平成20年12月7日
[流れ星]
第216回数学的な応募問題解答
<解答募集期間:11月16日〜12月7日
[博士の愛した数式]
第216回の応募問題です。
NO1「uchinyan」 11/18 11時17分受信
「uchinyan」 11/19 18時06分受信 更新12/7
第216回数学的な応募問題
[博士の愛した数式]
問題1:
y = ax^2 + bx + c, a not= 0
において,
・a > 0 <-> グラフが下に凸,a
< 0 <-> グラフが上に凸
・グラフが y 軸を切る点の y 座標が c
・- b/2a がグラフ(放物線)の軸
になっています。そこで,
(1) a > 0, c < 0, - b/2a > 0, b < 0
(2) a > 0, c > 0, - b/2a < 0, b > 0
(3) a < 0, c < 0, - b/2a > 0, b > 0
(4) a < 0, c < 0, - b/2a < 0, b < 0
(別解)
微分を使います。
y = ax^2 + bx + c, a not= 0
y' = 2ax + b
y'' = 2a
なので,
・a > 0 <-> グラフが下に凸,a
< 0 <-> グラフが上に凸
・グラフの x = 0 での接線の傾きが b
・グラフが y 軸を切る点の y 座標が c
になっています。そこで,
(1) a > 0, b < 0, c < 0
(2) a > 0, b > 0, c > 0
(3) a < 0, b > 0, c < 0
(4) a < 0, b < 0, c < 0
問題2:
y = ax^3 + bx^2 + cx + d, a not= 0
y' = 3ax^2 + 2bx + c
において,
・a > 0 <-> グラフが x
-> ∞ で y -> ∞,a < 0
<-> グラフが x -> ∞ で y
-> - ∞
・グラフが y 軸を切る点の y 座標が d
・極値を与える x の値を α, β とすると,α + β = - 2b/3a, αβ =
c/3a
になっています。そこで,
(1) a > 0, d < 0, - 2b/3a > 0, c/3a > 0, b < 0, c > 0
(2) a > 0, d < 0, - 2b/3a < 0, c/3a = 0, b > 0, c = 0
(3) a < 0, d < 0, - 2b/3a > 0, c/3a < 0, b > 0, c > 0
(4) a < 0, d = 0, - 2b/3a > 0, c/3a < 0, b > 0, c > 0
(別解)
より高階の微分まで使います。
y = ax^3 + bx^2 + cx + d, a not= 0
y' = 3ax^2 + 2bx + c
y'' = 6ax + 2b
なので,
・a > 0 <-> グラフが x
-> ∞ で y -> ∞,a < 0
<-> グラフが x -> ∞ で y
-> - ∞
・b > 0 <-> x = 0 でグラフが下に凸,b < 0 <-> x = 0 でグラフが上に凸
・グラフの x = 0 での接線の傾きが c
・グラフが y 軸を切る点の y 座標が cd
になっています。そこで,
(1) a > 0, b < 0, c > 0, d < 0
(2) a > 0, b > 0, c = 0, d < 0
(3) a < 0, b > 0, c > 0, d < 0
(4) a < 0, b > 0, c > 0, d = 0
問題3:
y = f(x) = x^3 + ax^2 + bx + c
y' = f'(x) = 3x^2 + 2ax + b
f'(x) = 3x^2 + 2ax + b = 0
極値をもつ条件は,この二次方程式が二つの異なる実数解をもつことです。そこで,
a^2 - 3b > 0
このとき,増減表から明らかに,
x = α = (- a - sqrt(a^2 - 3b))/3 で極大値を,x = β = (- a + sqrt(a^2 - 3b))/3 で極小値を
とります。そこで,
(1) x = 1 で極大
(- a - sqrt(a^2 - 3b))/3 = 1
sqrt(a^2 - 3b) = - a - 3 > 0, a < -3
a^2 - 3b = (a + 3)^2 = a^2 + 6a + 9, b = - 2a - 3
c : 任意
(2) x = -2 で極小
(- a + sqrt(a^2 - 3b))/3 = -2
sqrt(a^2 - 3b) = a - 6 > 0, a > 6
a^2 - 3b = (a - 6)^2 = a^2 - 12a + 36, b = 4a - 12
c : 任意
(別解)
極大,極小を二階の微係数でチェックしてもいいですね。
y = f(x) = x^3 + ax^2 + bx + c
y' = f'(x) = 3x^2 + 2ax + b
y'' = f''(x) = 6x + 2a
ここで,
・x = α で極大 -> f'(α) = 0, f''(α) < 0
・x = α で極小 -> f'(α) = 0, f''(α) > 0
これを使うと...
(1) x = 1 で極大
f''(1) = 6 + 2a < 0, a < -3
f'(1) = 3 + 2a + b = 0, b = - 2a - 3
c : 任意
(2) x = -2 で極小
f''(-2) = - 12 + 2a > 0, a > 6
f'(-2) = 12 - 4a + b = 0, b = 4a - 12
c : 任意
問題4:
(1) f(0) = 1, f'(0) = 1, f''(0) = 2, f'''(0) = 6
f(x) = 1 + 1/1! * x + 2/2! * x^2 + 6/3! * x^3 + [n=4,∞]{f^{n}(0)/n! * x^n}
f(x) = 1 + x + x^2 + x^3 + [n=4,∞]{f^{n}(0)/n! * x^n}
もし f^{n}(0) = 0 for n >= 4 ならば,
f(x) = 1 + x + x^2 + x^3
(2) 若干,題意があいまいですが,
f^{n}(0) = 1 for n >= 0
だろうと思われます。その場合は,
f(x) = [n=0,∞]{x^n/n!}
f'(x) = [n=1,∞]{x^(n-1)/(n-1)!}
= f(x), f(0) = 1
これを満たすのは,f(x) = e^x です。
(3) 若干,題意があいまいですが,
f^{2n}(0) = 0
f^{2n+1}(0) = (-1)^n
だろうと思われます。その場合は,
f(x) = [n=0,∞]{(-1)^n/(2n+1)!
* x^(2n+1)}
f'(x) = [n=0,∞]{(-1)^n/(2n)! *
x^(2n)}
f''(x) = [n=1,∞]{(-1)^n/(2n-1)!
* x^(2n-1)} = - [k=0,∞]{(-1)^k/(2k+1)!
* x^(2k+1)} = - f(x)
f(0) = 0, f'(0) = 1
これを満たすのは,f(x) = sin(x) です。
(4) 若干,題意があいまいですが,
f^{2n}(0) = (-1)^n
f^{2n+1}(0) = 0
だろうと思われます。その場合は,
f(x) = [n=0,∞]{(-1)^n/(2n)! *
x^(2n)}
これは,(3) の f'(x) と同じです。
そこで,f(x) = (sin(x))' = cos(x) です。
問題5:
問題4:の (2) より,
e^x = [n=0,∞]{x^n/n!}
ここで,x = iθ とおくと,
e^(iθ) = [n=0,∞]{(iθ)^n/n!}
= [k=0,∞]{(-1)^k/(2k)! * θ^(2k)} + i * [k=0,∞]{(-1)^k/(2k+1)!
* θ^(2k+1)}
問題4:の (3) 及び (4) より,
= cosθ + i * sinθ
つまり,
e^(iθ) = cosθ + i * sinθ
になります。
問題6:
e^(iθ) + 1 = 0 は明らかにおかしく,e^(iπ) + 1 = 0 の間違いと思われます。
これならば,オイラーの定理 で,θ = π とおくと,
e^(iπ) = cosπ + i * sinπ = -1
e^(iπ) + 1 = 0
となります。
問題7:
オイラーの定理 で,θ = π/2 + 2nπ,n : 整数,とおくと,
e^(i * (π/2 + 2nπ)) = cos(π/2 + 2nπ) + i * sin(π/2 + 2nπ)
e^(i * π/2 + i * 2nπ)) = 0 + i
* 1 = i
つまり,
i = e^(i * π/2 + i * 2nπ)
そこで,
i^i = (e^(i * π/2 + i * 2nπ))^i
= e^{(i * π/2 + i * 2nπ) * i} =
e^(-π/2 - 2nπ)
ちょっと驚きですが,n : 整数 だけの不定性があって,一意には決まらないようです。
特に,n = 0 のときには,電卓を叩いて,
i^i = e^(-π/2) = 0.207879576350762...
問題8:
cos(x) + i * sin(x) = (cos(x/n) + i * sin(x/n))^n
において,問題4:の (3) 及び (4) より,
cos(x/n) = [k=0,∞]{(-1)^k/(2k)!
* (x/n)^(2k)}
sin(x/n) = [k=0,∞]{(-1)^k/(2k+1)!
* (x/n)^(2k+1)}
ここで,n -> ∞ のとき f(n) 程度に振る舞う式を O(f(n)) と書くことにします。すると,
cos(x/n) = 1 + O(1/n^2)
sin(x/n) = x/n + O(1/n^3)
と書けます。そこで,
(cos(x/n) + i * sin(x/n))^n
= ((1 + O(1/n^2)) + i * (x/n + O(1/n^3)))^n
= ((1 + i * x/n) + O(1/n^2)))^n
= (1 + ix/n)^n * ((1 + O(1/n^2)/(1 + ix/n))^n
= (1 + ix/n)^n * ((1 + O(1/n^2)*(1 + O(1/n)))^n
= (1 + ix/n)^n * (1 + O(1/n^2))^n
ここで,lim[n->∞](1 + 1/n)^n = e
なので,
lim[n->∞](1 + ix/n)^n
= lim[N->∞]((1 + 1/N)^N)^(ix) <----- 1/N = ix/n とおいた
= e^(ix)
また,
(1 + O(1/n^2))^n
= 1 + [k=1,n]{nCk * (O(1/n^2))^k}
ここで,nCk, k >= 1 は最大でも O(n^k)
なので,n が十分大きいとき,せいぜい,
= 1 + [k=1,∞]{O(n^k) *
O(1/n^(2k))}
= 1 + [k=1,∞]{O(1/n^k)}
(k が大きいところでは,実際にはもっと速く 0 に近づきます。)
= 1 + O(1/n)
つまり,
lim[n->∞]{(1 + O(1/n^2))^n} = lim[n->∞]{1 + O(1/n)} = 1
そこで,
lim[n->∞]{(cos(x/n) + i * sin(x/n))^n}
= lim[n->∞]{(1 + ix/n)^n * (1 + O(1/n^2))^n}
= e^(ix) * 1
= e^(ix)
これより,
cos(x) + i * sin(x) = e^(ix)
がいえました。
(考察)
θ = x/n とおいたドモアブルの定理
(cosθ + i * sinθ)^n = cos(nθ) + i * sin(nθ)
は,n に関する数学的帰納法で証明できます。
* n = 1 の場合 明らか
* n = k で成立しているとします。
(cosθ + i * sinθ)^k = cos(kθ) + i * sin(kθ)
n = k + 1 の場合
(cosθ + i * sinθ)^(k+1)
= (cosθ + i * sinθ)^k * (cosθ + i * sinθ)
帰納法の仮定より
= (cos(kθ) + i * sin(kθ)) *
(cosθ + i * sinθ)
= (cos(kθ)cosθ - sin(kθ)sinθ) + i * (sin(kθ)cosθ + cos(kθ)sinθ)
三角関数の加法定理より
= cos((k+1)θ) + i * sin((k+1)θ)
これで,n = k + 1 の場合も証明できました。
(感想)
水の流れさんからのご指摘を受けて,前半と後半の問題の脈絡をつけるために,
問題1:,問題2:,問題3:で高階の導関数を考えた別解を追加しました。
また,問題7:で,i^i が実数になる,しかも一般には不定性があって,一意には決まらない!,
のには驚きました。
なお,問題8:がもう少しうまくできないかな,と思っています。
NO2「新俳人澄朝」12/01 10時50分受信 更新12/7
NO3「三角定規」 12/06 12時41分受信
更新12/7
<コメント:オイラーの公式には長いことお世話になって来ましたが,オイラーがそれをド・モアブルの公式の極限(cos(θ/n)+isin(θ/n))^n → (1+(iθ/n)^n → e^(iθ)
から発想していたということは,今回はじめて知りました。天才の心眼は冴えていたのですね。>
● 第213回 解答 <三角定規>
[問題1]
(1) 下に凸であることから a>0
軸のx座標
x=−b/2a >0 および a>0 より b<0
y切片<0 より c<0 以上より (a,b,c) は (正,負,負)
同様に考えて,以下 (a,b,c) は
(2) (正,正,正)
(3) (負,負,負)
(4) (負,正,負)
[問題2]
(1) x→∞ のとき y →∞ であることから a>0
変曲点のx座標
x=−b/3a >0 および a>0 より b<0
極大値を与える点(
y’=0 の2つの解の小さい方)のx座標>0 より c>0
y切片<0 より d<0 以上より (a,b,c,d) は (正,負,正,負)
同様に考えて,以下 (a,b,c,d) は
(2) (正,正,0,負)
(3) (負,負,負,負)
(4) (負,正,負,0)
[問題3]
[問題4]
[問題5] 前[問題4](2)(3)(4)より
[証明了]
[問題6] オイラーの公式より
[証明了]
[問題7] オイラーの定理より
[問題8]
[証明了]
皆さん、答えがわかったら、一部でも構いませんから、解答とペンネームを添えて、
メールで送ってください。待っています。