平成29年３月27日
　　　　　　　　　　　　　　　　　　一部加筆　　　平成31年1月19日

関白　豊臣秀次公側室の辞世の和歌

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　

　　　　　　　　　　　　　　　　

これから文禄4年1595年8月2日（太陽暦では9月5日）京都三条河原で処刑された豊臣秀次の側室達が詠んだ辞世の和歌を書きます。

これより前に、秀次の一族公達並びに上臈達は徳永寿昌（ながまさ：岐阜県にある初代高須藩主）の邸に幽因（ゆうしょう）後、丹波亀山城に送られ、七月晦日に徳永邸に護送された。この間に命の短いことを知りつつ、幾つかの辞世の句を詠んだように思える。

後世、この和歌は、瑞泉寺・石崎縁起、瑞泉寺絵縁起、伝来辞世表具外題、伝来辞世書付紙、聚楽物語、太閤さま軍記のうち、甫庵太閤記、関白雙紙、瑞泉寺・関白秀次公縁起、瑞泉寺・秀次公絵縁起、広島大学所蔵・猪熊文書、関白手縣衆車注文、東北大学・狩野文庫の13種類の本に残されています。
注：番号は具楽物語からの処刑順　注：法名は慶長16年（1611年）誓願寺の中興教山上人が授与（瑞泉寺・石崎縁起から）

その中で主な７つを参考文献として

�@ 雑史集　（中にある聚楽物語から）国民文庫刊行会1921年発行　
�A「太閤記」小瀬甫庵1625年全巻22巻（現代訳1979年吉田豊著）
�B 太閤史料集（中にある太閤さま軍記のうちから）昭和40年発行
�C 瑞泉寺・石崎縁起　初版昭和17年（再々版は平成24年）　
�D 瑞泉寺・関白秀次公縁起(瑞泉寺名誉住職の資料から)　
�E 関白雙紙（そうし）(瑞泉寺名誉住職の資料から)　
�F 東北大学・狩野文庫(瑞泉寺名誉住職の資料から)　　という順に和歌を書きます。

その前に、当日8月2日の悲惨な様子を書いておきます。

秀次の若君、上臈、婦人たちを誅（ちゅう：成敗する）すべきとの上使が立ち、いやが上にも悲しみは増した。

検使には石田治部少輔、増田右衛門尉をはじめ、橋より西の片原に、布皮敷いて並び居た。
彼らは若君達を車に乗せ、上臈達を警護して、上京を引廻り、一条二条を引き下り、羊の歩みにて三条の河原へ近づいた。

橋のあたりまで着くと、検使たちが車の前後に立ち「先ず若君達を害し奉れ」と下知した。
青侍・雑兵共が走り寄り、玉のような若君達を車から抱き下ろし、変わり果てた父秀次の首を見せた。

仙千代丸はおとなしくこれを見て、「こは何と成らせられるや」と呟き、わっと泣いた。
その姿に母上たちだけでなく、貴賎の見物、警護の武士に至るまで前後を忘れともに涙に暮れた。しかし太刀取りの武士は「心弱くては叶うまじ」と目を塞ぎ、心を太刀だけに集中して仙千代丸達を害した。この時彼らの母上たちは、人目も恥ずかしさも忘れ、声を上げた

「どうして私を先に殺さないのか！急ぎ我を殺せ！我を害せよ！死出の山三途の川を誰か介錯を頼むぞ」と言いつつ、仙千代丸の死骸に抱きついて伏し嘆いた。
これより目録に合わせ、順に座らせた。もはやいかにすることもできぬと覚悟されて、こうお詠みになり、程なく処刑されていった。
1番目　継室（正室）今出川右大臣菊亭春季の娘　上臈　一の台　34歳　
法名　徳法院殿誓威大姉（とくほういんでんせいいだいし）　

　一番は絶世の美人と謳われた今出川右大臣菊亭春季の娘君上臈一の台（みだい）の御局で当年三十一歳の女盛り。此世はかりのやどりなれば何事も前世のむくひとおぼしめし。辞世に

�@ 長らへて　ありふる程を　浮世ぞと　思えへばのこる　言の葉もなし
（生きながらえていて、この世は悲しみや苦しみに満ちた定めなき世だと思いますから、残しておくような言葉はありません。）

�A 心にも あらぬ恨みは　ぬれぎぬの　妻ゆゑかかる　身と成りにけり
　（御屋形様が太閤殿下をお恨みいたすなど、心にもないことです。けれどもそんな濡れ衣でも、衣が濡らされた時には褄にも水が掛かってしまうのと同じように、御屋形様の妻である私もまたこのように刑場に消える身となってしまいました。）

�B つまゆへに　くもらぬ空に　雨ふりて　白川くさの　露ときえけり
　（妻であるがゆえに、雲やぬ空から雨が降ってきたような、突然思いがけない不幸に見舞われ、白川の草に置く露がすぐに消えてしまうように、私も死んでしまうことになります。）

注：白川とは比叡山に源を発し、京都市を西南流して、祇園付近で賀茂川に注ぐ川

�C ながらえて　ありつるほどの　浮世ぞと　思えへばのこる　言の葉もなし

（�@に同じ）

�D 浮世かな　花のしゅらくを　君ゆへに　伏見あらしに　つれてこそゆけ
　（この世は定めないものです。御屋形様のおかげで美しい花の京の都の生活を楽しみましたが、今は荒れ果てて寂しい伏見に私を連れて行　こうとしておられます。）

�E さきへゆく　人のこころこハ　ならのはの　みたのしやうとに　まちたまへ君

（先に亡くなっていくゆく人の心は楢の小川に浮かぶ葉のようにどこへ行くか分かりません。御屋形様　弥陀の浄土に行くのはお待ちください。）

注　楢の小川は京都市北区の鴨川神社境内を流れる御手洗川を言う。参拝者が手を洗い、身を清める川

�F さきのよも　このよもちきる　つまなれは　またのちのよも　をなしはちすは
　（前世も現世も契りを結んできた妻なので、また来世も同じ極楽に参りたいと思います。）

注　写真は瑞泉寺にある処刑された一族の人形

参考文献	名前	出生	年齢
�@ 聚楽物語	上臈の御方一の台の局	前の大納言御娘	三十餘
�A 甫庵太閤記	一の台	菊亭右府の息女	三十四
�B 太閤さま軍記のうち	一の台	菊亭殿息女	三十四
�C 瑞泉寺・石崎縁起	上臈一の台の御局	今出川右大臣菊亭春季の姫君	三十一
�D 瑞泉寺・関白秀次公縁起	いちのたい	菊亭殿御息女	三十四
�E　関白雙紙	いちのたいところ	きくていとののむすめ	三十にー
�F　東北大学・狩野文庫	いちのたい	きくていとのの御そくじょ	二十七

2番目　四条隆昌（三位中将殿）の娘　小上�掾@お妻の前（おつまの方）　16歳
法名　朗月院殿誓曜大姉（ろうげついんでんせいようだいし）

二番は小上臈於妻の前、四条三位中将殿の息女、十六歳のあでやかさ。紫に柳色の薄絹の重ねに白袴を引き、練貫の一重絹うちかけ、緑の髪を半切り、肩の周りにゆらゆらと振り下げて、秀次の首に三度拝し、こう詠んだ

�@ 朝顔の　日陰待つ間の　花に置く　露より脆き（もろ）　身をば惜まじ

（朝顔の花は日が陰るとしぼんでしまいます。咲いているわずかな時間だけ花に置く露ははかないものです。その露よりもはかない私のこの身ですから、惜しんだりしません。）

�A 故もなき　罪にあふみの　かがみ山　くもれる御代の　しるしなりけり

　　　（理由もない罪に問われている私ですが、近江の鏡山に雲がかかっているのも、鏡が曇ったさかしまな御代の証です。）

�B つまゆへに　あふみつらさの　かがみ山　曇るすがたの　見えてはづかし

（妻であるゆえに遭遇しているこのつらい思いを鏡山が映しています。悲しみにくれる姿を見られるのは気が引けます。）

�C あさ顔の　日かげまつまの　花におく　露よりもろき　身をばおしまん

（�@に同じ）

�D つまゆへに　さらす我身ハ　しら川の　すゝきなかせよ　罪も当もな　

　（妻であるゆえに、人前に晒されている私。罪も無いのに。白川の岸に茂る薄よ泣いておくれ。）

�E 君かため　しらへることの　ねにそへて　まつかせともに　みたのしやうとへ　

（御屋形様の為に弾く琴の音に添えて風に吹かれる松風の音が聞こえてきます。待っていてください。阿弥陀様のおられる浄土へもうすぐ私も参りますから。）

�F もとよりも　あふハわかれの　はしめそと　しれはいまさら　なになけかまし　

（もともと会うのは別れることの始まりと知っていますので、今更何を嘆いたりしましょうか。しませんよ。）

参考文献	名前	出生	年齢
�@ 聚楽物語	小上�掾@御つま御前	三位中将時めき給ふ人の御娘	十六
�A 甫庵太閤記	おつまの御方	四条殿御息女	十七
�B 太閤さま軍記のうち	おつまの御方	四条殿息女	十七
�C 瑞泉寺・石崎縁起	小上�掾@於妻の前	四条三位中将の息女	十六
�D 瑞泉寺・関白秀次公縁起	おへ（つ）ま	四てう殿の御むすめ	十六
�E　関白雙紙	おくまのおかた	四てうとのの御むすめ	十六
�F　東北大学・狩野文庫	おつまの御方	しでうとのの女	十六

3番目　摂津国小浜の僧　毫摂(ごうしょう)寺善助の娘　中納言局　お亀の前　33歳　長女　露月院　姫9歳　処刑　
　法名　絶妙院殿誓超大姉（せつみょういんでんせいちょうだいし）露月院殿誓槿大童女（ろげついんでんせいきんだいどうじょ）

　三番は、姫君の母上、中納言の局於亀の前であった。摂津小浜（宝塚市小浜）の寺の御坊の娘で、三十三歳を栄に少し過ぎていたが、西に向かい「南無極楽世界の教主弥陀仏」と観念し

�@　頼みつる　彌陀の教えの　違はずば　導き給へ　愚なる身を

　（頼みにしています阿弥陀様の教えを念じてきました私です。どうか愚かな私をご浄土へ御導きください。）

�A　時分ぬ　無常の風の　さそひ来て　花ももみぢも　散にけるかな　

　（人の世は定めのない無常といいますが、無常の風というものは季節を決めずに吹いてきます。このたびはその風に誘われて美しき桜も紅葉もともに散ってしまいます。）

�B　時しらぬ　無常の風の　さそひきて　さかりの花の　散りてこそゆけ

　（人の世は定めのない無常といいますが、無常の風というものは季節を決めずに吹いてきます。今を盛りと咲く桜も散りゆきます。）

�C頼みつる　みだのおしゑの　ちがはずば　道きたまへ　おろかなる身を
（�@に同じ）

�D ちうそんの　佛の御名を　たつぬれは　南無阿弥陀佛の　こえにひかれて

　（御屋形様が亡くなり仏となられ、雨露に濡れながら首が座っておられます。これから私は阿弥陀様の声に引きつられて浄土へ参ります。）

�E うき世とて　いままてこゝに　なからへて　にしへそゆかん　わかふるさとへ

（今まで辛くはかないこの現世に生きながらえてきました。西の方にある私のふるさとお浄土へ参ろうと思います。）

�F なにごとも　みなさきのよの　むくいそと　きけはそらみて　人たにもなし

（何事もすべて前世の報いであると聞いているので、空を見ながら誰もいない来世に参ります。）

参考文献	名前	出生	年齢
�@ 聚楽物語	中納言局御かめ御ぜん姫君母上	津の国小ばまの御坊のむすめ	三十三
�A 甫庵太閤記	中納言御方	摂州小浜殿息女	三十四
�B 太閤さま軍記のうち	中納言	小浜殿息女	三十四
�C 瑞泉寺・石崎縁起	姫君生母中納言の局 於亀の前	摂津小浜の寺の女	三十三
�D 瑞泉寺・関白秀次公縁起	ちゅうなこん殿	津の国のこはまの御はうの娘	□□
�E　関白雙紙	中なこん殿	津の国こはまのごぼうの娘	三十
�F　東北大学・狩野文庫	中納言	摂津の国・小浜の御坊の女	三十一

注　宝塚市教育委員会発行（平成6年）に「宝塚の民話・第二集」毫摂(ごうしょう)寺の亀姫として民話として悲しい物語が残されています。

注　中納言局とは秀次公が天正15年（1587）11月22日に従三位に昇叙　権中納言に転任。以降近江中納言と称しこの時代に側室になったと思える。また、天正16年以降に長女が出産と考えるなら年齢は７、8歳となる。（瑞泉寺名誉住職の見解から）

4番目　尾張国　日比野下野守の娘　お和子の前（おわこの方）　18歳　
長男　仙千代丸　６歳

法名　天運院殿誓暉大姉（てんうんいんでんせいきだいし）
　　暁覚院伝誓運大童子（ぎょうかくいんでんせいきだいどうじ）

　四番には仙千代丸君の母上、於和子の前であった。尾張日比野下野守が娘にて、十八歳になられていた。練絹に経帷子を重ね、白綾の袴を着て水晶の数珠を持ち、若君の死骸を抱きつつ、泣きながら大雲院の貞安上人に十念を授かり、心静かに回向して、こう詠じた

�@　後の世を　かけしえにしの　さかりなく　あとしたひゆく　しでの山みち

　（後世をと祈ったあなたとの御縁。もうこの世での盛りは過ぎましたので、御屋形様をお慕いして、死出の山道を行こうと思います。）

�C 後の世を　かけしえにしを　たのみにて　あとしたひゆく　死出の山道

　（後世をと祈ったあなたとの御縁。もうこの世での頼みは過ぎましたので、御屋形様をお慕いして、死出の山道を行こうと思います。）

�F よしあしも　しらくてくらせし　のちのよハ　たすけたまへや　なむあミたぶつ
（良いも悪いも知らずに生きて来ました。阿弥陀仏様　後世でお助けください。）

注　代々名は継がれており、日比野清実の嫡男、日比野下野守の娘
注　日比野下野守は秀次公の家臣で尾張清洲奉行。連座により山口少雲とともに京都北野の辺りで自害す。秀次家老、前野長康も自害。

注　瑞泉寺名誉住職によると、４番目　尾張国　日比野下野守の娘　お和子の前（おわこの方）と10番目　美濃国　日比野下野守清実の娘　お阿子の前　22(30)歳の二人が姉妹のようになっていますが検証が必要です。

注　�Bの太閤さま軍記のうちには「若君三人これあり。御成敗に次第」という記述があるゆえ長男仙千代丸と生母の存在が書いてない。何か大きな力が働いたと思える。

参考文献	名前	出生	年齢
�@ 聚楽物語	仙千代丸の母君 おわこのまへ	日比野下野のがむすめ	十八
�C 瑞泉寺・石崎縁起	仙千代丸の生母 於和子の前	尾張日比野下野守の息女	十八
�D 瑞泉寺・関白秀次公縁起	おあこ	ひゝの□□むすめ	十八
�E　関白雙紙	おあこ	ひらのしもつけむすめ	十八
�F　東北大学・狩野文庫	をあご	美濃の国の住人 ひびのしもつけのかミの女	十八

5番目　尾張国　山口少雲の娘　お辰の前　19歳　次男　百丸　4歳　
法名　容心院殿誓顔大姉（ようしんいんでんせいがんだいし）　　無上院殿誓道大童子（むじょういんでんせいどうだいどうじ）

　五番には百丸君の母上於辰の前。尾州山口将監の娘、十九歳になられていた。
白装束に墨染の衣を掛け、若君の死骸を懐に抱きつつ、長総の数珠を持って、これも大雲院の十念を受け心静かに回向して

�@ 夫（つま）や子に　誘われて　行く道なれば　何をか後に　思ひ残さん

（先に亡くなった夫や子供に導かれて行く死出の道なので何も思い残したりしましょうか。何も思い残すことはありません。）

�A かぎりあれや　なにを恨みん　から衣　うつつに来り　うつつにぞ去る

（もとより限りあるのが人の世でしょう。こういう憂き目にあったからといって何を恨みましょうか。私など夢のうちに栄華を極め、夢のうちに消えていくだけなのですから。）

�B つまゆへに　さかりの花と　おもふ身も　咲かぬ嵐に　ちるぞ物憂き

　（御屋形様のおかげで栄華を極めることができたと思っている私ですが、まだ花も咲かないうちに散ってしまうような子供のことと思うとつらいと思います。）

�C 妻（夫）や子に　さそわれて　行く道なれば　なにをかあとに　おもひのこさん

（�@に同じ）

　　�D たつそらの　身ハむらさきに　なりそめて　かけもかたちも　にしへこそゆけ

　　　（旅経つ浄土の空より姿は紫に染まり始めました。私はその西にある浄土に参ります。）

　　�E いさゆかん　き見もろともに　我も又　にしふく秋の　風やさそハん　

（さあ行きましょう。御屋形様と一緒に。西へと風が吹き誘っていきますよ。）

�F よよかけて　ちきるちきりの　くちせすハ　をなしはちすの　うてなならまし

（前世　現世　来世を一緒にと約束しました。その約束が破れることがなかったら、同じ蓮の花咲く浄土でお会いしましょう。）

注　写真は瑞泉寺の法名掲示板

参考文献	名前	出生	年齢
�@ 聚楽物語	御百丸の母上名前無記	山口松雲がむすめ	十九
�A 甫庵太閤記	姫君有　お辰御方	尾州　山口少雲息女	十九
�B 太閤さま軍記のうち	若君あり　おたつ	尾張の国　山口少雲息女	十九
�C 瑞泉寺・石崎縁起	百丸君の生母於辰の前	尾州山口将監の女	十九
�D 瑞泉寺・関白秀次公縁起	百丸の御ははこ おたつのかた	おハりの国のちゅうにん 山くちせううんむすめ	十九
�E　関白雙紙	百丸の御ははこ おたつのかた	おわりの国のちゅう人 山くちせううんむすめ	十九
�F　東北大学・狩野文庫	たつの御方　 をせんまるの御はは	やまぐちしやうの御女	十九

６番目　美濃国　竹中貞右衛門尉重定の娘　お長の前（お知屋）　18歳　

四男　土丸　1歳
　　法名　珠月院殿誓光大姉（しゅげついんでんせいこうだいし）　
　　　　　普現院殿誓済大童子（ふげんいんでんせいさいだいどうじ）

六番には土丸君の母上、於千屋の前、美濃竹中与右衛門が娘にして、十八歳。白装束に墨染めの衣着て、物毎に軽々しい出で立ちであった。かねてから禅の知識に参学（特に仏教を学ぶ）し、散る花落つる木の葉を観じ、憂き世の無常を悟って、少しも騒ぐ気色無く、本来無一物の心を

�@ うつつとは　更に思はぬ　世の中を　一夜の夢や　今覚めぬらん

　（現実のこととは、決して思うことができない。この世の出来事はほんの一瞬の、一夜の夢のようです。その夢から今覚めたような気がいたします。）

�A 時知らぬ　花のあらしに　誘はれて　残らぬ身とぞ　なりにけるかな

　　　（季節を知らない風によって多くの花々が散ってゆきます。私もまた他の皆様方とともに、何も残さない身の上となってしまいました。）

�B さかりなる　こずえの花は　散りはてて　消えのこりける　世の中ぞ憂き

　　　（満開だった桜が散り果てたように、栄華を誇った私達も落ちぶれました。残されていることは辛いことだと思います。）　　

�C うつつとは　更に思はぬ　世の中を　一夜の夢や　今さめぬらん

　（�@と同じ）

�D 世中ハ　たのうき世を　しらすして　おとろくままに　弥陀をたのまん

（世の中の辛さも知らず生きてきました。しかし、辛いものだと知りましたので、もう今からは阿弥陀様を頼みに致します。）

�E のちの世も　又にちの　世も君とわれ　しやうとのゑんと　なるそうれしき

（後の世も、またその後の世も　御屋形様と私が浄土で結ばれる縁であるのが嬉しいと思います。）

　注　写真は瑞泉寺にあるお長の供養塔　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　

参考文献	名前	出生	年齢
�@ 聚楽物語	御土丸の母上　お茶々	不記載	不記載
�A 甫庵太閤記	お長御方	濃州竹中貞右衛門尉息女	十八
�B 太閤さま軍記のうち	若君あり　おちやう	美濃の国竹中与右衛門尉息女	十八
�C 瑞泉寺・石崎縁起	土丸の生母於千屋の前	美濃竹中与右衛門の息女	十八
�D 瑞泉寺・関白秀次公縁起	おせんまるのおふくろ おちやうのおかた	ミのゝ国のちう人 竹中ゑもんむすめ	十八
�E　関白雙紙	おせん丸の御ははこ おちやうのおかた	ものゝくにちゆうにん たけなかかゑもんむすめ	十八

追記　表の中でお長の前は土丸の母で、おせん丸ではない。処刑された子には仙千代丸6歳、百丸4歳、十丸3歳、土丸6ヶ月、9歳の姫君がいる。

注　美濃の国（岐阜県不破郡垂井町）出身で武将竹中半兵衛重治の従弟にあたるのが竹中貞右衛門重定で、当時　京都伏見にある竹中屋に敷住んでいた。

　竹中丹後守貞右衛門重定（幼名　五郎作）1551年から1610年没　60歳　伏見城普請奉行　知恩院に葬る。

注　秀次に聚楽第を引き渡す時、奥に仕える侍女を推すよう求められ、竹中重利の弟重定の娘、お長の方を推した。半兵衛の妻の叔母が、秀次付家老、山内一豊の姉で、山内家と親戚になる。一豊も、お長の方の美貌と状況判断の確かさに感心し、推した。

余談：京都市伏見区竹中町には現在宝酒造の本社があり、お酒の松竹梅には蔵付半兵衛酵母仕込みと書いてあるが、実際は貞右衛門重定が住んでいたことを考えると、貞右衛門酵母と名づけても良い。すると、父栗原出羽守重光（重光のお墓は垂井町岩手の禅憧寺の境内にある）の存在が大きくなったように思える。

７番目　北野松梅院の娘　阿左古の前（お佐子の前）19歳　三男　十丸　３歳

　　法名　覚徹院殿誓正大姉（かくてついんでんせいしょうだいし）普照院殿誓旭大童子（ふしょういんでんせいきょくだいどうじ）

　七番には十丸君の母上於佐子の前、北野の松梅院の娘で、十九歳。白綾に練絹（ねりぬき）の単衣（ひとえ）の重に、白袴を引き、戻の衣を掛け、左には経を持ち右には数珠。西に向かって法華普門品を心静かに読んで、秀次、若君、そして我が身の菩提を回向して

�@ 一筋に　大悲大慈の　影たのむ　こころの月の　いかでくもらん

（一筋に仏様の御慈悲にお頼みにしています。どうして心が曇ったりしましょうか。いえ、悲しくなどありません。）

�A 残しおく　かぞいろの上に　思ふにも　さきだつ身より　わきてかなしき

　　　　（残していく父と母の身の上を思うと、先立つ我が身よりもいっそう悲しく思われます。）

�B 玉手箱　ふたやあとに　残しをき　かけごのさきに　たつぞもの憂き

　（玉手箱の蓋を後に残しておくように、両親を残して先立つ身は何とも辛い気持ちになります。）

�C ひとすぢに　大慈大悲の　影たのむ　こころの月の　いかでくもらん

（�@に同じ）

�D さ衣（ごろも）の　かさねの露の　ためなれは　のこらぬ身にこそ　うれしかりけれ

　（雨露をしのぐために単衣を重にして、先立つ私と分かっていますが、大変うれしいことです）

�E 君とわれ　いさやましハん　のりのにわ　いまそはちすの　花のうてなに　

（さあ御屋形様　参りましょう、浄土の庭に、ちょうど蓮の花が一面に広がっていますよ。）

�F はつもミぢ　うすきもこきも　もろともに　いつれのこらむ　こからしのやま

（紅葉は薄いも濃いも一緒に散ってしまいます。木枯らしの吹く山で残っていたりするものはありません。）

注　「北野松梅院禅永はは長袖とて御ゆるしなされ候」で自害を免れた（川角太閤記）

注　北野松梅院家も、後々まで、細川家と繋がり、細川家に支えられる。

参考文献	名前	出生	年齢
�@ 聚楽物語	御十丸のはゝうえ おさごのまえ	北野の松梅院のむすめ	不記載
�A 甫庵太閤記	若君有　おさこ御方	北野松梅院息女	十九
�B 太閤さま軍記のうち	若君あり　おさこ	北野松梅院息女	十九
�C 瑞泉寺・石崎縁起	十丸の生母於佐子の前	北野松梅院の息女	十九
�D 瑞泉寺・関白秀次公縁起	公有　おさこ	北野松梅院息女	十九
�E　関白雙紙	十丸とのの御ははこ おさいのかた	やましろのくに　きたのゝ せうはいゐんの御むすめ	十九
�F　東北大学・狩野文庫	をさごの御方	きたのせいばいゐんの御息女	十九

8番目　近江国　多羅尾彦七の娘　お萬の前　23歳　

　　法名　済縁院殿誓普大師（さいえんいんでんせいふだいし）

八番には於万の前であった。江州多羅尾彦七が娘。二十三歳。練絹に白袴引き、紫に秋の花が刺繍された小袖を着て、あたかも病中の事とてみる目もいたわしく、心も消え入るように思えた。これも大雲院の十念を受け掌を合わせ

�@ いづくとも　知らぬ闇道に　迷ふ身を　導き給へ　南無阿弥陀仏

（今、どこに居るかも分からない暗闇の道で迷っています。どうぞ、阿弥陀様お導きください。）

�C いづくとも　しらぬ闇道を　迷ふ身を　みちびきたまへ　なむ阿にだ仏

　（�@に同じ）

　　�D せんねんの　弥陀はあまたに　ましませと　な無阿ミ陀仏の　一こえに見る

　　　（弥千年の前から弥陀は多くあられますが、阿弥陀様の一声で分かりますよ。）

　　�F はるかへり　あきまたかりハ　きたれども　われハいつくをる　さしてゆくらん

　　　（毎年繰り返し　春になり、また秋が来るのですが、私はいつまで生れるか、確かに去っていきますけど。）

参考文献	名前	出生	年齢
�@ 聚楽物語	おまん御ぜん	あふみの国の住人しがらきの 多羅尾彦七むすめ	二十三
�C 瑞泉寺・石崎縁起	於万の前	江州　多羅尾彦七の息女	二十三
�D 瑞泉寺・関白秀次公縁起	お満	近江国信楽多羅尾息女	二十二
�E　関白雙紙	おまん	かうしうのちうにん たらおうひこむすめ	二十三
�F　東北大学・狩野文庫	おまん	近江の国の住人 多羅尾ひごのかみの女	三十一

注　「おまんの前」の父親とされている近江国信楽の多羅尾彦七が多羅尾光俊なのか、その次男光太、三男光雅なのか分からない。　

注　多羅尾氏について、近江甲賀郡多羅尾の豪族。光俊は織田信長に属し、山城・伊賀・信楽を領す。1582年明智光秀の乱に際し徳川家康は京からの帰途、その館に入り子の光雅が警護したという。光俊一族はいずれも豊臣秀吉に仕える。しかし、嫡子光太の娘が豊臣秀次の側室となり、1595年の秀次事件に関連して父子ともに秀吉の勘気を受ける。秀吉の没後家康に仕え所領を与えられる。＜国史大辞典より＞

注　豊臣秀吉の没後すぐさま多羅尾家の名誉を回復し、秀次事件を伝承する「�A太閤記」からも「おまん」一件を抹消したと考えられる。また、「�B太閤さま軍記のうち」にも記載がない。 ＜瑞泉寺名誉住職中川氏の説から＞

9番目　尾張国　堀田次郎右衛門尉の娘　お輿免の前（およめの方）　26歳
　　法名　竟回院殿誓究大師（きょうかいいんでんせいきゅうだいし）

九番には於よめの前、尾州堀田次郎右衛門が娘。二十八歳。これも白装束に数珠と扇子を持ち添え、西に向かい十念して

�@ ときおける　法（のり）の教おしへの　みちなれば　ひとりゆくとも　まがふべきかは

（説き示してくださっていた仏法の教えの死出の道まので、たとえ一人で行ったとしても迷ったりすることはありません。）

�A 千代までも　かはらじと　こそ思しに　うつりにけりな　夢を見しまに

　　　　（いつまでも変わらないと思っていたのに、すべては変わってしまいました、私が夢を見ていた間に。）

�B 千代までを　かはらじと　こそ思ひしに　君のこころの　なににかはりて

　（いつまでも変わらないと思っていたのに、すべては変わってしまいました。御屋形様の心は何に変り果てたのですか。）

�C ときおける　のりのおしえの　道なれば　ひとり行くとも　まよふべきかは

（�@に同じ）

�D よめハさく　おきょうのこえと　もろもろに　いまに妙なる　身とやむまれん　

（お経の声と共に栄華に過ごしたすべてのものが去り、すぐに美しい身に生まれ変わるでしょう。）

�F きミゆへに　ついにわか身を　かわしまの　みつのそこにも　まためくりあへ　

（御屋形様の妻なので、終にわが身を川島の水の底に沈めることになりましたが、また再び巡りあいお会いしたく思います。）

参考文献	名前	出生	年齢
�@ 聚楽物語	およめ御かた	おはりの国の住人堀田次郎右衛門むすめ	二十六
�A 甫庵太閤記	およめ	尾州　堀田次郎左衛門息女	二十六
�B 太閤さま軍記のうち	およめ	尾張の国堀田二郎左衛門息女	二十六
�C 瑞泉寺・石崎縁起	於よめの前	尾州　堀田次郎右衛門正時の息女	二十六
�D 瑞泉寺・関白秀次公縁起	およめ	尾張国　堀田次郎左衛門息女	二十六
�E　関白雙紙	おかめ	おはりのくにのちうにん ほつた九郎ゑもんむすめ	二十六
�F　東北大学・狩野文庫	をよめ	をはりのくにのぢうにん ほつた二郎さへもんのむすめ	十八

10番目　美濃国　日比野下野守清実の娘　お阿子の前　22(30)歳　法華経の信者
法名　照遠院殿誓恵大師（しょうおんいんでんせいえだいし）

十番には、於阿子の前、濃州日比野下野守の娘。三十歳。容姿すぐれ心も賢く、毎日法華読誦怠らず、信者なれば、その心を身のうへを蓮によせてかくなん

�@　妙なれや　法（のり）の蓮（はちす）の　花のえんに　ひかれ行く身は　頼もしきかな　
（最高の地位にいる御屋形様の妻だから、極楽にある蓮の花園に連れていかれる私は楽しみに思っている。）

�A　ぬれ衣おきし　妻ゆゑに　しらいとの　怪しや先と　あとにたちぬる

　　（濡れ衣を着せられた御屋形様の妻であるがため、私めには何も知らされておりません。知る知らぬの縁でいうと、白糸すなわち生糸が織りなす不思議のようなものなのでしょうか、先に逝かれた御屋形様をすぐ後より追うこととなりました。）

�Bつまゆへに　人のくがをも　しらいとの　あやしやさきと　あとにたちぬる

（御屋形様の妻ゆえに　人が住むこの世も　白糸すなわち生糸が織りなす不思議のようなものなのでしょうか、先に逝かれた御屋形様をすぐ後より追うこととなりました。）

�C　たへなれや　法（のり）の蓮（はちす）の　花のゑんに　ひかれ行く身は　頼もしきかな

�D　我かのせぬ　はん里は今の　小車　牛にひかれて　弥陀をたのまん
　（聚楽第を出て半里の今　牛にひかれている車に乗っている私は阿弥陀様にお頼みしたい。）

注　瑞泉寺名誉住職によると、４番目　尾張国　日比野下野守の娘　お和子の前（おわこの方）と10番目　美濃国　日比野下野守清実の娘　お阿子の前　22(30)歳の二人が姉妹のようになっていますが検証が必要です。

参考文献	名前	出生	年齢
�@ 聚楽物語	おあこの御かた	不記載	不記載
�A 甫庵太閤記	おあこ	濃州日比野下野守息女	二十二
�B 太閤さま軍記のうち	おあこ	美濃の国　日比野下野息女	二十二
�C 瑞泉寺・石崎縁起	於阿子の前	濃州　日比野下野守息女	三十
�D 瑞泉寺・関白秀次公縁起	おあこ	美濃国　日比野下野守息女	二十二

11番目　出羽国　最上義光の次女　お伊万の前（駒姫）15歳　
　　法名　諦雲院殿誓聴大姉（たいうんいんでんせいちょうだいし）

十一番には於伊満の前、出羽最上殿の息女であり、十五歳になられた。東国一の美人であると伝え聞かれ、秀次より様々に仰せになり、去る７月上旬に上洛したが、旅の疲れにて未だ見参のない内に、この難儀にあったので、淀の方より「いかにもして申し請け参らん」と心を砕かれたため、太閤秀吉も黙し難く、
「命を助け鎌倉に遣わし尼にせよ」と言った。これにより伏見から大至急早馬が出たが、あと一町という所で間に合わず、遂に蕾のままに散った。辞世は
　罪なき身を世の曇りにさへられて共に冥土に赴くは五常（儒教の仁、義、礼、智、信の徳性）のつみもはらひなんと思ひて

注：駒姫を秀次にお目見えさせたのは最上義光と甥、伊達政宗。秀次が対面を望んだのではない。最上義光は謹慎となる。

�@　罪をきる　彌陀のつるぎに　かかる身の　何か五つの　障りあるべき　

（罪人をさばく阿弥陀様の剣に命を無くす私ですが　何か五常に触るようなことをしたのでしょうか。）

�A　うつつとも　夢とも知らぬ　世の中に　すまでうかべる　白川の水

　（私が生きてきたのは御屋形様のありがたいお心ざしに満たされたところであるとともに、言われのない罪に貶められる濁った場所でした。夢か現実かも分からないそんな世の中に暮らすことなく、私も清き白河の水を求めて返ってゆきます。）

�B　うつつとも　夢とも知らぬ　世の中に　すまでぞかへる　白川の水

�C　つみをきる　みだのつるぎに　かかる身の　なにかいつつの　さわりあるべき

�D　いまくまの　ほとけのちかひ　たのもしや　弥陀にひかれて　西へこそゆけ
（今隠しだてない心を仏様にお誓いしました。頼みましたよ。　それでは阿弥陀様に引かれて西にある極楽に行きましょう。）

�F よいのまの　そらすミのほる　月かけも　いるややまのは　なくてあけめや

（夜の間に空の隅に昇る三日月も沈む山が無くては太陽が昇ってこないでしょう。朝が来ないので助かるかもしれない。）

注　写真は瑞泉寺にあるお伊満の和歌

参考文献	名前	出生	年齢
�@ 聚楽物語	おいま御ぜん	出羽の国もがみどのの御むすめ	十五
�A 甫庵太閤記	おいまの御方	奥州最上息女	十九
�B 太閤さま軍記のうち	おいまの前方	奥州最上家息女	十九
�C 瑞泉寺・石崎縁起	於伊万の前	出羽最上家の息女	十五
�D 瑞泉寺・関白秀次公縁起	お今のおかた	奥州もかミとの息女	十九
�E　関白雙紙	おいま	もかミとのゝむすめ	十九
�F　東北大学・狩野文庫	いまの御方	出羽の国　もかミとののむすめ	十九

12番目　京　秋葉（秋庭）氏の娘　お世智の前（あぜち）｛歌人｝35歳
法名　行覚院殿誓梵大姉（ぎょうかくいんでんせいぼんだいし）

　十二番には阿世智の前、上京の住人秋葉の娘であり、三十五歳。和歌をたしなみ月花の宴にも興さる才媛であったとか。最後の時も先を争ったが、目録どおりとのことで仕方なく、辞世に

�@　冥土にて　君や待つらん　うつつ共　夢ともわかず　面影にたつ

彌陀たのむ　心の月を知べにて　行けば何地に迷あるべき

�A にごる世の　白川の水に　さそはれて　そこのみくづと　なるぞかなしき

　　　　（白川の水は清く美しいと聞きます。濁り多き世の中では白川の水に惹かれはするものの、美しい水に浸ると引き替えに水底の藻屑となってしまうのも悲しいものです。）

　　　�B つまゆへに　わが白川の　水いでて　底のみづくと　なりはてにけり
　　　�C めいどにて　君やまつらん　うつつとも　夢ともわかぬ　面かげに立つ

　　　�D おあせりと　神やほとけを　祈まつ　いまハふしミに　ゆきそとゝまる
�F 此ほとの　こころのちりも　よしやたに　なかれてきよき　カモカワノミつ

　　　�F せきとむる　しからみもかなし　しらかわに　うきなをなかす　ことのくやしさ

参考文献	名前	出生	年齢
�@ 聚楽物語	あぜちの御かた	上京の住人　秋羽のむすめ	三十余
�A 甫庵太閤記	あぜち殿	秋羽殿息女	三十一
�B 太閤さま軍記のうち	おあぜち	秋羽殿息女	三十一
�C 瑞泉寺・石崎縁起	按察使の前	秋葉其の息女	三十五
�D 瑞泉寺・関白秀次公縁起	御あぜち	安記主殿息女	三十一
�F　東北大学・狩野文庫	あぜちとの	あさわ殿の女	不記載
�F　東北大学・狩野文庫	をとく	あきば殿の女	不記載

13番目　豊前国　本郷主膳の娘（または女房の姪）　小少将の前　24歳

　　法名　囲本院殿誓固大姉（いほんいんでんせいごだいし）

　十三番には小少将の前、備前本郷主膳が娘にて、二十四歳になられた。彼女こそ関白の御装束を賜ったほどの才媛で、有為転変の憂き世を悲しみはたく君の御供をいそがんと

�@ ながらへば　猶も憂目を　三津瀬川　渡りを急げ　君やまつらん

�B　恋しさを　なににたとえん　唐衣　うつつともなき　うき世なりけり

�C　ながらへば　なをもうきめを　みつせがは　わたりを急げ　君やまつらん

�D　ごくらくの　弥陀をたのめハ　そのまゝに　うまれうまるゝ　はちすそのうち
�F ごくらくを　にしのかたそと　きくなれは　いりひもしはれ　われをともなへ

参考文献	名前	出生	年齢
�@ 聚楽物語	小少将	ひぜんの国　本郷主膳むすめ	不記載
�B 太閤さま軍記のうち	こせうせう	びぜん衆　本郷主膳女房の姪	二十四
�C 瑞泉寺・石崎縁起	小少将の前	備前　本郷主膳の息女	二十四
�D 瑞泉寺・関白秀次公縁起	小少将	備前衆　本郷主膳女房ノ姪女	二十四
�E　関白雙紙	こせうしやう	ひせんのくに　 ほんこうしゆせんさい女	二十四
�F　東北大学・狩野文庫	あかしとの	ひぜんのくに ほんがうしゆせんとののめい	二十四

14番目　河内国　岡本彦左衛門三郎の娘、左衛門の後　38歳　侍女｛琵琶の弾じ琴の名人で源氏物語の師匠｝
法名　楽自院殿誓音大姉（らくじいんでんせいおんだいし）

　十四番には左衛門の後殿三十八歳。琵琶、琴の名人で、歌の師匠もされていた。是ぞ今わの気色にて
注：岡本彦三郎は、秀吉が幼い秀次に付け三好家にも従った秀次譜代の臣。

�@ しばしばの　憂世のゆめの　覚め果てて　これぞうつつの　佛とはなる

�A 中々に　花のかずには　あらねども　つねなき風に　さそはれにけり

　（私めは御屋形様のお側にはべる麗しい方々と並ぶものではありませぬが、普通ではない激しい風にあって花々が散るように、一緒に散らされてしまいます。）

�B あぢきなや　此よばかりの　ちぎりさへ　あはで過ぎにし　身をこそつらけり

�C しばらくの　浮世の夢の　さめはてて　これぞまことの　仏なりけり

�D さりとてハ　みるめかなしき　しら川の　弥陀をたのミて　にしへこそゆけ

�E われも又　にこりにしまぬ　はすのいと　なにかこの世に　こゝろのこさん

�F つみあるも　たすくるミだの　ちかいそと　たのむこころの　ミちしるへせよ
　

参考文献	名前	出生	年齢
�@ 聚楽物語	左衛門のかうどの	岡本といふ人の後室 父は河内の国たかやすの櫻井氏	三十
�A 甫庵太閤記	左衛門のかう	河内国岡本彦三郎母なり	三十八
�B 太閤さま軍記のうち	左衛門のこう	河内　岡本彦三郎息女	三十八
�C 瑞泉寺・石崎縁起	左衛門の後殿	記述なし	三十八
�D 瑞泉寺・関白秀次公縁起	佐右衛門公	河内岡本寿三郎母	三十八
�E　関白雙紙	さえもんのおかた	かハちのくにたかや さくら井とのゝむすめ	三十八
�F　東北大学・狩野文庫	さへもんのかう	さくらいとのむすめ	三十四

15番目　播州　村井善右衛門の妹　右衛門の後　35歳　侍女

　　法名　言廊院殿誓讃大姉（ごんかくいんでんせいさんだいし）

十五番には右衛門の後殿播州村井善右衛門の娘にて、三十五歳。薄幸の生い立ちで、また重ね重ねの憂き涙に袖もかはかず

�@ 火の家に　何か心の　留まるべき　涼しき道に　いざやいそがん

�A とても行く　みだの御国へ　いそげただ　御法の船の　さをなぐるまに

　　　　（これから向かうことになる阿弥陀の国へどうあっても急いでもらいたいものです。救済の船の棹が投げられるとともに、浄土に到るわけにはいかないのでしょうか。）

�B とても行く　みだの浄土へ　いそげただ　御法の船の　さしあはぬまに

　　 �C 火の家に　なにかこころの　とまるべき　すずしきみちに　いでやいそがむ

　　 �D えもんこう　いまをさいこの　身の行衛　さてこそたのめ　弥陀の浄土　

�E うらめしや　いまゝの世まて　なからへて　君とそかへる　はすのうハつゆ
�F かきりそと　みをしらかわの　うきはしを　みのりのふねと　をもひわたらん

参考文献	名前	出生	年齢
�@ 聚楽物語	右衛門のかうとの	村井善右衛門むすめ 二十一にて村瀬其に離れ	三十五
�A 甫庵太閤記	右衛門のかう	播州　村善右衛門尉妹	三十五
�B 太閤さま軍記のうち	右衛門のかう	村善右衛門尉妹	三十八
�C 瑞泉寺・石崎縁起	右衛門の後殿	播州　村井善右衛門の息女	三十五
�D 瑞泉寺・関白秀次公縁起	衛門之公	善右衛門いもいと	三十六
�E　関白雙紙	ゑもんのかた	きこらせんゑもんいもうと	三十五
�F　東北大学・狩野文庫	ゑもんのかう	むらいきちゑもんとののむすめ	三十二

16番目　妙心寺尼（御伽婆）めうしんの方　68歳　老女

　　法名　妙心院殿誓忍大姉（みょうしんいんでんせいにんだいし）

十六番は妙心老尼、同坊の普心の妻でお伽婆として仕えていた。辞世に、かづうなら　身に長らぬ　居ていまの　憂き目を見ることのかなしさに

�@ 先立ちし　人をしるべに　ゆく道の　迷ひをてらせ　山の端の月

　　　�C さきたちし　人をしるべに　行く道の　まよひをてらせ　山のはの月

参考文献	名前	出生	年齢
�@ 聚楽物語	めうしんといふ老女	どうぼう　ふしんのつま	不記載
�C 瑞泉寺・石崎縁起	妙心老尼	不記載	六十八

17番目　父は三条顕実（あきさね）　母は一の台の連れ子　お宮の前　13歳

　　法名　顕月院殿誓赫大姉（けんげついんでんせいかくだいし）

　十七番は於美屋の前、一の台の娘であり、父は尾張の何某にて十三歳。母子を寵愛されたこと、ただ畜生の有様であると、太閤は深く嫉み思われたとか、最後の体、おとなしやかに念仏して

�@ 秋といへば　まだ色ならぬ　うらば迄　誘ひ行くらん　しでの山風

�A うきはただ　おや子の　わかれと聞しかど　同じみちにし　行ぞうれしき

　　　　（辛いことは親子の別れと聞いておりましたが、このたびは母上と同じ道を行くことができるのが嬉しうございます。）

　　　�B 別れゆく　身ほどもの　うき事あらじ　みつせがはらの　白川の水

　　　�C あきといへば　まだいろならぬ　うらはまで　さそひゆくらん　しでのやまみち

　　　�D 宕（とう：洞穴）居して　としをかそへて　十三の　仏となりて　ちゝをおかまん

　　　�E うき世とて　しらぬ野山の　道ゆへに　さこそまよふと　人のみるらめ
　　　�F たまてはこ　ふたをやあとに　のこしおき　かけこのなれる　はてそかなしき

参考文献	名前	出生	年齢
�@ 聚楽物語	おみやごぜん	一のたいどのの御むすめ	十三
�A 甫庵太閤記	お宮御方	一台御息女	十三
�B 太閤さま軍記のうち	おみや	一の台の御むすめ	十三
�C 瑞泉寺・石崎縁起	於美屋の前	一の台の息女	十三
�D 瑞泉寺・関白秀次公縁起	お宮	一のたいの御娘　父は尾張衆	十三
�E　関白雙紙	おミや	いちのたいの御むすめ	十三
�F　東北大学・狩野文庫	おミや	いちのミヤとのの御息女	十三

18番目　摂津の国　伊丹（いたみ）兵庫頭正親（まさちか）の娘　お菊の前　16歳

　　法名　悦含院殿誓心大姉（えつがんいんでんせいしんだいし）

十八番には於菊の前、摂州伊丹兵庫の娘で、十四歳。大雲院の上人に十念授かり、いざなふて友にうきめにあふ事を露の身と思ひて

注：秀次の動向が気になり黒田官兵衛孝高が密かに推し、お菊の方を秀次に仕えさせる。

�@ 秋風に　誘われて　散る露よりも　もろきいのちを　惜みやはせん

　　　�A 先立つも　おくるるも　みな夢なれや　空より出て　空よりおさまる

　　　　（先立つのも遅れるのもすべて夢なのでしょう、因縁の織りなす仮の姿より生まれて元の場所に収まるのです。）

　　　�B こずへなる　花と思ひし　わが身さへ　つまゆへ散りて　ゆくぞ悲しき

　　　�C 秋風に　さそわれて　ちる露よりも　もろき命を　おしみやはせん

　　　�D 巻あくる　みすの追付　身にしみて　ふけゆく月の　かけやたのまん
�F きみゆへと　をもへはうさも　つらかりて　たたわひしきハ　のちとのよのこと

参考文献	名前	出生	年齢
�@ 聚楽物語	おきく御ぜん	津の国　いたみの人のむすめ	十四
�A 甫庵太閤記	お菊御方	摂津国　伊丹兵庫頭息女	十六
�B 太閤さま軍記のうち	おきく	津の国　伊丹兵庫頭息女	十六
�C 瑞泉寺・石崎縁起	於菊の前	摂州　伊丹兵庫の息女	十四
�D 瑞泉寺・関白秀次公縁起	お菊	摂津国　伊丹兵庫息女	十六
�E　関白雙紙	おきく	いたみひやうこむすめ	十四
�F　東北大学・狩野文庫	きく	いたみひやうごのむすめ	十四

19番目　尾張国　坪内市左衛門の娘　お喝食（おかつしき）の前（おなあの前）19歳　

　　法名　量徳院殿誓難大姉（りょうとくいんでんせいなんだいし）

十九番には於喝食の前、尾州坪内佐衛門の娘で、十五歳。武士の如き心ばえ、男子の風があって容儀殊に勝れていたから、稚児の名を付けらた。あさぎ色に練絹の単衣の重ね、白い袴を引しめ秀次の首を拝し、まよひの雲をはらひここの月をすまして

�@ 闇路をも　迷はでゆかん　しでの山　澄める心の　月をしるべに

　　　�A いかにとも　何うらみけん　難波がた　良し悪しもただ　夢の世の中

　（どうしようかと言っても一体何を恨みましょう、「何うらむ」の何の縁で言う難波潟のよしやあしではないけれど、物事の良し悪しはとにかく夢の中のことです。）

�B あじきなや　命にかへも　なきぞかし　いまの別れの　なをぞ悲しき

�C やみじをも　まよはでゆかん　死出の山　すめるこころの　月をしるべに

�D おなさけハ　ありあり月の　また育て　うれしき身と　にしへこそゆけ　
�F かゑらんと　をもはむかもの　かわなミに　いととぬれそふ　わかたもとかな　

参考文献	名前	出生	年齢
�@ 聚楽物語	かつしき	おはり国　坪内市右衛門むすめ	十五
�A 甫庵太閤記	おなあ	濃州　坪内三右衛門息女	十九
�B 太閤さま軍記のうち	おなあ	美濃の国　坪内三右衛門息女	十九
�C 瑞泉寺・石崎縁起	於喝食の前	尾州　坪内市右衛門息女（秀次家臣）	十五
�D 瑞泉寺・関白秀次公縁起	お奈阿	美濃国衆　平右衛門娘	十九
�E　関白雙紙	おこな	おハりのくに　つほうち十ゑもんむすめ	十八
�F　東北大学・狩野文庫	をなめ	尾張の国住人　つぼうちへいゑもんの女	十八

20番目　右衛門の督（ごう）殿の娘　　お松の前　12歳

　　法名　香気院殿誓薫大姉（こうげいんでんせいくんだいし）

二十番には於松の前、右衛門殿後殿の娘にて、十二歳。まだ幼かったから、唐紅に秋の花を刺繍した薄衣に袴の裾を握りながら、母親の死骸を拝しつつ

�@ 残るとも　長らへ果てん　浮世かは　終にはこゆる　死出の山道

　　　�C のこるとも　ながらへはてむ　憂き世かは　遂には越ゆる　しでの山道
�F 我なら手　此あわれさを　よそにみは　さそなこころも　みにそわじとや

参考文献	名前	出生	年齢
�@ 聚楽物語	おまつ御前	右衛門のかうどののむすめ	十二
�C 瑞泉寺・石崎縁起	於松の前	右衛門後殿（三十五歳）息女	十二
�F　東北大学・狩野文庫	をまつ	やまとのくにの住人 あきはとのの女	三十一

21番目　丹波国　由良藩主　別所吉治の客人の娘　お佐伊の前　15歳　
生国　近江　おきいの方　　年齢不明

法名　煖和院殿誓冷大姉（だんわいんでんせいりょう）

二十一番には於佐伊の前、別所豊後守の客人の娘で、十五歳。法華経を誦み

�@ 末（すえ）の露　元の雫も　消えかへり　同じながれの　波のうたかた

�A 咲けば散る　花の秋風　立ちにけり　たまりもあへぬ　萩がえの露
（咲けば散るのが花の命運です。そんな花にむかって激しい秋風がたつと、ひとたまりもなく消えてしまうのは萩の枝にかかる一滴の露です。）
�B あさましや　いつの世にかは　めぐりきて　再びあはん　ことはあらじな

�C 末（すえ）の露　もとの雫も　消えかへり　同じながれの　波のうたかた

�D きいてたに　きミの哀れを　ほとゝきす　月もろともに　にしへこそゆけ　
�F とをといひ　五つをけふの　かきりとも　しらて月日を　おハるかなしき

参考文献	名前	出生	年齢
�@ 聚楽物語	おさい	べつしよ豊後の守内に きやくじん　むすめ	不記載
�A 甫庵太閤記	おきい	小国　近江	不記載
�B 太閤さま軍記のうち	おきみ	近江衆	三十四
�C 瑞泉寺・石崎縁起	於佐伊の前	別所豊後守客人の息女	十五
�D 瑞泉寺・関白秀次公縁起	おきい	近江衆	二十四
�E　関白雙紙	おきい	へつしよぶんごうちきゃくじんのむすめ	二十四
�F　東北大学・狩野文庫	をきい	べつしよぶんこのかみミの女	十五

22番目　近江国　鯰江権之介の娘　お古保の前　15歳（19歳）

法名　順音院殿誓冷大姉（じゅんおんいんでんせいわだいし）

二十二番には於古保の前、江州鯰江権之介が娘、十五歳、寵愛深く、雪花月の戯れにのみふけって後世の事は思いもよらなかったが、十念を受けて来世を弥陀にまはせて、そしてこの期は大雲院の十念を受け回向して

�@ さとれるも　迷ひある身も　隔てなき　彌陀の教を　深く頼まむ

�A 我をただ　みだの誓ひも　頼まじな　出る月日の　入りにまかせて

（私は阿弥陀の誓いも当てにするつもりはありません。月や太陽が昇ったあとにまた沈んでゆくように、このたびのことは自然のごく当たり前のことなのです。）
�B わが恋は　みやまの奥の　ほととぎす　なき悲しみて　身は果てにけり
�C さとれるも　まよひある身も　へだてなく　弥陀のおしへを　ふかくたのまむ

　�D こはるゝハ　露のなみたの　しら川の　橋をわたれは　かのきしにつく
�F 見しひとも　つたへてきかん　ひとまても　たむけてたべや　のりの一こえ

参考文献	名前	出生	年齢
�@ 聚楽物語	おこぼの御かた	あふみの国の住人 なまづえ権之介むすめ	十九
�A 甫庵太閤記	おこほ	江州　鯰江才助息女	十九
�B 太閤さま軍記のうち	おこほ	近江　なまずゑ才助むすめ	十九
�C 瑞泉寺・石崎縁起	於古保の前	江州　鯰江権之助息女	十五
�D 瑞泉寺・関白秀次公縁起	おこほ	近江国　鯰江助娘	十九
�E　関白雙紙	不記載	がうしゆのちゆ人 なまつゑさいのすけむすめ	不記載
�F　東北大学・狩野文庫	をこぼ	近江の国の住人　はらとののむすめ	十九

23番目　越前国　木村常陸の守重茲（しげこれ）が呼んだ女郎　お仮名の前　17歳

法名　清観院殿誓白大姉（せいかんいんでんせいはくだいし）

二十三番には於仮名の前、越前国より木村常陸守が呼んだ上臈とか。十七歳。非常に賢く、浮世を泡のように観じて

�@ 夢とみの　思ふが中に　幻の　身は消えて行く　あわれ世の中　

�C ゆめとみの　思ふがうちに　まぼろしの　身は消えて行く　哀れ世の中

参考文献	名前	出生	年齢
�@ 聚楽物語	おかな御ぜん	越前の国より木村常陸の守が あげたりしに女房	十七
�C 瑞泉寺・石崎縁起	於仮名の前	不記載	十七

24番目　お竹の前　（元は捨て子）　18歳
　　法名　応両院殿誓威大姉（おうりょういんでんせいいだいし）

　　　二十四番には於竹の前。一条あたりで、ある方の拾った娘。昔の如意の妃（きさき）もかくとばかりの類なき美人で、
　　　仏道に去来の相なしと悟って公達のうたれさせ給ふ御有様を見て共に冥土へ心いそぎて

注：お竹の方は、おあひの方から関白にふさわしい女人として聚楽第に呼ばれた一条通に屋敷を構える近衛家縁者の娘。


　　　�@ 来りつる　かたもなければ　行く末も　知らぬ心の　佛とぞなる
　　　�A 夢にしも　知らぬ憂き世に　生れ来て　又しらぬ世に　帰るべらなり
　　　（夢に知ることもなかった憂き世に生まれ来て、またも知らぬ世に帰って行くのでしょう。）
　 �B 夢ほども　知らぬうき世に　わたりきて　つまゆへ身をば　ちりとなしけり
�C きたりつる　かたもなければ　行くすへも　しらぬ心ぞ　仏とぞなる
　　　�F なつすくる　かけとハいへと　たけのこの　ついにおやをも　しられかれめや

参考文献	名前	出生	年齢
�@ 聚楽物語	おすて御前	一條のあたりにてさる者のひろひたる子	不記載
�A 甫庵太閤記	お竹	捨子	不記載
�B 太閤さま軍記のうち	お竹	すてご	不記載
�C 瑞泉寺・石崎縁起	於竹の前	不記載	十八
�E　関白雙紙	お竹	すてこ	十七
�F　東北大学・狩野文庫	をたけ	すてこ	十七

25番目　京　古川主膳（饗膳の意味）の娘　お愛の前　法華の信者　23歳
　　法名　勝範院殿誓最大姉（しょうはんいんでんせいさいだいし）

　　　二十五番には於愛の前、古川主膳の娘で、二十三歳。法華転読の信者であったから、悉皆（しっかい）成仏何うたがひあるべきところをしまして

　　　�@ 草も木も　皆佛ぞと　聞く時は　愚かなる身も　たのもしきかな
　　 �A おもはずも　すみぞめ衣　　身に添いて　かけてぞたのむ　同じはちすに
　　　　（予想もしなかったことに墨染め衣を身にまとうこととなり、心から願うのは御屋形様と同じ蓮に生まれ変わることです。）
　　　�B つまゆへに　すみぞめの衣　身にそへて　かけてぞたのむ　おなじはちすに　
　　　�C くさも木も　みなほとけぞと　きくときは　おろかなる身も　たのもしきかな
　　　�D あひそめて　世を久かたの　ゆめさめて　はやくかへるゝ　弥陀の浄土
　　　�F かくあらん　ことともしらは　かねてより　ねがわんものを　くやしのちのよ　

参考文献	名前	出生	年齢
�@ 聚楽物語	おあい御前	古川主膳むすめ	二十三
�A 甫庵太閤記	おあひ	古川主膳息女　京衆也	二十四
�B 太閤さま軍記のうち	おあひ	京衆　古川主膳むすめ	二十三
�C 瑞泉寺・石崎縁起	於愛の前	古川主膳息女	二十三
�D 瑞泉寺・関白秀次公縁起	おあひ	京衆近衛殿内古河主膳息女	二十四
�E　関白雙紙	おあひ	ふる川しゆぜんむすめ	二十四
�F　東北大学・狩野文庫	をあい	ふるかわのしゆぜんとのの女	二十四

26番目　京　大原三河守の娘　お藤の前　21歳
　　法名　離夢院殿誓感大姉（りむいんでんせいかんだいし）

　　　二十六番には於藤の前、大原三河守の娘、二十一歳。十念を受け、やまじにまよふとも仏の御名を唱へなば照らせたまふと思ひて

　　　�@ 尋ね行く　佛の御名を　しるべなる　道の迷ひの　晴れ渡る空
　　　�A いかにせん　親にしあはぬ　うらみこそ　うき世の外の　さはりなりけれ
　　　（どうしようか、親に会えない恨みこそが現世の外にも繋がる障碍です）
　　　�B 時知らぬ　無常の風の　うらめしや　おやにもあはで　わくなみだかな　
　　　�C たづね行く　ほとけの御名ぞ　しるべなる　みちのまよひの　はれわたる空
　　　�D ふりさきて　鳴そふ山の　ほとゝきす　月もろともに　にしへこそゆけ
　　　�F ちとせもと　たのみしまつも　ゑたくちて　ふじもろともに　かれはてにけり　

参考文献	名前	出生	年齢
�@ 聚楽物語	不記載	大屋三河守むすめ	二十五
�A 甫庵太閤記	お藤の御方	大草三河守息女	二十一
�B 太閤さま軍記のうち	おふじ	京衆　大草三河むすめ	二十一
�C 瑞泉寺・石崎縁起	於藤の前	大原三河の息女	二十一
�D 瑞泉寺・関白秀次公縁起	お藤し	京衆　大草三河守娘	二十二
�F　東北大学・狩野文庫	をふじ	大くさミかわとのの女　京衆	二十二

27番目　斎藤吉兵衛の娘　お牧の前　16歳
　　法名　達故院殿誓通大姉（たつこいんでんせいつうだいし）

　　　二十七番には於牧の前、斎藤平兵衛の娘で十六歳。これも十念を受け手を合わせ

注：吉兵衛の兄は、家光乳母、春日局の父、斎藤利三。姉に長宗我部元親の妻がいる。


　　　�@ 急げ只　御法の船の　出でぬ間に　乗り遅れなば　誰か頼まん
　　　�A 妻故に　きえぬる身にし　かなしきは　のこれる母の　さこそと思へば　
　（御屋形様の妻であるがために、この身が消えてしまうのはやむを得ないと思います。しかし、悲しいのは母が悲しみを抱えたまま後に残されることです。）

�B つまゆへに　消えはつる身は　思はずや　母のなげきの　さこそあらまし
　　 �C いそげただ　御法の船の　出でぬまに　乗り遅れなば　誰かたのまむ
　　　�D たのますと　たすけ給へや　阿弥陀ふつ　あとさきしらぬ　我身なりせは

参考文献	名前	出生	年齢
�@ 聚楽物語	おまきの御かた	斎藤平兵衛むすめ	十六
�A 甫庵太閤記	お牧　御方	斎藤吉兵衛尉息女	十六
�B 太閤さま軍記のうち	おまき	斎藤吉兵衛息女	十六
�C 瑞泉寺・石崎縁起	於牧の前	斎藤平兵衛息女	十六
�D 瑞泉寺・関白秀次公縁起	おまき	斎藤吉兵衛尉息女	十六
�E　関白雙紙	おまき	さいとうきちひやうゑむすめ	十六

28番目　尾張国　大島次郎左衛門親嵩（ちかたか）の娘　お国の前（お園の前）22歳
　　法名　本植院殿誓徳大姉（ほんしょくいんでんせいとくだいし）

　　　二十八番には於國の前、泉州大島右衛門の娘、二十二歳。肌には白帷子に山吹色の薄衣の重ねに、練絹に阿字の大梵を書いたのを掛けて、秀次、若君たちの死骸を拝し、秀次の首に向かって座してから、太刀取が「西に向かれよ」と言うと、「本来東西無し。急ぎ討て」と答え、討たれた
注：親崇は秀次の父、三好吉房の妹婿で秀次の叔父になる。

�@ 名ばかりを　暫しこの世に　残しつつ　身は帰りゆく　元の雲水
�A 君ゆゑに　なみだがはらの　白川や　思ひの淵に　しづむかなしき
　（御屋形様を思うゆえに涙が溢れてまいります。涙川ならぬ、この加茂の河原で御屋形様の潔白を訴えても報われず、追慕の思いに沈むのが悲しい限りです。）
�B つまゆへに　なみだかはらの　白川や　思ひのふちと　身をしづめけり　
�C 名ばかりを　しばしこの世に　残しつつ　身はかえりゆく　もとの雲水
�D くにくにに　いつれあわれは　ますかゝみ　くもれと月そ　にしへこそゆけ
�F をのゑより　をろすあらしの　はけしさに　てるもミぢはを　あわれとも見よ

参考文献	名前	出生	年齢
�@ 聚楽物語	おくま御前	大嶋次郎右衛門むすめ	二十二
�A 甫庵太閤記	お国の御方	尾州　大嶋新左衛門息女	二十二
�B 太閤さま軍記のうち	おくに	尾張の国　大島新左衛門息女	二十二
�C 瑞泉寺・石崎縁起	於国の前	泉州　大島新右衛門息女	二十二
�D 瑞泉寺・関白秀次公縁起	お国	尾張国　大嶋新左衛息女	二十二
�E　関白雙紙	おくに	大しまゑもんむすめ	二十二
�F　東北大学・狩野文庫	おくに	大しま二郎さへもんの女	二十

29番目　出自不明　お須儀の前（お杉の前）　19歳　（肺病に悩み尼に）
　　法名　微吹院殿誓風大姉（びすいいんでんせいふうだいし）

　　　二十九番には於須儀の前、十九歳。日頃労症即ち肺病に悩み、姿を変えて尼になりたいと願っていたが、今はそれも叶わず、世にあるとき数ならぬ身もうきにはもれむことをかなしみて

　　　�@ 捨てられし　身にも縁や　残るらん　あとしたひ行く　しでの山越え　
　　　�C すてられし　身にもゑにしや　のこるらむ　あとしたひ行く　死出の山みち
注　写真は瑞泉寺にある処刑された一族の御遺影と和歌

参考文献	名前	出生	年齢
�@ 聚楽物語	おすぎ御前	不記載	十九
�C 瑞泉寺・石崎縁起	於須儀の前	不記載	十九

30番目　大野木土佐守秀俊の娘　お阿屋（おあや）（御すゑの人）（御末衆）31歳
　　法名　空立誓住清信女（くりゅせいじゅうせいしんにょ）

　　　三十番には於阿屋の前、三十一歳。御末の人。心静かに回向して

注：近江国坂田郡大野木(滋賀県米原市山東町)を所領。

　 　�@ 一聲に　こころの月の　雲はるる　佛の御名を　となへてぞ行く
　　　 �C 一こゑに　心の月の　雲はるる　ほとけの御名を　となへてぞゆく

参考文献	名前	出生	年齢
�@ 聚楽物語	おあや	おすへの人	不記載
�C 瑞泉寺・石崎縁起	於阿屋の前	不記載	三十一

31番目　美濃の国　丸毛不心斎丸毛兵庫頭(かみ)光兼(光建設株式会社)（長照）　東殿　61歳　　　　
　　法名　然交誓湛清信女（ねんこうせいたんせいしんにょ）

　三十一番は東の前、六十一歳。中居御末の女房が預かる人であった。夫は７５歳で、この３日前に相国寺にて自害した。

注：長照の嫡男、兼利が安八郡福束城2万石。兼利の妻は、稲葉一鉄の娘。


　　　�A 夢のまに　六十路あまりの　秋にあひて　なにかうき世に　思ひのこさむ
（あっという間に六十回を余す秋に会って参りました。この年になっていったいどのような未練を、こんなつらい世の中に残すというのでしょうか
�B ありがたや　弥陀のちかひは　すかれけり　いそぎてゆくや　極楽の道
　　　�D ひかしより　にしへムカハゝ　こくらくの　弥陀のしやうとや　やすゝしかるらん
　　　�F さかりをも　さかりならぬも　はなにかぜ　くもりミはれミ　つきのむらくも

参考文献	名前	出生	年齢
�@ 聚楽物語	ひがし	中ゐの御すへ女房をあづかり	六十一
�A 甫庵太閤記	東殿	濃州　丸毛不心斎女房	六十一
�B 太閤さま軍記のうち	ひがし殿	美濃の国　ふしん女房	六十一
�C 瑞泉寺・石崎縁起	東の前	不記載	六十一
�D 瑞泉寺・関白秀次公縁起	ひかし	美濃国　ふしん女房	六十一
�E　関白雙紙	ひかし	女はうたちのめつけなり	六十一
�F　東北大学・狩野文庫	ひかしとの	ねうたちのめつけなり まるもふしんのつまなり	五十一

32番目　お参の前 （御すゑの女房）
　法名　通岸誓達清信女（つがんせいたつせいしんにょ）　　　
　　　　

参考文献	名前	出生	年齢
�@ 聚楽物語	おさん	おすへの女房	不記載
�C 瑞泉寺・石崎縁起	於参の前	不記載	不記載

33番目　津保美 （不明）
　法名　最澄誓智清信女（さいちょうせいちせいしんにょ）

参考文献	名前	出生	年齢
�@ 聚楽物語	つぼみ	不記載	不記載
�C 瑞泉寺・石崎縁起	於保美の前	不記載	不記載

34番目　お知保 （不明、乳母？）

法名　開豁誓法清信女（かいかつせいほうせいしんにょ）

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　

参考文献	名前	出生	年齢
�@ 聚楽物語	ちぼ	不記載	不記載
�C 瑞泉寺・石崎縁起	於知保の前	不記載	不記載

注　写真は瑞泉寺にある処刑された一族の法名掲示板


注　�A甫庵太閤記にある和歌の口語訳は「京都クルーズ〜平成の京雀〜秀次事件〜『太閤記』より（９）辞世の歌」から引用させてもらいました。


文禄4年8月2日の夜に何者かの仕業か左の落首（風刺・批判・あざけりの意を含めた匿名のざれ歌。詩歌の形式による落書)　が貼られた。

「この天下は、天下を治める者の天下である。関白に罪があるというならば、関白を罰するしきたりに従ってことを行うべきであるのに、あたかも平民の妻子を処刑するかのような本日のやり方は、はなはだしく乱暴至極である。このような政治をしていては、将来、ろくなことはあるまい。因果のほどを、よくよくご用心されよ

　世の中に　不昧因果の　小車や　よしあしともに　めぐりはてぬる」

（この世の中は明々白々に因果の鎖が繋がっている。そのめぐりは小さな車輪のようなもので、いいことも悪いこともすぐに返ってくる。）（太閤記から）

実は、1年後まさにその日（旧暦は文禄5年潤7月13日　太陽暦1596年9月5日）に、慶長伏見地震（Ｍ７．５前後）が京都伏見付近で発生している。伏見城天守や天龍寺が倒壊し、死者1000人を超えた震災が起き、市内は大火事なったことを瑞泉寺名誉住職から伺った。まさに落首の通りである。

以下は �@ 雑誌集（聚楽物語）から判明しなかった和歌です。

＊＊不明１　美濃国　武藤長門守の娘　おさなの方　16歳

　　�A 消えてゆく　身はなかなかに　夢なれや　残れる親の　さぞなかなしき
　　　（消えてゆく私自身は、かえって夢のようにぼんやりとした気持ちとなっておりますが、この世に残る親はさぞや悲しい思いに満たされていることでしょう。）
　　�B　さかりなる　花はあらしに　さそはれて　散るやこころの　おくぞ悲しき

�D おさなくも　まよハし西を　このくるま　なむあミた仏に　ひかれてそゆく　
�F たたいまを　かきりとわたる　しらかわの　みつこそのちの　たむけならまし

参考文献	名前	出生	年齢
�A 甫庵太閤記	おさな	濃州　武藤長門息女	十六
�B 太閤さま軍記のうち	おさな	美濃の国　武藤長門息女	十六
�D 瑞泉寺・関白秀次公縁起	おなあ	むとうなかとのむすめ	十六
�E　関白雙紙	おなあ	むとうなかと殿のむすめ	十六
�F　東北大学・狩野文庫	をさな	むとうなかととの女	十六

＊＊不明２　生国　越前　少将の方　年齢不明

　　 �A あめつちの　そのあひだより　生まれきて　おなじ道にし　帰るべらなり　
　　（人はみな、天地の間に生まれて、また同じところにもどってゆくのでしょう。）
　　 �B 露の身と　うまれあふこそ　はかなけれ　消えてもとの　姿なりけり
　　 �D 瀟湘の　よるのあめか　そてぬれて　あしわけ母に　乗りてうかまん
　　　注　瀟湘（しょうしよう）とは　中国湖南省、瀟水と湘水が洞庭湖に注ぐあたりの地方

参考文献	名前	出生	年齢
�A 甫庵太閤記	少将	小国　越前	不記載
�B 太閤さま軍記のうち	せうせう	越前衆	不記載
�D 瑞泉寺・関白秀次公縁起	少将	越前衆	四十四
�E　関白雙紙	せうしやう	ゑちぜんしう	四十三

＊＊不明３　上賀茂　岡本美濃守の娘　お虎の方　24歳

　　�A 限りある　身をしる雨の　濡れ衣よ　そらも恨みじ　人もとがめじ
　　（雨が降って衣が濡れるのが当たり前なら、人の命に限りがあるのもまた当たり前でしょう。それを知っているので、たとえそれが濡れ衣だといっても、雨を降らした空を恨みはしないのと同様に、わたくしは他人様に恨みを向けることはいたしますまい。）
　　�B さきの世の　いかなるむくゐ　めぐり来て　いまこのなりを　するぞものうき
　　�D とくのりて　つミふかき身の　ためなれは　われもうかまん　しら川の水

注：父は上賀茂神社の祭礼・社務を仕切る神官

参考文献	名前	出生	年齢
�A 甫庵太閤記	お虎御方	上賀茂　岡本美濃守息女	二十四
�B 太閤さま軍記のうち	おとら	上賀茂　岡本美濃息女	二十四
�D 瑞泉寺・関白秀次公縁起	おとく	かみ賀茂　岡本娘	二十四
�E　関白雙紙	おとく	大くさ　みかわのむすめ	二十五

＊＊不明４　和泉国　淡輪隆重（たんのわたかしげ）の娘　お小督（ここ）の方　21歳　四女お菊（1ケ月）は助命　
　　�A 生まれきて　またかへるこそ　みちなれや　雲のゆききや　いともかしこし
　　　（人の世に生まれ落ちて再び戻ってゆくのが御仏の教えであるのなら、生じては消える雲のありようはなんともありがたいものでしょう。）
　　�B　うまれきて　あふとさだまる　命さへ　かほどに惜しき　ことはあらじな

�F きみかよを　なになかかれと　おもひけん　うきにあふこそ　いのちなりけり
注：淡輪家は改易所領没収

参考文献	名前	出生	年齢
�A 甫庵太閤記	おこごの御方	和州　丹和息女	二十一
�B 太閤さま軍記のうち	おここ	和泉のたにのわ息女	二十一
�D 瑞泉寺・関白秀次公縁起	おとく	たにのてはとのむすめ	二十一
�E　関白雙紙	おこご	たののではとのむすめ	二十一
�F　東北大学・狩野文庫	おここ	和泉の国住人　野田殿の女	十二

**不明５　最上衆其の娘　おこちゃの方　20歳

　　�A 濡れ衣を　きつつなれに　しつまゆゑ　身は白川の　淡と消えぬるの
　　　（御屋形様に濡れ衣が着せられたのであれば、衣に馴染む褄のごとく、妻として御屋形様のお近くにおいていただいておりましたゆえに、私も清い白川に浮かぶ儚い沫のごとく消えてゆきます。）
　　�B からごろも　きてみてつらき　わが姿　三条がはらに　身をぞすてける

�D ことしちや　二十二さいの　春過て　身はあさからの　露とあらそふ　

�F なかそらハ　ういのくもきり　あつくとも　しんによのつきの　かけハくもらし　

参考文献	名前	出生	年齢
�A 甫庵太閤記	おこちやの御方	最上衆	二十
�B 太閤さま軍記のうち	おこちや	最上衆	不記載
�D 瑞泉寺・関白秀次公縁起	おこちや	最上衆　おすゑの女房	二十二
�E　関白雙紙	おこちや	不記載	二十四
�F　東北大学・狩野文庫	こちや	をすゑに召し使われし女	不記載

**不明６　近江衆　高橋何某の娘　おみやの方　43歳　侍女

　　�A 何事の　とがにあふみの　今なれや　むしもあはれを　なきそへにけり
　　　（いったいこのわたくしはどういう咎めにあったのでしょうか。近江の今という名前ではありますが、罪にあった身の今この時となっては、虫の声も悲哀を添えているように聞こえます。）
　�B さりとては　ゆかでかなはぬ　ことなれば　今はうれしき　極楽の道

　　�D ミやしろの　君はほとなく　すきのかと　身ハ小車に　のりのあととふ　

　　�F さらてたに　くれゆくそらハ　ものうきに　いまをかきりの　あきのいりちよ

注：高橋氏とは、秀吉家臣で近江志村城（東近江市新宮町）を居城とし名とした志村氏のこと。本姓は高橋氏だがこの地を居城とし志村氏を名乗った。

参考文献	名前	出生	年齢
�A 甫庵太閤記	お今	江州　高橋息女	四十三
�B 太閤さま軍記のうち	おみや	近江の国　高橋むすめ	四十二
�D 瑞泉寺・関白秀次公縁起	お宮	近江　高橋娘	四十二
�E　関白雙紙	おミや	あふミのきに　たかはしとのゝむすめ	十六
�F　東北大学・狩野文庫	こざいしやう	高橋殿の女	二十六

秀次公には４つの辞世の和歌がありました。

「磯かげの　松のあらしや　友ちどり　いきてなくねの　すみにしの浦」

「月花を　心のままに　見つくしむ　なにが浮き世に　思ひ残さむ」

「思ひきや　曇居の秋の　空ならで　竹編む窗（まど）の　月を見むとは」

「うたたねの　夢の浮世を　出でてゆく　身の入相（いりあい：夕暮れ）の　鐘をこそ聞け」

秀次の法号は瑞泉寺殿高巌一峰道意です。

注　写真は秀次公のお墓

注　大垣市史の城主一覧によると6代目池田恒興、7代目池田輝政、8代目三好秀次（後の関白）として天正12年（1582年）5月から10月まで務めている。
注「摂政関白」という言葉がある。摂政とは幼少な天皇や病弱な天皇に代わって政治を行う職である。関白は天皇の代わりに政治を行う職で、公家の最高位である。いずれも、最終的な決裁者はあくまでも天皇であるが、摂政関白は「天皇の代理人」という意味がある。

秀次の妻子が皆殺しにされたわけではない助命された人物がいる。

１　若御前　正室　池田恒興の娘（注　織田家の家臣、後に羽柴秀吉の家臣になり犬山城、
　　大坂城主、大垣城主を務め、小牧長久手の戦いで戦死した猛将）
＜追加　1582年本能寺の変の後、父・池田恒興は羽柴秀吉に対し次男の池田輝政を秀吉の養子にし、娘（若御前を豊臣秀次に嫁がせることを約束する。恒興は、秀吉後継二番手の秀次との縁で、池田家の価値は高まるはずだと考える。1584年、徳川家康相手の戦い小牧・長久手の戦いが始まると秀吉は秀次を形式的総大将とするが、実質率いたのは恒興である。やむなく、恒興が参謀格で策を立て、家康に挑んだ。しかし、秀次勢は家康に翻弄され大敗し、恒興は戦死する。秀次は、命からがら敗走し、秀吉から激しく叱責される。若御前と結婚して二年足らずだったが、恒興の死によって二人の仲は不仲になり、秀次との間に子供がいないこともあり、後に三河の池田家に送り帰されている。I595年謀叛事件のとき、処刑には至らなかったと考える。＞

２　豊臣十丸の祖父北野松梅院は死をまぬがれている。

＜追加　秀次の長女露月院の祖父は摂津国小浜の毫摂寺の僧善助であるが、僧ゆえ死を免れるも毫摂寺は秀吉の命により、悲惨にも焼失している。

秀次の長男仙千代の祖父と百丸の祖父は「太閤記」によると、「日比野下野守は尾張にて、山口少雲は京都北野の経堂の西にて切腹なり。」二人の祖父はで自害している。
四男土丸の祖父竹中貞右衛門は謹慎。（理由は後述にて）
次に、秀次の三男十丸の母お佐子は北野松梅院禅永の娘と思われる。北野天満宮の祠官（神職）三家は松梅院、徳勝院、妙蔵院であり、そのうちの松梅院の神職を自害、ましてや菅原道真公を祀ってある天満宮を毫摂寺のように焼き打ちにはできない。他の祖父のように責任をとっての連座制にはできない。＞

３　隆清院の同母姉（1578年生〜）で後に梅小路家に嫁いだ娘(2女)も難を逃れている。

４　父は豊臣秀次、母は一の台の子　隆清院(3女)（1588年〜1633年）は難を逃れている。

後に真田信繁(幸村)の側室となり、御田の方(幼名なお・信繁の五女：1604年誕生)、
幸信(信繁の三男1615年7月14日生)を出産した。

５　直系の親族では、淡輪徹斎（淡輪隆重）の娘・お小督の局との娘(4女)生後一ヶ月で
あった。お菊は祖父の弟の子の後藤興義に預けられた。

＜追加　1587年生まれの梅小路家に嫁ぐ長女（母一の台。）

1588年生まれの真田信繁に嫁ぐ次女隆清院（母一の台）。

1595年７月２日生まれの四女お菊（母はおこごの方）

（注　1586年頃、前夫三条顕実の死後、菊亭家に帰っていた一の台と秀次との付き合いが始まり、1587年、秀次は聚楽第外郭内にある大邸宅が完成すると、前夫との間に生まれたお宮の方を連れて再婚している。）

彼女ら三人の命を救ったのは秀次の母であり秀吉の姉である智（日秀尼）である。智は、秀次が謀反人の汚名を着せられたとき、孫だけは救うと心に決め、秀吉の正室ねねの協力を得ながら、三人の孫姫を救うことになる。一の台から生まれた二人の姫を秀吉は認めず聚楽第の外で育てられていることと、謀反発覚の前日生まれた姫をそっと隠したことで、命が助かる。後日、智はすべて報告するも、秀吉からの追及はない。

一の台の長女姫は、すでに梅小路家に嫁いでおり、他家の人であると願い許される。次女姫、隆清院は、智の受命願いが許される。母が正室待遇の一の台だったこともあるが、二人の命は救われる。一の台の父菊亭晴季は秀吉に恩を感じていたが、秀次の義父として連座ありと、流罪となる。長女姫（隆清院の姉）は、梅小路家に嫁ぎ、他家の人となっていると理由付けされるが、当時、梅小路家はまだない。長女姫は、一の台が聚楽第外郭の秀次邸に嫁ぐときすでに生まれており、秀吉は父が秀次かどうか疑う。そのため、菊亭家で育つ。秀次死後、智が庇護し、そっと育てている。

　智の夫吉房は連座制で讃岐国に流罪。また、一六一五年大坂夏の陣で豊臣方についた山口兵内の妻になったお菊は二十歳の若さで徳川方に処刑されている。1596

年智は仏門に入り出家し、同年に京都の村雲の地に瑞龍寺を建立する。その後大火で焼け、現在は近江八幡にある瑞龍寺へ移転している。1625年に92歳で死去。

＜文責者から＞

　地元の観光ガイドとなり戦国時代を調べていたとき、美濃の国（岐阜県不破郡垂井町）出身で武将竹中半兵衛重治の従弟にあたる竹中貞右衛門重定の娘お長が関白の側室であり、文禄4年（1595年）8月2日に関白豊臣秀次公の側室達が処刑されていたことを思い出した。

調べていくと、小瀬甫庵太閤記に辞世の句「時知らぬ　花のあらしに　誘はれて　残らぬ身とぞ　なりにけるかな」があり、さらに、偶然にも　雑史集の中で、他の辞世の句「うつつとは　更に思はぬ　世の中を　一夜の夢や　今覚めぬらん」を発見した。これは驚きでした。なぜ辞世の句が二つもあるのか不思議に思った。すると、テレビの「歴史捜査」から関白豊臣秀次公とその一族の墓所が京都瑞泉寺であることを知り、一度この寺を拝観しお長の墓に参拝したくなった。
　瑞泉寺を訪れたとき、名誉住職から秀次公側室の辞世の和歌がまとめられた貴重な資料を提供してもらったのは幸運であった。なぜ、多くの和歌が後世まで残っているのか疑問に思いつつ、公開した次第です。ここで、�@ 雑史集（聚楽物語）になく�Aの甫庵太閤記や�B の太閤さま軍記のうちあった６つの和歌は出生が判明しているので、今後解明していく課題が残っています。

　

＜参考資料＞

１ 雑史集　（中にある聚楽物語から）国民文庫刊行会1921年発行　
２「太閤記」小瀬甫庵1625年全巻22巻（現代訳1979年吉田豊著）
３ 太閤史料集（中にある太閤さま軍記のうちから）昭和40年発行

＜ここからは、瑞泉寺訪問ときに、頂いた資料＞

４瑞泉寺・石崎縁起

５瑞泉寺・関白秀次公縁起

６関白雙紙

７東北大学・狩野文庫

疑問点

参考文献は　１「聚楽物語」は、仮名草子（物語・小説的な作品）。作者不明。寛永年間（1624〜44）の刊行。
２「太閤記」は、儒学者小瀬甫庵にとって書かれたもので、初版は寛永三年（1626）。秀吉伝記を底本とされることが多いが、著者独自の史観がある。
３「太閤様軍記のうち」は、太田牛一が記した秀吉の一代記。慶長15年（1610）前後に出版。ここで、制作年代を考えると、1610年の太田牛一が著した「太閤様軍記のうち」が古く、小瀬甫庵が一六二六年に著した太閤記」は太田牛一「の太閤様軍記のうち」を参考にして書くことができる。
　そこで、本の性質から考えると、「聚楽物語」「太閤記」」太閤様軍記のうち」にある処刑された秀次側室等の記述は、実家や主君・縁者の不名誉なことだと隠そうとし、その思いを知る著者は、素性をできる限り曖昧に表現している。後世に残る著作とすべく命じられ書いている。それなりの資料を基に書いているが、作者の身の安全が保証される書き方になった。共通するのは、江戸幕府下で生きる縁者等に配慮し、氏素性を分かりにくく記し、後世に彼女たちの生き様の詳細を残さないようにしていると思われる。江戸時代に読まれることを前提に徳川幕府に忖度しながら綴られているかのようである。いずれにしても、創作の部分があることになる。史実として分かることは文禄４年８月２日に京都三条河原にて、豊臣秀次の子五人と継室・側室・侍女・老女34人合わせて39人が、前日までに考えた辞世の句を詠みながら、何の罪のないまま惨い処刑をされたと言うことである。

１　秀次の一族公達並びに上臈達は徳永寿昌の邸に幽因（ゆうしょう）後、丹波亀山城に送られ、七月晦日に徳永邸に護送された。この間に命の短いことを知りつつ、幾つかの辞世の和歌を詠んだように思える。しかし、多くの文献にそれぞれ違った辞世の和歌があるのはなぜか。

＜解決：秀次様がすでに自刃されたことを知っている側室や侍女、特に老

婆にいたっては、がなぜ処刑されなければならないか疑問に思いつつ、もしかしたら何かの間違いで助かるかもしれないと淡い思いを持ちつつ、複数の辞世の句を考えることは到底できそうにない。また、これらの辞世の和歌はもはやいかにすることもできぬと覚悟し、順に処刑される寸前にお詠みなったとある。聞き取れぬ場合もあろう。ただ、「太閤記」には、かねてから覚悟の上、詠んでおかれたものらしく、一巻の紙にしたためてお出しになったものであると書いてある。いずれにしても、どれかの本の和歌は創作と考えるのが自然と推測とできる。

しかしながら、処刑されていく乙女たちの心情を察しながら十年以上の過去を振り返りつつ、詠まれた辞世の和歌を文字にすることは大変な労力が必要だったと察する。＞

２　甫庵太閤記と付き合わせると出生や名前や年齢まで分かっているのに不明6首はなぜ聚楽物語に書いてないのか。特に不明４淡輪隆重の娘は聚楽物語に載っていないのはなぜか。

＜解決：「聚楽物語」は作者不明で、寛永年間（1624〜44）の刊行物で、「瑞泉寺・石崎縁起」を手本にして書いてある。瑞泉寺は幕府の了解を得て建立された秀次を弔う寺であり、秀次らを悲劇の主人公とすべく由緒書きを門前に立ててある。したがって、徳川幕府に近い立場とって「瑞泉寺・石崎縁起」は書いてある。ところが、「瑞泉寺・関白秀次公縁起」には不明の六人が書いてあることを踏まえて、「瑞泉寺・石崎縁起」をもう一度熟考し、六人を除外してみると、

二三番目　出自不明（越前国　木村常陸の守重茲が呼んだ女郎）お仮名の前　17歳　

二九番目　出自不明　お須儀の前　19歳　（肺病に悩み尼に）

三二番目　お参の前 （御すゑの女房）　年齢不明

三三番目　出自不明　津保美　年齢不明

三四番目　出自不明　お知保 （乳母？）　年齢不明

の五人は創作と推定できる。後一人だが、悩んだ末に、

四番目　尾張国　日比野下野守の息女　お和子の前（おわこの方）

　　　　18歳　長男　仙千代丸　6歳

十番目　美濃国　日比野下野守の息女　お阿子の前　30歳　瑞泉寺名
誉住職は姉妹でないかと疑念を持っておられることも考慮して、十番目　美濃国　日比野下野守の息女　お阿子の前　三十歳を創作としたい。

次に、「太閤記」については、長男　仙千代丸の母親を加えて、その代わりに、十番目　美濃国　日比野下野守の息女　お阿子の前　創作とする。これで、「太閤記」には二十九人しか載せていないこととなる。

不明四番の淡輪隆重の娘お小督（ここは秀次の謀叛を問いただす前日の７月２日に四女菊姫を生んでいて、菊姫の命は助かっている。さらに、淡輪家は。信長死後、一貫して秀吉に従い、信頼されていることもあり、書けなかった。しかし、改易領地没収。いずれにしても、不明の六人の氏素性を明らかにできず、後世まで残る本には記載できなかった。作者の亡き秀吉への忖度と考えられる。

３　若御前　正室　池田忠興の娘はなぜ処刑の目録に名がないのはなぜか。

＜解決：助命人物の１と同じ理由。＞

４　処刑された息女の父親は連座制によって自害した人もいるが、竹中貞右衛門はなぜ自害しなくてもよかったのか。

＜解決：竹中重利は、偉大な半兵衛重治の後を継いだ重責に押しつぶされそうになりながらも、懸命に秀吉に仕え、側近となり、豊後国国東郡高田で1万3千石を得た。

秀次に聚楽第を引き渡す時、奥に仕える侍女を推すよう求められ、弟竹中重定の娘、お長の方の美貌と状況判断の確かさに感心し、推した。重利は、お長の方が秀吉・秀次に懸命に仕えただけなのに、無残に殺されたことが納得できなかった。それでも、土丸の誕生で、秀次による竹中家の厚遇を期待したのも事実だ。無念の思いを静かに耐える。

秀吉も、重利の忠誠心を認め、領地を安堵し、咎めなかった。竹中重定は謹慎する。＞

５　瑞泉寺名誉住職によると、

４番目　日比野下野守の娘　お和子の前（おわこの方）と

10番目　日比野下野守清実の娘　お阿子の前　22(30)歳の二人は姉妹かどうか。

＜一部解決：　名誉住職によると、瑞泉寺「伝来辞世懐紙」には四番目　お和子のものはないが、十番目　お阿子の名前と年齢20歳とが書かれた辞世の句の表具が伝えられている。日比野下野守清実は1561年安八町森部の戦いで信長勢が攻めこんだとき、討ち死している。お和子またはお阿子が生まれたときには父親は死んでいることになる。ここでは日比野下野守一族として考える。日比野一族は尾張春日井郡を領し信長に仕えていた。また、池田恒興は、美濃池田氏を祖とし、日比野氏と共に土岐家の重臣として活躍したときがあり、深い縁がある。そこで、秀吉は、家柄も良く池田家とも縁がある日比野氏一族を結婚（秀次と若御前）のとき、秀次に付ける。このとき、秀次への臣従のしるしとして、また円滑な意思疎通を目指して、近江八幡山城の奥に日比野下野守清実の孫、お和子の方を仕えさせる。その後、若御前は傍にいなくなり、秀次から寵愛を受け、1590年　嫡男仙千代の母となる。「太閤記」には「日比野下野守は尾張にて、切腹なり」とある。作者の心情から日比野家娘は嫡男仙千代の母でなく、単に秀次側室として書かざるを得なかったように思える。

　そこで、「伝来辞世懐紙」には一人しか残っていないことを重要視して、日比野下野守の娘は仙千代の母お和子とお阿子の違いがあるが一人と考えるに至る。ただ、この疑問は明快な解消には至らない。お和子かお阿子かという疑問も依然として残る。＞

６　父は豊臣秀次。母は秀次の継室(正室)・一の台の子隆清院は後に真田信繁の側室となり、　　御田の方(幼名なお・信繁の五女：1604年誕生)、幸信(信繁の三男1615年7月14日生)を出産している。1595年当時は一体何歳か、瑞泉寺名誉住職によれば父が豊臣秀次とすると、隆清院は11歳で（幼名なお）を出産したことになり疑問が残る。一の台の二人目の連れ子としての説をお持ちです。本当はどうか。

＜解決：1586年頃、前夫三条顕実の死後、菊亭家に帰っていたとき、一

の台と秀次との付き合いが始まり、1587年、秀次は聚楽第外郭内にある大邸宅が完成すると、前夫との間に生まれたお宮の方を連れて再婚している。1595年８月処刑されたとき、お宮は13歳、1588年秀次との間に生まれた�髏ｴ院は７歳であるから疑問はないことになる。お宮の父親はどの本も記載なく一の台の娘と書いてある。「瑞泉寺・関白秀次公縁起」には、父は尾張衆と記載されている。

どうしてもここに、氏素性を隠さねばならい作者の意図がうかがわれる。瑞泉寺名誉住職は秀次が関白になってからの婚姻を考えておられるようです。＞

この原稿を書くにあたり、資料提供責任者として京都『瑞泉寺名誉住職中川龍晃』様から懇切丁寧なご指導を賜りましたことを感謝申し上げます
さらに、平成31年1月19日に「秀次と殺された女　秀吉を怒らせた秀次」のサイトを発見して一部加筆（追加と解決）しました。

関白　豊臣秀次公側室の辞世の和歌　一覧表

処刑 順

間柄

子

�@聚楽物語

�A太閤記

�B軍記のうち

�C石崎縁起

�D秀次公縁起

�E関白双紙

�F東北大所蔵

記載

年齢

記載

年齢

記載

年齢

記載

年齢

記載

年齢

記載

年齢

記載

年齢

1

継室

〇

30余

〇

34

〇

34

〇

31

〇

34

〇

32

〇

27

2

側室

〇

16

〇

17

〇

17

〇

16

〇

16

〇

16

〇

16

3

側室

長女

〇

33

〇

34

〇

34

〇

33

〇

不明

〇

30

〇

31

4

側室

長男

〇

18

無

18

無

無

〇

18

無

18

無

18

〇

18

5

側室

次男

〇

19

〇

19

〇

19

〇

19

〇

19

〇

19

〇

19

6

側室

四男

〇

無

〇

18

〇

18

〇

18

〇

18

〇

18

〇

18

7

側室

三男

〇

無

〇

19

〇

19

〇

19

〇

19

〇

19

無

19

8

側室

〇

23

無

無

無

無

〇

23

〇

22

無

23

〇

31

9

側室

〇

26

〇

26

〇

26

〇

26

〇

26

無

26

〇

18

10

側室

〇

無

〇

22

〇

22

〇

30

〇

22

無

無

無

無

11

側室未見参

〇

15

〇

19

〇

19

〇

15

〇

19

無

19

〇

19

12

侍女歌人

〇

30余

〇

31

〇

31

〇

35

〇

31

無

無

2首

無

13

側室

〇

無

無

無

〇

24

〇

24

〇

24

無

24

〇

24

14

侍女琴名人

〇

30

〇

38

〇

38

〇

38

〇

38

〇

38

〇

34

15

侍女

〇

35

〇

35

〇

38

〇

35

〇

36

〇

35

〇

32

16

老女

〇

無

無

無

無

無

〇

68

無

無

無

無

無

無

17

継室連れ子

〇

13

〇

13

〇

13

〇

13

〇

13

〇

13

〇

13

18

側室

〇

14

〇

16

〇

16

〇

14

〇

16

無

14

〇

14

19

側室

〇

15

〇

19

〇

19

〇

15

〇

19

無

18

〇

18

20

15侍女の娘

〇

12

無

無

無

無

〇

12

無

無

無

無

〇

31

21

側室

〇

無

〇

無

〇

34

〇

15

〇

24

無

24

〇

15

22

側室

〇

19

〇

19

〇

19

〇

15

〇

19

無

無

〇

19

23

側室

〇

17

無

無

無

無

〇

17

無

無

無

無

無

無

24

側室捨て子

〇

無

〇

無

〇

無

〇

18

無

無

無

17

〇

17

25

側室

〇

23

〇

24

〇

23

〇

23

〇

24

無

24

〇

24

26

側室

〇

25

〇

21

〇

21

〇

21

〇

22

無

無

〇

22

27

側室

〇

16

〇

16

〇

16

〇

16

〇

16

無

16

無

無

28

側室

〇

22

〇

22

〇

22

〇

22

〇

22

無

22

〇

20

29

側室(病人)

〇

19

無

無

無

無

〇

19

無

無

無

無

無

無

30

御末の人

〇

無

無

無

無

無

〇

31

無

無

無

無

無

無

31

中居御末女

無

61

〇

61

〇

61

無

61

〇

61

無

61

〇

51

不明１

側室

〇

16

〇

16

〇

16

無

16

〇

16

不明２

不明

〇

無

〇

無

〇

44

無

43

無

無

不明３

側室

〇

24

〇

24

〇

24

無

25

無

無

不明４

側室

三女

〇

21

〇

21

無

21

無

21

〇

12

不明５

侍女

〇

20

〇

無

〇

22

無

24

〇

無

不明６

侍女

〇

43

〇

42

〇

42

無

16

〇

26

計

30首

29首

30首

30首

29首

９首

28首＋１

　最初のページへもどる