平成13年3月30日

[流れ星]

        第71回数学的な応募問題

          <解答募集期間:3月18日〜4月1日>

[余弦のn倍角]

太郎さんは、先日、教科書「数学U」にある「三角関数」で、加法定理から、正弦、余弦、正接の2倍角の公式を導きました。
さらに、発展させて3倍角の公式をも紹介し、証明しました。
参考に、公式を書きておきます。正接は省略します。
【加法定理】
(1)sin(α+β)=sinαcosβ+cosαsinβ
(2)sin(α−β)=sinαcosβ−cosαsinβ
(3)cos(α+β)=cosαcosβ−sinαsinβ
(4)cos(α−β)=cosαcosβ+sinαsinβ
【2倍角の公式】
(1)sin2α=2sinαcosα
(2)cos2α=2cos α−1
【3倍角の公式】
(1)sin3α=3sinα−4sin α=sinα(4cos α−1)
(2)cos3α=4cos α−3cosα

そこで、生徒から、「先生!では、4倍角、5倍角、・・・、の定理を教えてください」と、嬉しい質問を受けました。
そのときは、「あるよ、でもあまり使わないからね、加法定理や2倍角、3倍角を使って導くことはできます。
自分でやってチャレンジしておいてください。」とその場をやり過ごしましたが、気になっています。

 太郎さんは、生徒の質問に答えねばなりません。太郎さんが高校生のときのノートを見ていたら、【ド・モアブルの定理】が書きてありました。そこに、ヒントらしきものがありました。
(cosθ+isinθ)=cos (nθ)+isin (nθ)

さらに、cos (nθ)を cosθ=xの多項式で表したn次式をT(x)とします。
sin (nθ)を sinθ×{cosθ=xの多項式}=sinθ×G(x)とします。
では、問題です。
問題1:n=2のとき、T(x)、G(x)をxで表してください。
問題2:n=3のとき、T(x)、G(x)をxで表してください。
問題3:n=4のとき、T(x)、G(x)をxで表してください。
問題4:T(x)をTn―1(x)とGn―1(x)の漸化式で表してください。
問題5:G(x)をTn―1(x)とGn―1(x)の漸化式で表してください。
問題6:T(x)をTn―1(x)とTn―2(x)の漸化式で表してください。
問題7:G(x)をGn―1(x)とGn―2(x)の漸化式で表してください。

NO1<浜田>さんからの解答 3/21、8時09分受信 3/25更新
71の解答です。添字が多いので,ワードで書きました。
便宜上  T=T(x)=cosnθ
  G=G(x)=sinnθ/sinθ とする. 定義から,
  T=cosθ=x……(1)
  T=cos2θ=2cosθ−1=2x−1……(2)
  G=sinθ/sinθ=1……(3)
  G=sin2θ/sinθ=2cosθ=2x……(4)
であり,
  T=cosnθ=cos{(n−1)θ+θ}=cos(n−1)θcosθ−sin(n−1)θsinθ
     =Tn−1cosθ−Gn−1sinθ=Tn−1cosθ−Gn−1(1−cosθ)
       =xTn−1−(1−x)Gn−1……(5)
  G=sinnθ/sinθ=sin{(n−1)θ+θ}/sinθ
       ={sin(n−1)θcosθ+cos(n−1)θsinθ}/sinθ
    =(Gn−1sinθcosθ+Tn−1sinθ)/sinθ=Gn−1cosθ+Tn−1
       =xGn−1+Tn−1……(6)
となる.
 (6)から,
  Tn−1=G−xGn−1
 (5)に代入すると,
  Gn+1−xG=x(G−xGn−1)−(1−x)Gn−1
  ∴Gn+1=2xG−Gn−1
  ∴G=2xGnー1−Gn−2……(7)
 (5)から,
  Gn−1=(xTnー1−T)/(1−x)
 (6)に代入すると,
  (xT−Tn+1)/(1−x)=x(xTn―1−T)/(1−x)+Tnー1
  ∴xT−Tn+1=xnー1−xT+(1−x)Tnー1
  ∴Tn+1=2xT−Tnー1
  ∴T=2xTnー1−Tnー2……(8)
 漸化式(7)を解く.
 まず特性方程式
  −2x+1=0
において,
    =x±(x−1)1/2(x−1≦0であることは気にしないで下さい)
 そこで,
  α=x+(x−1)1/2,β=x−(x−1)1/2……(9)
とおくと,
  G−αGnー1=β(Gnー1−αGnー2),
  G−βGnー1=α(Gnー1−βGnー1)
  ∴G−αGnー1=βn−2(G−αG),
   G−βGnー1=αn−2(G−βG)
 辺々をひくと,
  (β−α)Gnー1=βn−2(G−αG)−αn−2(G−βG)
  ∴G={βn−1(G−αG)−αn−1(G−βG)}/(β−α)
         =({x−(x−1)1/2}n−1[2x−{x+(x−1)1/2}]−{x+(x−1)1/2}n−1[2x−{x−(x−1)1/2}])
       /[{x−(x−1)1/2}−{x+(x−1)1/2}]
         =[{x−(x−1) 1/2}n−1]{x−(x−1)1/2}−{x+(x−1)1/2}n−1{x+(x−1)1/2}]/{−2(x−1)1/2}}
         =[{x−(x−1)1/2}n−1−{x+(x−1)1/2}]/{−2(x−1)1/2}
         =[Σ(0≦r≦n)n−r{−(x−1)1/2}
       −Σ(0≦r≦n)n−r{(x−1)1/2}]/{−2(x−1)1/2}
         =Σ(0≦r≦n)n−r[{−(x−1)1/2}−{(x−1)1/2  } ]
       /{−2(x−1)1/2}
 n=2m−1 or 2mのとき,
  G=Σ(r=1,3,5,...,2m-1)n−r[−2{(x−1)1/2}]
       /{−2(x−1)1/2}
    =Σ(r=1,3,5,...,2m-1)n−r(x−1)(r−1)/2
 rに2r−1を代入すると,
  G=Σ(1≦r≦m)2e−1n−2r+1(x−1)r−1……(10)


 漸化式(8)を解く.同様に,
  T={βn−1(T−αT)−αn−1(T−βT)}/(β−α)
      =({x−(x−1)1/2}n−1[(2x−1)−{x+(x−1)1/2}x]−{x+(x−1)1/2}n−1[(2x−1)−{x−(x−1)1/2}x])
      /{−2(x−1)1/2}
       =[{x−(x−1)1/2}n−1{x−1−x(x−1)1/2}−{x+(x−1)1/2}n−1{x−1+x(x−1)1/2}]
      /{−2(x−1)1/2}
       =[{x−(x−1)1/2}n−1{(x−1)1/2−x}
      −{x+(x−1)1/2}n−1{(x−1)1/2+x}]/(−2)
       =[−{x−(x−1)1/2}−{x+(x−1)1/2}]/(−2)
       =[{x−(x−1)1/2}+{x+(x−1)1/2}]/2
       =[Σ(0≦r≦n)n−r{−(x−1)1/2}
      +Σ(0≦r≦n)n−r{(x−1)1/2}]/2
       =Σ(0≦r≦n)n−r[{−}(x−1)1/2+{(x−1)1/2}]/2
 n=2m or 2m+1のとき,
  T=Σ(r=0,2,4,...,2m)n−r{2((x−1)1/2)/2
    =Σ(r=0,2,4,...,2m)n−r(x−1)r/2
 rに2rを代入すると,
  T=Σ(0≦r≦m)2rn−2r(x−1)……(11)
 (10)から,
  G=Σ(1≦r≦2)2r−14−2r(x−1)r−1
       (x−1)=4x−1
  G=Σ(1≦r≦2)2r−15−2r(x−1)r−1
       x(x−1)=8x−4x
 (11)から,
  T=Σ(0≦r≦1)2r3−2r(x−1)
       x(x−1)=4x−3x
  T=Σ(0≦r≦2)2r4−2r(x−1)
       (x−1)+(x−1)=8x−8x+1
 答は,
問題1:T(x)=2x−1,G(x)=2x
問題2:T(x)=4x−3x,G(x)=4x−1
問題3:T(x)=8x−8x+1,G(x)=8x−4x
問題4:T(x)=xTn−1(x)−(1−x)Gn−1(x),
問題5:G(x)=xGn−1(x)+Tn−1(x)
問題6:T(x)=2xTnー1(x)−Tn−2(x)
問題7:G(x)=2xGnー1(x)−Gn−2(x)

 参考までに,

 n=2m or 2m+1のとき,

  T()=Σ(0rm) 2rn−2r(−1)

 n=2m−1 or 2mのとき,

  G()=Σ(1rm) r−1n−2r+1(−1)r−1

<水の流れ:コメント> 25日記入:参考の部分は知りませんでした。ありがたいです。以後、授業の中で使っていきたいです。感謝します。

NO2<水の流れ> 3/30記入 今日T(x)とG(x)の計算を、漸化式を利用して求めてみました。
(x)=1                           G(x)=0
(x)=x                            G(x)=1
(x)=2x−1                                       (x)=2x
(x)=4x−3x                                       (x)=4x−1
(x)=8x−8x+1                                   (x)=8x−4x
(x)=16x−20x+5x                                (x)=16x−12x+1
(x)=32x−48x+18x−1                          (x)=32x−32x+6x
(x)=64x−112x+56x−7x                       (x)=64x−80x+24x−1
(x)=128x−256x+160x−32x+1          (x)=128x−192x+80x−8x
(x)=256x−576x+432x−120x+9x       (x)=256x−448x+240x−8x+1
10(x)=512x10−1280x+1120x−400x+50x −1  G10(x)=512x−1024x+672x−240x+10x
このTn(x)がチェビシェフ(ロシア、1821〜1894)の多項式と言われています。
これで、正弦や余弦のn倍角の公式が求められていきます。
ここで、とりあえず、やめます。順々に導くことができますから。

    <自宅>  mizuryu@aqua.ocn.ne.jp

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