平成15年1月15日
[流れ星]
第111回数学的な応募問題解答
<解答募集期間:1月1日〜1月15日>
[tanのn倍角]
* 太郎さんは、先日生徒から、「三角関数のsin3θをsinθ、
cos3θ をcosθ で表す3倍角の公式があるのに、tan3θを
tanθで表す公式はないのですか。あれば、教えてください。」という質問を受けました。そのときは、私の見たことがないから、「必要なら、自分で作ったら。」。と言っておきました。このことを、問題にします。tanθ=t とおくとき、次の設問に答えてください。
(1)tan2θをtで表せ。(これは公式ですから、結果だけでいいです。)
(2)tan3θをtで表せ。
(3)tan4θをtで表せ。
(4)tan5θをtで表せ。
(5)今までの答えから、類推して、tannθをnとtで表せ。
(6)(5)の予想が正しいことを数学的帰納法で示してください。
追加(7)実はこの計算をしていたら、分母、分子の係数が有名な数列になっていることに気がつきました。必然性があるのでしょうか。
疑問に思っています。どなたか 教えてください。
NO1「H7K」さん
12/31: 21時10分 受信 更新1/15
「H7K」さん 1/2 : 09時15分 受信 更新1/15
NO2「Kashiwagi」さん
1/4 : 17時31分 受信 更新1/15
第111回解答
(1)2t/1−t2
(2)tan3θ=tan(θ+2θ)=〔tanθ+tan2θ〕/1− tanθ・tan2θであるからtanθ=tとtan2θ=2t/(1−t2)を代入し、3t−
t3/1−3t2が求めるもの。
(3)上記と全く同様な計算を行い、4t− 4t3/1−6t2+t4
(4)上記と全く同様な計算を行い、5t− 10t3+t5/1−10t2+5t4
(5)分子と分母を一緒にして、θ、2θ、3θ、4θ及び5θを見ていくと、tの係数はnθのnである。
又、t2 の係数は階差数列が初項2、公差1の等差数列であることから、計算し、−n(n−1)/2(=−nC2)を得る。
t3以下についても同様な考察より、−n(n−1)
(n−2)/2・3(−nC3)、即ち組み合わせの数となる。
因って、係数の正負に注意して整理すると、
@
nが偶数の時
nC1t−nC3 t3+……・・・・+(−1)n−2/2nCn−1
tn−1/1−nC2t2+nC4
t4+……・・・+(−1)n/2nCn tn
A
nが奇数の時
nC1t−nC3 t3+……・・・・+(−1)n−1/2nCn
tn/1−nC2t2+nC4
t4+……・・・+(−1)n−1/2nCn−1 tn−1
となる。
(6)今を考える。k=1の時1C1t/1=tとなり成立する。次にk=n(nは偶数とする)の場合に成立するとすると、
tannθ=nC1t−nC3
t3+……・・・・+(−1)n−2/2nCn−1 tn−1/1−nC2t2+nC4
t4+……・・・+(−1)n/2nCn tn
これを使い、tanθ+tannθと1−tanθtannθを計算すると、各々
(1+nC1)t−(nC2+nC3)t3+……・・・+(−1)n/2nCntn+1/1−nC2t2+nC4
t4+……・・・+(−1)n/2nCn tn
及び
1−(nC1+nC2)t2+……・・・・+〔(−1)n−2/2nCn−1+(−1)n/2nCn〕tn/1−nC2t2+nC4
t4+……・・・+(−1)n/2nCn tn
となる。
ここでtanθ+tannθ/1−tanθtannθを計算すると、
(1+nC1)t−(nC2+nC3)t3+……・・・+(−1)n/2nCntn+1/1−(nC1+nC2)t2+……・・・・+〔(−1)n−2/2nCn−1+(−1)n/2nCn〕tn
となる。
1+nC1=n+1C1、nC2+nC3=n+1C3を使い上式を変形すると、
n+1C1t−n+1C3
t3+……・・・・+(−1)n/2n+1Cn+1 tn+1/1−n+1C2t2+n+1C4
t4+……・・・+(−1)n/2n+1Cn tn
=tan(n+1)θとなる。因ってtannθが上記の形で表されることが証明された。
ご指摘の様に非常に興味深い結果となりました。これまで、考えたこともありませんでした。
どなたかのお教えを楽しみに待たせて頂きます。
NO3「三角定規」さん 1/4 : 23時40分 受信 更新1/15
<感想>・泥くさい加法定理の計算から始まって,A4版の用紙で10枚ほどの計算をしました。どうやら二項係数が出て来ているようだと気がついてからも,この行列にたどり着くまでに,行きつ戻りつしました。この一太郎で数式を打ち込むのがえらく大変なため,上記は,そのエッセンスのみです。・加法定理を習ってから20余年,加法定理と二項係数がこんな関わりをもっていたとは………。
NO4「浜田」さん 1/6 : 13時01分 受信 更新1/15
tanθ=tから,
tan2θ=sin2θ/cos2θ
=2sinθcosθ/{(cosθ)^2−(sinθ)^2}
=(2sinθ/cosθ)/{1−(sinθ/cosθ)^2}
=2tanθ/{1−(tanθ)^2}
=2t/(1−t^2)………(1)
tan3θ=tan(2θ+θ)
=(tan2θ+tanθ)/(1−tan2θtanθ)
={2t/(1−t^2)+t}/{1−2t/(1−t^2)・t}
=t{2+(1−t^2)}/{(1−t^2)−2t^2}
=t(3−t^2)/(1−3t^2)………(2)
tan4θ=tan(3θ+θ)
=(tan3θ+tanθ)/(1−tan3θtanθ)
={t(3−t^2)/(1−3t^2)+t}/{1−t(3−t^2)/(1−3t^2)・t}
=t{(3−t^2)+(1−3t^2)}/{(1−3t^2)−t^2(3−t^2)}
=t(4−4t^2)/(1−6t^2+t^4)
=4t(1−t^2)/(1−6t^2+t^4)………(3)
tan5θ=tan(4θ+θ)
=(tan4θ+tanθ)/(1−tan4θtanθ)
={4t(1−t^2)/(1−6t^2+t^4)+t}/{1−4t(1−t^2)/(1−6t^2+t^4)・t}
=t{4(1−t^2)+(1−6t^2+t^4)}/{(1−6t^2+t^4)−4t^2(1−t^2)}
=t(5−10t^2+t^4)/(1−10t^2+5t^4)………(4)
tan6θ=tan(5θ+θ)
=(tan5θ+tanθ)/(1−tan5θtanθ)
={t(5−10t^2+t^4)/(1−10t^2+5t^4)+t}/{1−t(5−10t^2+t^4)/(1−10t^2+5t^4)・t}
=t{(5−10t^2+t^4)+(1−10t^2+5t^4)}/{(1−10t^2+5t^4)−t^2(5−10t^2+t^4)}
=t(6−20t^2+6t^4)/(1−15t^2+15t^4−t^6)
=2t(3−10t^2+3t^4)/(1−15t^2+15t^4−t^6)
・・・
NO5「toru」さん 1/7
: 12時57分 受信 更新1/15
あけましておめでとうございます。本年もよろしくお願いします。年明け早々なかな
か面白い問題で楽しませて頂きありがとうございます。(7)はいろいろ考えてみま
したが期待に沿うような答かどうか? ペンネーム Toru
第111回解答
tan (n+1)θ=sin (n+1)θ/cos (n+1)θ=(sin nθcosθ+sinθcos nθ)/(cos nθcosθ-sin nθsinθ)=(tan
nθ+tanθ)/(1-tan nθtanθ)---------a)
これより(1) n=1 としてtan2θ=2t/(1-t^2)
(2) tan3θ=(tan2θ+tanθ)/(1-tan2θtanθ) =(3t-t^3)/(1-3t^2)((1)を代入)
(3) tan4θ=(tan3θ+tanθ)/(1-tan3θtanθ)=(4t-4t^3)/(1-6t^2+t^4)
(4) tan5θ=(tan4θ+tanθ)/(1-tan4θtanθ)=(5t-10t^3+t^5)/(1-10t^2+5t^4)
(5)これらからtan nθ=(nC1 t-nC3 t^3+nC5 t^5----)/(1-nC2 t^2+nC4 t^4----)と考える。
ただしn<kの時nCk =0とする。
(6) (5)式をa)に代入しn+1Ck=nCk+nCk-1に注意して計算すると、
tan(n+1)θ= ((1+nC1)t-(nC2+nC3)t^3+(nC4+nC5)t^5---)/(1-(nC1+nC2)t^2+(nC3+nC4)t^4---)
= (n+1C1 t-n+1C3 t^3+n+1C5 t^5---)/(1-n+1C2 t^2+n+1C4 t^4-----)と
n+1の時も成り立つことが示された。
(7) 分母分子の係数は、+、―を除いて、tan1θ=t/1とすれば1,1、1,2,1、1,3,3,1、1,4,6,4,1、1,5,10,10,5,1といった具合に
2項定理の係数(縦にならべればパスカルの三角形)となっています。
((5)で予想した時にもちろんこれを使っているのですが)
これはe^ (iθ)=cosθ+ isinθの両辺をn乗してe^(inθ)=cos nθ+isin nθ=(cosθ+isinθ)^n ---b)
の右辺を2項展開して虚数項と実数項にわけると
(cosθ+isinθ)^n =ΣnCk(cosθ)^(n-k)(isinθ)^k
=(cosθ^n) ΣnCk(it)^k
=(cosθ^n) (ΣnC2k(it)^2k+ΣnC2k+1(it)^(2k+1))
=(cosθ^n) (Σ(-1)^k nC2k
t^2k+iΣ(-1)^k nC2k+1 t^(2k+1))実数項がcos nθ、虚数項がsin nθであるから
tan nθ=sin nθ/cos nθはcosθ^nが約分されて、
(Σ(-1)^k nC2k+1 t^(2k+1))/(Σ(-1)^k nC2k t^2k) (k=0,1,2,----)
となって分子が(1+t)^nを二項展開したときの奇数乗項、分母が偶数乗項(ただし+,-交互)となることがわかる。
なお
b)とcos nθ-isin nθ=(cosθ-isinθ)^n から
2cos nθ=(cosθ+isinθ)^n+(cosθ-isinθ)^n , 2isin nθ=(cosθ+isinθ)^n-(cosθ-isinθ)^n
よりtan nθ=((cosθ+isinθ)^n-(cosθ-isinθ)^n)/((cosθ+isinθ)^n+(cosθ-isinθ)^n)i
=((1+it)^n-(1-it)^n)/((1+it)^n+(1-it)^n)iという表わしかたも可能と思います。
NO6「udonko」さん 1/13 : 02時08分 受信 更新1/15
はじめまして、udonkoと申します。
いろいろとネットを見ていたら、ここにたどり着きました。
最初はちょっとだけ考えてみようと思ったのですが・・・・非常に難しいですね。
どのようにメールで送れば良いのかわからないので
こんな解答で、ごめんなさい。(解答になってませんね〜)^^;
nC1*t-nC3*t^3+nC5*t^5-nC7*t^7+・・・・・・
tan(nθ)=_________________________
nC0-nC2*t^2+nC4*t^4-nC6*t^6+・・・・・・
になりました。
帰納法による証明も nCk+nC(k+1)=(n+1)C(k+1) を使ってできると思います。
(nCn*t^nの項が、分母にあるか分子にあるか、場合わけしないと・・・・・
ちゃんとやっていなくてすいません)
2項定理の展開した形で、分母が偶数乗の項、分子が奇数乗の項
に別れているのが美しいですね。(符号を無視していますが・・・)
<水の流れ:コメント>全員の方が、解答を作成するのに、多くの時間をかけておられて、大変恐縮しています。
「H7K」さんには、画像をgifで送信くださいまして感謝しています。
また、nが奇数、偶数をガウス記号[ ]で「H7K」さんと「三角定規」さんはうまく表現してありました。
さらに、n+1Ck=nCk+nCk-1を利用して 数学的帰納法で証明されていましたし、「Toru」さんは、複素数を用いての解答は数学って本当に自由性があるんだなーと実感させられました。
tan nθ=((cosθ+isinθ)^n-(cosθ-isinθ)^n)/((cosθ+isinθ)^n+(cosθ-isinθ)^n)i
=((1+it)^n-(1-it)^n)/((1+it)^n+(1-it)^n)i はどこかで利用できないかなと思います。
「Kashiwagi」さん「浜田」さんの解答には、表現方法に苦労の後が感ぜられます。
「udonko」さんは、初めての参加でしたが、これからもよろしくお願いします。
受験生に、tanのn倍角の公式も作れば出てくることを知ってもらいたいです。