故にg(x)は単調増加関数である.x>1であるから,
  g(x)>g(1)=0
  ゆえに (logb−loga)/(b−a)<1/a………(2)
 (1),(2)から,
  1/b<(logb−loga)/(b−a)<1/a

証明3(積分利用)
 曲線y=1/x,直線x=a,x=b,x軸で囲まれた部分を図形Sとする.
 図から,
  長方形EBCF<図形S<長方形ABCD
  ゆえに 1/b×(b−a)<∫(a,b)dx/x<1/a×(b−a)
  ゆえに 1/b×(b−a)<[logx](a,b)<1/a×(b−a)
  ゆえに 1/b×(b−a)<logb−loga<1/a×(b−a)
 b−a>0であるから,
  1/b<(logb−loga)/(b−a)<1/a

 

 

補足
 a>0,b>0,a≠bとする.
 1/b<(logb−loga)/(b−a)とすると,
1). b−a>0のとき,(b−a)/b<logb−loga
  ゆえに 1−a/b<log(b/a)
 x=b/a>1とすると,1−1/x<logx
 図1から,これは常に成立する.


2). b−a<0のとき,(b−a)/b>logb−loga
  ゆえに 1−a/b>log(b/a)
 0<x=b/a<1とすると,1−1/x>logx
 図2から,これは矛盾する.
  ゆえに 1/b<(logb−loga)/(b−a) → a<b

 (logb−loga)/(b−a)<1/aとすると,
3). b−a>0のとき,logb−loga<(b−a)/a
  ゆえに log(b/a)<b/a−1
 x=b/a>1とすると,logx<x−1
 図3から,これは常に成立する.


4). b−a<0のとき,logb−loga>(b−a)/a
  lゆえに og(b/a)>b/a−1
 0<x=b/a<1とすると,logx>x−1
 図4から,これは矛盾する.
  ゆえに (logb−loga)/(b−a)<1/a → a<b

 今までの結果と,問題の証明から,a>0,b>0,a≠bのとき,
  a<b
   ←→ 1/b<(logb−loga)/(b−a)
   ←→ (logb−loga)/(b−a)<1/a
 →だけでなく,←も成り立つとは,興味深い不等式である.しかもバラバラに成り立っている.
 このことがらは,グラフ表示ソフトGRAPESにて,
  1/b<(logb−loga)/(b−a)
  (logb−loga)/(b−a)<1/a
の領域を表示させたとき,共に0<a<bと同じになっていることに気付き,証明したものである.

 

 

     <自宅>  mizuryu@aqua.ocn.ne.jp