平成22年5月9日
[流れ星]
第240回数学的な応募問題解答
<解答募集期間:4月18日〜5月9日
[算額の問題(1)]
森北出版の深川英俊・ダンソコロフスキー共著「日本の数学 何題解けますか」を見ていると、算額らしい興味あるものがあります。次の問題を考えてください。
半径がRの円Oに弦ADをとり、図のように円Oの円周上にA,B,N、C,Dをこの順にとる。ただし、Nは弧ADの中点である。さらに、ADの中点Mに対して、線分MB,MCによってこの円弧を3個の部分に分ける。次に、それぞれの部分に半径rの3つの内接円O1、O2、O3を作る。ここで、AD=a、MN=bとしたとき、rをa、bで表せ。
NO1「uchinyan」 04/19 15時17分受信
「uchinyan」 04/21 14時43分受信
更新5/9
第240回数学的な応募問題
[算額の問題(1)]
MAB 部分に 円O1 が,MBC 部分に 円O2 が,MCD 部分に 円O3 があるとします。
まず,三つの円の半径はすべて同じなので,図形が OMN に関して対称になります。
そこで,円O1 又は 円O3 のどちらかは考えなくて十分です。
ここで,円O の中心を O(0,0),O を通って AD に平行に x 軸,OMN を y 軸,として,
座標を導入します。
すると,O(0,0),M(0,R - b),N(0,R),D(a/2,0),円O2 の中心 O2(0,R - r) です。
次に,円O3 の中心 O3 ですが,まず x 座標は R - b + r = R + r - b です。
円O3 は 円O と接するので,その接点を T,接線を L とすると,OT も O3T も T において L と垂直ですが,
T において L と垂直な直線は一本しかないので,O,O3,T は同一直線上にあります。
そこで,OO3 = OT - O3T = R - r になります。これより,y 座標は,
sqrt((R - r)^2 - (R + r - b)^2) = sqrt((2R
- b)(b - 2r))
になり,O3(sqrt((2R - b)(b -
2r)),R + r - b) です。
一方で,MC ですが,円O2 が MC に接することより,
sin(π/2 - ∠CMD) = r/(b - r)
cos(∠CMD) = r/(b - r)
tan(∠CMD) = sqrt((1/cos(∠CMD))^2 - 1) = sqrt(((b - r)/r)^2 - 1) = sqrt(b(b - 2r))/r
なので,MC は,
y = sqrt(b(b - 2r))/r * x + (R - b)
になります。
ここで,O2,O3 から MC に下ろした垂線の足を H,I とし,O2O3 と MC の交点を E とすると,
O2H = r = O3I,∠O2EH = ∠O3EI,∠O2HE = π/2 = ∠O3EH より,△O2EH ≡ △O3EI となり,
O2E = O3E で,E は O2O3 の中点になります。
そこで,E(sqrt((2R - b)(b -
2r))/2,(2R - b)/2) です。
この E は MC 上にあるので,
(2R - b)/2 = sqrt(b(b - 2r))/r * sqrt((2R
- b)(b - 2r))/2 + (R - b)
(2R - b)r = sqrt(b(2R - b)) * (b - 2r) + 2(R - b)r
ここで,△OMD において,
(a/2)^2 + (R - b)^2 = R^2
なので,
R = (a^2/4 + b^2)/2b
R - b = (a^2/4 - b^2)/2b
2R - b = a^2/4b
b(2R - b) = a^2/4
などより,
a^2/4b * r = a/2 * (b - 2r) + (a^2/4 - b^2)/b * r
a^2 * r = 2ab(b - 2r) + (a^2 - 4b^2) * r
4b(a + b)r = 2ab^2
r = ab/2(a + b)
になります。
(別解)
上記の座標による解法を見直してみると,実質,三平方の定理と相似しか使っていないことに気付きます。
それに注目した初等幾何による解法です。そのままを翻訳もできますが,少し変えました。
なお,説明の都合上,同じ文字が出てきますが,別の点を意味しているのでご注意ください。
MAB 部分に 円O1 が,MBC 部分に 円O2 が,MCD 部分に 円O3 があるとします。
まず,三つの円の半径はすべて同じなので,図形が OMN に関して対称になります。
そこで,円O1 又は 円O3 のどちらかは考えなくて十分です。今回は,円O1 と 円O2 で考えます。
円O2 の中心 O2 から MB に垂線を下ろしその足を H とします。
さらに,円O1 の中心 O1 から AM,NM に垂線を下ろしその足を I,J とします。
さて,∠BMA + ∠O2MH = ∠BMA + ∠NMB = ∠NMA =
90°なので,∠MO2H =∠BMA です。
また,MO1 は ∠BMA の二等分線なので,∠O1MI = ∠BMA/2 です。
そこで,∠MO2H の二等分線と MB の交点を E とすると,∠EO2H = ∠MO2H/2
= ∠BMA/2 = ∠O1MIです。
これより,△O1MI ∽ △EO2H がいえます。そこで,O1I:IM = EH:HO2 がいえます。
ここで,まず,O1I = r,HO2 = r です。
そして,JO = JM + MO = O1I + ON - MN = r + R - b = R + r -
b です。
さらに,円O1 は 円O と接し,その接点を T,接線を L とすると,OT も O1T も T において L と垂直ですが,
T において L と垂直な直線は一本しかないので,O,O1,T は同一直線上にあります。
そこで,OO1 = OT - O1T = R - r になります。
これより,IM = O1J は,△OJO1 に三平方の定理を使って,
IM = O1J = sqrt((OO1)^2 - JO^2) = sqrt((R
- r)^2 - (R + r - b)^2) = sqrt((2R - b)(b - 2r))
になります。
一方で,O2M = MN - O2N = b - r なので,△MO2H に三平方の定理を使って,
HM = sqrt(O2M^2 - O2H^2) = sqrt((b
- r)^2 - r^2) = sqrt(b(b - 2r))
になります。そこで,O2E は ∠MO2H の二等分線だったので,
HE:EM = O2H:O2M
EH = HE = HM * O2H/(O2H + O2M) = sqrt(b(b - 2r)) *
r/b
です。これより,
O1I:IM = EH:HO2
r:sqrt((2R - b)(b - 2r)) = (sqrt(b(b - 2r)) *
r/b):r = sqrt(b(b - 2r)):b
br = sqrt((2R - b)(b - 2r))
* sqrt(b(b - 2r))
br = sqrt(b(2R - b)) * (b -
2r)
ここで,△OMA において,
(a/2)^2 + (R - b)^2 = R^2
なので,
R = (a^2/4 + b^2)/2b
2R - b = a^2/4b
b(2R - b) = a^2/4
より,
br = a/2 * (b - 2r)
(a + b)r = ab/2
r = ab/2(a + b)
になります。
(感想)
最初,三角関数を使って容易に式は立てられたのですが,なかなかすごい式になって,
うまく解けませんでした。
ダメもとで初等幾何も絡めて座標でやってみたら,思いのほか簡単,r の一次方程式!,
になって解けてしまいました。結果もきれいですね。
また,少し見直して,初等幾何だけの解法も(別解)として示せました。
算額絡みの問題は,解き方の判断を誤ると大変になるものが結構ありますね。
しかし,現在ではいろいろな技が使えますが,和算ではどうしたのでしょうかね。
NO2「再出発」 05/05 11時45分受信
「再出発」 05/08 15時01分受信 更新5/9
弦と弧に挟まれた円(答) |
||||||||||||
|
||||||||||||
半径 R の円Oに弦 AD をとり、劣弧
AD 上に A, B, N, C, D をこの順にとる。 |
||||||||||||
解答 |
||||||||||||
θ + φ + φ = π/2 なので
|
NO3「MVH」 05/08 13時24分受信
更新5/9
寄せられた解答です。
皆さん、答えがわかったら、一部でも構いませんから、解答とペンネームを添えて、
メールで送ってください。待っています。