平成17年12月4日

<美しい数学の話>

第51話 「√2+√3>πの証明」

 11月18日(金)に伊勢神宮がある三重県伊勢市で行われた数学研究会に参加してきました。岐阜県からは約20名受付名簿にありました。発表者でもある友人に次のような問題を授かりましたから、お知らせします。
 √2+√3>π(円数率)を証明せよ。図形的に解けるかなと思っていますが、まだ、解決していません。教えてください。

NO1 「 Toru」 さん 11月30日 19時28分受信 更新12月4日
 ちょっと考えてみたので、解答送ります。
計算がすごくなってしまってあまりスマートではありません。計算ちがいもあるやもしれませんが、まあ方針としてはこんなところでよいのではないかと思っています。
いかがなものでしょう。 
解答1
扇形と外接する三角形から
tan x>x
   (π/2 >x>0) が成り立つとしてこれを利用する。
tan 2
θ=2tanθ/(1-(tanθ)^2)  よりtanθ=(-1+(1+tan2θ^2))/ tan2θ(0<2θ<
π/2)これと
tan(
π/6)=1/3から
tan(
π/12)= 2-3
tan (
π/24)=6-3+2-2 =sとして
tan(
π/48)=(-1+(1+s^2)/s
(-1+
(1+s^2)/s < (3+2)/48 ---- (A)が示せれば
π<48 tan(π/48)<3+2 となって題意は示される。
s(
3+2)=32-3+6-23+23-6+2-22=2-1より
(A)
48(1+s^2)<2+472304(1+s^2)<2211+942
2304(16-66+83-102)<2211+94234653+184323<138246+231342
(34653+184323)^2<(138246+231342)^2
2220046281+12774481923<2216981768+12792176643
3064513<17694723
であるが
3064513^2<(3.0646x10^6)^2=9.39177316x10^12
(1769472
3)^2>(1.7694x10^6)^2x3=9.39232908x10^12
であるからこれは成り立っている。

解答2
|x|<1の時
1/(1+x^2)=1-x^2+x^4-x^6+--------
の両辺を積分して
Arctan x= x-x^3/3+x^5/5-x^7/7+x^9/9-x^11/11+----
ここでx=1/
3として第5項までとれば、これは交代級数だから
π/6=Arctan(1/3)<3/3 (1-1/9+1/45-1/189+1/729) よりπ<23 x 23147/25515
よってこの(右辺)<
3+2 ---(B)が示されればよいが
(B)
207793<255152(207793)^2<(255152)^2
1295300523<1302030450 でよい

 NO2 「三角定規」 さん 12月01日 23時48分受信 更新12月4日

 

 NO3 「中川幸一」 さん 平成18年2月16日 受信 更新2月18日
「中川幸一」さんから、感動するような証明をいただきました。ご覧下さい。
「証明」
です。

NO4 「Sugimoto 」 さん 平成18年5月4日 受信 更新5月7日
2+3 > π の証明問題の解答をまとめましたので投稿します。
前提となる級数が、広く知られたものでないのが難点ですが...この問題の背後にある10の数を中心として、参考情報も含めて書きました。
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2+3 > π に関して

[前提]  
π10,自然数の関係

π^2に関する次の式を既知とします。
π^2 = 10 - 1/(1*2)^3 - 1/(2*3)^3 - 1/(3*4)^3 - 1/(4*5)^3 -


[証明]  10からの差を比較する

(
2+3)^2 = 5+26 = 10-(5-26) = 10-(25-24)
π^2 = 10-1/(1*2)^3 - 1/(2*3)^3- = 10-(1/8+1/216+)
10から引かれる値の大小関係は
25-24 = 1/(25+24) = 1/(5+24) < 1/(5+9) = 1/8 < 1/8+1/216+
従って (
2+3)^2 > π^2  つまり  2+3 > π


[参考]  10と自然数の不思議

・(
2+3)^2と10,カタラン数の関係
 10-(
2+3)^2 = 25-24 = 0.101020514
 =1/10^1+1/10^3+2/10^5+5/10^7+14/10^9+42/10^11+


 10-(
25-24)=10-1/(25+24)=10-1/(10-(25-24))
 つまり
  a=10-1/a  の形であるため、連分数は10で展開されます。
 (
2+3)^2 = 10-1/(10-1/(10-1/(10-))

・円周率の小数部分と自然数の関係
 
π^2 = 10 - 1/(1*2)^3 - 1/(2*3)^3 - 1/(3*4)^3 - 1/(4*5)^3 -  は
 
π^2の小数部分(の補数)を自然数で表しています。

 
πの小数部分を自然数で表すと次の式になります。
 
π = 3+1/(1*2*(1+2))-1/(2*3*(2+3))+1/(3*4*(3+4))-1/(4*5*(4+5))+

・円周率,黄金比と10の関係
 上記の様に 
π10 あるいは π2+3 の鍵となる数は10です。

 10は円周率と黄金比とも密接な関係にある数です。
 
φπ=10{1/2-1/(1-10^( 2))+1/(1-20^( 2))-1/(1-30^( 2))+}
 
φπ=10{1/2*1/(1-10^(-2))*1/(1-20^(-2))*1/(1-30^(-2))*}

前提となる式は有名でなく、証明もないのが難点です。
2+3,π,φ,10,自然数,カタラン数等の相互関係が面白いため
参考情報も書きました。

NO4 「Sugimoto 」 さん 平成18年5月5日 受信 更新5月7日

5月4日に2+3 > π の証明問題の解答を投稿しましたが、
それでは不完全な部分に対応した証明ができましたのでお送りします。
この問題は大変面白いです。
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2+3 > π に関して ( No. 2 )

[前提]  オイラーが証明済みの級数

π^2に関する次の式を既知とします。
π^2/6 = 1/1^2 + 1/2^2 + 1/3^2 + 1/4^2 + 1/5^2 +


[証明]  オイラーの級数を変形し、10との差を比較する

先ず
π^2/6 = 2 - 1/(1^2*1*3) - 1/(2^2*3*5) - 1/(3^2*5*7) -  を導く。

 1/(1^2*1*3) + 1/(2^2*3*5) + 1/(3^2*5*7) +
=(1/1^2)(4/(1*3)-1) + (1/2^2)(16/(3*5)-1) + (1/3^2)(36/(5*7)-1) +

=(4/(1*3)-1/1^2) + (4/(3*5)-1/2^2) + (4/(5*7)-1/3^2) +

=(2/1-2/3-1/1^2) + (2/3-2/5-1/2^2) + (2/5-2/7-1/3^2) +

=2 -
π^2/6
従って
π^2 = 6{ 2 - 1/(1^2*1*3) - 1/(2^2*3*5) - 1/(3^2*5*7) - }
     = 12 - 2 - 1/10 - 2/105 - 1/168 -

両辺の2乗は
(
2+3)^2 = 5+26 = 10-(5-26) = 10-(25-24)
π^2 = 10 - (1/10+2/105+1/168+)  = 10-(5/42+1/168+)
10から引かれる値の大小関係は
25-24 = 1/(25+24) < 1/(5+16) = 5/45 < 5/42 < 5/42+1/168+
従って (
2+3)^2 > π^2  つまり  2+3 > π


[参考]  
π^2/6 の級数

下記級数の分母は偶数の4乗に近い値であるため、速く収束します。
π^2/6 = 2-4{1/(2^2*(2^2-1)) + 1/(4^2*(4^2-1)) + 1/(6^2*(6^2-1)) +}

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