平成15年11月3日
<美しい数学の話>
第49話 「無限降下法」
ギリシャ時代から知られていた無限降下法は、広い範囲の問題を解く強力な方法といえる。方程式が解を持たないとか作図が不可能だとかいった否定的な結論を導くのに特に有効である。典型的な利用法を挙げてみます。
与えられた問題が解Sをもつとする。あらかじめ問題の性質からどんな解の列も有限でストップすることをいっておいて、Sから出発して無限に続く解の列を構成する。こうして、もとの問題には解がないことを結論する。
では、問題です。方程式 x2―2y2=0
は自然数解をもたないことを示しなさい。
<解答> 自然数解(x、y)=(a1,b1)が存在したとする。すなわち、a12―2b12=0 …@ とする。
このとき、a1は偶数、すなわち、a1=2a2 となる自然数a2が存在する。とすると、
(2a2)2―2b12=0 なので、2a22―b12=0 …A
これから、b1は偶数、すなわち、b1=2b2 となる自然数b2が存在し、
2a22―(2b2)2=0 なので、a22―2b22=0 …B
これは、(a2,b2)がもとの方程式の自然数解であることを意味している。
ところが、@、A、Bから a1>b1、 b1>a2 、a2>b2
つまり、a1>b1>a2>b2
さらに、B から、a2=2a3 となる自然数a3が存在して、・・・
このように、同様な理論を繰り返すと、減少し続ける自然数の無限列
a1>b1>a2>b2>a3>b3>a4>b4 >・・・
が得られる。ところが、自然数a1よりも小さい自然数は有限個しかないので、これは矛盾している。
したがって、最初の方程式の自然数解はない。
<注意> この解答は、√2が無理数であることの証明にもなっている。
<参考文献>「めざせ、数学オリンピック! 著者 J、コフマン、訳 山下純一」(現代数学社)