<美しい数学の話>
第1話 「0の0乗」
NO1. プー太 より (平成11年4月26日)
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変数関数aのb乗(a^b)というのは、一番最初はbが自然数の場合に定義されました。つまり、
a^b
=a (b=1のとき)a^b
=a*a^(b-1) (bが2以上の自然数のとき)として。
その後、その関数の定義域は「指数法則」を保存するように拡張されていきました。
しかし、どう頑張っても
0^0は「指数法則」を保存するようには定義できません。これが1つの結論です。
しかし、ここからが新意見ですが、僕は
0^0は1であると「便宜的に」定義してもかまわないと思うのです。
その1つの理由は、自然対数の底を
eとし、xの定義域を複素数全体として、e^x=1+x+(x^2)/2+(x^3)/6+
………=1+
Σ(x^k)/k! (k=1から∞まで)と書き表わせるのですが、
0^0は1であると定義することによって、より簡単に、e^x=
Σ(x^k)/k! (k=0から∞まで)と書き表すことができるからです。
もし、
0^0が定義されないとすると、e^x=
Σ(x^k)/k! (k=0から∞まで)において、
x=0のとき、右辺のk=0が意味を持たなくなるからです。
NO2. 水の流れ より (平成11年4月27日)
昔、lim(x→0)x^x=1示したような気がします。
生徒には0^0=1とすると平気にいっていますが・・・
NO3. プー太 より (平成11年4月28日)
たしかに、上の極限はxを正の実数から0に近づければ1に収束します。
しかし、lim(x,y→0)x^y=存在しない、だとおもいます。
そもそも、0^0を定義するのに、連続性を考えるのは、そんな重要な事ではな
い、、、、と以前、数学セミナーの「投稿欄」に書かれていました。
僕も、絶対的な結論を持っているわけではないです。
ただ、数学の中では珍しく「議論」できるいい話題だとは思っています。
NO4. 月の光 より (平成11年5月3日)
こんにちは。weekend mathematicsの月の光です。
進路が決まった頃オイラーの公式 e^ix=cosx+isinxを見て数学が好きになりました。
特にゼータ関数やガンマ関数が好きです。
高校生のときもそれ以来大学の数学をやっていました。大学の数学の方が面白いです。
コロキウム室に書かれていたディリクレのL関数がとても気になります。
いつか教えて下さい。
ところで、0^0の事なんですけど、高校生のとき a^b は 1×a×a×a・・・×a
つまり、1に a が b 個かかっていると教えられました。
だから0^2は 1×0×0ということです。こうすれば0^0は1でいいと思います。
NO5. 水の流れ より (平成11年5月3日)
月の光さんの中で、
高校生のとき a^b は 1×a×a×a・・・×aの条件があったはずです。a≠0です。だから、考察する必要がいります。
私は、NO2.に書いたように、y=x^xのグラフを書いて、その極限を考えますが。
そこで、単純には無理ですから、対数をとって考えますが。
これは、依然 weekend mathematics に載っていたようにおもいます…。
NO6. プー太 より (平成11年5月14日)
0^0の話に月の光さんも投稿されてるとは、知りませんでした。
もう少し、議論を白熱させたいと思います。
a^b は 1×a
×a×a・・・×aつまり、1に a を b 個かけること
なるほど。2^0=1であることを説明するには、わかりやすいですね。
単に、2^0=“2を0個かけたもの”と説明されても意味不明ですからね。
これですと、2^(−1)=1/2は、1に2を−1個かけたもの、
つまり、1に2を1個割ったもの、と説明されるのでしょうか?
でも、2^(1/2)=√2であることは、この説明ではすこし無理がありますよね。
やはり、最終的には「指数法則」という言葉を用いなければ、うまく説明できないと思います。
0^0がなぜ、「指数法則」をみたすように定義できないか?
それは、指数法則(a^n)/(b^n)=(a/b)^nにおいて、a=2,b=0,n=0とすると、
(2^0)/(0^0)=(2/0)^0
となり、0^0が「指数法則」をみたすように定義できるとすると、2/0も定義できな
くてはならないことになり、矛盾するからです。
NO7. プー太 より (平成11年5月14日)
僕が、0^0=1に便宜的に定義したほうがいいという理由を挙げましょう。
理由は、5個くらいありますが、そのうちの1つです。
微積分で、
(x^r)
’=r*x^(r-1)rは実数の定数、xは実数の変数
という公式があります。
これは、rがどんな実数でも、xがどんな実数でもなりたつわけですよね。
だとすると、r=1としましょう。
x
’=1*x^0となります。今度は、x=0としましよう。
左辺はいつでも1ですから、
1=1*0^0
つまり、0^0=1となります。
NO8. 水の流れ より (平成11年5月14日)
NO7の微分からの話しは納得のいく話ですね。高校生にも理解できます。
NO9. プー太 より (平成11年5月15日)
先ほど、
(x^r)
’=r*x^(r-1)
rは実数の定数、xは実数の変数
と書きましたが、まちがいです。
(x^r)’=r*x^(r-1)
rは実数の定数、xの定義域はrによって適当に定める
が正しいと思われます。
r=1のとき、
(x^1)’=1*x^0
の定義域は、実数全体に定めるのが適当だと思われるが、
このとき、もともと左辺=1なので、右辺においてx=0のときに、
0^0=1
と「便宜的に」定義したほうが便利。
NO10. プー太 より (平成11年6月22日) 0の0乗に関する駄文を先生のホームページにのせていただいて(それも一番最初に)、 ありがたいです。 新たな文を投稿しますので、なにか議論にでもなればおもしろいと思っています。 0の0乗は、一般的には定義されていないが、ときには1と定義されることもあるみたいです。 例えば、等比数列の一般項は、初項をa、公比をrとして、a*r^(n-1)と表わされます。 ここで、次のように初項がa、公比が0である数列を考えてみましょう。 a , 0 , 0 , 0 , 0 , 0 ,…… しかし、この数列は、0^0=1と定義する事によって、公式通り、a*0^(n-1) と表わす事ができます。
集合Aから集合Bへの写像を要素にもつ集合をB^Aで表わします。
例えば、A={1,2,3},B={a,b}とすると、
f(1)=a,f(2)=b,f(3)=a
となるようなfはf∈B^Aです。
この集合B^Aの要素の個数は、2^3=8個あります。
これが指数を用いて集合を表わす理由です。
一般に有限集合において、♯(B^A)=(♯B)^(♯A)です。
ただし、シャープは個数を表わします。
ここで、φ^φはどんな集合でしょうか。実は、φ^φ={φ}となるのです。
これも、0^0=1と定義することで、公式♯(B^A)=(♯B)^(♯A)
はすべての有限集合で成り立ちます。
NO12. 水の流れ より (平成11年6月22日)
プー太からの0^0=1の話は、いずれも高校生に理解でき、納得のいくものばかりです
ので、これからの授業展開に利用していきたいです。このような事例を持っておられるプー太
さんはすごいなー。