平成20年12月28日
[流れ星]
第217回数学的な応募問題解答
<解答募集期間:12月7日〜12月28日
[斜回転体の体積]
皆さん、今年、早稲田と芝浦工業の入試問題に斜回転体の体積を求める問題がでていました。一部改題して出題します。
この問題を解くにあたって、Weekend Mathematics のコロキウム室にあるテーマ別で円に関する微分を参考にしても構いません。
NO1「uchinyan」 12/07 17時10分受信
「uchinyan」 11/08 14時27分受信 更新12/28
第217回数学的な応募問題
[斜回転体の体積]
(1)
√x + √y = 1, x + y = 1
まず,√x + √y = 1 のグラフを調べます。
明らかに,y = x に関して対称,x >= 0, y
>= 0,√x = 1 - √y >= 0, √y = 1 - √x >= 0 なので,
結局,0 <= x <= 1, 0 <= y <= 1 になり,(0,1), (1/4,1/4), (1,0) を通ります。この範囲で,
y = (1 - √x)^2 = 1 - 2 * √x + (√x)^2
なので,y は √x の二次関数で,√x = 1, x = 1 で最小 0 で
x 軸に接し,
x が 0 -> 1 に増加すると,√x は 0 -> 1 に単調に増加し,y は 1 -> 0 に単調に減少します。
なお,微分を使って,
dy/dx = 2 * (1 - √x) * (-1) *
1/2 * 1/√x = 1 - 1/√x <= 0,
0 < x <= 1
からもこのことが伺えます。また,
d^{2}y/dx^{2} = 1/2 * x^(-3/2) > 0, 0 < x <=
1
なので,下に凸です。
以上のことから,y = x に対称であることに注意して,グラフを描くと,
(0,1) で y 軸に接し,(1,0) で x 軸に接し,(1/4,1/4) で原点に向かって凸のグラフになります。
そこで,領域 D の面積 S は,
S = ∫[0,1]{(1 - x) - (1 - √x)^2}dx
= ∫[0,1]{(1 - x) - (1 - 2 * √x
+ x)}dx
= ∫[0,1]{2 * √x - 2x)}dx
= [4/3 * x^(3/2) - x^2][0,1]
= 4/3 - 1
= 1/3
(2)
x + y = 1 を軸として D を一回転してできる図形の体積 V1 は,
√x + √y = 1 上の点 P (t, (1 - √t)^2), 0 <= t <= 1 から x + y = 1 へ垂線を下ろし
その足を Q とし,(0,1) からの x + y = 1 上の Q までの距離を s とすると,回転体の体積の公式より,
V1 = ∫[0,√2]{π * PQ^2}ds
になります。ここで,s と t との関係を考えます。PQ は x + y = 1 と垂直で
P を通るので,PQ の式は,
y - (1 - √t)^2 = x - t
これが Q (s/√2, 1 - s/√2) を通るので,
(1 - s/√2) - (1 - √t)^2 = s/√2 - t
s = (t + 1 - (1 - √t)^2)/√2 = √2 * √t
そこで,ds/dt = √2/2 * 1/√t
また,PQ は,
PQ = |t + (1 - √t)^2 - 1|/√2 =
|t + 1 - 2 * √t + t - 1|/√2 = √2 * |t - √t|
なので,V1 は,積分変数を t に変えて,
V1 = ∫[0,1]{π * PQ^2} * ds/dt * dt
= ∫[0,1]{π|√2 * (t - √t)|^2} * √2/2
* 1/√t * dt
= √2 * π * ∫[0,1]{(t^2 - 2 * t^(3/2) + t) * t(-1/2)}dt
= √2 * π * ∫[0,1]{t^(3/2) - 2 * t + t^(1/2)}dt
= √2 * π * [2/5 * t^(5/2) - t^2
+ 2/3 * t^(3/2)][0,1]
= √2 * π * [2/5 - 1 + 2/3]
= √2 * π * 1/15
= √(2)/15 * π
(3)
y = x を軸として D を一回転してできる図形の体積 V2
は,
√x + √y = 1 上の点 P (t, (1 - √t)^2), 0 <= t <= 1 から y = x へ垂線を下ろし
その足を Q とし,(0,0) からの y = x 上の Q までの距離を s
とすると,
√x + √y = 1 と y = x の交点 (1/4,1/4) の (0,0) からの距離が √2/4,
x + y = 1 と y = x の交点 (1/2,1/2)
の (0,0) からの距離が √2/2,なので,回転体の体積の公式より,
V2 = ∫[√2/4,√2/2]{π * PQ^2}ds
になります。ここで,s と t との関係を考えます。PQ は y = x と垂直で P を通るので,PQ の式は,
y - (1 - √t)^2 = - (x - t) = - x + t
これが Q (s/√2, s/√2) を通るので,
s/√2 - (1 - √t)^2 = - s/√2 + t
s = ((1 - √t)^2 + t)/√2 = (1 -
2 * √t + 2t)/√2
そこで,
ds/dt = √2 - 1/√2 * 1/√t
また,PQ は,
PQ = |t - (1 - √t)^2 - 0|/√2 =
|t - 1 + 2 * √t - t|/√2 = |2 * √t - 1|/√2
なので,V2 は,積分変数を t に変えて,s : √2/4 -> √2/2,t : 1/4 -> 1 より,
V2 = ∫[1/4,1]{π * PQ^2} * ds/dt * dt
= ∫[1/4,1]{π(|(2 * √t - 1)|/√2)^2} * (√2
- 1/√2 * 1/√t) * dt
= 1/2√2 * π * ∫[1/4,1]{(4t - 4 * t^(1/2) + 1) * (2 - t^(-1/2))}dt
= √2/4 * π * ∫[1/4,1]{(8t - 8 * t^(1/2) + 2 - 4 * t^(1/2) + 4 - t^(-1/2))}dt
= √2/4 * π * ∫[1/4,1]{(8t - 12 * t^(1/2) + 6 - t^(-1/2)}dt
= √2/4 * π * [4t^2 - 8 *
t^(3/2) + 6t - 2 * t^(1/2)][1/4,1]
= √2/2 * π * [2t^2 - 4 *
t^(3/2) + 3t - t^(1/2)][1/4,1]
= √2/2 * π * [(2 - 4 + 3 - 1) -
(2 * 1/16 - 4 * 1/8 + 3 * 1/4 - 1/2)]
= √2/2 * π * [0 - (1/8 - 1/2 +
3/4 - 1/2)]
= √2/2 * π * 1/8
= √(2)/16 * π
なお,積分範囲は,0 〜 1/4 をとってもいいですが,
s : √2/4 -> √2/2,t : 1/4 -> 0 より,∫[1/4,0] になります。
一見するとマイナスになりそうですが,この範囲では ds/dt
< 0 なので,結果は等しくなります。
(別解1)
x + y = 1 を X 軸,y = x を Y 軸,(1/2,1/2) を原点とする新たな座標系で考えます。
これは,xy-座標系を (1/2,1/2) だけ平行移動し,新たな原点の回りに -45°だけ軸を回転すれば
いいです。このとき,座標間の関係は,
X = (x - 1/2) * cos(-45) + (y - 1/2) * sin(-45) = (x
- y)/√2
Y = - (x - 1/2) * sin(-45) + (y - 1/2) * cos(-45) =
(x + y - 1)/√2
x = (X + Y)/√2 + 1/2
y = (- X + Y)/√2 + 1/2
x + y = √2 * Y + 1
(x - 1/2)(y - 1/2) = (Y^2 - X^2)/2
そこで,
√x + √y = 1, 0 <= x <= 1,
0 <= y <= 1
<->
2√(xy) = 1 - x - y, 0 <= x
<= 1, 0 <= y <= 1, 0 <= x + y <= 1
<->
4xy = (1 - x - y)^2, 0 <= x <= 1, 0 <= y <= 1, 0 <= x + y <=
1
4xy = 1 - 2(x + y) + (x + y)^2
4(x - 1/2)(y - 1/2) = 2 - 4(x + y) + (x + y)^2
<->
4((Y^2 - X^2)/2) = 2 - 4(√2 * Y + 1) + (√2 * Y + 1)^2, - 1/√2 <= X <= 1/√2, - 1/√2 <= Y <= 0
2 * Y^2 - 2 * X^2 = 2 - 4√2 * Y - 4 + 2 * Y^2 + 2√2 * Y + 1
- 2 * X^2 = - 2√2 * Y - 1
Y = 1/√2 * X^2 - 1/2√2 = 1/√2 * (X^2 - 1/2)
したがって,√x + √y = 1 は,XY-座標系では,
頂点が (0,-1/2√2),軸が Y 軸の放物線のうち,- 1/√2
<= X <= 1/√2 の範囲,
Y 軸より下の部分だけ,となります。そこで,D は,この放物線と,Y 軸とで囲まれた部分です。
(1)
S = D の面積 = ∫[-1/√2,1/√2]{0 - 1/√2 *
(X^2 - 1/2)}dX = √2 * ∫[0,1/√2](1/2 - X^2)dX
= √2 * [X/2 - X^3/3][0,1/√2]
= √2 * [1/2√2 - 1/6√2]
= 1/2 - 1/6
= 1/3
(2)
x + y = 1 を軸として D を一回転してできる図形の体積 V1 は,
X 軸を軸として一回転した図形の体積なので,回転体の体積の公式より,
V1 = ∫[-1/√2,1/√2]{πY^2}dX = 2π * ∫[0,1/√2]{(1/√2 * (X^2 - 1/2))^2}dX
= π * ∫[0,1/√2]{X^4 - X^2 + 1/4}dX
= π * [X^5/5 - X^3/3 + X/4][0,1/√2]
= π * [√2/40 - √2/12 + √2/8]
= π * √2 * (3 - 10 + 15)/120
= √(2)/15 * π
(3)
y = x を軸として D を一回転してできる図形の体積 V2
は,Y 軸を軸として一回転した図形の体積なので,
回転体の体積の公式より,
V2 = ∫[-1/2√2,0]{πX^2}dY = π * ∫[-1/2√2,0]{√2 * Y +
1/2}dY
= π * [√2 * Y^2/2 + Y/2][-1/2√2,0]
= π * [0 - (√2 * 1/16 - √2/8)]
= √(2)/16 * π
(別解2)
ヒントを見ずに解いてしまいましたが,先ほど拝見しました。
基本的な考え方は最初の解法とほぼ同じと思いますが,計算の仕方が少し違うようです。
しかも,なかなかうまい方法だと思います。
そこで,ヒントの方法に従った(2)及び(3)の解法を,別解として与えておきます。
なお,公式をそのまま使ってもいいですが,私自身の勉強のために,考え方を真似でみます (^^;
(2)
x + y = 1 を軸として D を一回転してできる図形の体積 V1 は,
√x + √y = 1 上の点 P (t, (1 - √t)^2), 0 <= t <= 1 から x + y = 1 へ垂線を下ろし
その足を Q とし,(0,1) からの x + y = 1 上の Q までの距離を s とすると,
回転体の体積の公式より,
V1 = ∫[0,√2]{π * PQ^2}ds
になります。ここで,PQ,s,t との関係を考えます。
P から x 軸に垂直な線を引き x + y = 1 との交点を R とします。すると,
PQ = PR * cos(45°) = PR/√2
s = t/cos(45°) + PR * sin(45°) = √2 * t + PR/√2
PR = (1 - t) - (1 - √t)^2 = 2 * √t - 2t
ds/dt = √2 + 1/√2 * d(PR)/dt
これらを使って,V1 の積分変数を t に変えます。
V1 = ∫[0,1]{π * PQ^2} * ds/dt * dt
= ∫[0,1]{π * (PR/√2)^2} * (√2 + 1/√2 *
d(PR)/dt) * dt
= 1/√2 * π * ∫[0,1]{PR^2}dt + 1/2√2 * π * ∫[0,1]{PR^2
* d(PR)/dt} * dt
= 1/√2 * π * ∫[0,1]{PR^2}dt + 1/6√2 * π * ∫[0,1]{d(PR^3)/dt} * dt
= 1/√2 * π * ∫[0,1]{PR^2}dt + 1/6√2 * π * [PR^3][0,1]
ここで,PR(0) = PR(1) = 0 なので,
= 1/√2 * π * ∫[0,1]{PR^2}dt
この式が,ヒントの「斜回転体の体積公式」に対応します。
したがって,公式を使えばここからスタートできます!
= √2/2 * π * ∫[0,1]{(2 * √t - 2t)^2}dt
= 2√2 * π * ∫[0,1]{t - 2 * t^(3/2) + t^2}dt
= 2√2 * π * [t^2/2 - 4/5 *
t^(5/2) + t^3/3][0,1]
= 2√2 * π * [1/2 - 4/5 + 1/3]
= 2√2 * π * 1/30
= √(2)/15 * π
(3)
y = x を軸として D を一回転してできる図形の体積 V2
は,
√x + √y = 1 上の点 P (t, (1 - √t)^2), 0 <= t <= 1 から y = x へ垂線を下ろし
その足を Q とし,(0,0) からの y = x 上の Q までの距離を s
とすると,
√x + √y = 1 と y = x の交点 (1/4,1/4) の (0,0) からの距離が √2/4,
x + y = 1 と y = x の交点 (1/2,1/2)
の (0,0) からの距離が √2/2,なので,
回転体の体積の公式より,
V2 = ∫[√2/4,√2/2]{π * PQ^2}ds
になります。ここで,PQ,s,t との関係を考えます。
ただし,s : √2/4 -> √2/2,t : 1/4 -> 1 なので,1/4 <= t <= 1 で考えます。
P から x 軸に垂直な線を引き y = x との交点を R とします。すると,
PQ = PR * cos(45°) = PR/√2
s = t/cos(45°) - PR * sin(45°) = √2 * t - PR/√2
PR = t - (1 - √t)^2 = 2 * √t -
1
ds/dt = √2 - 1/√2 * d(PR)/dt
これらを使って,V2 の積分変数を t に変えます。
V2 = ∫[1/4,1]{π * PQ^2} * ds/dt * dt
= ∫[1/4,1]{π * (PR/√2)^2} * (√2 - 1/√2 *
d(PR)/dt) * dt
= 1/√2 * π * ∫[1/4,1]{PR^2}dt - 1/2√2 * π * ∫[1/4,1]{PR^2
* d(PR)/dt} * dt
= 1/√2 * π * ∫[1/4,1]{PR^2}dt - 1/6√2 * π * ∫[1/4,1]{d(PR^3)/dt) * dt
= 1/√2 * π * ∫[1/4,1]{PR^2}dt - 1/6√2 * π * [PR^3][1/4,1]
ここで,PR(1/4) = 0,PR(1) = 1 なので,
= 1/√2 * π * ∫[1/4,1]{PR^2}dt - 1/6√2 * π
この式が,ヒントの「斜回転体の体積公式」に対応しますが,
PR(1) = 1 のために余計な項が存在します。
= 1/√2 * π * ∫[1/4,1]{(2 * √t - 1)^2}dt
- 1/6√2 * π
= √2/2 * π * ∫[1/4,1]{4t - 4 * t^(1/2) + 1}dt - √2/12 * π
= √2/2 * π * [2t^2 - 8/3 *
t^(3/2) + t][1/4.1] - √2/12 * π
= √2/2 * π * [(2 - 8/3 + 1) -
(2 * 1/16 - 8/3 * 1/8 + 1/4)] - √2/12 * π
= √2/2 * π * [1/3 - (1/8 - 1/3
+ 1/4)] - √2/12 * π
= √2/2 * π * [1/3 - 1/24] - √2/12 * π
= 7√2/48 * π - √2/12 * π
= √(2)/16 * π
なお,s : √2/4 -> √2/2,t : 1/4 -> 0 なので,0 <= t <= 1/4 で考えることも可能ですが,
グラフの位置関係で式に若干の修正が必要です。もちろん,結果は一致します。
(考察)
この問題は,回転する軸と座標軸との角度が 45°と扱いやすい角度なので,
(別解1)のように,都合のよい座標系に変換してしまう方が楽でしょう。
しかし一般の角度の場合には,最初の解法のように,地道にやる方が自然だと思います。
それを意識して,座標軸の回転での解法は,(別解1)にしました。
なお,斜回転体の体積公式の考え方を使った解法を(別解2)に追加しました。
PR をうまく使って計算を行い公式化しているのはお見事です。
ただし,(2)は積分の両端で PR = 0 なのでそのまま使えますが,
(3)はそうではないので,注意,工夫が必要なようです。
(感想)
久しぶりに,体積の積分をしました。そのせいか,結構手間取ってしまいました (^^;
NO2「新俳人澄朝」12/12 18時34分受信 更新12/28
「新俳人澄朝」12/16 11時05分受信 更新12/28
NO3「kashiwagi」 12/17
07時08分受信 更新12/28
NO4「三角定規」 12/25 23時26分受信
「三角定規」 12/26 21時01分受信 更新12/28
● 第217回
解答 <三角定規>