平成12年11月6日

<美しい数学の話>

第30話 「国際数学オリンピック(IMO)」

皆さん!国際数学オリンピック(International Mathematical Olympiad)をご存じですか。毎年(7月)1回、高校生(以下)の学生を対象として行われる数学の問題解決を競う国際大会のことです。

 日本は1990年の第31回国際数学オリンピック(北京)大会において初参加を果たしました。その大会の順位は世界54カ国の中で、20位、銀メダル2人、銅メダル1人の結果でした。今では、内容的にも規模的にも基盤の整った国際大会に発展しています。

 IMO大会は1959年より毎年夏(7月中旬)、主催国を各国持ち回りとして、実施されている。以下IMO大会の目的に則し、どのようにして行われるかについて、いくつか紹介します。

【1】大会の目的と意義

 IMOは、学校の教材に限らない数学の問題に、特に興味をもつ少年少女のための筆記試験によるコンテストである。試験の答案を比較することによって、IMOでは個々の競争者が挑戦し励ましを得て才能を見い出し、同時に高校レベルでの国際的交流を増進することを目的としています。またこのIMOは、若人間の交友的関係の樹立の補助をし、かくして各国間の協力と理解の増進を意図して行われる。

【2】各国の参加条件

 開催国より招待を受けた各国が、団長並びに副団長、と6名のを越えない選手より成るチームを開催国へ送ることが出来る。コンテストは、開催年の7月1日時点で18歳以下であり、かつ高校(または中学)に在学している者でなければならない。

【3】費用

 主催者が、団長並びに副団長と選手の開催地到着の日より帰国出発日までのチームの食事、宿泊および滞在に要する費用すべてを負担する。しかし、参加各国と開催国間の往復の交通費は各テームの負担となる。オブザーバーやチームの同伴者は全費用を自己負担することが義務づけられ、また、主催者側がチームの同伴者と人数を制限することがある。

【4】大会日程

1日目:午前団長到着、夜問題資料配付。2日目:問題選定会議(討議)に入る。3日目:午前午後、問題選定会議で最終的に6題を選定する。夜、問題翻訳まず、英語・ドイツ語・フランス語・ロシア語・スペイン語に正確に訳される。4日目:問題翻訳、各国団長が自国語に訳す。(選手等到着、問題漏洩を防ぐため、試験終了まで団長と選手達の接触は禁じられる)。

5日目:開会式 選手には国際親善のためのプログラムが組まれる。6日目・7日目:試験、各日4時間半3題、夜団長、副団長は自国の選手の採点をする。成績判定。8日目:午前・午後、団長・副団長成績判定、選手、国際親善活動、夜、最終陪審員会議。9日目:各国の団長・副団長 最終陪審員会議、選手、国際親善活動。10日目:閉会式。11日目:帰国。

【5】問題の提出

 参加各国は、開催日の3,4ヶ月前の定められた期日までに3から6題の問題を解答とともに各年のIMO委員会に提出する事が義務づけられる。提出される問題は、初等数学の異なる分野から、難易に変化がある精選されたもので、未公開なオリジナルのものとされる。提出するのは、英語、ドイツ語、フランス語、ロシア語の4カ国語のいずれかの言語で記述されたものとされる。

【6】問題選定委員会

 各国の団長到着後、国際陪審員会が2、3日にわたって開かれる。最初に、各年の開催国委員会によって選択され、その年の候補となっている数十題の問題資料(すべて英語記述)が渡され、討議は英語、ドイツ語、フランス語、ロシア語で行われ、その年のIMO問題として、より質のよいものを選定する。

【7】問題翻訳

 6題の問題を選定後、まず英語の記述のものがドイツ語・フランス語・ロシア語・スペイン語に翻訳される。次ぎに、各国の団長が自国語に翻訳する。その後、正しくかつ公平に翻訳されたが互いに検閲する。

【8】試験

 試験は2日間にわたり、各日、3題が出題に対して4時間半という形式で行われる。通常、試験会場として開催地にある大学が使われる。各国6人の生徒はどの2人も同室にならないように分散して受験し、筆記用具と作図用具以外のものの使用は一切禁じられている。開始30分以内に、問題に関する質問を筆記にて自国語で質問することができる。多くの場合は、生徒の質問については回答しない。”No Answer”である。

【9】採点と判定

 試験が終わると、各国の生徒の答案は、それぞれ各国の団長はならびに副団長に渡され、彼らがこれを採点する。毎年、各問平等に7点の配点があり、1人分の満点は42点である。採点後、団長、副団長は答案の要点を英語に整理して、判定団(開催国の数学研究者達によって構成されるチームがこの役にあたる)自分たちの評価(採点の妥当性)を判定してもらう。判定会は1回30分で、1題の問題(計6人分)について判定する。

【10】最終陪審員会

 判定員と各国団長との生徒の答案に対する評価の相違に裁定、およびその年の各賞の配分について協議する。

【11】各賞の選定

 得点により、生徒の順位が定まり、優勝者には、金・銀・銅賞が与えられる。金・銀・銅賞の総数は参加生徒総数の半分を超えないこと、及び、金、銀、銅の割合は大体1:2:3であることが決められている。また、金、銀、銅賞以外に、特に見事なオリジナルな解を出した者に、特別賞が与えられる。閉会式で、受賞者には証書とメダルが授与されるが、他の生徒にも、この大会参加の証書が与えられる。なお、公式には国別順位なるものは競わないが、生徒6人分の総得点を算出し、これを国別順位とするのが慣例になっている。

【12】日本の成績状況

場所

何年

参加国数

日本順位

金メダル

銀メダル

銅メダル

31

北京

1990

54

20

32

スウエーデン

1991

55

12

33

モスクワ

1992

56

34

イスタンプール

1993

73

20

35

香港

1994

69

10

36

カナダ

1995

73

37

インド

1996

75

11

38

アルゼンチン

1997

82

12

39

台湾

1998

76

14

40

ルーマニア

1999

81

13

41

韓国

2000

82

15

42

アメリカ

2001

83

13

 なお、2003年の大会は日本で開催されることが決まっています。

参考文献:@数学オリンピック’93〜98(日本評論社)の付録B A数学セミナー2000年11月号 B新数学辞典:大阪書籍
C詳しくは、ホームページhttp://imo.wolfram.com を開いてください。

<自宅>  mizuryu@aqua.ocn.ne.jp

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