平成29年10月29日
[流れ星]
第352回数学的な応募解答
<解答募集期間:10月1日〜10月29日>
[和の有界性]
Σ(k=1から∞)1/k2 =π2/6=1.64493・・・となることは知られています。下記のような“和の有界性”を証明する問題は高校生でも解ける範囲です。
<出典:「大学の数学」2012年2月号>
NO1「早起きのおじさん」 10/03 18時04分 受信 更新 10/29
問題1
初項1、公比 の無限等比級数は、2に収束します。
これと比較して考えます。
第n項までの和は、2よりも小さくなります。
2つの数列 と は、初項は等しいですが、
それ以外の項は、 の方が大きな値をとります。
正の数の大小とその逆数の大小とは、反対になります。
ならば、 です。
よって、
問題2
なので、 です。
平方数の逆数の和について、第2項以降を連続する2数の積の逆数に置き換えて、
問題3
なので、 です。
平方数の逆数の和について、ヒントの式に置き換えて、
問題4
(1)
正の数の大小とその逆数の大小とは、反対なので、
よって、
すると、nの個数は、 個です。
(2)
この問題を考えるときは、
となるnの個数とした方がやりやすいです。
nの個数は、 個です。
1)m=1のとき、 となるnは、n=1の1個
2)m=2のとき、 となるnは、n=2, 3の2個
3)m=3のとき、 となるnは、n=4, 5, 6, 7の4個
・・・
n)m=kのとき、 となるnは、 の 個
よってn=1からn=2k−1までの平方数の逆数の和( から までの和)は、
次の式で抑えることができます。
よって、
( )は、 k → ∞ のときです。
問題5
について調べます。
下のグラフは、 です。
(*)は下のグラフの水色の部分の面積です。
下のグラフのx=1からx=nまでの定積分は、黄色と水色の部分を合わせた面積です。
p>1なので、np−1は、無限大に発散するので、その逆数は0に収束します。
NO2「浜田明巳」 10/04 11時03分 受信 更新 10/29
問題1
図より,1≦x≦2のとき,1/22≦1/x2
2≦x≦3のとき,1/32≦1/x2
3≦x≦4のとき,1/42≦1/x2
・・・
∴Σ1≦k≦n1/k2≦1+∫1≦x≦ndx/x2
=1−[1/x]1≦x≦n
=1−(1/n−1)
=2−1/n
<2
∴Σ1≦k≦n1/k2<2
問題2
k≧2のとき,k2>k2−k=k(k−1)>0
∴1/k2<1/{k(k−1)}
=1/(k−1)−1/k
∴Σ1≦k≦n1/k2=1+Σ2≦k≦n1/k2
<1+Σ2≦k≦n{1/(k−1)−1/k}
=1+(1−1/n)
<2
∴Σ1≦k≦n1/k2<2
問題3
k≧1のとき,
k2>k2−1/4>0
∴1/k2<1/(k2−1/4)
=1/{(k−1/2)(k+1/2)}
=1/(k−1/2)−1/(k+1/2)
から,
Σ1≦k≦n1/k2<Σ1≦k≦n{1/(k−1/2)−1/(k+1/2)}
=2−1/(n+1/2)
<2
∴Σ1≦k≦n1/k2<2
問題4
(1)an=1/n2,1/22m<an<1/22(m−1)から,
1/22m<1/n2<1/22(m−1)
∴22(m−1)<n2<22m
n>0から,2m−1<n<2m
m,nは整数なので,2m−1+1≦n≦2m−1
故にnの個数は,
(2m−1)−(2m−1+1)+1=2m−1−1(個)
(2)mが正整数のとき,
Σ2m−1≦k≦2m−11/k2
=(1/2m−1)2+{1/(2m−1+1)}2+{1/(2m−1+2)}2+・・・+{1/(2m−1)}2
≦(1/2m−1)2・2m−1
=(1/2)m−1
であるから,2m−1≦n≦2m−1のとき,
Σ1≦k≦n1/k2≦Σ1≦k≦2m−11/k2
=1+1/2+(1/2)2+・・・+(1/2)m−1
={1−(1/2)m}/(1−1/2)
=2{1−(1/2)m}
=2−(1/2)m−1
<2
∴Σ1≦k≦n1/k2<2
問題5
p>1であり,問題1と同様に,
Σ1≦n<∞n−p=limn→∞Σ1≦k≦nk−p
≦limn→∞(1+∫1≦x≦nx−pdx)
=1+limn→∞{1/(1−p)・[x1−p]1≦x≦n}
=1+limn→∞1/(1−p)・(n1−p−1)
=1−1/(1−p)
=1+1/(p−1)
故にΣ1≦n<∞n−pは有限であり,数列{Σ1≦k≦nk−p}は単調増加数列である.
故にΣ1≦n<∞n−pは収束する.
NO3「二度漬け白菜」 18/18
21時56分 受信 更新 10/29
問題1:
任意の定数 p (p>1) に対して,次の不等式が成り立つ.
Σ[k=1..n](1/k^p) ≦ p/(p-1) -
1/((p-1)*n^(p-1))
(証明)
n=1のときは,
(左辺)=Σ[k=1..1](1/k^p)=1,
(右辺)=p/(p-1)-1/(p-1)=1
であるから,確かに不等式が成り立つ.
n≧2のときを考える.
正整数 k および,k≦x≦k+1 を満たすような x に対して,
0<1/(k+1)^p ≦ 1/x^p が成り立つ.よって,
∫[x=k,k+1](1/(k+1)^p)dx ≦ ∫[x=k,k+1](1/x^p)dx
つまり,
1/(k+1)^p ≦ ∫[x=k,k+1](1/x^p)dx
この式で,k=1,2,…,n-1 とおき,辺々加えると,
Σ[k=1..n-1](1/(k+1)^p) ≦ Σ[k=1..n-1]∫[x=k,k+1](1/x^p)dx
つまり,
Σ[k=2..n](1/k^p) ≦ ∫[x=1,n](1/x^p)dx
= 1/(p-1)-1/((p-1)*n^(p-1))
よって,
Σ[k=1..n](1/k^p) ≦
p/(p-1)-1/((p-1)*n^(p-1))
(証明終)
この不等式と,p/(p-1)-1/((p-1)*n^(p-1))<p/(p-1) であることとから,
Σ[k=1..n](1/k^p) < p/(p-1) ---(★)
であることがわかる.
p=2のときを考えて,
Σ[k=1..n](1/k^2) < 2
となる.
問題2:
n=1のときは,Σ[k=1..n](1/k^2)=1<2である.
n≧2のときを考える.
k≧2のとき,k^2>k*(k-1)>0 であるから,1/k^2<1/(k*(k-1)).
よって,
Σ[k=1..n](1/k^2)
=1+Σ[k=2..n](1/k^2)
<1+Σ[k=2..n](1/(k*(k-1)))
=1+Σ[k=2..n](1/(k-1)-(1/k))
=1+(1-1/2)+(1/2-1/3)+ … +(1/(n-1)-1/n)
=2-1/n
<2.
以上より,任意の正整数 n に対して,
Σ[k=1..n](1/k^2) < 2
が成り立つことが示せた.
問題3:
k≧1のとき,k^2>k^2-1/4>0 であるから,1/k^2<1/(k^2-1/4).
よって,
Σ[k=1..n](1/k^2)
<Σ[k=1..n]1/(k^2-1/4)
=Σ[k=1..n]4/(4*k^2-1)
=2*Σ[k=1..n](1/(2*k-1)-1/(2*k+1))
=2*((1/1-1/3)+(1/3-1/5)+ … +(1/(2*n-1)-1/(2*n+1))
=2*(1-1/(2*n+1))
=2-2/(2*n+1)
<2.
問題4:
(1)
1/2^(2*m)<a[n]<1/2^(2*(m-1)) より
1/2^(2*m)<1/n^2<1/2^(2*(m-1)).
これより,2^(m-1)<n<2^m.
これを満たすような n の個数は,
2^m - 2^(m-1) - 1 = 2^(m-1) -1 個 (答)
(2)
1/2^(2*m)<a[n]≦1/2^(2*(m-1))
を満たすような n の個数は高々 2^(m-1) 個.
よって,1/2^(2*m)<a[n]≦1/2^(2*(m-1))を
満たすような項 a[n] たちの和は,
(2^(m-1))*(1/2^(2*(m-1)))=1/(2^(m-1)) 以下である.
よって,
Σ[k=1..n](1/k^2)
=Σ[k=1..n]a[k]
<Σ[k=1..2^n]a[k]
≦Σ[m=1..n+1]1/(2^(m-1))
=2-(1/2)^n
<2.
問題5:
数列 {S[n]} (n=1,2,3,…) を,
S[n]=Σ[k=1..n](1/k^p)
で定義する.
全ての正整数 n に対して,S[n+1]>S[n]>0 が成り立つ.
また,問題1 で示した不等式 (★) から,
全ての正整数 n に対して,|S[n]|<p/(p-1)
であることがわかる.
以上のことから 数列 {S[n]} は収束する.
つまり,無限級数
Σ[k=1..∞](1/k^p)
は収束する.
-------------------------------------------------
Σ[k=1..∞](1/k)^2 = π^2/6
であることは,次のように考えれば高校数学の範囲で
証明できるようです.
以下の証明は,
『白熱! 無差別級数学バトル 近畿大学数学コンテスト問題集』 (日本評論社)
という本の,167〜169頁にあるものを参考にしました.
Σ[k=1..∞](1/k)^2 = π^2/6
(証明)
ド・モアブルの公式:
cos(m*θ)+i*sin(m*θ)=(cos(θ)+i*sin(θ))^m
において,右辺を二項定理を使って展開すると,
(右辺)
=(cos(θ)+i*sin(θ))^m
=(sin(θ))^m*(cot(θ)+i)^m
=(sin(θ))^m*Σ[k=0..m]comb(m,k)*(i^k)*(cot(θ))^(m-k).
よって,
cos(m*θ)+i*sin(m*θ)=(sin(θ))^m*Σ[k=0..m]comb(m,k)*(i^k)*(cot(θ))^(m-k)
となる.両辺の虚部をとると,
sin(m*θ)=(sin(θ))^m*Σ[k=0..floor((m-1)/2)]comb(m,2*k+1)*((-1)^k)*(cot(θ))^(m-2*k-1).
ここで,m=2*n+1 とおくと,
sin((2*n+1)*θ)=(sin(θ))^(2*n+1)*Σ[k=0..n]comb(2*n+1,2*k+1)*((-1)^k)*((cot(θ))^2)^(n-k)
となる.
f(x)=Σ[k=0..n]comb(2*n+1,2*k+1)*((-1)^k)*x^(n-k) とおくと,
f(x)は x の n 次多項式であって,先の等式は
sin((2*n+1)*θ)=(sin(θ))^(2*n+1)*f((cot(θ))^2)
と書ける.
0<x<π/2 のとき,sin(θ)≠0.このとき,
f((cot(θ))^2)=0
⇔ sin((2*n+1)*θ)=0
⇔ (2*n+1)*θ=k*π (k=1,2,…,n)
したがって,f(x)=0となるような x は,
x=(cot(k*π/(2*n+1)))^2 (k=1,2,…,n)
であり,これらがすべてである.
α[k]=(cot(k*π/(2*n+1)))^2
(k=1,2,…,n) とおくと,
f(x)=(2*n+1)*(x-α[1])*(x-α[2])*…*(x-α[n])
と因数分解できる.解と係数の関係より,
Σ[k=1..n](cot(k*π/(2*n+1)))^2
=Σ[k=1..n]α[k]
=(1/(2*n+1))*comb(2*n+1,3)
=n*(2*n-1)/3 --- (★★)
0<x<π/2 のとき,不等式
0<sin(x)<x<tan(x)
が成り立つ.この辺々を2乗し,逆数をとると,
(cot(x))^2<(1/x)^2<1+(cot(x))^2
を得る.
この不等式に x=k*π/(2*n+1) を代入し,さらに R=(π/(2*n+1))^2 を掛けると,
R*(cot(k*π/(2*n+1)))^2<(1/k)^2<R*(1+(cot(k*π/(2*n+1)))^2).
k=1 から n まで和をとると,
R*Σ[k=1..n](cot(k*π/(2*n+1)))^2<Σ[k=1..n](1/k)^2<R*Σ[k=1..n](1+(cot(k*π/(2*n+1)))^2).
ここで(★★)を用いて,
n*(2*n-1)*π^2/(3*(2*n+1)^2)<Σ[k=1..n](1/k)^2<2*n*(n+1)*π^2/(3*(2*n+1)^2)
を得る.ここで,
lim[n→∞]n*(2*n-1)*π^2/(3*(2*n+1)^2)
= π^2/6,
lim[n→∞]2*n*(n+1)*π^2/(3*(2*n+1)^2)
= π^2/6
であるから,はさみうちの原理より,
lim[n→∞]Σ[k=0..n](1/k)^2 = π^2/6
を得る.(証明終)
<水の流れ:この証明は高校生のも理解できそうなので、現場の人に知ってもらいたい。>
「皆さん、問題や質問に答えてください。一部でも構いませんから、解答とペンネームを添えて、メールで送ってください。待っています。