令和元年8月4日
[流れ星]
第376回数学的な応募問題
<解答募集期間:8月4日〜9月1日>
[△ABCのcot不等式]
<水の流れ:数種類の証明方法があります。複数の証明方法で解けた実感を味わっていただければ幸いです。>
NO1「浜田明巳」
08/05 17時53分 受信 更新 9/1
cotA+cotB+cotC≧√3
A+B+C=πから,cot(A+B)=cot(π−C)
∴(cosAcosB−sinAsinB)/(sinAcosB+cosAsinB)=1/tan(π−C)
∴(cotAcotB−1)/(cotB+cotA)=−1/tanC
∴cotAcotB−1=−cotC(cotA+cotB)
∴cotAcotB+cotBcotC+cotCcotA=1・・・(1)
ここで,
(cotA+cotB+cotC)2−3
=(cot2A+cot2B+cot2C+2cotAcotB+2cotBcotC+2cotCcotA)−3
=cot2A+cot2B+cot2C−1(∵(1))
=cot2A+cot2B+cot2C−(cotAcotB+cotBcotC+cotCcotA)(∵(1))
=1/2・{(cotA−cotB)2+(cotB−cotC)2+(cotC−cotA)2}≧0
∴(cotA+cotB+cotC)2≧3・・・(2)
cotA+cotB+cotC<0と仮定する.
cotB+cotC<−cotA=−cot{π−(B+C)}=cot(B+C)=(cotBcotC−1)/(cotB+cotC)
cotB+cotC>0と仮定すると,
(cotB+cotC)2<cotBcotC−1
∴cot2B+cotBcotC+cot2C<−1・・・(3)
ここで,
cot2B+cotBcotC+cot2C=(cotB+1/2・cotC)2+3/4・cot2C≧0
これは(3)に矛盾する.
∴cotB+cotC<0
∴cotB≦0またはcotC≦0
故に∠Bまたは∠Cは直角または鈍角である.
故に∠Aは鋭角である.
同様にして,cotC+cotA<0,cotA+cotB<0から,∠B,∠Cは鋭角である.
∠A,∠B,∠Cのすべてが鋭角となり,cotA>0,cotB>0,cotC>0
これは,cotA+cotB+cotC<0に反する.
∴cotA+cotB+cotC≧0
(2)より,cotA+cotB+cotC≧√3
<水の流れ:cotA+cotB+cotC≧0 で実際は>0です。等号の0は起こらないです>
これに対して、返事が以下です。しかし、後で、子細なことで反省しました。
「浜田明巳」
08/06 19時01分 受信 更新 9/1
(追加)
証明の流れは,まず,
(cotA+cotB+cotC)2≧3
を示す.
cotA+cotB+cotC<0と仮定すると,矛盾することから.
cotA+cotB+cotC≧0
∴cotA+cotB+cotC≧√3
したがって,cotA+cotB+cotC=0の場合が存在するかどうか,確かめなくてよいわけです.
だから,cotA+cotB+cotC≦0と仮定して,矛盾を示し,cotA+cotB+cotC>0としなかっただけです.
また,証明の最後に等号が成立する,すなわち,cotA+cotB+cotC=√3となる場合について,述べる必要はありません.
問題に要求されていないからです.
よけいな事を書いて,そこで間違って,減点されてもつまらない.
しかし,入試の解答では,
cotA−cotB=cotB−cotC=cotC−cotA=0
すなわち,
cotA=cotB=cotC
となり,∠A=∠B=∠C
よって,△ABCは正三角形のとき,等号成立としておいた方がよいでしょう.
古めかしい考えの採点者に当たった場合,減点されてしまうかも知れません.
受験者は採点者を選べない.
「浜田明巳」
08/07 18時50分 受信 更新 9/1
(別解その1)
∠Aを最大角とすると,0<∠B<π/2,0<∠C<π/2
Aから辺BCに垂線AHを下ろすと,
cotB=BH/AH,cotC=CH/AH
∴cotB+cotC=BC/AH
また,
cotA=cot{π−(B+C)}=−cot(B+C)
=(1−cotBcotC)/(cotB+cotC)
={1−(BH・CH)/AH2}/(BC/AH)
=AH/BC−(BH・CH)/(BC・AH)
ここで,BC=a,AH=h,BH=ka,0<k<1とすると,
cotA+cotB+cotC=h/a−{ka・(1−k)a}/(ah)+a/h
=h/a+a/h・(k2−k+1)
x=a/hとすると,
与式=(k2−k+1)x+1/x
(k2−k+1)x>0,1/x>0より,相加平均と相乗平均の関係から,
与式≧2(k2−k+1)1/2
f(k)=k2−k+1とすると,0<k<1より,
f(k)=(k−1/2)2+3/4≧3/4(f(1/2)=3/4)
∴与式≧2(3/4)1/2=√3
故に題意は示された.
念の為に,等号が成立する場合を調べる.
(k2−k+1)x=1/x,k=1/2より,
x2=4/3
x>0から,
x=2/√3=a/h
∴h=√3/2・a
∴AH=√3/2・BC
また,BH=CH=a/2
故に△ABCは正三角形である.
「浜田明巳」
08/08 19時15分 受信 更新 9/1
(別解その2)
∠Aを最大角とすると,0<∠B<π/2,0<∠C<π/2
座標系を導入する.
B(0,0),C(a,0),A(b,c),0<b<a,c>0とすると,
cotB=b/c,cotC=(a−b)/c
∴cotB+cotC=a/c
また,
cotA=−cot(B+C)=(1−cotBcotC)/(cotB+cotC)
={1−(b/c)・(a−b)/c}/(a/c)
=c/a−{b(a−b)}/(ac)
∴左辺=c/a+a/c−{b(a−b)}/(ac)
ここで,b=ak,0<k<1とすると,
左辺=c/a+a/c−{ak・(1−k)a}/(ac)
=c/a+a/c・(1−k+k2)
以下,別解その1と同様.
(別解その3)
∠Cを最大角とすると,cotA>0,cotB>0
このとき,
cotA+cotB+cotC=cotA+cotB−cot(A+B)
=cotA+cotB+(1−cotAcotB)/(cotA+cotB)
={(cotA+cotB)2+(1−cotAcotB)}/(cotA+cotB)
=(cot2A+cotAcotB+cot2B+1)/(cotA+cotB)
ここで,x=cotA,y=cotBとし,
f(x,y)=(cot2A+cotAcotB+cot2B+1)−√3・(cotA+cotB)
=x2+y2+xy−√3・x−√3・y+1
とすると,
f(x,y)=x2+(y−√3)x+(y2−√3・y+1)
={x+(y−√3)/2}2−1/4・(y2−2√3・y+3)+(y2−√3・y+1)
={x+(y−√3)/2}2+3/4・y2−√3/2・y+1/4
={x+(y−√3)/2}2+(√3/2・y−1/2)2≧0
等号は,x+(y−√3)/2=√3/2・y−1/2=0,すなわち,x=y=1/√3のとき,成立する.
∴f(x,y)=(cot2A+cotAcotB+cot2B+1)−√3・(cotA+cotB)≧0
cotA+cotB>0より,
(cot2A+cotAcotB+cot2B+1)/(cotA+cotB)≧√3
∴cotA+cotB+cotC≧√3
等号が成立するとき,cotA=cotB=1/√3
∴∠A=∠B=π/3
故に△ABCは正三角形である.
(別解その4)
f(x,y)=x2+y2+xy−√3・x−√3・y+1より,
fx=2x+y−√3
fy=2y+x−√3
ここで,fx=fy=0とすると,
2x+y=√3,x+2y=√3
∴x=y=1/√3
また,f(1/√3,1/√3)=1/3+1/3+1/3−1−1+1=0
limx→∞f(x,y)=∞,limy→∞f(x,y)=∞
故にf(x,y)は,x=y=1/√3のとき,極小,かつ最小.
以下,別解その3と同様.
NO2「二度漬け白菜」 08/18 11時35分 受信
更新 9/1
[解答]
三角形ABCにおいて
cot(A)+cot(B)+cot(C)≧3^(1/2)
が成り立つ.
(証明)
三角形ABCを,xy直交座標に置いて考える.
A,B,Cの座標をそれぞれ
A(0,0),B(1,0),C(x,y) (ただし,y>0)
と設定する.
三角形ABCの面積をSとすると,S = y/2 である.
余弦定理より,
-a^2+b^2+c^2=2*b*c*cos(A)=2*b*c*sin(A)*cot(A)=4*S*cot(A).
つまり,
-a^2+b^2+c^2 = 4*S*cot(A) --- (1)
が成り立っている.
同様に,余弦定理を適用することによって,
a^2-b^2+c^2 = 4*S*cot(B) --- (2)
a^2+b^2-c^2 = 4*S*cot(C) --- (3)
を得る.
(1),(2),(3) の辺々を加えて,
a^2+b^2+c^2 = 4*S*(cot(A)+cot(B)+cot(C)).
よって,
cot(A)+cot(B)+cot(C)
=(a^2+b^2+c^2)/(4*S)
=(x^2-x+1+y^2)/y
=3^(1/2) + ((x-1/2)^2)/y + ((3/(4*y))^(1/2)-y^(1/2))^2
≧3^(1/2).
(等号は x=1/2 かつ y=(3/4)^(1/2) のときのみ成り立つ)
以上より,不等式
cot(A)+cot(B)+cot(C)≧3^(1/2)
が成り立つことを示せた.
等号が成立するのは 三角形ABCが正三角形のときだけである.(証明終)
(別解)
A≦B≦C と仮定しても一般性を失わない.
0<A≦B<π/2
であるから sin(A),cos(A),sin(B),cos(B)の値はすべて正である.
cot(A)=X, cot(B)=Y とおく.
cot(C)
=cos(C)/sin(C)
=cos(Π-(A+B))/sin(Π-(A+B))
=-cos(A+B)/sin(A+B)
=sin(A)*sin(B)/sin(A+B) - cos(A)*cos(B)/sin(A+B)
=1/(sin(A+B)/sin(A)*sin(B)) - 1/(sin(A+B)/cos(A)*cos(B))
=1/((cos(A)/sin(A))+(cos(B)/sin(B))) - 1/((sin(A)/cos(A))+(sin(B)/cos(B)))
=1/(X+Y) - 1/(1/X + 1/Y)
=(1-X*Y)/(X+Y).
よって,
cot(A)+cot(B)+cot(C)
=X+Y+(1-X*Y)/(X+Y)
=((3*(X+Y)/4)^(1/2)-(1/(X+Y))^(1/2))^2 + (1/4)*((X-Y)^2)/(X+Y) + 3^(1/2)
≧3^(1/2).
(等号は (3*(X+Y)/4)^(1/2)=(1/(X+Y))^(1/2) かつ X=Y のときのみ,
すなわち X=Y=3^(-1/2) のときのみ成立)
---------------------------------------------------
今回の問題の不等式 cot(A)+cot(B)+cot(C)≧3^(1/2)
は,
次の不等式と同値です.
a^2+b^2+c^2≧4*3^(1/2)*S ---(★)
(★)を,「Weitzenbockの不等式」と言うそうです.
多くの証明が知られているようです.
https://math.stackexchange.com/questions/2143589/proofs-of-the-weitzenbock-inequality-a2b2c2-geq-4-sqrt3-cdot-textare
また,任意の三角形ABCと任意の自然数 n に対して,不等式
(cot(A))^n + (cot(B))^n + (cot(C))^n ≧ 3*3^(-n/2) ---(★★)
か成り立ちます.
下記ファイル 37頁の 2.65
https://www.isinj.com/mt-usamo/Geometric%20Inequalities%20-%20Bottema,%20et.%20al.%20(1968).pdf
(証明)
A≦B≦Cとしても一般性を失わない.
|cot(A)|≧|cot(B)|≧|cot(C)|であるから
任意の自然数 n に対して
(cot(A))^n≧(cot(B))^n≧(cot(C))^n.
n=1のときには(★★)は成り立つ.
n=kのときに(★★)が成り立つと仮定する.
チェビシェフの不等式により,
(cot(A))^(k+1)+(cot(B))^(k+1)+(cot(C))^(k+1)
≧((cot(A))^k+(cot(B))^k+(cot(C))^k)*(cot(A)+cot(B)+cot(C))/3
≧ (3*3^(-k/2))*(3^(1/2))/3
=3*3^(-(k+1)/2).
よってn=k+1のときにも(★★)は成り立つ.(終)
(以上)
<水の流れ:いろんなことが勉強になり、凄く感謝しています>
NO3「早起きのおじさん」 08/22 17時41分 受信 更新 9/1
●「cot」について、確認しておきます。
直角三角形ABCで、
直角三角形AB’C’で、
鋭角のとき、「cot」は角が小さくなると、値が大きくなります。
●三角形が鋭角三角形のときは、三角比の値が正です。
3個の数が正のとき、相加平均と相乗平均の関係から次の不等式が成立します。
等号は、3個の数がすべて等しいときです。
つまり、 のときです。
よって、
○次に直角三角形のときをみてみます。
とします。
○さらに鈍角三角形のときをみてみます。
とします。
下線部分は、直角三角形AB’Cを考えています。
●別の方法考えます。
上の図で、 とおきます。
と はお互い関係がないので、 は正の実数の値を自由にとれます。
(AかB)が鈍角になるような場合は、辺ACが水平になるように三角形を置き直し(AかB)とCの名前を入れ替えます。
(あるいは、上でみたように直角三角形や鈍角三角形の場合、「cot」の値の和は、2以上なので考慮の必要がないとします)
ここで、 とおきます。
x、yは正と考えます。
分母が正なので、分子=0とすると、
(yは正なので)
このyでzは極小値をとるので、zに入れると、
分母が正なので、分子=0とすると、
より、
このxで極小値をとるので、zに入れると、
「早起きのおじさん」 08/29 16時29分 受信 更新 9/1
●直線m、nの幅は1とします。
〇先ず正三角形で様子をみます。
△ABCの辺ACをm上に置きます。
ABとnとの交点から、mに垂線を下ろします。(垂線の足X)
すると、AX=cotAです。
△ABCを左に回転し、Xに頂点Bを重ね、辺BAをm上に置きます。
BCとnとの交点から、mに垂線を下ろします。(垂線の足Y)
すると、BY=cotBです。
△ABCを左に回転し、Yに頂点Cを重ね、辺CBをm上に置きます。
CAとnとの交点から、mに垂線を下ろします。(垂線の足Z)
すると、CZ=cotCです。
はすぐにわかります。
〇次に一般の三角形でやってみます。
(この例は、∠Aは60°より小さく、∠B、∠Cは60°より大きいとします)
△ABCの辺ACをm上に置きます。
ABとnとの交点から、mに垂線を下ろします。(垂線の足X)
すると、AX=cotAです。
△ABCを左に回転し、Xに頂点Bを重ね、辺BAをm上に置きます。
BCとnとの交点から、mに垂線を下ろします。(垂線の足Y)
すると、BY=cotBです。
△ABCを左に回転し、Yに頂点Cを重ね、辺CBをm上に置きます。
CAとnとの交点から、mに垂線を下ろします。(垂線の足Z)
すると、CZ=cotCです。
〇さて、図の黄緑の線は、正三角形を置いたときのものです。
∠Aは60°より小さいので、cotAはcot60°より大きいです。
∠B、∠Cは60°より大きいので、cotB、cotCはcot60°より小さいです。
〇以下、上の例の定性的な説明をします。
三角形の内角の和は、一定です。(180°)
60°より小さい角の60°より小さい分θと、60°より大きい角の60°より大きい分の和は等しくなります。
∠Aは60°よりθ小さいとします。
∠B、∠Cは60°より大きいのですが、合計すると、60°よりθ大きくなります。
図のような△STBを考えます。
SBはcotAがcot60°より大きい分です。(SB=cotA−cot60°)
ST(=SD)はcot(60°+θ)がcot60°より小さい分です。(ST=cot60°−cot(60°+θ))
SBの対角は60°+θ、STの対角は60°−θなので、SB>ST(=SD)
つまり、三角形の内角が60°より小さくなったことでcot60°より大きくなった「cot」の増加分SBは、
60°より大きいことでcot60°より小さくなった「cot」の減少分STより大きいのです。
もし三角形の内角が、60°−θ、60°、60°+θなら、「cot」の和は、SB−SDの分大きくなります。
内角がさらにもうθ小さくなると、上の図のさらにBEの分「cot」の値が大きくなります。
〇角が小さくなるにつれ増加分は増えていき、角が大きくなるにつれて減少分は減っていきます。
正三角形からずれればずれるほど、「cot」の和は、大きくなっていきます。
「早起きのおじさん」 08/30 17時04分 受信 更新 9/1
●おまけ
微分の感覚で見てみます。
直角三角形OABの2辺の長さは、1とcotθです。
斜辺は です、。
これは、 の両辺を正弦(sin)の2乗で割った式を考えるとわかりやすいです。
図のACが角の微小変量dθに対する余接(cot)の微小変量d(cotθ)です。
向きを考えて(左を「−」とします)、−d(cotθ)とします。
ADは、 、 です。
直角三角形CADより、
これは、「cot」の導関数です。
微小変量は、
この式は、「cot」は角θが小さい方が微小変量の絶対値が大きくなることを示しています。
これは、前回の解答を裏付けています。
NO4 水の流れ 準備していた解答です。