平成26年6月29日
[流れ星]
第307回数学的な応募解答
<解答募集期間:6月8日〜6月29日>
[特殊な作図]
問題1:△ABCは鋭角三角形です。この内部に点Pをとり、3頂点からの距離の和AP+BP+CPが最小になるようにする。このとき点Pはどこに取ればよいか。
ヒント:頂点Bを中心に△ABPを60度回転。(他にあるかもしれませんが。また、鈍角三角形の場合は場合わけが必要です)
問題2:鋭角三角形ABCの3辺BC,CA、AB上にそれぞれ点D、点E,点Fをとり、三角形DEFを作りとき、3辺の長さの和DE+EF+FDが最小になるようにする。このとき、3点D、E,Fはそれぞれの辺上のどこに取ればよいか。
ヒント:辺ABに関して点Dの対称点。
<水の流れから報告:この問題は第202回の[トリチェリの問題]と同じですと「早起きおじさん」からご指摘を受けました。>
NO1「uchinyan」
06/08 15時18分 受信
更新 06/29
問題1:
ヒントに従って,△ABP
を B を中心に反時計回りに 60°回転し,A,P の移動先を A',P' とします。
すると,AP =
A'P',△BAA',△BPP' は正三角形になり BP = BP' = P'P で,
AP + BP +
CP = A'P' + P'P + PC
となり,AP + BP
+ CP は,定点 A',C を P',P 経由で結ぶ線分の和になります。
そこで,和が最小になるのは,
A' と P を直線で結び,P,P' を △BPP' は正三角形になるように取る,場合です。
ここで,A' の作図と A' と C を直線で結ぶのは容易ですが,
P を求めるには,例えば,次のようにすればいいでしょう。
(他の方法もありますが,それらは省略します。)
BC に関し A と反対側に △B'BC が正三角形となるように B' を取り,B'A と A'C との交点を Q とします。
すると,B'B = CB,AB = A'B,∠B'BA = ∠B'BC + ∠CBA = 60°+ ∠ABC =
∠A'BA + ∠ABC = ∠A'BC,で,
△BAB' ≡
△BA'C となって,△BA'C は △BAB' を B を中心に反時計回りに 60°回転したものです。
このとき,B'A 上の Q も B を中心に反時計回りに
60°回転され A'C 上の点 Q' に移動し,
△BQQ' は正三角形になります。しかも,Q は B'A と A'C との交点だったので A'C 上にもあります。
つまり,Q,Q' は A'C 上にあり △BQQ' は正三角形となるので,この Q が求める P です。
結局,作図としてまとめると,
AB を一辺とする正三角形 △A'AB'を A' が AB に関し C と反対側にあるように作り,
BC を一辺とする正三角形 △B'BC'を B' が BC に関し A と反対側にあるように作り,
A'C と B'A の交点を求めると,それが求める P で,AP + BP + CP が最小
になります。
(考察)
このとき,
∠APB =
∠A'P'B = ∠A'P'C - ∠BP'P = 180°- 60°= 120°
∠BPC =
∠A'P'C - ∠BPP' = 180°- 60°= 120°
∠CPA = 360°-
∠APB - ∠BPC = 360°- 120°- 120°= 120°
また,CA を一辺とする正三角形 △C'CA'を C' が CA に関し B と反対側にあるように作っても,
同様のことがいえます。
これらのことから,A'C,B'A,C'B は上記の一点 P で交わることも分かります。
それと,
直角三角形の場合,鈍角三角形で鈍角が 120°未満の場合は,P は同様に求められ,
鈍角三角形で鈍角が
120°以上の場合は,P はその鈍角の頂点に一致する
ことも明らかでしょう。
問題2:
ヒントに従って,D について,AB に関して対称な点を取り D' とし,
さらに,AC に関して対称な点を取り D'' とします。
すると,DE =
D''E,FD = FD',なので,
DE + EF +
FD = D''E + EF + FD'
となります。
今,D を固定すれば,D',D'' は定点となるので,
D''E + EF
+ FD' は,定点 D',D'' を E,F 経由で結ぶ線分の和になります。
そこで,この和が最小になるような E,F は D' と D'' を直線で結んだときの AC,AB
との交点です。
そしてこのとき,和は
D'D'' になります。
次に,D を求めることを考えます。
対称性より,AD' =
AD = AD'' で,さらに,
∠D'AD'' =
∠D'AD + ∠D''AD = ∠BAD * 2 + ∠CAD * 2 = (∠BAD + ∠CAD) * 2 = ∠BAC * 2 = 一定
そこで,△AD'D'' は,∠D'AD'' が一定で等辺が AD に等しい二等辺三角形です。
これより,D'D'' を最小にするには AD を最小にすればいいことになります。
これは,AD⊥BC となるときです。
そこで,AD⊥BC となるように D を取り,AB,AC の対称点 D',D'' を取り,
D'D'' を直線で結び,AC,AB との交点を E,F とすれば,
DE + EF +
FD が最小になる D,E,F を求められます。
作図としてはこれで十分なのですが,もう少し踏み込むことができます。
このとき,
∠D'AB = ∠DAB
= 90°- ∠ABC
∠AD'D'' =
(180°- ∠D'AD'')/2 = (180°- ∠BAC * 2)/2 = 90°- ∠BAC
∠DFB = ∠D'FB
= ∠D'AB + ∠AD'D'' = (90°- ∠ABC) + (90°- ∠BAC) = ∠ACB
そこで,□AFDC は円に内接します。これより,
∠AFC = ∠ADC
= 90°,CF⊥AB
さらに,
∠AFE = ∠D'FB
= ∠ACB
∠AEF = 180°-
∠FAE - ∠AFE = 180°- ∠BAC - ∠ACB = ∠ABC
∠DEC =
∠D''EC = ∠AEF = ∠ABC
そこで,□ABDE は円に内接します。これより,
∠AEB = ∠ADB
= 90°,BE⊥CA
以上より,AD⊥BC,BE⊥CA,CF⊥AB,となり,
D,E,F は A,B,C から BC,CA,AB に下ろした垂線の足
ということになります。
(感想)
これらは,どちらも教科書レベルを超えているとは思いますが,そこそこ有名な問題ですね。
初等幾何に詳しい人にはご存知の方も多いでしょう。
数学的な応募問題でも過去に取り上げられていたと思います。
私も知っていました。よい復習になりました。
なお,問題1:の点は,AP
+ BP + CP が最小という意味では,シュタイナー点,と呼ばれることが多いようですが,各辺上に作った正三角形の頂点と元の三角形の向かい側の頂点を結んだ直線の交点という意味では,フェルマー点,と呼ばれているようです。三角形では二つは一致するわけです。そのため,区別なく使われること多いようです。
また,問題2:の
△DEF は垂足三角形と呼ばれていますね。
NO2「早起きのおじさん」
06/15 10時48分 受信 更新 06/29
問題1
●△ABCについて、頂点Bを中心に左へ60度回転したものを△A’BC’とします。
A’とCとを結びます。
∠BA’Cと等しく∠BADをとり、ADとA’Cとの交点をPとします。
点Pについて、頂点Bを中心に左へ60度回転したものをP’とします。
(△BPP’は正三角形です)
この点Pが、AP+BP+CPを最小にします。
なぜなら、AP+BP+CP=A’P’+P’P+PC=A’Cとなるからです。(A’Cはまっすぐ)
P以外に点Qをとったとします。
点Qについて、頂点Bを中心に左へ60度回転したものをQ’とします。
(△BQQ’は正三角形です)
AQ+BQ+CQ=AQ’+Q’Q+QCとなり、折れ曲がってしまいます。
●別解
上の図で、∠APB=∠BPC=∠CPA=120度です。
∠BPCは、△BPP’が正三角形なので、120度になります。
∠APBは、∠BPDが正三角形BPP’のP’のところの内角と同じなので、120度になります。
∠APCは、∠DPP’(=∠DPB+∠BPP’)の対頂角なので、120度になります。
(∠APCは、360度から∠BPCと∠APBをとった残りとも考えられます)
だから、次のようにしても点Pが求まります。
△ABCの各辺のところにそれぞれの辺の長さを1辺とする正三角形をつくります。
それらの正三角形の外接円の交点が求める点Pです。
(円に内接する四角形の向かい合う二つの角の和は180度です)
●次に、△ABCが鈍角三角形のときは、120度を基準に場合分けをします。
(1) ∠BAC=120度のときは、点Pと点Aが重なります。
(2) ∠BA1Cが120度より大きいときは、点P1は△A1BCの外にあります。
(3) ∠BA2Cが120度より小さいときは、点P2は△A2BCの内にあります。
要点は、∠Aが120度のとき、A’とAとCが一直線上に並ぶということです。
問題2
●まず、点AとBとを直線aを経由させて結ぶと、最短は図のような場合になります。
点A’は、点Aと直線aに関して対称の位置にあります。
●三角形ABCの辺BC上に点Dが与えられたとき、どのように各辺上の点と結べば最短かを調べます。
図のように、点Dの直線ABに関して対称な点をD’、直線ACに関して対称な点をD’’とします。
直線D’D’’とABとの交点をF、ACとの交点をEとします。
このときDE+EF+FDが、点Dが与えられたときの最小となります。
DE+EF+FD=D’’E+EF+FD’=D’’D’(線分)となるからです。
●次に、D’D’’(DE+EF+FD)が最小になることを考えます。
∠D’AD’’は点D’やD’’のとり方から考えて、∠BACの2倍になります。
(△AC’D’≡△ACD’’、
△AD’B≡△AD’’B’)
これは、Dの位置によりません。
だから、 (△AD’D’’は二等辺三角形です)
つまり、∠BACが一定なので、D’D’’の最小はAD’が最小のときです。
だから、AD⊥BCのとき、D’D’’が最小になります。
各頂点から対辺に下した垂線の足を結んだときが、DE+EF+FDの最小です。
NO3「二度漬け白菜」 06/15 19時45分 受信
更新 06/29
(問題1)
頂点Bを中心にして,△APBを反時計回りに60度だけ回転させ,A,Pの移動先をそれぞれ D,Q とします.
また,頂点Cを中心にして,線分CAを時計回りに60度だけ回転させ,Aの移動先をEとします.
△BPQは正三角形なので,PB = QP.
このとき,PA+PB+PC = DQ+QP+PC となっています.
PA+PB+PCを最小にするには,点Dから点Cに至る折れ線の長さDQ+QP+PCを
最小にすればよいです.
この折れ線の長さが最小になるのは,点Pが線分DC上にあるときです.
同様に考えて,PA+PB+PCが最小となるような点Pは,線分EB上にあることがわかります.
以上より,求める点Pは,線分DC と
線分EB の交点として作図されます.(答)
このとき,∠APB=∠BPC=∠CPA=120度となっています.
(問題2)
DE+EF+FDを最小にするには,△DEFが△ABCの垂足三角形になるように
3点 D,E,F
をとればよいです.(答)
すなわち、AD⊥BC,BE⊥CA,CF⊥AB となるように D,E,F をとればよいです.
まず,辺BC上に点Dを固定します.
辺ABに関して点Dと対称な点を P, 辺ACに関して点Dと対称な点を Q とします.
このとき,DE+EF+FD = QE+EF+FP が成り立つので,
DE+EF+FDを最小にするには,点Qから点Pに至る折れ線の長さQE+EF+FP
を最小にすればよいことがわかります.この折れ線の長さは 2点
E,F が線分QP上に
くるときに最小になります.つまり,DE+EF+FDの最小値はQPとなります.
次に,点Dが辺BC上を動くとき,QPを最小にすることを考えます.
AP=AQ=AD,∠PAQ = 2∠BAC = (一定) となっています.
したがって QPを最小にするには,ADを最小にすればよいです.
ADを最小にするには,点Dを頂点Aから辺BCに下ろした垂線の足にとればよいです.
同様の考察を2点E,Fに対して行うことにより,これらの点も2頂点B,Cからそれぞれ
辺CA,辺ABに下ろした垂線の足となるときにDE+EF+FDが最小になることがわかります.
問題1はトリチェリの問題と呼ばれているらしいですね.
第202回の数学的な応募問題にありました.
問題1において,PA+PB+PCを最小にするような点Pは,△ABCの第一フェルマー点
と呼ばれているようですね.
http://www.highflyer2.com/math/centers10.html
第一フェルマー点の作図のやり方にはいくつかの方法が
あるようです.
私の解法では,厳密に言えば △BPQが正三角形となるような2点P,Qが線分DC上に実際に存在し,
なおかつ,その点Pは△ABCの内部にあるということを示さねばならないのですが,私にはこのこと
をどのように示せばよいのかがわかりません.
PA+PB+PCを最小にするような点Pがこの問題のテーマですが,これに対して,
PA+PB+PCを最大にするような,△ABCの内部および周上の点Pが存在するはずだと考えます.
このような点Pはいったいどのような点なのか興味深いです.
皆さん、問題や質問に答えてください。一部でも構いませんから、解答とペンネームを添えて、メールで送ってください。待っています。