平成22年6月20日

[流れ星]

     第243回数学的な応募問題

      <解答募集期間:6月20日〜7月11

[包絡線]

大学入試問題を見ていると、次のような問題が出ていることがあります。紹介します。

 

NO1uchinyan  06/20 1742分受信

uchinyan  06/20 1750分受信

uchinyan  06/21 1132分受信 更新7/11

 

図をうまく描くソフトを持っていないので,領域を表す式までで勘弁してください (^^;

<水の流れ:構いませんから、気にしないでください。>

問題1:

y = 2tx - t^2, 0 <= t <= 1

f(t) = t^2 - 2tx + y とおくと,与えられた式は f(t) = 0 で,

二次関数 f(t) = t^2 - 2tx + y t 軸と 0 <= t <= 1 で共有点をもつ条件を求めればいい

ことになります。

f(t) = t^2 - 2tx + y = (t - x)^2 + (y - x^2)

より,この二次関数は,軸 t = x,頂点 (x, y - x^2),下に凸,なので,

y - x^2 <= 0 であって

x < 0 のとき f(0) <= 0 及び f(1) >= 0

0 <= x <= 1 のとき f(0) >= 0 又は f(1) >= 0

1 < x のとき f(0) >= 0 及び f(1) <= 0

つまり,

y - x^2 <= 0 であって

x < 0 のとき y <= 0 及び 1 - 2x + y >= 0

0 <= x <= 1 のとき y >= 0 又は 1 - 2x + y >= 0

1 < x のとき y >= 0 及び 1 - 2x + y <= 0

整理すると,

y <= x^2y = x^2 以下であって,

x < 0 のとき,y <= 0 及び y >= 2x - 1x 軸以下 及び y = 2x - 1 以上

0 <= x <= 1 のとき,y >= 0 又は y >= 2x - 1x 軸以上 又は y = 2x - 1 以上

1 < x のとき,y >= 0 及び y <= 2x - 1x 軸以上 及び y = 2x - 1 以下

結局まとめると,

x < 0 のとき,x 軸以下 及び y = 2x - 1 以上

0 <= x < 1/2 のとき,y = x^2 以下 及び y = 2x - 1 以上

1/2 <= x < 1 のとき,y = x^2 以下 及び x 軸以上

1 <= x のとき,x 軸以上 及び y = 2x - 1 以下

 

問題2:

A (0, t^2 + 4), B (t/2 + 2/t, 0), 0 < t < 2

とします。線分 AB は,s 0 <= s <= 1 として,

x = (t/2 + 2/t)(1 - s), y = (t^2 + 4)s

と書けます。ここで,s t は独立です。そこで,

0 <= x <= t/2 + 2/t < 0 <= y <= t^2 + 4 < 8

として,s を消すことができて,

x = (t^2 + 4)/2t * (1 - y/(t^2 + 4)) = (t^2 + 4)/2t - y/2t

2tx + y = t^2 + 4

f(t) = t^2 - 2tx + (4 - y) とおくと,

二次関数 f(t) = t^2 - 2tx + (4 - y) t 軸と 0 < t < 2 で共有点をもつ条件を求めればいい

ことになります。ただし,0 <= x0 <= y < 8 です。

f(t) = t^2 - 2tx + (4 - y) = (t - x)^2 + (4 - y - x^2)

より,この二次関数は,軸 t = x,頂点 (x, 4 - y - x^2),下に凸,なので,

4 - y - x^2 <= 0 であって

x = 0 のとき f(0) < 0 及び f(2) > 0

0 < x < 2 のとき f(0) > 0 又は f(2) > 0

2 <= x のとき f(0) > 0 及び f(2) < 0

つまり,

4 - y - x^2 <= 0 であって

x = 0 のとき 4 - y < 0 及び 4 - 4x + 4 - y > 0

0 < x < 2 のとき 4 - y > 0 又は 4 - 4x + 4 - y > 0

2 <= x のとき 4 - y > 0 及び 4 - 4x + 4 - y < 0

整理すると,

y >= - x^2 + 4y = - x^2 + 4 以上であって,

x = 0 のとき,y > 4 及び y < - 4x + 8y = 4 より上 及び y = - 4x + 8 より下

0 < x < 2 のとき y < 4 又は y < - 4x + 8y = 4 より下 又は y = - 4x + 8 より下

2 <= x のとき y < 4 及び y > - 4x + 8y = 4 より下 及び y = - 4x + 8 より上

結局まとめると,x, y の最初の条件も加味して,

x < 0 のとき,明らかに存在しない

x = 0 のとき,4 < y < 8

0 < x < 1 のとき,y = - x^2 + 4 以上 及び y = - 4x + 8 より下

1 <= x < 2 のとき,y = - x^2 + 4 以上 及び y = 4 より下

2 <= x のとき,0 <= y < 4

 

問題3:

y = tx + sqrt(t^2 + 1), t > 0

y - tx = sqrt(t^2 + 1) > 0 より,y > tx です。このとき,

(y - tx)^2 = t^2 + 1

(x^2 - 1)t^2 - 2xyt + (y^2 - 1) = 0

f(t) = (x^2 - 1)t^2 - 2xyt + (y^2 - 1) とおくと,

f(t) = 0 t 軸と t > 0 で共有点をもつ条件を求めればいいことになります。

(1) x^2 - 1 = 0 及び y = 0 のとき

f(t) = - 1 < 0 なので不可。

(2) x^2 -1 = 0 及び y not= 0 のとき

(2-1) x = 1 及び y not= 0 のとき

f(t) = - 2yt + (y^2 - 1) = 0

t = (y^2 - 1)/2y = (y + 1)(y - 1)/2y > 0

-1 < y < 0 又は 1 < y

ただし,y > tx = t = (y^2 - 1)/2y なので,1 < y だけが可能です。

(2-2) x = -1 及び y not= 0 のとき

f(t) = 2yt + (y^2 - 1) = 0

t = - (y^2 - 1)/2y = - (y + 1)(y - 1)/2y > 0

y < -1 又は 0 < y < 1

ただし,y > tx = -t = (y^2 - 1)/2y なので,0 < y < 1 だけが可能です。

(3) x^2 - 1 not= 0 のとき

f(t) = (x^2 - 1)t^2 - 2xyt + (y^2 - 1)

= (x^2 - 1)(t - xy/(x^2 - 1))^2 - (xy)^2/(x^2 - 1) + (y^2 - 1)

= (x^2 - 1)(t - xy/(x^2 - 1))^2 - (x^2 + y^2 - 1)/(x^2 - 1)

より,f(t) は二次関数で,

t = xy/(x^2 - 1),頂点 (xy/(x^2 - 1), - (x^2 + y^2 - 1)/(x^2 - 1))

です。

(3-1) x^2 - 1 > 0x < -1 又は x > 1,のとき

二次関数は下に凸なので,t > 0 に共有点をもつのは,

- (x^2 + y^2 - 1)/(x^2 - 1) <= 0 であって

xy/(x^2 - 1) <= 0 のとき f(0) < 0

xy/(x^2 - 1) > 0 のとき 常にOK

つまり,

x^2 + y^2 - 1 >= 0 であって

xy <= 0 のとき y^2 - 1 < 0

xy > 0 のとき 常にOK

整理すると,

x^2 + y^2 >= 1x^2 + y^2 = 1 の円周も含む外部であって

((x < -1) 及び ((y < 0) 又は (0 <= y < 1))) 又は ((x > 1) 及び ((-1 < y <= 0) 又は (0 < y)))

ただし,y > tx の条件も加味してまとめると,

x^2 + y^2 = 1 の円周も含む外部であって

((x < -1) 及び (y < 1)) 又は ((x > 1) 及び (y > 1))

(3-2) x^2 - 1 < 0-1 < x < 1,のとき

二次関数は上に凸なので,t > 0 に共有点をもつのは,

- (x^2 + y^2 - 1)/(x^2 - 1) >= 0 であって

xy/(x^2 - 1) <= 0 のとき f(0) > 0

xy/(x^2 - 1) > 0 のとき 常にOK

つまり,

x^2 + y^2 - 1 >= 0 であって

xy >= 0 のとき y^2 - 1 > 0

xy < 0 のとき 常にOK

整理すると,

x^2 + y^2 >= 1x^2 + y^2 = 1 の円周も含む外部であって

((-1 < x <= 0) 及び ((y < -1) 又は (y > 0))) 又は ((0 <= x < 1) 及び ((y > 1) 又は (y < 0)))

ただし,y > tx の条件も加味してまとめると,

x^2 + y^2 = 1 の円周も含む外部であって

((-1 < x < 0) 及び (y > 0)) 又は ((0 <= x < 1) 及び (y > 1)))

以上ですべてなので,結局まとめると,

x < -1 のとき,y = 1 より下

x = -1 のとき,0 < y < 1

-1 < x < 0 のとき,x 軸より上であって x^2 + y^2 = 1 の円周も含む外部

x >= 0 のとき,y = 1 より上

 

(考察1)

一応,式を使って考えましたが,直感的に図形的考察から次のようにも考えられます。

 

問題1:

y = 2tx - t^2, 0 <= t <= 1

これは,傾きが 2ty 切片が - t^2 の直線群で,

t = 0, y = 0 t = 1, y = 2x - 1

をつなぐようなものになります。さらに,この式は,

y - t^2 = 2t(x - t)

と変形できます。これは,y = x^2 (t,t^2) における接線です。

したがって,実はこの直線群は,この接線を 0 <= t <= 1 で動かしたものです!

これをイメージすれば,答えの領域はほぼ明らかでしょう。

 

問題2:

A (0, t^2 + 4), B (t/2 + 2/t, 0), 0 < t < 2

線分 AB の群は,

t -> 0, A(0,4), B(+,0)y = 4 に近づく

t -> 2, A(0,8), B(2,0)y = - 4x + 8 に近づく

をつなぐようなものになります。

これは少しイメージしにくいですが,問題1:の類推で,

y = 4y = - 4x + 8 y = - x^2 + 4 の接線になっていることは分かります。

それから答えの領域をイメージすることは不可能ではないでしょう。

 

問題3:

y = tx + sqrt(t^2 + 1)

これは,傾きが tx 切片が - sqrt(1 + (1/t)^2)y 切片が sqrt(t^2 + 1) の直線群で,

t -> 0, y = 1 t -> , x = 1

をつなぐようなものになります。さらに,この式は,

tx - y + sqrt(t^2 + 1) = 0

と変形し,原点との距離を求めてみると,

原点との距離 = |0 - 0 + sqrt(t^2 + 1)|/sqrt(t^2 + 1) = 1

と常に 1 です。つまり,実はこの直線群は,x^2 + y^2 = 1 の接線群を t > 0 で動かしたものです!

これをイメージすれば,答えの領域はほぼ明らかでしょう。

 

(考察2)

「そういえば,包絡線というキーワードを意識せずに解いちゃったけど,これって何?」

と思い至り,Webで調べてみました。Wikipediaには,

 包絡線(ほうらくせん、envelope)とは、与えられた曲線族と接線を共有する曲線、

 すなわち与えられた(一般には無限個の)全ての曲線たちに接するような曲線のことである。

とありました。今回の問題では,直線群が対象なので,それらが接線そのものになりますね。

要するに,(考察1)で議論した曲線のようです。

そこで,少し考えてみました。

 

今,t をパラメタとして,次のような直線群が与えられているとします。

a(t) * x + b(t) * y + c(t) = 0

包絡線は,これを接線とするので,接点は一般に t に依存し (x(t), y(t)) と書けます。

これは,見方を変えれば,包絡線の t によるパラメタ表示とも考えられます。

接点は,当然,接線上にもあるので,

a(t) * x(t) + b(t) * y(t) + c(t) = 0

これを t で微分すると,

a'(t) * x(t) + a(t) * x'(t) + b'(t) * y(t) + b(t) * y'(t) + c'(t) = 0

ここで,(x'(t), y'(t)) は包絡線上の点 (x(t), y(t)) における接線ベクトルなので,

接線と平行で,接線に垂直なベクトル,法線ベクトル,(a(t), b(t)) と垂直です。そこで,

a(t) * x'(t) + b(t) * y'(t) = 0

これより,先ほどの式は,

a'(t) * x(t) + b'(t) * y(t) + c'(t) = 0

と簡単になります。さらに,これと接線の式を連立させた

a(t) * x(t) + b(t) * y(t) + c(t) = 0

a'(t) * x(t) + b'(t) * y(t) + c'(t) = 0

を,x(t)y(t) について解けば,包絡線の t によるパラメタ表示が得られることになります!

 

そこで,今回の問題で確かめてみます。

 

問題1:

y = 2tx - t^2, 0 <= t <= 1

より,

2tx - y - t^2 = 0

2x - 2t = 0

を,xy について解くことになります。これは,

x = t, y = t^2, 0 <= t <= 1

そこで,包絡線は,

y = x^2, 0 <= x <= 1

になります。

 

問題2:

A (0, t^2 + 4), B (t/2 + 2/t, 0), 0 < t < 2

包絡線を考えるだけならば,AB を通る直線を考えれば十分でしょう。これは,

y - (t^2 + 4) = (0 - (t^2 + 4))/((t/2 + 2/t) - 0) * (x - 0)

y - (t^2 + 4) = - 2tx

y = - 2tx + (t^2 + 4)

これより,

2tx + y - (t^2 + 4) = 0

2x - 2t = 0

を,xy について解くことになります。これは,

x = t, y = - t^2 + 4, 0 < t < 2

そこで,包絡線は,

y = - x^2 + 4, 0 < x < 2

になります。

 

問題3:

y = tx + sqrt(t^2 + 1), t > 0

より,

tx - y + sqrt(t^2 + 1) = 0

x + t/sqrt(t^2 + 1) = 0

を,xy について解くことになります。これは,

x = - t/sqrt(t^2 + 1), y = 1/sqrt(t^2 + 1), t > 0

そこで,包絡線は,

x^2 + y^2 = 1, -1 < x < 0, 0 < y < 1

になります。

 

確かに,解答に現れる曲線,(考察1)の曲線と一致しています。

 

なお,一般に,直線群ではなく曲線群でも同様の連立方程式が導けますが,

大学レベルになってしまうので省略します。

 

(感想)

最初,包絡線というキーワードを意識しないで解いてしまい,今回は少してこずりました。

図形的考察から,領域がどうなりそうかは,ほぼ予想がつくのですが,

境界部分など,抜けがあるかもしれません。

その後,包絡線に関しては,知らなかったのでWebで調べて(考察2)に追加しました。

勉強になりました。

 

 

NO2「MVH」    07/10 1347分受信 更新7/11

 

流れ星〕第243回数学的な応募問題 〔包絡線〕              by  MVH

〔解答〕解法がいくつかあります。問題1を例にとって、分類してみますと(月刊誌「大学への数学」による命名)、

@  自然流(順手流):直接y=2tx-t^2の動く範囲を捉える(xを固定してtの関数と見る(ファクシミリの原理)。最大・最小の候補を並べて(図示して)大小比較すれば答えが一挙に得られる)。→t3次以上のときなどに有効。

A  逆手流y=2tx-t^2tに関する2次方程式と見て、この2次方程式が0t1に少なくとも一つ実数解を持   

つような(x,y)の条件を求める。→tが全ての実数を動けるときなどに有効。

B  包絡線からの考察y=x^2上の点P(t,t^2)における接線がy=2tx-t^2であることから、0t1Pを動かしたときのこの接線の通過範囲を求める(y=x^2y=2tx-t^2の包絡線という)。→包絡線がすぐに思い浮かべば最も有効(いくつかの典型的な接線の形を覚えておくと、対処しやすい。)

 

今回の問題1〜3については、個人的に、解法Bでシンプルに解けるように感じました。

 

問題1: 上記より、求める通過領域は、図1(但し、境界を含む)。

 

問題2: 与えられた2点を結ぶ直線の方程式は、y=-2tx+t^2+4である。これは、放物線y=-x^2+4上の点P(t,-t^2+4)における接線の方程式である。従って、0<t<2Pを動かしたときのこの接線の通過領域のうち、第一象限にある部分が答えとなる(図2)。但し、境界は、x軸、y軸、放物線のみ含む((0,4),(0,8),(2,0)を除く)。

 

問題3: t>0のとき与えられた直線群が、円x^2+y^2=1上の第二象限内の任意の点Px座標をsとする)における接線群であることを示す。点Pは第二象限の点だから、-1<s<0であり、y座標は、y=(1-s^2)^(1/2)と表せる。よって、点Pにおけるこの円の接線の方程式は、y-(1-s^2)^(1/2)=(-s)(x-s)/(1-s^2)^(1/2)y=(-sx)/(1-s^2)^(1/2)+1/(1-s^2)^(1/2)と表せる。さて、ここで、(-s)/(1-s^2)^(1/2)=tと変数変換すると、この接線の方程式は、y=tx+(t^2+1)^(1/2)と表せる。また、-1<s<0のとき、f(s)=(-s)/(1-s^2)^(1/2)のグラフを調べることにより、t>0が分かる。よって、示された。以上により、答えは図3。但し、境界は、円周上だけ含む(点(0,1),(-1,0)を除く)。

 

〔解き終えて〕

包絡線は「大学への数学」で身に付けました。実際には、問題によって、解法を選べるのが望ましいと思われますが、包絡線の形をいくつか知っていると早いでしょうね。良い復習になりました。

 

 

 

 

 

 

皆さん、答えがわかったら、一部でも構いませんから、解答とペンネームを添えて、
メールで送ってください。待っています。