平成20年4月20日

[流れ星]

     第206回数学的な応募問題解答

      <解答募集期間:3月30日〜4月20日

マクローリン展開

皆さん、ある関数について、原点にあるいろいろな情報を読み取るだけでその関数を決定できることをご存知ですか。その情報とは原点におけるy座標、第1次導関数の微分係数、第2次導関数の微分係数、第3次導関数の微分係数、・・・、第n次導関数の微分係数のことです。では問題です。

NO1「uchinyan  3/30 1242分受信 更新4/20

<コメント:第206回数学的な応募問題への解答 を送ります。
今回は何を仮定してよいのか迷いました。都合のいいように適当にやってしまいました >

第206回数学的な応募問題
[マクローリン展開]

問題1
f(x) = a * x^3 + b * x^2 + c * x + d
とおきます。
f'(x) = 3a * x^2 + 2b * x + c
f''(x) = 6a * x + 2b
f'''(x) = 6a
なので,
f(0) = d = 1
f'(0) = c = 1
f''(0) = 2b = 2
f'''(0) = 6a = 6
より,
a = b = c = d = 1
となり,
y = f(x) = x^3 + x^2 + x + 1

問題2:〜問題4
どこまでを仮定していいのかよく分からないのですが,取り敢えず,
y = f(x) =
[n=0,]{a(n) * x^n}n は整数
とおいて,これが,x について一様かつ絶対収束すると仮定します。
要するに,収束半径は都合よく考えてよい,とします。
ここで,絶対収束は項別微分には不要ですが,後での種々の計算で問題ないように仮定しておきます。
すると,
f'(x) =
[n=1,]{n * a(n) * x^(n-1)}
f''(x)  =
[n=2,]{n(n-1) * a(n) * x^(n-2)}
f'''(x)  =
[n=3,]{n(n-1)(n-2) * a(n) * x^(n-3)}
...
f^k(x) =
[n=k,]{n(n-1)(n-2)...(n-k+1) * a(n) * x^(n-k)}
...
なので,
f(0) = a(0)
f'(0) = a(1)
f''(0)  = 2! * a(2)
f'''(0)  = 3! * a(3)
...
f^{k}(0) = k! * a(k)
...
となり,
a(0) = f(0)
a(1) = f'(0)
a(2) = f''(0)/2!
a(3) = f'''(0)/3!
...
a(k) = f^{k}(0)/k!
...
より,
y = f(x) =
[n=0,]{f^{n}(0)/n! * x^n}
と書けます。
これがマクローリン展開の公式です。以下ではこれを使います。
(
今回の問題の趣旨からすると,これを仮定します,でもよさそうですね。)

問題2
与えられた条件より
f(0) = 0
f^{n}(0) = (-1)^(n-1) * (n-1)!, n = 1, 2, 3, ...
と観察できるので,
y = f(x) =
[n=1,]{(-1)^(n-1) * (n-1)!/n! * x^n} = [n=1,]{(-1)^(n-1)/n * x^n}
そこで,
dy/dx =
[n=1,]{(-1)^(n-1) * x^(n-1)} = [n=1,]{(-x)^(n-1)}
|x| < 1
と仮定すると,右辺は収束し(大前提として収束する範囲で考えています。)
dy/dx = 1/(1+x)
f(0) = 0
より,
y = f(x) = log(1+x)

問題3
与えられた条件より
f^{2n}(0) = 0
f^{2n+1}(0) = (-1)^n
と観察できるので,
y = f(x) =
[n=0,]{(-1)^n/(2n+1)! * x^(2n+1)}
これを求めるのに少し唐突ですが,y = g(x) = e^x のマクローリン展開を考えます。
g^{n}(x) = e^x
g^{n}(0) = 1
なので,
e^x =
[n=0,]{x^n/n!}
ここで,x -> ix とおくと
e^(ix) =
[n=0,]{(ix)^n/n!} = [n=0,]{(-1)^n/(2n)! * x^(2n)} + i * [n=0,]{(-1)^n/(2n+1)! * x^(2n+1)}
左辺はオイラーの公式より
e^(ix) = cos(x) + i * sin(x)
なので,両辺を比較して,
cos(x) =
[n=0,]{(-1)^n/(2n)! * x^(2n)
sin(x) =
[n=0,]{(-1)^n/(2n+1)! * x^(2n+1)}
ここで,sin(x) の右辺は f(x) なので,結局,
y = f(x) = sin(x)

問題4
与えられた条件より,
f^{2n}(0) = (-1)^n
f^{2n+1}(0) = 0
と観察できるので,
y = f(x) =
[n=0,]{(-1)^n/(2n)! * x^(2n)}
これは,問題3:の cos(x) の右辺なので,
y = f(x) = cos(x)

問題3:&問題4:の別解
問題3:の与えられた条件より
f^{2n}(0) = 0
f^{2n+1}(0) = (-1)^n
と観察できるので,
y = f(x) =
[n=0,]{(-1)^n/(2n+1)! * x^(2n+1)}
一方,問題4:の与えられた条件より,この f(x) g(x) と書いて,
g^{2n}(0) = (-1)^n
g^{2n+1}(0) = 0
と観察できるので,
z = g(x) =
[n=0,]{(-1)^n/(2n)! * x^(2n)} = 1 + [n=1,]{(-1)^n/(2n)! * x^(2n)}
そこで,
dy/dx =
[n=0,]{(-1)^n/(2n)! * x^(2n)} = z
dz/dx =
[n=1,]{(-1)^n/(2n-1)! * x^(2n-1)} = - [n=0,]{(-1)^n/(2n+1)! * x^(2n+1)} = - y
d^{2}y/dx^{2} = dz/dx = - y
(d^{2}/dx^{2} + 1) y = 0
この2階の微分方程式は,特性方程式
t^2 + 1 = 0
の解 t = i, -i を使って,
y = a * e^(ix) + b * e^(-ix)
と書けることが知られています。(証明は省略 (^^;)
そこで,
y[x=0] = a + b = f(0) = 0
y'[x=0] = ia - ib = f'(0) = 1
a = 1/2i, b = -1/2i
より,
y = f(x) = (e^(ix) - e^(-ix))/2i = sin(x)
z = g(x) = dy/dx = cos(x)
となります。

(
考察)
この問題は,うるさいことを言うと,展開の無限級数の収束性に関しての吟味が必要でしょう。
ただ,そこらは,高校生数学の延長であまり気にせずにやりました。
多分,問題の趣旨からすると,マクローリン展開の一般式も公式として既知としてよさそうですね。

(
感想)
(
考察)に書いたように気楽にやりましたが,また,それが今回の問題の趣旨と判断しましたが,
うるさいことを言うと少し気になります。大学の教科書で復習しておきます。

<水の流れ:そうです。詳しい解き方は求めていません。原点の近傍を観察したら、その関数が見えてくる程度で

構いません。>

 

 

NO2「bear      4/01 0803分受信 更新4/20

<コメント:ところで,有限次元か無限次元かもわからず,いくつかの係数しかわかっていないのであれば,
近似しか出来ません.問題1以外は,x=0付近での近似です.問題3,4は,ズルして決め撃ちしてます.>

 

NO3「kashiwagi 4/01 2018分受信

<コメント:学生時代に大好きであったテイラー、マクローリン展開ではありませんか・・。正にマクロ ーリン展開を利用し、手抜きでやりました。これは反則でしょか・・?

kashiwagi 4/07 2039分受信 更新4/20

206回解答

 一般的に関数は以下の様に表せる。

  

これを順次微分して条件を代入しても良いがX0付近の値でマクローリン展開すると以下の様に表せる。

  因って、この展開を適用すると以下の様になる。

 

1.

3次関数なので  

     となる。

 

2.

   となる。            

 

3.

 

4.

 

 

 

<水の流れ:問題2は無限に続きまして・・・、ちょっと想像しにくく、ご迷惑をおかけしました。kashiwagi」さんからは  4/07 2039分に受信 しておりました。ここに、お詫び申し上げます。>

 

NO4「kasama    4/19 0041分受信 更新 4/20

<コメント:今回はマクローリン展開の問題ですね。プログラムで扱う三角関数や対数関数などはマクローリン展開を使った近似式で、私たちプログラマーには馴染みの深いものです。しかし、その数学的な論理はほとんど意識することはありませんから、今回はいろいろと調べてみるいい機会になりました。
で、解答を添付リストの通り作成しましたが、よく理解できていないところも多々あります。今回は、皆さんの解答を見て勉強させてもらいます。>

問題1 与えられた条件をマクローリン展開に当てはめていくと、

 f(x)=f(0)+f(1)(0)x/1!+f(2)(0)x2/2!+f(3)(0)x3/3!+f(4)(0)x4/4!+f(5)(0)x5/5!+

   =1+x+x2+x3

です。

問題2 同様にして、

 f(x)=x-x2/2+x3/3-x4/4+x5/5+

です。ここで、1-x+x2-x3+x4-=1/(1+x)だから、これの両辺を積分して、

 x-x2/2+x3/3-x4/4+x5/5+=log(1+x)

です。

問題3 同様にして、

 f(x)=x-x3/3!+x5/5!-+(-1)nx2n+1/(2n+1)!+

です。この式から、f(x)をどうやって導き出すのかわかりませんが、f(x)=sin(x)とやると、上式を満たします。

問題4 同様にして、

 f(x)=1-x2/2!+x4/4!-+(-1)nx2n/(2n)!+

です。こちらも、f(x)=cos(x)とやると、上式を満たします。

 

NO5「じるち」    4/19 2034分受信 更新4/20

 

 

 

皆さん、答えがわかったら、一部でも構いませんから、解答とペンネームを添えて、
メールで送ってください。待っています。