平成13年11月15日
[流れ星]
第86回数学的な応募問題解答
<解答募集期間:11月1日〜11月15日>
[囲まれた面積]
今、太郎さんは学校で積分法を教えています。過去の入試問題を眺めていたら、東京工業大学に次のような問題がありました。
少し改題して紹介します。
第1象限内の曲線:xa+yb=1とx軸、y軸で囲まれた部分の面積をSとする。
問題1:a=b=2のとき、曲線は円になる。このときの面積Sを求めよ。
問題2:a=b=1のとき、曲線は直線になる。このときの面積Sを求めよ。
問題3:a=b=1/2のとき、曲線は放物線になる。このときの面積Sを求めよ。
問題4:a=b=2/3のとき、曲線はアステロイドになる。このときの面積Sを求めよ。
ここからが、入試問題です。
m,nを自然数とする。第1象限内の曲線:x1/m+y1/n=1とx軸、y軸で囲まれた部分の面積をS(m,n)とする。
問題5:S(m,1)を求めよ。
問題6:S(m,n+1)をS(m+1,n)とm,nを用いて表せ。
問題7:S(m,n)をm,nを用いて表せ
(別解はベーター関数を利用しても解けます)
NO1「kashiwagi」さんからの解答 11/07: 8時15分受信 更新11/15
問1.
求めるものは1/4の円の面積であるから、π/4
問2.
求めるものは直角を挟む2辺の長さが1の三角形であるから、1/2
問3.
√x+√y=1を変形し、y=1−2√x+x、これをx=0から1まで積分して1/6
問4.
x=cos3θ、y=sin3θとおくと、dx/dθ=−3cos2θsinθ、因ってdxをdθに置き換えて、θをπ/2から0まで積分すると、3π/32
問5.
x1/m+y=1より y=1−x1/mであるから、
S(m、1)=∫01(1−x1/m)dx=1/(m+1)
問6.
この問はいくらやってもできません。問題がS(m+1、n)を用いて表せと言うのはS(m、n)を用いてではないでしょうか?これだと表すことができますが―――。
S(m+1、n)=∫01(1−x1/m)n+1dx、ここで部分積分を使い、
=〔x(1−x1/m)n+1〕10+〔(n+1)/m〕∫01x1/m(1−x1/m)ndx
= (n+1)/m ∫01x1/m(1−x1/m)ndx
x1/m=1−(1−x1/m)であるから上記式に代入し、部分積分すると、
= 〔(n+1)/m〕 〔∫01(1−x1/m)ndx−∫01(1−x1/m)n+1dx〕
= 〔(n+1)/m〕〔S(m、n)−S(m+1、n)〕
因って、S(m+1、n)= 〔(n+1)/(m+n+1)〕・S(m、n)
問7.
問6の結果の漸化式を変形していくと、
S(m、n)= 〔(n)/(m+n)〕・S(m、n−1)
= 〔(n(n−1))/(m+n) (m+n−1)〕・S(m、n−2)
ここで、S(m、1)=1/(m+1)を使用して、
= m!n!/(m+n)!
<水の流れ:コメント>
実は、どこも間違っていないと思います。左辺がS(m+1、n)で計算を始められただけです。で・・・、S(m、n+1)でもう一度計算くだされば、良いだけのような気がします。チャレンジくだされば幸いです。
NO2「BossF」さんからの解答 11/07:18時25分受信 更新11/15
[解]
問題1:半径1の円の1/4ですから π/4 …答
問題2:対角線の長さが2の正方形の1/4ですから 1/2 …答
問題3:
S=∫(0〜1)ydx
=∫(0〜1){1-2x^(1/2)+x}dx
=[x-(4/3)x^(3/2)+(1/2)x^2](0〜1)
=1-4/3+1/2=1/6…答
問題4
x=(cosθ)^3 , y=(sinθ)^3 とおけることに注意します
S=∫(0〜1)ydx=∫(π/2〜0)y(dx/dθ)dθ
=∫(π/2〜0)[(sinθ)^3{-3(cosθ)^2}sinθ]dθ
=3∫(0〜π/2){(sinθ)^4}{(cosθ)^2}dθ
=3[∫(0〜π/2){(sinθ)^4}dθ-∫(0〜π/2){(sinθ)^6}dθ]
=3{(3/4)(1/2)(π/2)-(5/6)(3/4)(1/2)(π/2)}
=3π/32 …答
問題5
S(m,1)=∫(0〜1){1-x^(1/m)}dx
=1-m/(m+1)
=1/(m+1) …答
問題6
S(m,n+1)=∫(0〜1){1-x^(1/m)}^(n+1)dx
ここで、x=p^{m/(m+1)} とおくと
x ; 0→1でp ; 0→1であり
dx={m/(m+1)}p^{m/(m+1)-1}dp
であるから
置換し部分積分することによって
S(m,n+1)
=∫(0〜1)[{1-p^(1/(m+1))}^(n+1)・{m/(m+1)}p^{m/(m+1)-1}]dp
=[ 1-p^{1/(m+1)}^(n+1)p^{m/(m+1)}](0、1)
-∫(0〜1)[(n+1){1-p^(1/(m+1))}^n・{-1/(m+1)}]dp
=(n+1)/(m+1)・S(m+1,n) …答
問題6の別解
x=(cosθ)^(2m) , y=(sinθ)^(2n)
とおけることに注意します。
S(m,n)=∫(0〜1)ydx
=∫(π/2〜0)y(dx/dθ)dθ
=2m∫(0〜π/2)(sinθ)^(2n+1)(cosθ)^(2m-1)dθ
∴S(m+1,n)=2(m+1)∫(0〜π/2)(sinθ)^(2n+1)(cosθ)^(2m+1)dθ…@
また、
S(m,n)=∫(0〜1)xdy
=∫(0〜π/2)x(dy/dθ)dθ
=2n∫(0〜π/2)(sinθ)^(2n-1)(cosθ)^(2m+1)dθ
∴S(m,n+1)=2(n+1)∫(0〜π/2)(sinθ)^(2n+1)(cosθ)^(2m+1)dθ…A
@AよりS(m+1,n)/(m+1)=S(m,n+1)/(n+1)
i.e.S(m,n+1)=(n+1)/(m+1)・S(m+1,n)
こっちの方がすっきりしてますね、(^o^)
問題7
S(m,n)=n/(m+1)・S(m+1,n-1)
={n(n-1)}/{(m+1)(m+2)}・S(m+2,n-2)
=…
={n(n-1)…2}/{(m+1)(m+2)…(m+n-1)}・S(m+n-1,1)
={n(n-1)…2}/{(m+1)(m+2)…(m+n-1)(m+n)}(∵問6)
=(m!n!)/(m+n)!…答
どうしても、積分のあたりが、ごちゃごちゃしてしまって、見にくいと思いますが… (^^;;
NO3「浜田」さんからの解答 11/09:
8時36分受信 更新11/15
最初に,
S(m,n)=∫(0,1) {1−x^(1/m)}^ndx………(1)
であり,第1象限内で,
x^(1/m)+y^(1/n)=1
とx軸,y軸で囲まれた部分と,同じく
x^(1/n)+y^(1/m)=1
で囲まれた部分は合同であることから,
S(m,n)=S(n,m)………(2)
となることを確認しておく.
問題1:半径1の四分円となるので,
S=1/4・π・1^2
=π/4
問題4:y={1−x^(2/3)}^(3/2)であるから,
S=∫(0,1) {1−x^(2/3)}^(3/2)dx
x=(cosθ)^3,0≦x≦1とすると,
dx/dθ=3(cosθ)^2(−sinθ),π/2≧θ≧0,
{1−x^(2/3)}^(3/2)={1−(cosθ)^2}^(3/2)={(sinθ)^2}^(3/2)
=(sinθ)^3
∴S=∫(π/2,0) (sinθ)^3・3(cosθ)^2(−sinθ)dθ
=3∫(0,π/2) (sinθ)^4(cosθ)^2dθ
ここで,
(sinθ)^4(cosθ)^2=(sinθcosθ)^2・(sinθ)^2
=(sin2θ/2)^2・(sinθ)^2
={(1−cos4θ)/2}/4・(1−cos2θ)/2
=(1−cos2θ−cos4θ+cos2θcos4θ)/16
={1−cos2θ−cos4θ+1/2・(cos6θ+cos2θ)}/16
=(2−cos2θ−2cos4θ+cos6θ)/32
∴S=3/32・∫(0,π/2) (2−cos2θ−2cos4θ+cos6θ)dθ
=3/32・[2θ−1/2・sin2θ−1/2・sin4θ+1/6・sin6θ](0,π/2)
=3π/32
問題5:(1)から,
S(m,1)=∫(0,1) {1−x^(1/m)}dx
=[x−m/(m+1)・x^{(m+1)/m}](0,1)
=1−m/(m+1)
=1/(m+1)
問題6:(1)から,
S(m,n+1)=∫(0,1) {1−x^(1/m)}^(n+1)dx
=∫(0,1) x'{1−x^(1/m)}^(n+1)dx
=[x{1−x^(1/m)}^(n+1)](0,1)−∫(0,1) x・(n+1){1−x^(1/m)}^n・{−1/m・x^(1/m-1)}dx
=(n+1)/m・∫(0,1) x^(1/m){1−x^(1/m)}^ndx
∴mS(m,n+1)=(n+1)∫(0,1) [1−{1−x^(1/m)}]{1−x^(1/m)}^ndx
=(n+1)[∫(0,1) {1−x^(1/m)}^ndx−∫(0,1) {1−x^(1/m)}^(n+1)dx]
=(n+1){S(m,n)−S(m,n+1)}
=(n+1)S(m,n)−(n+1)S(m,n+1)
∴(m+n+1)S(m,n+1)=(n+1)S(m,n)
∴S(m,n+1)=(n+1)/(m+n+1)・S(m,n)………(3)
また,(2),(3)から,
S(m+1,n)=S(n,m+1)
=(m+1)/(m+n+1)・S(n,m)
=(m+1)/(m+n+1)・S(m,n)
∴S(m,n+1)=(n+1)/(m+1)・S(m+1,n)
問題7:(3)から,
S(m,n)=n/(m+n)・S(m,n−1)
=n(n−1)/{(m+n)(m+n−1)}・S(m,n−2)
=・・・
=n(n−1)・・・2/{(m+n)(m+n−1)・・・(m+2)}・S(m,1)
=n!/{(m+n)(m+n−1)・・・(m+2)(m+1)}
(∵問題5)
=m!n!/(m+n)!
問題2:S=S(1,1)
=1!1!/2!
=1/2
問題3:S=S(2,2)
=2!2!/4!
=1/6
NO4「浜田」さんからのコメント11/10: 13時29分受信 更新11/15
あれから,よく考えてみました.
積分計算で,
{1−x^(1/m)}^n
の指数nを減ずるのは簡単ですが,mを減ずるのは大変です.出来なくはないでしょうが.
したがって,S(m+1,………)をS(m,………)の式で表す計算力よりは,
S(m,n)=S(n,m)
に気付く頭の柔軟性を見ることを主眼として,東工大の先生は出題したのではないか,と思います.
ですから,
「直接S(m,n+1)をS(m+1,n)の式で表す」
よりは,
「一端S(m,n+1)をS(m,n)の式で表し,さらにS(m+1,n)をS(m,n)の式で表し,両方の式から,S(m,n+1),S(m+1,n)の関係式を求める」
方法でいいのではないか,と思います.
どうでしょうか?