平成12年5月14日
[流れ星]第51回
数学的な応募問題<解答募集期間:5月3日〜5月20日>
[ピタゴラス数]
太郎さんは、有名なピタゴラスの定理(三平方の定理)x2+y2=z2の自然数解が次のように表されることを
本を読んで知っています。x=2mn、y=m2−n2、z=m2+n2 (ただし、m、nは互いに素で、m>nとする)
そこで、ピタゴラスの定理を満たす3つの自然数の組をピタゴラス数と言います。ちなみに、
(x,y,z)=(3,4.5),(5,12,13),(7,24,25),(8,15,17),
(9,40,41),(11,60,61),(12,35,37),(13,84,85),
(16,63,65),(20,21,29),(20,99,101),(28,45,53),
(33,56,65),(36,77,85),(39,80,89),(48,55,73),
(60,91,109),(65,72,97),・・・・・・ 、ここで、問題です。
問題1:x2+y2=z2の自然数解 x=2mn、y=m2−n2、z=m2+n2 をどのようにして導いてあるのか。
(ただし、m、nは互いに素で、m>nとする)
問題2:x2+y2=z2の自然数解の表現は上記以外、他にもあるのか。
問題3:ピタゴラス数の3つの自然数の積が60の倍数であること示してください。
質問:ピタゴラス数の3つの自然数に関して、何か共通して言えていることがあれば、教えてください。
<清川(kiyo)>さんからの問題文に対してのメールです。5月4日12時04分受信
いつもお世話になっています。清川(kiyo)です。
(X,Y,Z)=1 という条件がないのであれば、
m,nは互いに素という条件は不要ではないでしょうか?。
4^2+3^2=5^2 (m=2,n=1)
16^2+12^2=20^2 (m=4,n=2)
今後とも宜しくお願いします。
<水の流れ:コメント> 5月4日夜記入
そうですね。 (X,Y,Z)=1 という条件のつもりが
m,nは互いに素という条件で間に合っていると感じていました。特に、問題3の証明のときに、必要ではないかと思っていましたので。
問題作成には、細心の注意が必要ですね。有り難うございます。
No1<清川(kiyo)>さんからの解答です。5月5日11時57分受信
No2<清川(kiyo)>さんからの一部訂正解答です。5月6日23時29分受信 5月14日更新
解答
問題1
X^2+Y^2=Z^2 ........(1)
(X,Y,Z)=d>1 ならば d^2で割ればいいので、
便宜上d=1として考える。
(X,Y,Z)=1とする。
またX,Y,Zのどれか2つに1以外の公約数があれば残りの1つもこれを
約数とするから、どの2つも互いに素となる。
したがってX,Y,Zのなかに偶数は2つあることはない。
ここで、もしX,Yが奇数とすると、
X==1 (mod 2)
Y==1 (mod 2)
であるから、
X^2==1 (mod 4)
Y^2==1 (mod 4)
となる。(1)より
Z^2=X^2+Y^2==2 (mod 4)
となる。 平方数の剰余は2となりえないからこれは矛盾である。
したがってX,Yの1つは奇数、他は偶数でなければならない。
どちらにしても同じであるが証明のゴールから、
ここでは、Xを偶数、Yを奇数として考える。Zは奇数となる。
(1)から
X^2=(Z+Y)(Z−Y).........(2)
Xが偶数であれば、(Z+Y)は偶数(奇数+奇数は偶数)
(Z−Y)は偶数(奇数−奇数は偶数)
となる。
q,rを正の整数としたとき
Z+Y=2q,Z−Y=2r.........(3)
とおけば q>rで
Y=q−r、Z=q+r .......... (4)
(Y,Z)=1であるから(q,r)=1となる。
(3)を(2)に代入する。
X^2=4qr ................(5)
Xは偶数であるから、X=2X’とおけばX’^2=qr
(q,r)=1であるから、q,rはそれぞれが完全平方数で
なければならない。
q=a^2、r=b^2 とおけばa、bの1つは奇数、他の1つは偶数となる。
a>b、(a,b)=1で(2)、(4)、(5)から、(****)
X=2ab、Y=a^2-b^2、Z=a^2+b^2...(6)
でなければならない。
(1)の一般解はdを任意の正の整数とすれば、
X=2dab, Y=d(a^2-b^2), Z=d(a^2+b^2) となる。
証明の過程でa、bの1つは奇数、他の1つは偶数の
要請があったが、一般解が導かれた後では、この条件は不要となる。
(2mn)^2+(m^−n^2)^2=(m^2+n^2) は恒常式であ
るから、
任意の正の整数 m、nで,
X=2mn ,Y=|m^2−n^2|,Z=m^2+n^2....**
または、
X=|m^2−n^2|,Y=2mn, Z=m^2+n^2....**
と表現される。
問題2
問題1の証明の過程からすると、他の表現はないと思うのですが。
問題3
平方数を3の剰余で考える。
(3n-2)^2=9n^2-12n+4=3(3n^2-4n+1)+1==1 (mod 3)
(3n-1)^2=9n^2-6n+1=3(3n^2-3n)+1==1 (mod 3)
剰余は1である。
X,Yが同時に3の倍数でないとすると、
X^2==1 Y^2==1 (mod 3)
Z^2=X^2+Y^2==2 (mod 3)
これは矛盾である。 (平方数の3の剰余は1である。)
したがって、X,Yの少なくとも一つは3の倍数となる。 (*)
同様に平方数を4の剰余で考える。
(4n-3)^2=16n^2-24n+9=4(4n^2-6n+2)+1==1 (mod 4)
(4n-2)^2=16n^2-16n+4=4(4n^2-4n+1)==0 (mod 4)
(4n-1)^2=16n^2-8n+1=4(4n^2-2n)+1==1 (mod 4)
剰余は 0 または 1 である。
X,Yに4の倍数が一つもないと仮定すると、
Z^2=X^2+Y^2==2 (mod 4)
Zは矛盾する。
X,Y のうち少なくとも一つは 4 の倍数となる。 (**)
同様に平方数を5の剰余で考える。
(5n-4)^2=25n^2-40+16=5(5n^2-8n+3)+1==1 (mod 5)
(5n-3)^2=25n^2-30+9=5(5n^2-6n+1)+4==4 (mod 5)
(5n-2)^2=25n^2-20n+4=5(5n^2-4n)+4==4 (mod 5)
(5n-1)^2=25n^2-10n+1=5(5n^2-2n)+1==1 (mod 5)
剰余は 1 か 4である。
X,Y,Zに5の倍数が一つもないと仮定すると、
Z^2=X^2+Y^2==2 or 3 (mod 5)
Zは矛盾する。
したがって、X,Y,Zの少なくとも一つは5の倍数となる。 (***)
(*),(**),(***)から
X×Y×Zは60の倍数となる。
No3<浜田明巳>さんからの解答です。5月11日8時06分受信 5月14日更新
文字はすべて自然数とする.
x
2+y2=z2(x,y,zの最大公約数は1)ならば x=2mn,y=m
2−n2,z=m2+n2または x=m
2−n2,y=2mn,z=m2+n2(m>n,
m,nの最大公約数は1,
m,nが共に奇数となることはない)
であることを証明する.
xを奇数とし,x=2a−1とすると,
x
2=(2a−1)2=4a2−4a+1=4(a2−a)+1故にx
2を4で割った余りは1である.またxが偶数のとき,明らかにx
2を4で割った余りは0である.つまり整数の平方を4で割った余りは0または1である.
次にx,yが共に奇数と仮定すると,x
2+y2,すなわちz2を4で割った余りは2になる.これは矛盾する.つまりx,yが同時に奇数となることはない.
xを偶数とする.このときyも偶数とすると,zも偶数となり,x,y,zの最大公約数が1であることに反する.故にyは奇数となり,zも奇数である.
x
2=z2−y2=(z+y)(z−y)であり,z+y,z−yは偶数であるから,
x=2a,z+y=2b,z−y=2c,b>c
とすると,
(2a)2=2b×2c ∴a2=bc
b,cの最大公約数をgとし,
b=gb
',c=gc' (b',c'の最大公約数は1)とすると,
a
2=(gb')(gc')=g2b'c' ∴a/g=(b'c')1/2a/gは有理数なので,
(b'c')1/2も有理数である.b
'c'=d2とすると,
a=gd ∴x=2a=2gd
また
z+y=2b=2gb
' ,z−y=2c=2gc'から,
y=g(b'−c'),z=g(b'+c')
x,y,zの最大公約数は1なので,
g=1
∴x=2d,y=b
'−c',z=b'+c'ここで,
b'c'=d2(b',c'の最大公約数は1)
であるから,
b
'=m2,c'=n2,d=mn(m>n,m,nの最大公約数は1)とすることができる.
∴x=2mn,y=m
2−n2,z=m2+n2またm,nが共に奇数のとき,x,y,zはすべて偶数となり,矛盾するので,m,nが共に奇数となることはない.
(参考)自然数m,nを適当にとれば,
(x,y,z)=(3,4,5)(m=2,n=1)
(x,y,z)=(6,8,10)(m=3,n=1)
とすることはできるが,
(x,y,z)=(9,12,15)
とすることはできない.
x
2+y2=z2ならば xyzは60の倍数である
ことを証明する.
前問の証明から,
x=2mn,y=m2−n2,z=m2+n2
としてよい.
mまたはnは偶数なので,xは4の倍数であり,xyzも4の倍数である.
(1) m≡0(mod 3)またはn≡0(mod 3)のとき,
x≡0(
mod 3) ∴xyz≡0(mod 3)(2) m≡±1(mod 3),n≡±1(mod 3)のとき,
y=m
2−n2≡0(mod 3) ∴xyz≡0(mod 3)(1)〜(2)から,すべての場合において,xyz≡0(mod 3)
(3) m≡0(mod 5)またはn≡0(mod 5)のとき,
x≡0(
mod 5) ∴xyz≡0(mod 5)(4) m≡±1(mod 5),n≡±1(mod 5)
またはm≡±2(
mod 5),n≡±2(mod 5)のとき,y=m
2−n2≡0(mod 5) ∴xyz≡0(mod 5)(5) m≡±1(mod 5),n≡±2(mod 5)のとき,
またはm≡±2(
mod 5),n≡±1(mod 5)のとき,z=m
2+n2≡0(mod 5) ∴xyz≡0(mod 5)(3)〜(5)から,すべての場合において,xyz≡0(mod 5)
以上のことから,xyzは60の倍数である.
<水の流れ> 5月14日記入
問題3:ピタゴラス数の3つの自然数の積が60の倍数であること示してください。
こんな性質があるとは、太郎さんは最近まで、知りませんでした。
解答者の皆さんに感謝します。
<自宅>
mizuryu@aqua.ocn.ne.jp最初のページへもどる