平成30年8月5日
[流れ星]
第362回数学的な応募解答
<解答募集期間:7月8日〜8月5日>
[モーザーの円]
興味深い数列があります。それは、数列:1,2,4,8,16,・・・」
第6項は一体どんな数が入るでしょうか。
過去、朝日新聞木曜日版にあった問題です。それがこの問題です
円周上にn個の点を取り、それらをすべて直線で結ぶ。このとき出来る領域の最大個数 をnで表わせ。また、この数列はパスカルの三角形の中に隠れています。発見してみてください。
注:この問題は1969年にレオ・モーザー(Leo
Moser)が初めて問題を提起したので、
モーザー数列と呼ばれている。
NO1「二度漬け白菜」 07/14 14時06分 受信
更新 8/5
[解答]
求める最大個数を n で表わすと,
(1/24)*(n^4-6*n^3+23*n^2-18*n+24)
となる.
これは二項係数の部分和
C(n-1,0)+C(n-1,1)+C(n-1,2)+C(n-1,3)+C(n-1,4)
に等しい.(答)
n≧3として考える.
円周上の n 個の点を頂点とする凸n角形を G とする.
G の n*(n-3)本の対角線のうち,どの3本も 一点で交わる
ことがない状況を考える.この条件下において円が分割
されてできる領域の個数を f(n) とする.
f(n)が求める最大個数である.
Gの辺と円の弧で作られる領域は全部で n 個ある.
Gの辺とGの対角線とで作られる領域の個数を a(n) とする.
f(n)=n+a(n) である.
いまから a(n) を求める.
Gの辺およびGの対角線によって,Gは多くの凸多角形に細分
される.細分された凸多角形全体の集合を S とする.
Sの元のうち,辺数が最多のものが,m角形であるとする.
つまり,Gの辺およびGの対角線によって,Gは,
3角形,4角形,5角形,…,m角形
に細分されるものとする.
Sの元のうち,j角形 (3≦j≦m)の個数を r_j
とする.
a(n)=r_3+r_4+r_5+…+r_m である.
j角形はj個の頂点を持つ.
よってSの元の頂点数の総和は,
3*r_3 + 4*r_4 + 5*r_5 + … + m*r_m
となる.
Sの元の頂点は,Gの頂点か或いはGの対角線の交点の
どちらかである.
Gの任意の頂点を P とする.
Sの元のうち, Pを頂点にもつものは,(n-2)個 だけある.
Gの任意の対角線の交点を Q とする.
Sの元のうち, Qを頂点にもつものは,4個 だけある.
Gの頂点数は n 個,Gの対角線の交点数は C(n,4) 個 であるから,次の等式が成り立つ.
3*r_3
+ 4*r_4 + 5*r_5 + … + m*r_m = (n-2)*n + 4*C(n,4) ---
(1)
凸j角形の内角の和は,(j-2)*180° である.
よって,Sの元の内角の和を合計したものは,
r_3*(3-2)*180°+ r_4*(4-2)*180°+ r_5*(5-2)*180°+ … + r_m*(m-2)*180°
=(r_3+2*r_4+3*r_5+
… +(m-2)*r_m)*180°
である.
Gの任意の対角線の交点 Q の周りの角度の合計は 360°
であり,Gの内角の和は (n-2)*180°であるので,次の等式が成り立つ.
(r_3+2*r_4+3*r_5+
… +(m-2)*r_m)*180°= C(n,4)*360°+ (n-2)*180°.
よって,
r_3+2*r_4+3*r_5+ … +(m-2)*r_m = 2*C(n,4)+(n-2) ---(2)
(1)-(2)より,
2*(r_3+r_4+r_5+…+r_m)=2*C(n,4)+(n-1)*(n-2).
よって,r_3+r_4+r_5+…+r_m=C(n,4)+(1/2)*(n-1)*(n-2).
つまり,a(n)=C(n,4)+(1/2)*(n-1)*(n-2).
よって,
f(n)
=n+a(n)
=n+C(n,4)+(1/2)*(n-1)*(n-2)
=(1/24)*(n^4-6*n^3+23*n^2-18*n+24).
(これは n=1,2 のときにも正しい結果を与える式となっている)
f(n)
=n+C(n,4)+(1/2)*(n-1)*(n-2)
=C(n,0)+C(n,2)+C(n,4)
=C(n-1,0)+C(n-1,1)+C(n-1,2)+C(n-1,3)+C(n-1,4)
であるから,f(n)はパスカルの三角形の第 n 段目において,
左から5番目までの値を合計したものになっている.
(以上)
NO2「早起きのおじさん」 07/17 22時26分 受信 更新 8/5
362解答 早起きのおじさん
●円周上に点がなければ、領域は1個です。
円周上に点が1個なら、結ぶ相手がないので領域も1個と考えます。
点が、2個から5個のときは、次の図のようになります。
点の個数を数列の順番と考えると、次のようです。
●点が6個の場合を考えます。
順に点を結んでいき、増える領域の個数を数えます。
(1)点を6個取っただけの初めの状態では、領域は{1}個です。
(2)点Aと、他の点(B、C、D、E、F)を結びます。
AとBで1個、AとCで1個、AとDで1個、AとEで1個、AとFで1個、それぞれ領域が増えます。
増える領域の個数は、{1、1、1、1、1}
(3)点Bと、他の点(C、D、E、F)を結びます。
BとCで1個、BとDで2個、BとEで3個、BとFで4個、それぞれ領域が増えます。
増える領域の個数は、{1、2、3、4}
(4)点Cと、他の点(D、E、F)を結びます。
CとDで1個、CとEで3個、CとFで5個、それぞれ領域が増えます。
増える領域の個数は、{1、3、5}
(5)点Dと、他の点(E、F)を結びます。
DとEで1個、DとFで4個、それぞれ領域が増えます。
増える領域の個数は、{1、4}
(6)点Eと、点Fを結びます。
増える領域の個数は、{1}
よって第6項は、
●点がn個の場合を考えます。
順に点を結んでいき、増える領域の個数を数えます。
(1)点をn個取っただけの初めの状態では、領域は{1}個です。
(2)点A1と、他の点(A2、A3、A4、・・・、An)を結びます。
順に1本ずつ線を引くと、1個ずつ領域が増えます。
増える領域の個数は、{1、1、1、・・・、1} [項数n−1]
(3)点A2と、他の点(A3、A4、A5、・・・、An)を結びます。
A2とA3で1個、A2とA4で2個、A2とA5で3個、・・・、A2とAnでn−2個、それぞれ領域が増えます。
増える領域の個数は、{1、2、3、・・・、n−2} [項数n−2]
(4)点A3と、他の点(A4、A5、A6、・・・、An)を結びます。
A3とA4で1個、A3とA5で3個、A3とA6で5個、・・・、A3とAnで2n−7個それぞれ領域が増えます。
増える領域の個数は、{1、3、5、・・・、2n−7} [項数n−3]
・・・
(k)Ak-1と、他の点(Ak、Ak+1、Ak+2、・・・、An)を結びます。
Ak-1とAkで1個、Ak-1とAk+1で1+(k−2)個、Ak-1とAk+2で1+2(k−2)個、・・・、Ak-1とAnで1+(n−k)(k−2)個それぞれ領域が増えます。
増える領域の個数は、{1、k−1、2k−3、・・・、(n−k)k−2(n−k)+1} [項数n−k+1]
・・・
(n−1) An-2と、他の点(An-1 、An)を結びます。
An-2とAn-1で1個、An-2とAnで1+(n−3)個、それぞれ領域が増えます。
増える領域の個数は、{1、n−2} [項数2]
(n) An-1と、他の点(An)を結びます。
An-1とAnで1個、領域が増えます。
増える領域の個数は、{1} [項数1]
以上の領域の個数を並べてみます。
(1) 1
[1個]
(2) 1、1、1、・・・・・・・・・・・・・・・、1 [n−1個]
(3) 1、2、3、・・・・・・・・、n−2 [n−2個]
(4) 1、3、5、・・・、2n−7 [n−3個]
・・・
(k) 1、k−1、2k−3、・・・、(n−k)k−2(n−k)+1 [n−k+1]
・・・
(n−1) 1、n−2 [2個]
(n) 1 [1個]
まとめると、(1)番目以外、(k)番目は、初項1、公差k−2の等差数列です。
(k)番目の領域の個数の合計は、
(1) 番目から(n)番目までの領域の個数の合計を求めます。
(A) の式でk=1とすると、
なので、
●パスカルの三角形を二項係数で表すと、次のようです。
パスカルの三角形は、横並びの二つの和の値がすぐ下の値という仕組みになっています。
つまり、 です。
この式を繰り返して用いると、
例えば、黄色の合計は、青ということです。
パスカルの三角形を具体的な数で書き直すと、次のようです。
点の個数が9個の場合の(1)番目から(9)番目までの数を左下がりに並べます。
左下がりの並びの合計を最後の行の右下に書き並べます。
黄色の合計が青ということです。
最後の行の横合計が求める数列の値です。
このような仕組みで求められる横並びの値を順に書き並べると、
この横並びの数の合計が、(B)の式の具体的な値です。
上のようになります。
(これを式(A)の表ということにします)
右端の値が調べている数列の値です。
桃色の部分が、パスカルの三角形と値が異なる部分です。
●パスカルの三角形の上からn番目左からk番目の値は、 です。
これと式(A)との差を求めると、
例えば、式(C)で、k=4とすると、
です。
この式で、n=6とすると、
これは、パスカルの三角形の から、1を引くと、(A)の表の最初の赤い部分の9を表します。
「早起きのおじさん」 07/18 14時28分 受信 更新 8/5
<早起きのおじさんから ご指摘ありがとうございました。
式(B)が4次式である理由がわかりました。
あとから見ると簡単なことだと思いました。>
●式(A)の表を書きます。
パスカルの三角形を書きます。
左から5番目までの合計が、上の表の横合計と一致します。
これを確認します。
となり、式(B)と一致します。