平成24年4月29日
[流れ星]
第274回数学的な応募問題
<解答募集期間:4月29日〜5月20日
[積分剰余項]
新潟大学の過去問に、マクローリン展開の積分剰余項に関する問題がありましたから、出題しました。
NO1「uchinyan」 04/29 13時10分受信 更新5/20
第274回数学的な応募問題
[積分剰余項]
何かピンと来ない問題ですが...
まず,テイラーの定理をこの問題に対して使いやすい形で証明し直しておきます。
f(x) の第n階微分を f^{n}(x) と書くことにし,
I(n) = ∫[a,b]{(b - t)^(n-1)/(n-1)! * f^{n}(t)}dt
とします。部分積分を使って,
I(n) = ∫[a,b]{(b - t)^(n-1)/(n-1)! * f^{n}(t)}dt
= [(b - t)^(n-1)/(n-1)! *
f^{n-1}(t)][a,b] + ∫[a,b]{(b - t)^(n-2)/(n-2)! *
f^{n-1}(t)}dt
= I(n-1) - (b - a)^(n-1)/(n-1)! *
f^{n-1}(a)
これを繰り返して,
I(n) = I(n-2) - (b -
a)^(n-2)/(n-2)! * f^{n-3}(a) - (b - a)^(n-1)/(n-1)! * f^{n-1}(a)
= …
= I(1) - (b - a) * f'(a) - (b -
a)^2/2! * f''(a) - …
- (b - a)^(n-2)/(n-2)! *
f^{n-3}(a) - (b - a)^(n-1)/(n-1)! * f^{n-1}(a)
= ∫[a,b]{f'(x)}dx
- (b - a) * f'(a) - (b - a)^2/2! * f''(a) - …
- (b - a)^(n-2)/(n-2)! *
f^{n-3}(a) - (b - a)^(n-1)/(n-1)! * f^{n-1}(a)
= f(b) - f(a) - (b - a) * f'(a) -
(b - a)^2/2! * f''(a) - …
- (b - a)^(n-2)/(n-2)! *
f^{n-3}(a) - (b - a)^(n-1)/(n-1)! * f^{n-1}(a)
そこで,
f(b) = f(a) + (b - a) * f'(a) + (b
- a)^2/2! * f''(a) + … + (b - a)^(n-1)/(n-1)! * f^{n-1}(a)
+ I(n)
f(b) = f(a) + f'(a) * (b - a) +
f''(a)/2! * (b - a)^2 + … + f^{n-1}(a)/(n-1)! * (b - a)^(n-1)
+ ∫[a,b]{(b - t)^(n-1)/(n-1)! * f^{n}(t)}dt
これを与えられているテイラー展開の式と比較して,
R(n) = I(n) = ∫[a,b]{(b - t)^(n-1)/(n-1)! * f^{n}(t)}dt
になります。
さて,いよいよ問題です。
a(n) = ∫[0,1]{(1 - x)^(n-1)/(n-1)! * e^x}dx,n = 1,
2, 3, ...
(1)
0 <= x <= 1 で e^x は単調増加なので 1 <= e^x <= e で,
∫[0,1]{(1 - x)^(n-1)/(n-1)!}dx
< a(n) = ∫[0,1]{(1 - x)^(n-1)/(n-1)! * e^x}dx
< e * ∫[0,1]{(1 - x)^(n-1)/(n-1)!}dx
[- (1 - x)^n/n!][0,1] < a(n)
< e * [- (1 - x)^n/n!][0,1]
0 < 1/n! < a(n) < e/n!
(2)
先ほどの式で f(x) = e^x とおくと,f^{n}(x) = e^x なので,a = 0,b = x として,
つまり,マクローリン展開をして,
e^x = 1 + x + x^2/2! + … + x^(n-2)/(n-2)! + x^(n-1)/(n-1)! + ∫[0,x]{(1
- t)^(n-1)/(n-1)! * e^t}dt
x = 1 として,
e = 1 + 1 + 1/2! + … + 1/(n-2)! + 1/(n-1)! + ∫[0,1]{(1 -
t)^(n-1)/(n-1)! * e^t}dt
となって,
a(n) = R(n) = e - (1 + 1 + 1/2! + … + 1/(n-2)! + 1/(n-1)!)
です。
ただ,ここは,同じことですが,マクローリン展開など使わずに,単に部分積分を用いて,
a(n) = ∫[0,1]{(1 - x)^(n-1)/(n-1)! * e^x}dx
= [(1 - x)^(n-1)/(n-1)! *
e^x][0,1] + ∫[0,1]{(1 - x)^(n-2)/(n-2)! * e^x}dx
= a(n-1) - 1/(n-1)!
これを繰り返して,
a(n) = a(n-2) - 1/(n-2)! -
1/(n-1)!
= …
= a(1) - 1 - 1/2! - … - 1/(n-2)! - 1/(n-1)!
= ∫[0,1]{e^x}dx
- 1 - 1/2! - … - 1/(n-2)! - 1/(n-1)!
= e - 1 - 1 - 1/2! - … - 1/(n-2)! - 1/(n-1)!
a(n) = e - (1 + 1 + 1/2! + … + 1/(n-2)! + 1/(n-1)!)
とした方がいいように思います。
また,この式から,
R(n) = a(n) = ∫[0,1]{(1 - x)^(n-1)/(n-1)! * e^x}dx
も分かります。
マクローリン展開を使うのは,何か,答えが先に分かっているようで気持ちが悪いです。
(3)
(1)より,
0 <= lim[n->∞]{a(n)} <= lim[n->∞]{e/n!} = 0
lim[n->∞]{a(n)} = 0
そこで,
Σ[n=1,∞]{1/(n-1)!}
= lim[k->∞]{Σ[n=1,k]{1/(n-1)!}}
= lim[k->∞]{1 + 1 + 1/2! + … + 1/(k-2)! + 1/(k-1)!}
= lim[k->∞]{e - a(k)}
= e
つまり,
Σ[n=1,∞]{1/(n-1)!}
= e
になります。
(感想)
(2)でマクローリン展開を使いました。
しかし,そこで述べたように。この問題を解くのにはマクローリン展開は不要です。
却って,答えが先に分かっているようで気持ちが悪いです。
むしろ,マクローリン展開を使わずに解いて,その結果をマクローリン展開と比較して,
a(n) が剰余項になっていることを確認する方がスッキリすると思います。
なお,積分に関する平均値の定理より,0 < c < 1 として,
a(n) = ∫[0,1]{(1 - x)^(n-1)/(n-1)! * e^x}dx = e^c * ∫[0,1]{(1 - x)^(n-1)/(n-1)!}dx = e^c/n!
なので,確かに,最初に与えられたテイラーの定理の剰余項に一致することも分かります。
NO2「浜田明巳」 05/08 17時56分受信
更新5/20
(1)0<x<1,n≧1から,
(1−x)n−1/(n−1)!>0,0<ex<e
∴0<(1−x)n−1/(n−1)!・ex<(1−x)n−1/(n−1)!・e
∴0<∫(0<x<1)(1−x)n−1/(n−1)!・exdx<∫(0<x<1)(1−x)n−1/(n−1)!・edx
∴0<an<−e/n!・[(1−x)n](0<x<1)=−e/n!・(0−1)=e/n!&l
t;br>
∴0<an<e/n!
< BR>(2)n≧2のとき,
an=∫(0<x<1)(1−x)n−1/(n−1)!・exdx
=∫(0<x<1)(1−x)n−1/(n−1)!・(ex)'dx
=[(1−x)n−1/(n−1)!・ex](0<x<1)−∫(0<x<1){(1−x)n−1/(n−1)!}'exdx
=−1/(n−1)!+∫(0<x<1)(1−x)n−2/(n−2)・u棕Γ・・・・齦隍苳・ぢxdx
=−1/(n−1)!+an−1
=−1/(n−1)!−1/(n−2)!+an−2
=−1/(n−1)!−1/(n−2)!−1/(n−3)!+an−3
=・・・
=−1/(n−1)!−1/(n−2)!−1/(n−3)!−・・・−1/1!+a1
=−Σ(2≦k≦n)1/(k−1)!+a1
=−Σ(1≦k≦n)1/(k−1)!+1+a1
n=1のとき,
a1=∫(0<x<1)exdx=[ex](0<x<1)=e−1w)ヲ側踉獅鬢苳・ぢ まとめると,
an=e−Σ(1 ≦k≦n)1/(k−1)!
(3)
Σ(1≦n≦∞)1/(n−1)!=lim(n→∞)Σ(1≦k≦n)1/(k−1)!=lim(n→∞)(e−an)
ここで,
0<an<e/n!→0(n→∞)
はさみうちの原理から,
lim(n→∞)an=0
∴Σ(1≦n≦∞)1/(n−1)!=lim(n→∞)(e−an)=e
<水の流れ:一部文字化けがありますが、フォントの関係と思われます。
お許しを。>
皆さん、答えがわかったら、一部でも構いませんから、解答とペンネームを添えて、
メールで送ってください。待っています。