平成18年10月22日
[流れ星]
第179回数学的な応募問題解答
<解答募集期間:10月1日〜10月22日
[第n次導関数]
皆さん、次の問題にチャレンジください。
fn(x)=xn―1log x のとき、次の問に答えよ。
ただし、log x は自然対数とする。
問1:n=1のとき、第1次導関数 f′(x)を求めよ。
問2:n=2のとき、第2次導関数 f′′(x)を求めよ。
問3:n=3のとき、第3次導関数 f′′′(x)を求めよ。
問4:関数fn(x)の第n次導関数 f(n)(x)を類推して、nを用いて求めよ。
問5:関数fn(x)の第n次導関数 f(n)(x)の類推が正しいことを、数学的帰納法で証明せよ。
NO1「uchinyan」10/02 13時32分受信
2回目に受信したものを掲載します。
「uchinyan」10/04 17時19分受信
更新10/21
第179回数学的な応募問題
[第n次導関数]
fn(x) = x^(n-1) * log(x)
以下では、fn の n 階微分を fn^{n} などと書くことにします。
問1:
f1(x) = log(x) なので、
f1'(x) = 1/x
問2:
f2(x) = x * log(x) なので、
f2'(x) = log(x) + x * 1/x = log(x) + 1
f2''(x) = 1/x
問3:
f3(x) = x^2 * log(x) なので、
f3'(x) = 2 * x * log(x) + x^2 * 1/x = 2 * x * log(x) + x
f3''(x) = 2 * log(x) + 2 * x * 1/x + 1 = 2 * log(x) + 3
f3'''(x) = 2/x
問4:
念のために、f4^{4}(x) を求めてみます。
f4(x) = x^3 * log(x) なので、
f4'(x) = 3 * x^2 * log(x) + x^3 * 1/x = 3 * x^2 * log(x) + x^2
f4''(x) = 6 * x * log(x) + 3 * x^2 * 1/x + 2 * x = 6 * x * log(x) + 5 * x
f4'''(x) = 6 * log(x) + 6 * x * 1/x + 5 = 6 * log(x) + 11
f4^{4}(x) = 6/x
これらからすると、
fn^{n}(x) = (n-1)!/x
と予想されます。
なお、問5:の(別解)で使うので、
fn^{n-1}(x) = (n-1)! * log(x) + c, c は 0 であってもよい x によらない定数
も、予想しておきます。
問5:
fn(x) = x^(n-1) * log(x) のとき、fn^{n}(x) = (n-1)!/x を数学的帰納法で証明します。
・n = 1 の場合
問1:より、f1^{1}(x) = f1'(x) = 1/x = 0!/x = (1-1)!/x なので、成立。
・n = k で成立した、つまり、fk^{k}(x) = (k-1)!/x とします。
このとき、n = k+1 では、
fk+1(x) = x^k * log(x)
fk+1^{1}(x) = (fk+1(x))' = (x^k * log(x))' = k *
x^(k-1) * log(x) + x^k * 1/x
= k * fk(x) + x^(k-1)
なので、(x^(k-1))^{k} = 0 に注意すると、
fk+1^{k+1}(x) = (fk+1^{1}(x))^{k} = k * fk^{k}(x)
帰納法の仮定より
fk+1^{k+1}(x) = k * (k-1)!/x = k!/x = ((k+1)-1)!/x
となり、成立します。
以上で、
fn^{n}(x) = (fn^{n-1}(x))' = (n-1)!/x
がいえました。
(別解)
若干複雑ですが、次のようにしてもできます。
まず、
fn(x) = x^(n-1) * log(x) = x * (x^(n-2) * log(x)) = x * fn-1(x)
に注意しておきます。そして、m に関する式
fn^{m}(x) = m * fn-1^{m-1}(x) + x * fn-1^{m}(x) ----- (A)
を、証明します。これは、
・m = 1 の場合
fn^{1}(x) = (fn(x))' = (x * fn-1(x))' = fn-1(x) + x * fn-1^{1}(x)
= 1 * fn-1^{0}(x) + x * fn-1^{1}(x)
で、成立します。
・m = k で成立したとして m = k+1 の場合
fn^{k+1}(x) = (fn^{k}(x))' = (k * fn-1^{k-1}(x) + x * fn-1^{k}(x))'
= k * fn-1^{k}(x) + fn-1^{k}(x) + x * fn-1^{k+1}(x)
= (k+1) * fn-1^{k}(x) + x * fn-1^{k+1}(x)
で、成立します。
これで、(A) がいえました。
さて、次に、(A) を使って、
fn^{n-1}(x) = (n-1)! * log(x) + c, c は 0 であってもよい x によらない定数
fn^{n}(x) = (fn^{n-1}(x))' = (n-1)!/x
を証明します。
・n = 1 の場合
問1:から、
f1^{0}(x) = f1(x) = log(x)
f1^{1}(x) = (f1(x))' = 1/x
で、明らかです。
・n = k のときに両式が成立するとして、n = k+1 の場合
(A) で、m = k, n = k+1 として、
fk+1^{k}(x)
= k * fk^{k-1}(x) + x * fk^{k}(x)
帰納法の仮定より
= k * ((k-1)! * log(x) + c) + x * ((k-1)!/x)
= k! * log(x) + (k! * c + (k-1)!)
ここで、k! * c + (k-1)! は x によらない定数なので改めて c とおけて
= k! * log(x) + c
となります。また、
fk+1^{k+1}(x) = (fk+1^{k}(x))' = (k! * log(x) + c)' = k!/x
となり、成立します。
以上で、
fn^{n}(x) = (fn^{n-1}(x))' = (n-1)!/x
がいえました。
(考察)
今回の出題の意図とは外れそうですが、高階微分の計算でよく出てくるライプニッツの公式
(f(x) * g(x))^{n} = 納k=0,n] nCk * f^{n-k}(x) * g^{k}(x)
を使ってもできます。もっとも、この公式の証明自体は次のように数学的帰納法で行うのが自然なので、
証明付きならば、出題の意図とも合致するのかもしれません。
[ライプニッツの公式の証明]
・n = 1 の場合
(f(x) * g(x))^{1} = (f(x) * g(x))' = f'(x) * g(x) + f(x) * g'(x)
= 納k=0,1] 1Ck * f^{1-k}(x) * g^{k}(x)
で、成立。
・n = m で成立したとして n = m+1 の場合
(f(x) * g(x))^{m+1} = ((f(x) * g(x))^{m})'
= (納k=0,m] mCk * f^{m-k}(x) * g^{k}(x))'
= 納k=0,m] mCk * (f^{m-k+1}(x) * g^{k}(x) +
f^{m-k}(x) * g^{k+1}(x))
= mC0 * f^{m+1}(x) * g^{0}(x) + 納k=0,m] (mCk + mC(k+1)) * f^{m-k}(x) * g^{k+1}(x)
ここで、
mCk + mC(k+1) = m!/(m-k)!k!
+ m!/(m-k-1)!(k+1)! = (m+1)!/(m-k)!(k+1)! = (m+1)C(k+1)
mC0 = 1 = (m+1)C0
なので、
= (m+1)C0 * f^{m+1}(x) * g^{0}(x) + 納k=0,m] (m+1)C(k+1) * f^{m+1-(k+1)}(x) *
g^{k+1}(x)
= (m+1)C0 * f^{m+1}(x) * g^{0}(x) + 納k=1,m+1] (m+1)Ck * f^{m+1-k}(x) * g^{k}(x)
= 納k=0,m+1] (m+1)Ck * f^{m+1-k}(x) * g^{k}(x)
で、成立。
[証明終]
そこで、f(x) = x^(n-1), g(x) = log(x) として、これを使うと、
f^{k}(x) = (n-1)!/(n-1-k)! * x^(n-1-k) for 0 <= k <= n-1, 0 for k >= n
g^{k}(x) = (-1)^(k-1) * (k-1)! * x^(-k)
なので、本当は、これ自体も数学的帰納法で証明するのでしょうが、簡単だからいいとして、
fn^{n}(x)
= 納k=1,n] nCk * (n-1)!/(n-1-(n-k))! * x^(n-1-(n-k))
* (-1)^(k-1) * (k-1)! * x^(-k)
k = 0 の項は f^{n}(x) = 0 なので存在しないことに注意。
= 納k=1,n] nCk * (n-1)!/(k-1)! * x^(k-1) * (-1)^(k-1)
* (k-1)! * x^(-k)
= 納k=1,n] nCk * (-1)^(k-1) * (n-1)! * 1/x
= (納k=1,n] nCk * (-1)^(k-1)) * (n-1)!/x
ここで、二項定理
(a + b)^n = 納k=0,n] nCk * a^(n-k) * b^k
より、a = 1, b = -1 とおくと、
(1 - 1)^n = 納k=0,n] nCk * 1^(n-k) * (-1)^k
0 = 1 + 納k=1,n] nCk * 1^(n-k) * (-1)^k^n = 1 - 納k=1,n] nCk * 1^(n-k)
* (-1)^(k-1)
納k=1,n] nCk * 1^(n-k) * (-1)^(k-1) = 1
になり、
fn^{n}(x) = (n-1)!/x
がいえます。
しかし、結構大変です...
NO2「kashiwagi」10/03 08時09分受信
更新10/21
NO3「浜田明巳」10/03 11時13分受信 更新10/21
第179回数学的な応募問題 [第n次導関数]
fn(x)=xn−1logx
問1:f1(x)=logx
∴f1'(x)=1/x
問2:f2(x)=xlogx
∴f2'(x)=logx+x・1/x=logx+1
∴f2''(x)=1/x
問3:f3(x)=x2logx
∴f3'(x)=2xlogx+x2・1/x=x(2logx+1)
∴f3''(x)=(2logx+1)+x・2/x=2logx+3
∴f3'''(x)=2/x
問4:f4(x)=x3logx
∴f4'(x)=3x2logx+x3・1/x=x2(3logx+1)
∴f4''(x)=2x(3logx+1)+x2・3/x=x(6logx+5)
∴f4'''(x)=(6logx+5)+x・6/x=6logx+11
∴f4(4)(x)=6/x=3!/x
故にfn(n)(x)=(n−1)!/xと類推できる.
問5:問4の結果を数学的帰納法で証明する.
i). n=1のとき,明らかに成立する.
ii). n=k(≧1)のとき,fk(k)(x)=(k−1)!/xと仮定する.
fk+1(x)=xklogx=xfk(x)であるから,
fk+1'(x)=fk(x)+xfk'(x)
∴fk+1''(x)=fk'(x)+fk'(x)+xfk''(x)=2fk'(x)+xfk''(x)
∴fk+1'''(x)=2fk''(x)+fk''(x)+xfk'''(x)=3fk''(x)+xfk'''(x)
故にmを自然数とするとき,fk+1(m)(x)=mfk(m−1)(x)+xfk(m)(x)と類推できる.これを数学的帰納法で証明する.
1). m=1のとき,明らかに成立する.
2). m=p(≧1)のとき,fk+1(p)(x)=pfk(p−1)(x)+xfk(p)(x)と仮定する.
∴fk+1(p+1)(x)=pfk(p)(x)+fk(p)(x)+xfk(p+1)(x)=(p+1)fk(p)(x)+xfk(p+1)(x)
故にm=p+1のときも成立する.
1).,2).から任意の自然数mについて,fk+1(m)(x)=mfk(m−1)(x)+xfk(m)(x)
このとき,
fk+1(k+1)(x)=(k+1)fk(k)(x)+xfk(k+1)(x)=(k+1)・(k−1)!/x+x・{−(k−1)!/x2}={(k+1)−1}(k−1)!/x=k!/x
故にn=k+1のときも成立する.
i).,ii).から任意の自然数nについて,fn(n)(x)=(n−1)!/x
NO4「Toru」 10/05 10時49分受信 更新10/21
問1 1/x
問2 (x log x)’=log x+1 , (log x+1)’=1/x
問3 (x^2 logx)’=2x log x+x ,
(2x log x+x)’=2log x+2+1=2log x+3, (2log
x+3)’=2/x
問4 fn’(x)=(x^(n-1) logx)’=(n-1)x^(n-2) log x +x^(n-2)
=(n-1)fn-1(x)+x^(n-2)
第2項はさらに(n-1)回微分すれば消えるので無視できそうで、問1〜3とこれから
fn(x)の第n次導関数 fn (n)(x)=(n-1)! /x と予想する。
問5 n=1はOKで
fn+1(n+1)(x)=(x^n log x) (n+1)=(x^n
log x)’(n) =(n x^(n-1) logx + x^(n-1))
(n)=n fn(n)(x)= n!/x
より正しい (n回微分を(n)で表わしました)
第179回の解答を送ります。記号が紛らわしくなって、わかりにくいかと思われますが、善意に解釈してやってくださいますように。問1〜3だけから結果を予想す
るのは難しそうで、問4に予想の根拠を付け加えました。これが既に証明になってしまっているような気もしますが 一応型通り問5でくりかえしました。
ペンネーム Toru
NO5「kasama」 10/20 15時24分受信 更新10/21
【問1〜4】
導関数を順に計算していくと、
f1(1)(x)=1/x,f2(2)(x)=1/x,f3(3)(x)=2/x,f4(4)(x)=6/x,f5(5)(x)=24/x,f6(6)(x)=120/x,f7(7)(x)=720/x,f8(8)(x)=5040/x,f9(9)(x)=40320/x,f10(10)(x)=362880/x,・・・
となりますから、
fn(n)(x)=(n-1)!/x・・・(1)
と類推できます。
【問5】
題意により、(1)式の類推が正しいことを数学的帰納法で証明します。
@n=1の場合
f1(1)(x)=(1-1)!/x=1/x
なので、成り立ちます。
An=kの場合
fk(k)(x)=(k-1)!/x・・・(2)
が成り立つと仮定します。
Bn=k+1の場合
fk(x)とfk+1(x)の関係を考察すると、
fk(x)=xk-1log(x)⇒fk+1(x)=xklog(x)⇒fk+1(x)=xk-1log(x)・x⇒fk+1(x)=fk(x)・x
です。ライブニッツの公式を利用して、fk+1(x)=fk(x)・xをk+1回微分します。ただし、xは2回以上微分すると0になることに注意すると、
fk+1(k+1)(x)={fk(x)・x}(k+1)={k+1Cifk(k+1-i)(x)・x(i)}={k+1Cifk(k+1-i)(x)・x(i)}=fk(k+1)(x)・x+(k+1)fk(k)(x)
ここで、(2)式より、fk(k+1)(x)={fk(k)(x)}(1)=-(k-1)!/x2なので、
fk+1(k+1)(x)=-(k-1)!/x2・x+(k+1)(k-1)!/x=k!/x
が成り立ちます。
@、A、Bよりすべての自然数nについて、(1)式が成り立ちます。
皆さん、答えがわかったら、一部でも構いませんから、解答とペンネームを添えて、メールで送ってください。待っています。