平成11年10月30日

<美しい数学の話>

第10話 「グレゴリオ暦」

 皆さんは、「自分の生まれた日は何曜日だったのだろうか?」とか、「来年の誕生日はどうなっているだろうかな?」などど考えることがあります。1年は365日であり、曜日は7日(1週間) ごとに繰り返すから、365を7で割ったとき、365=7×52+1と表されることにより、1年は52週と1日とわかる。よって、曜日は、ある年と次の年とでは1日だけずれる。ところが、次の年が閏年では、1日多い366日だから2日ずれてしまう。

この”閏年”は、なぜ必要になったのでしょうか。」

天文学の知見によれば、地球が太陽を1周するのに必要な時間は、すなわち”1太陽年”は、                   365.2422日=365日5時間48分46.08秒    であるという。よって、       

1年を365日に定めると、0.2422×4=0.9688≒1     

となるから、4年に約1日ずれてくる。ここから、4年に1日ふやす必要が生じてくるのです。そのために4年に1度の閏年がつくられたのです。ところが、4年間に1日ふやすと、100年では25日ふえることになる。しかし、実際には、100年経つと、

0.2422×100=24.22日   だから、25日ふやしたのでは、約1日ふやし過ぎということになる。ここから、100年目は閏年にしないという約束がつくられたことになる。   つまり、4で割り切れる数の年は閏年にするが、同時に100で割り切れる数の年は閏年にしない。というわけである。 こうすると、結局100年で24日ふやしたことになるが、この調子でいくと、400年では、96日ふやしたことになる。しかし、実際は、

0.2422×400=96.88≒97  ふえるべきなのであるから、400年目は逆に閏年にしたほうが良いのです。このようなわけで、1582年2月24日、ローマ教皇グレゴリオ13世(1502〜1585)は、

  1. 4の倍数の年は閏年とする。
  2. しかし、100の倍数の年は閏年にしない。
  3. ところが、400の倍数の年は閏年とする。
  4. 閏年は2月29日とする。

という規則にもとづく暦を制定した。この暦は”グレゴリオ暦”と呼ばれ、今日”西暦”として使われているのです。

 グレゴリオ暦以前は、古代ローマの支配者ユリウス・カエサル(前102〜前44)によって紀元前46年に制定されたユリウス暦が使用されていた。これは、1年を365.25日としていたので、単に4年目に閏年とするだけでのものであった。したがって、次第に暦と現実とがずれてくるのは当然のなりゆきであった。

1太陽年は、およそ365.2422日であったから、

365.25−365.2422=0.0078 より、1年におおよそ0.0078日     (約11分14秒)ずつずれが生じることになる。このずれは130年経つと約1日の誤差になる。

0.0078×130=1.014   これは、130年経つと、暦日のほうが1日早く進んでいることを意味している。そして、この誤差が積もり積もって、16世紀には10日間にも達することになり、そのために、暦の上では3月21日に来るべき春分が、3月11日になっていたのである。そこで、時の教皇グレゴリオ13世は数学者クリストフェル・クラヴィウス(1538〜1612)や天文学者アロイシウス・リリウスの助言を採用して、新しい暦を制定し直したのである。すなわち、ユリウス暦による進みの誤差10日間を暦から省くことにし、1582年10月の暦が次のように定められたのである。

 すなわち、1582年10月4日がユリウス暦の最後の日とされ、その翌日がグレゴリオ暦の最初の日である。1582年10月15日と定められたのである。これによって、歴史上1582年10月5日から14日までは存在しなくなってしまった。

 ユリウス暦<1582年10月>のカレンダー

 

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  グレゴリオ暦<1582年10月>のカレンダー

 

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さて、ユリウス暦は単に4年に1度の閏年を置くだけでの暦であったから、400年間に閏年は100回あることになる。

したがって、(365×300+366×100)÷400=365.25 より、ユウリス暦の1年は365.25日となるわけである。これに対して、グレゴリオ暦では、100の倍数は閏年としないので、400の倍数の年は閏年とするので、400年間では、閏年はユウリス暦より3日少なく97日となる。よって、(365×303+366×97)÷400=365.2425   より、グレゴリオ暦の1年は365.2425日ということになる。

 したがって、グレゴリオ暦にしても太陽の運行とピッタリ合っているわけではない。そもそも最初に紹介した365.2422日が平均日数なのであり、より詳しい1太陽年は、365.24219879日であるから、グレゴリオ暦と差は

365.2425―365.24219879=0.00030121日 より1年間に約26秒の誤差が生じる。だから、グレゴリオ暦を使い続けると、

  1. 00030121×3300=0.993993≒1日  

より約3300年で1日ずれてくる。したがって、3300年に1度の閏年を置く必要があることになる。このことに関する規則はまだ作られていない。

<全引用文献:数とその歴史53話(上垣 渉、何森 仁共著)、三省堂>

NO2 <ch3cooh>さんからのお話 11月1日受信

こんにちは、ch3coohです。暦に関する、あまり使いがいの無い知識です。

暦のずれに関しては、"時間"の測定についての厳密な測定が行われるようになってから、相当に色々な補正がされているよ

うです。たとえば、"閏秒"等がその例です。

これは、潮汐の関係上100年あたりに地球の自転が1.48msec遅くなっていることや

(URL:http://www.edu.ipa.go.jp/mirrors/togane-ghs/TNPJP/nineplanets/luna.html)、

大気の循環を主な原因とする自転周期の揺らぎにより、自転速度自身が時々刻々と変化しているためです。

(計測は出来ませんが、自転の方向・逆方向に全力で走ると、その影響(:=作用・反作用)で自転速度が変わるはずですね?)

 さて、自転速度が(ここでは、明記していないが一日あたり)1.48msec遅くなると、1年間ではどの程度影響があるのでしょうか?

一年を365日とすると、約0.54秒も回転速度が落ちることになります。

遅くなる速度を一定として、(揺らぎや、公転速度の変化を無視して)

3300年分累積すると・・・3300*33*.54/2= 29403(sec) => 490(min) => 8.17(Hour)もずれることになります!!

・・・もっとも、私たちの生きている間には、大した影響はないようですが・・・

(上に書いたURLをたどると、地球自身のパラメータなども分かります。数学ではなく、理科の例題になると思いますが、

角運動量保存の法則と月が地球から離れる速度から、地球の自転速度の遅くなる割合を計算することも面白い課題かもしれませんね?)

人の歴史を逸脱した範囲まで考えると、数10億年前には、一日=4時間ということもあったようです。

で、そのころの月の軌道は、現在の1/10以下だったとか・・・

(潮の満ち引きはどれくらいあったのでしょうか?)

>人の世界に戻ったきて暦については、生活と密接に関係している点から、あらゆる文明で解析した痕跡が見られます。

アステカ文明の暦や、中国の太陰暦: ちなみに、中国の太陰暦が制定されたのは春秋戦国時代だったはず

<=記憶をたよりにしているため、今一つ不正確 (^^;)

太陰暦は、月の満ち欠けを計測手段のベースにしているために潮の満ち引きとの合致度が高く、その点からは便利だったようです。

 しかし、良く考えてみると、これだけ長期的に使用できる暦を2000年以上も前に制定できるということは、それまでに恐ろしく高精度な測定の蓄積があるということにもなる。

この測定と計算は、算術の発達した原動力の一つとも考えられています。

(アステカ文明などでは、国王のような特権階級が、この計算を受け持っていた。)

 以上

<水の流れ:コメント>1日記入

 私も先日のテレビの中で、今、月と地球がだんだん遠ざかっていて、ニュートンの発見した万有引力塔の関係から、地球の自転が遅くなっていき、遠い未来の世界では、時間的に昼が2週間、夜が2週間という時代が予想されているのだそうです。勿論、人間がいれば、適応能力がありますから、何らかの生活をしているんだそうです。

NO3 <ch3cooh>さんからのお話 11月2日受信

 グレゴリオ暦については、日本国内でも導入などについていくつかの歴史的経緯があるようです。

1) 太陰暦から太陽暦に変更するときに、10日ぐらいの半端な月が発生したが、

その時に財政赤字に苦しんでいた明治政府は公務員の給与を全額カットした。

2) 太陽暦を導入するときに、暦に関する法律を作成したが、その時に間違って条文ではユリウス暦を指定している。

(ただし、法律学者の間では、世界的情勢に合わせることを目的として導入しているので、単純な記述ミスとして、グレゴリウス暦を使用することが正しいとしている)

3) 秋分点・春分点について、普通は閏年か否かで月日が固定であるため、そのように暦や手帳を作成しようとしたが、厳密に計算するとずれる年があり(何年だったかは度忘れしています)、印刷できないという状況に陥った。

などです。

 年の始めをいつにするか等については、結構難しい問題を含んでいると思いますね?

(冬至を元旦とすれば非常に楽だと思うのに・・・)

西洋文明の源であるエジプトでは、シリウスが夜明けと共に天に昇る日を基準点に選んだようです。

(この日を基準として選ぶとナイル川の氾濫との対照を行いやすい)

もっとも、地球のごますり運動のせいで、一年の夏の時期などは少しずつずれていっているような気もしますが・・・

 

<自宅>  mizuryu@aqua.ocn.ne.jp

 

 


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