平成11年12月18日

<美しい数学の話>

第15話 「大学生の学力調査問題」

  最近、読んでいる「分数ができない大学生(岡部恒治・戸瀬信之・西村和雄著):東京経済新報社」

という本に、次のような学力調査問題がありましたから、紹介します。

(1)調調査対象学生:文系学部のなかでも、大半は経済学部の学生

(2)査時期:4月の1回目の授業

(3)調査時間:記述なし

(4)調査問題といつの時点で学習したかの一覧

問題番号

  問     題

前々過程

(1976〜85)

前過程

(1986〜95)

現行過程

(1996〜)

7/8−4/5

 小 学

 小 学

 小 学 

1/6÷7/5

 小 学

 小 学

 小 学 

8/9−1/5−2/3

 小 学 

 小 学

 小 学

3×{5+(4−1)×2}―5×(6−4÷2)

 小 学

 小 学

 小 学

2÷0.25

 小 学

 小 学

 小 学

―5×{8−10÷(−5)}

 中 1

 中 1

 中 1

√64

 中 3

 中 3

 中 3

√3×√27

 中 3

 中 3

 中 3

||−1|−|−3||

 中 1

 高 1

 高 1

10

3x+1=7

 中 1

 中 1

 中 1

11

3x+y=17,2x−5y=3を満たす

x=  、y=  である

 中 2

 中 2

 中 2

12

3x+1<4を満たすxの範囲は   である

 中 2

 中 2

 中 2

13

2x+3<2,3x+1>―5を満たすxの範囲は   である

 中 2

 中 2

 中 2

14

3x−5x−2=0を満たすx=  である

 中 3

 中 3

 中 3

15

+2x−4=0を満たすx=  である

 中 3

 中 3

 中 3

16

17xy+7=19xyのとき、4xy=

である

 中 1

 中 1

 中 1

17

1/(2x−1)=1/9のとき、x=  である

 中 1

 中 1

 中 1

18

|x+1|=3のとき、x=  である

 中 1

 高 1

 高 1

19

y≦3x―2,x≧0満たす(x、y)の範囲を   図示せよ

 中 2

 高 1

 高 1

20

y=2―x   とする。x=0のとき、y=

であり、x=3のとき、y=   である。

 高 1

 高 1

 高 2

21

点A(5,−2)、B(3,6)について考える。

(T)線分ABの中点の座標をは( , )である。

(U)線分AB上の点Cで、AC:BC=2:1

である点の座標は( , )である。

(V)線分ABの長さは    である。

 中 3

 高 1

 高 2

<本文中からの引用です。>

絶対値の問題9などは、1976年以前の指導要録では中学校で習っていたことである。また、座標の問題11についても同様である。この20年間は、ゆとりの教育のもとに、中学校の数学では、難しいことを学ばせないような方向に改訂が進んできた。現在の中学校の数学は、できる子なら1年弱の間にすべ

てを終了できるほどに内容が薄くなっている。高校の数学でも、文系の学生が学ぶ高校1年あるいは2年での内容を少なくしたために、文系学部の大学生の数学が低下している。加えてその数学すら勉強しなくとも文系に入学できるため、数学を受験しない文系入学者の学力が極めて低くなっている。

 2002年からは小中学校の全学年で、教育内容のさらなる3割減、2003年からはそれに応じて高校の教育内容の改訂が高校1年生から実施されるのである。

また、ある私立大学の経済系学部の1年生の調査結果が書いてありました。問題1から、問題5までの全問正解率は受験で数学を選択した学生の場合:88.3% 、受験で数学を選択しなかった学生の場合:78.3%でした。

<水の流れ>この問題を見て、高校生にも、実施したくなりました。よく、他の教科担任から、「最近、分数の計算ができない子が多いねー。この間も、反物を3等分する計算を間違えて、裁断した生徒がいて、困ってしまった。」と言われた。これは、高校の数学の先生のせいではないような気がしていますが、 例えば、反物11mを3等分するとき、何も計算させなくて、反物を三つ折りさせて、へらで描いてから、裁断させればよいように思います。ちなみに、数学は11/3mが正解で、1m33cmは厳密には間違いなのです。だから、そのときにあった指導方法がありますから、太郎さんは、その場の必要に応じて、割り算なり、通分なり、因数分解なり、もう一度教え直しながら進んでいます。 

<自宅>  mizuryu@aqua.ocn.ne.jp

 

 


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