令和6年11月15日
<美しい数学の話>
第70話 「ポッキー&プリッツの日」
第12話 「111…111の因数分解」の続き
先日、「11月11日」には、たくさんの記念日の名前があります。
たとえば、ポッキー&プリッツの日。ポッキーとプリッツの形が、数字の「1」に似ていることが由来です。平成11年11月11日にスタートしたそうです。
これにちなんで、今回は「1」が並ぶ話をしましょう。
11月11日には、「レピュニット数の日」という名前もあります。レピュニット数とはどんな数でしょうか。
1, 11, 111, 1111, …のように、すべての桁が1である数をレピュニット数といいます。
「repeated unit(繰り返される単位=1)」がその名の由来となっていて、
1964年にアルバート・ベイラーが著書『数論におけるレクリエーション』の中で名づけました。
桁数が偶数のレピュニット数は11で割り切れます。
たとえば、1111=1100+11
となります。右辺がいずれも11の倍数となっています。
次に、111111=110000+1100+11となり、これも右辺がいずれも11の倍数です。
同様に、桁数が3の倍数のレピュニット数は111で割り切れます。
たとえば、111111=111000+111となります。右辺がいずれも111の倍数です
一般に、桁数がdの倍数のレピュニット数はd桁のレピュニット数で割り切れます。
特に、桁数が合成数のレピュニット数は合成数になります。
では、桁数が素数のレピュニット数は、素数なのでしょうか?
たった6個しか見つかっていない素数
残念ながら、桁数が素数のレピュニット数は、必ずしも素数とは限りません。
とえば、3桁のレピュニット数111は
111=3×37と素因数分解され、素数ではありません。
素数であるレピュニット数をレピュニット素数といいます。
現在確認されているレピュニット素数は、桁数が
2, 19, 23, 317, 1031, 49081 の場合の6個です。
2進法のレピュニット数
さて、0と1を用いて、2増えるごとに位が上がる表し方を2進法といいます。10進法の
1, 2, 3, 4, 5, 6, 7, 8, …を2進法で表すと、
1, 10, 11, 100, 101, 110, 111, 1000, …となります。
では、2進法のレピュニット数、つまり2進法で1,
11, 111, 1111, …
と表される数はどのような数でしょうか?
メルセンヌ数とはなにか
2進法で1, 11, 111, 1111, …と表される数に1を足すと、
10, 100, 1000, 10000, …となります。
これらの数を10進法で表すと、2, 4, 8, 16, …です。
よって、2進法で1, 11, 111, 1111, …と表される数は、
10進法で2−1, 4−1, 8−1, 16−1, …であり、2ⁿ−1 (n=1, 2, 3, …)
と表されます。このような数はメルセンヌ数とよばれています。
「メルセンヌ数でも成り立つ性質
メルセンヌ数2ⁿ−1を2進法で表すと、111… 11 (n桁)になります。
桁数がdの倍数のレピュニット数は、d桁のレピュニット数で割り切れました。この性質は2進法のレピュニット数,つまりメルセンヌ数でも成り立ちます。
偶数桁の2進法のレピュニット数は、2進法の11で割り切れます。
また、桁数が3の倍数の2進法のレピュニット数は、2進法の111で割り切れます。
これらは、nが偶数のメルセンヌ数2ⁿ−1が2²−1=3で割り切れ、
nが3の倍数のメルセンヌ数2ⁿ−1が2³−1=7で割り切れることに相当します。
したがって、nがdの倍数であるとき、メルセンヌ数2ⁿ−1はメルセンヌ数2ᵈ−1で割り切れます。
特に、nが合成数のメルセンヌ数2ⁿ−1は合成数になることがわかります。
メルセンヌ数と素数の関係
nが素数のメルセンヌ数2ⁿ−1が素数か、というとそうではありません。
たとえば、nが11のメルセンヌ数は2¹¹−1=2047=23×89 と因数分解し、素数ではありません
しかし一方で、メルセンヌ数2ⁿ−1が素数ならば、nは素数です。
そして、nが素数pの場合を考えていくと、「1が並ぶ数」にまつわるさらに奥深い世界が姿を現します。
<ビックニュース> 2024年10月末、実に6年ぶりに最大の素数が見つかるという数学界を盛り上げるビッグニュースが飛び込んできました。これまで最大だった素数を1600万桁以上も上回る、なんと4102万4320桁の数字だというのですから驚きです。
新たに発見された素数は「2の1億3627万9841乗引く1」と表される数です。
参考 西来路文朗・清水健一著「素数はめぐる」ブルーバックス 講談社