令和２年１２月１３日

[流れ星]

　　第394回数学的な連続応募解答

　　　　＜解答募集期間：11月15日〜12月13日＞

［朝倉真禅院奉納算額2］

岐阜県垂井町にある真禅院　三重の塔（国重要文化財）

江戸時代末期、谷松茂（幽斎）は大垣藩士で致道館講官であった水野民興に学び、自ら塾を開いて和算を教えていました。
彼の門人達が天保12年（1841）に亡くなれた谷幽斎先生を偲んで垂井町宮代の南宮大社に弘化2年（1845）に奉納算額二編を奉納しています。
この算額は残念ながらと紛失したことを知り、奉納された算額は復元をし、後世に残しておきたいと熱望した次第です。

以下の奉納された問題の解法をお願いします。応募解答は後日、奉納算額の解答冊子に利用させていただきます。

訂正：術文（答）を修正しました。16日夜に

参考図

＜水の流れ：直円柱を楕円で（楕円の短径は円柱面に平行）切り抜くとき、楕円の長径、短径と円柱の直径を知って切り取った表面積を求めよ。＞

　ヒント：表面積を求めるのに2重積分を用いる。そして、次に第2種楕円積分を用いて、無限級数にて求めています。＞　確信が・・・

＜水の流れ補足：第７問題はすでに連続問題第375回で出題していました。＞

NO1「ジョーカー」 　 11/28 09時49分　受信 更新 12/13

寄せられた解答です

NO2「よふかしのつらいおじさん」 12/07 21時10分　受信 更新 12/13

394解答　よふかしのつらいおじさん

第6問題

●図のように楕円を横長に置きます。

点Aを通りy軸に平行な赤線を引きます。

楕円に円を内接させ、その接点Tに接し赤線上に中心Kがある円を書きます。

楕円の方程式を

円の方程式を とします。

●円の式より

楕円の式に入れて

楕円と円が接するので、

(*)は重解をもつので、

●円の中心Pの座標は、

楕円と円の接点Tの座標は、

外接円の中心Kは、直線PTと赤線の交点です。

直線PTは、

赤線は、

よってKの座標は、

よって外接円の半径の平方 は、

よって、

第7問題

●参考図と少し符号を変えます。

△ABEの面積Sを二通りに計算し、比較します。

△ABE∽△ECFで、EC＝a−xなので、相似比は、(a−x)／aです。

よって、

●直径の和が最大は半径の和が最大と同じときなので、半径で考えます。

この関数は、 で考えます。

この関数の黄色の部分を考えます。

�@は1次関数、�Aはx＞で1次関数、�Bはx→∞でy→x、�Cは�@−�Bで上に凸のグラフです。（左図）

緑の�Dy＝2a−xは、0＜x＜aで正の値をとります。（右図）

この範囲では、式�Cに式�D掛けてもグラフの凹凸に変わりはありません。（右図の青）

(**)はx＝0，2aで値が0になります。

●もう少し調べます。

ここで としてみます。

ここで、黄色の部分はαの値にかかわらず負の値をとります。

係数や分母は正負に影響を与えないので、緑の部分は、 の範囲で、負の値をとります。

（2までは負ですが）

よって、少なくともこの範囲でこの関数は上に凸になります。

●いくつか値を入れてみます。

この結果、x＝(3a／4)のときがピークだとわかります。

よって、長方形の二辺は、

第8問題

●図のように符号を付けます。

円人の中心をT(s,t)、半径をpとします。

直線BC：

直線BA：

TからBCまでの距離pは、

TからBAまでの距離pは、

ゆえに、

これをpの式に入れます。

これをsの関数として微分します。

・・・

●この問題は解けていません。

sが決まれば、地と天の径は決まります。aを変えても地と天は変わりません。

しかし、aを大きくすれば人は大きくなります。

a、bの値が与えられてsの値をいろいろ変えて人の円が最大のときの地と天の円の径を使って人の円の径を求めるとして考えましたが、dp／ds＝0を解けませんでした。

sの値を固定したとき、aの値を大きくすれば大きくするほど人の径は大きくなります。

aを固定したときsを小さくすれば相対的に、aを大きくしたことになりますが、あるところから人の径は逆に小さくなります。

そのあるところを求めたいわけですが・・・

＜水の流れ：第九問題の解法、並びに和算問題の解読のときに勉強したこと＞

参考�T　立体図形の問題で参考になる公式

以下は「日本の数学　何題解けますか？【上】」森北出版　深川英俊著から複写しました。

参考�U　下記の公式を証明した後、2重積分を用いて球の表面積を求めます。

前述の直交座標から極座標へ変換し、ヤコビアンJを利用して、2重積分をする具体例を書きます。

別解として、球の体積を知っていると表面積を簡単に求めることができます。球を多くの微小な四面体錐で綺麗に覆うことにします。

すると、球の体積をＶ，半径をｒ，多くの四面体の底面の面積の総和をＳとする。四角錐の体積の公式から　Ｖ＝ｒＳ／３　が成り立つ

よって、Ｓ＝３Ｖ／ｒ＝３（４兀ｒ^３／３）／ｒ＝４兀ｒ^２　答



参考�V　和算の問題や解にでてくる式や使用している用語

三角・等斜　：正三角形のこと　　　　　

三斜　：不等辺三角形のこと

縦横平：長方形のこと　　　　　　　　　

直長　：長方形の大きい辺

直平　：長方形の小さ辺　　　　　　　　

方　　：正方形の一辺の長さ

円　　：円の直径　　　　　　　　　　　

等　　：等円の直径

側圓　：楕円　　　　　　　　　　　　　

円缺徑（えんけつけい）：弓形

円周法　：円周率πのこと　　　　　　　

巾（冪の略）：2乗

円闕（えんけつ）：弓形の面積

円積率：　円の面積を求まる時の定数。直径１の円の面積の定数　π/４

鈎、股、弦：　鈎股弦は直角三角形のことで、鈎・股・弦は、

それぞれ短辺・長辺・斜辺のこと

鈎股弦の定理：　三平方の定理

矩合：等式を差し引き０となる式　　

積：　　面積

玉積率：直径１の球の体積の定数は　π/６

一：　一個のこと　　　　　　　　　

一倍：　二倍のこと

四角方斜率：　正方形の対角線と一辺の比。√２　

鈎股（こうこ）：　直角三角形　　　　　

円規：　コンパス

自＝之：　これを二乗する　　　　　　　

再自乗：　三乗すること

開方：　平方に開くこと　　　　　　　　

開立：　立方根のこと

矢（し）：弓形の弧の中点と弦の中点を結んだ線分のこと

界斜　：　図形を二つに分ける斜線

今有　：　今、・・・が有る。問題の初めに用いる。

若干：問題の条件としてある値を与えるとき、第一条件の値を若干という

幾何（いくばく）：どれほどか　　　　

遺題：ある問題の解答を後の世代に要求すること

参考�W　算木の表現　

算木（さんぎ）または算籌（さんちゅう）とは中国数学や和算で用いられた計算用具である。縦または横に置くことで数を表した。

算木は長さ 3〜14cm の木製または竹製の細長い直方体で、縦または横に並べて数を表し、配列を動かすことで四則演算、開平、開立などの計算をした。1から5まではその数だけ算木を並べ、6以上は異なる向きの1本で5を表した。

　算木は2色に着色され、赤の算木は正の数を、黒の算木は負の数を表した。

0 はその場所に算木を置かず空けておくことで示した。

　江戸時代の日本の数学者はそろばんと並んで算木を用い、数学の発展に貢献した。

最後に、

谷幽斎先生の遺弟中が、1841年に亡くなれた先生を偲んで弘化２年（1845）に、垂井町宮代の南宮大社と養老町高田の田代神社にそれぞれ算額を奉納している。

幽斎先生の遺弟には、清水政英（表佐）、土屋信義（高田）、土屋信篤（高田）がいる。彼らが村に帰って読み書きを教えながら、算木やソロバンを使った和算塾を開いている。このように表佐・高田と近くの村まで和算が広がりを見せ、庶民が楽しんでいることが分かる。

算額の解答については、過去の偉人が発見した過程を自分が再発見できたとき、達成感を味わうことができた。現代風に三角関数等を用いて解けるには解けるが、当時はそれらの概念はないので、どのようにして解いたかは分からない。第九問は今で言う2重積分を用いて解けるが、当時は区分求積法を用いて解いている。これには驚く発想法である。

また、全国の神社仏閣に奉納された算額は、「制限時間もなく、数学の問題を考えて楽しむ」という文化が江戸時代にあったことを示している。また、漢文で記した算額を古文書とみることができ、中には、江戸時代の庶民の生活様式を読み取れるものもある。このように貴重で文化財的な要素を持っている算額を後世まで絵馬にして残していきたい。

さらに、小学校六年の算数には「和算にふれてみよう」として、鶴亀算の問題や、江戸時代和算の開祖である関孝和らが紹介されている教科書もあります。児童・生徒が算数・数学が好きになり、「算数って面白いなぁ、楽しいなぁ」と言ってもらえるようにしていきたい。好奇心が旺盛で勉強って楽しいなと感じる子供には探求心が芽生え、学問を続けて学ぼうとする気持ちが自然に湧き出てくます。　

第384回から386回の南宮大社奉納算額、第391回から394回の大垣八幡神社・真禅院奉納算額の解答を応募された「よふかしつらいのおじさん」「ジョーカー」さんには深く御礼申し上げます。

　さらに、出典文献として「岐阜県の算額の解説」　垂井町府中の��木重之著者故高木重之様並びのご子息様には、文献の使用をお認め頂き、深謝申し上げます。

　応募された方のおかげで、

10月3日に南宮大社に、

11月17日に大垣八幡神社に

12月吉日に朝倉山真禅院に

それぞれ算額を復元奉納できたことを崇高の喜びと感じています。