<水の流れ> (私の一日NO51)

震え上がるような数の神秘を知るためにあなたは青春をかけてみないか!

N09:2002年8月6日(火)「掛谷問題」とは、「長さ1である線分を1回転させるのに必要な最小面積の図形は何か」です。はじめこの問題の答えはルーローの三角形ではないかと予想されていた。ルーローの三角形というのは、正三角形の各頂点を中心として他の2頂点を通る円弧を描いてできる図形のことである。
 ところが、平面上の凸な図形では、最小の面積を持つ図形は、高さが1の正三角形である。これは、パール博士が出した答えです。でも、驚いたことに、凸図形という条件をはずして、この領域の形を任意の図形でも良いとことにすると、実はいくらでも面積の小さな図形を作ることができるのである。それは、ベシコピッチによって証明された。講義では、ペロンの木を持ち出されて証明された。
今日の講義は、実に関心する誘導で(さすが大学教授)定理「面積一定の平面図形で周の長さが最小となるのは円である」を次のように導かれました。
補題1「平行な2直線m、nにおいて、m上の2定点A、B、n上に動点PをPA+PBが最小にするには点Pをどこにとれば良い」【答:点Bをnに関して対象な点B’を取り、2点AB’を結び、n上との交点が求める点Pである。】
補題2「面積一定の三角形について、周の長さが最小となるのは正三角形である」
補題3「面積一定の四角形について、周の長さが最小となるのは正方形である」
補題4 一般に、「面積一定のn角形について、周の長さが最小となるのは正n角形である」
補題5「平行な2直線m、nにおいて、m上の2定点A、B、n上に2点C,DをCDの長さが一定で、AC+BDを最小にしたい。どこに取れば良いか。」【答:等脚台形となるように取る。】
 最後に、定理「面積一定の平面図形で周の長さが最小となるのは円である」の証明をシュタイナー変換という操作で教えられました。大変理解しやすい展開でした。感謝します。

N08:2002年8月5日(月)平成14年度名古屋大学数学アゴラ(夏季集中コース)高校生のための「現代数学への招き」に出席してきました。名古屋大学大学院多元数理科学研究科の寺西助教授が講師で「円周率の数理」という題です。今日から3回行われます。講義の概要を書きます。
 3回にわたって円周率にまつわるお話をします。演習率はπは円周の長さをその円の直径でわったものです。紀元前3世紀のギリシャの数学者アルキメデスは円に内接または外接する正96角形を用いて 223/71<π<220/70 であることを示しました。その後πのより詳しい近似値が得られたのは1500年ほどの間は、アルキメデスの方法に従って、正多角形に円を内接または外接させて計算したものですた。
17世紀に、微分法、積分法の発見により、πそのものを表す公式が求めらました。例えば、ドイツの数学者ライプニッツは、
π/4=1−1/3+1/5ー1/7+1/9ー1/11+・・・であることを示しました。
 イギリスのニュートンは、
π/6=1/2+1/2・3^3+1・3/2・4・5・2^5+1・3・5/2・4・6・7・2^7+・・・ となることを示しました。
 和算は江戸時代に我が国で独自に発展した数学です。関孝和の手によって和算は大きく発展しました。関の弟子で建部賢弘(たけべ かたひろ)は関の仕事を発展させて、独創的な方法で
π^2/8=1+1・2^2/4!+2!・2^3/6!+3!・2^4/8!+・・・ を得ました。
 安島直円(あじま なおのぶ)は
π/4=1−1/2・3ー1/2・4・5ー1・3/2・4・6・7ー1・3・5/2・4・6・8・9ー・・・ を示しました。このほかにも多くの和算家がπのいろいろな級数展開を見い出していました。鎖国のために、ヨーロッパの数学にふれることができなかったにも関わらず 微積分の知識なしで和算家達がこのような結果を得たことは、驚くべきことです。
 講義は、この安島直円(あじま なおのぶ)が出した公式をニュートンの2項定理とΣk^p の出し方から証明されました。高校3年生の微積分まで習っていない1、2年生は多分 理解されていないと思いますが、ただ、円周率πがこのようにして求めているんだということは分かったと思う。
 次に、「掛谷問題」の話でしたが、後にします。

N07:2002年8月3日(土)「The cistern contains,the fountain overflows.」(水槽の水をたたえ、泉は沸き出す)。この意味は子供達の頭を水槽とみなし知識という水をただ無闇に注ぎ込むだけでは、それらの知識は時間の経過とともに蒸発してします。一方、たとえ注ぎ込む知識の量が少なくとも、生徒達の思考力を鍛えることに力を注げば、生徒達の頭は必要に応じて考え、問題解決に向けてのアイデアを次々と湧き出す泉となるのである。
 暗記詰め込み知識注入の授業はよくない。数学ができなくても「ナイストライ」「チャレンジアゲイン」と励まし、学歴より学力の時代に、若者に本気になって興味関心のあることを伝えよう。と力説されていた。また、教育の質、授業のやり方を変える必要がある。「太陽になろう、北風にならないで」「教育観とは先生(親、国家)が持つ幸せ観である。」このあたりで、予定の時間が来て、係りの方からメモ用紙をもらっている。
最後に、テーマの「教員が変わる→授業が変わる→学校が変わる→生徒が変わる→社会が変わる」に対して、4つの提言がありました。
1.教師演習型の授業はやめて、生徒中心の授業に変える。
2.知識注入型はやめて、作業体験や実験体験に変える。
3.生徒に興味関心を持たせ、勉強する動機づけをする授業に変える。
4.一斉授業をやめて、子供一人一人を大切にする授業に変える。
 で、この後、幾つかの準備してあった教材を披露された。(円の面積、球の表面積、三平方の定理、立体の体積、など)終了は25分遅れで12時になろうとしていました。

さて、話は変わって、今朝の新聞報道によると、今年の数学オリンピックの結果がでていました。ここから、朝日新聞の記事を引用します。
【84カ国・地域の高校生以下の生徒が参加してイギリスで行われた第43回の国際数学オリンピックで、日本は16位だった。個人では、参加481人中、日本は1人(灘高3年生)が金メダルを獲得し、他は3人が銀メダル、2人が銅メダルでした。優勝は中国(4年連続)、2位はロシア、3位はアメリカ、アジア勢はベトナム、韓国、台湾、インドがベスト10に入り、14位がトルコとペラルーシで、16位に日本とカザフスタンだった。】
過去の成績は、美しい話第30話
「国際数学オリンピック(IMO)」をご覧ください。

N06:2002年8月2日(金)宮澤賢治は1920年から5年間花巻農学校で教壇に立っています。そのときの教え子が今でも教えてもらったことを覚えている。心に刻むような授業である。その教え子の証言です。「他の先生も一生懸命教えてくださってと思いますが、教科書を丁寧に読んだり、板書をノートに写させられただけっだたので、そういう授業で習ったことはすぐ忘れてしまった。」
生徒達がなぜ賢治先生の授業に関心を抱き、教わった内容を生涯忘れなかったのか。賢治先生の授業はまさに生徒に学ぶ楽しさを身体一杯体感させる授業だったからです。ここで、OECD,IEAの結果を持ち出されて、今の若者は
1.興味関心がなくなりつつある。
2.数学の重要性に気づいていない。
3.数学や理科を使う職業に就く子が少ない。
 で、数学に関心を持つように呼び戻すことが課題。頭で覚えず、身体で覚えると感動する。発想に乏しい。アイデアや感性が貧弱。と語られた。
さらに、1996年2月に、経団連の報告によると、学校にゆとりを持たせる。発想や感性を育む。最初に不思議に気づいた感性を重要。子供一人ひとりが伸びようという気持ちがなくなりつつある。
 今、日本に求められるものは、新しいものを身近ら造り、世界に貢献することが大切。オリジナリティ・クリエイティブが必要です。
若者達は学ぶ意欲が消失している。必死になって食いついてこない。で、数学教育者は必死になって教えてきましたか。と問われ、イギリスのウィリアム・ブレークの詩の一節を大声で英語で言われました。
「The cistern contains,the fountain overflows.」(水槽の水をたたえ、泉は沸き出す)。この意味は明日書きます。

N05:2002年8月1日(木)昨日31日今日と全校算数・数学教育研究(兵庫)大会に神戸へ出かけていました。偶然、お会いし、気軽にお話をしてくださいました先生方 これからネット上でお近づきになれれば幸いです。
 では、秋山先生のお話を書きます。(一部聞き取れずにいましたことを承知ください)
最初に、マーチンガドナーの「うさぎ」を持ち出されました。(太郎さんは2回目)横にすると「あひる」になちます。要は見方を変えて考えなさい。1つの考えで固定しないで。
次に、教育困難国のデンマークの話で、国民高等学校の創始し、生きた教育の実践によって国を蘇らせることに成功したグルントゥビー博士が語っている言葉です。「若者を育てることが重要で、そのためには教育が大切」と力説。 心の豊かな若者には、夢と希望を持った生徒が多い。先日の新聞にでていたアメリカ、フランス、韓国、日本の四カ国の若者に対するアンケート結果を引用されました。
1.大きな志 夢がありますか。日本は二十数%(他の国は約80%)
2.夢を達成するために難しいことを頑張っていますか。日本は約40%(他の国は約80%)
3.日本の青少年は今、楽しければ良いと答えている。
4.志の大家は 札幌に地にあるあの「クラーク博士」にあります。
 ここで、英語で 、良い先生(グット)は一生懸命教える。さらに良い先生(ベター)はいろいろと解いてくれる。一番良い先生(ベスト)はひらめき(インスパイヤナー)を教えてくれる。志を与え、啓発することが大切。
さて、何のために人は生きるのか。「ちょっと、元気がないぞ}「将来、不安かも知れない」「やってみたいことがあるはず、それを頑張ってみよう」と呼びかけられ、ここにお見えの先生方に、クラーク先生役をやってもらいたい。「やってみようよ、本気になって、失敗してもいいよ」とね。
ここで、壇 ふみさんのお父さん(壇 かずお)が書かれた子供達への色紙に書いてある文章の紹介ありました。「子供よ!おまえ達の人生が多難であることを祈る」「ねえー、この文おかしいでしょう」「普通は無難であることを祈る でしょう」
 しかし、昔から、かわいい子には旅をせよ、といいます。失敗、屈辱、挫折を経験させ、でも、しっかりと起きあがることを伝授させておいてください。次に、宮澤賢治の話が出てきます。ここからは明日に。

N04:2002年7月30日(火)皆さん!酷暑お見舞い申し上げます。季節柄、お体に気をつけてお過ごしください。明日から、1泊2日で、全校算数・数学教育研究(兵庫)大会に神戸へ出かけていきます。
開会式は神戸国際会館で行われ、記念に、東海大学教育開発研究所 秋山仁 次長 が「教員が変わる→授業が変わる→学校が変わる→生徒が変わる→社会が変わる」と題して講演があります。しっかりと聞いて来ます。その後、芦屋高校で「分科会」があり、それにもでかけて行きます。
 さらに、秋の遠足が新幹線で神戸ですので、下見も兼ねています。来年の愛知大会の参考にしようと考えています。
帰宅後、「中川」さんからの質問が来ていましたから、お知らせします。
『   n   
S(n)= Σ k 
    k=0  
とおくとき、S(n)の値がぞろ目(ex.7777)となるnを求めよ!
以前この問題を考えていたのですが、桁数が2桁以上となるのは
S(10) = 55
S(11) = 66
S(36) = 666 の3つしか見つかりませんでした。
他に解はあるのでしょうか?これ以上ないならばない証明を教えてください。』

N03:2002年7月29日(月)第102回の応募問題「定積分」について、「スモークマン」さんから解答が寄せられました。ありがとうございます。
 問題2の定積分につて、太郎さんは、今日の補習で解説しました。関数が偶関数ならこの考えが適用されます。鮮やかな解法ですから、皆さんも考えてください。

N02:2002年7月25日(木)第102回の応募問題「定積分」の問題1について、「中川」さんからご指摘をありました。
『今日発売の大学への数学8月号を見ていたら、応募問題の(1)の解答になるものが掲載されていました。'02 愛知大と、'02 芝浦工大・システム工の問題がこの雑誌に取り上げられていて、この問題が、応募問題の(1)の解答そのものでした。』
<水の流れ:コメント>太郎さんも 今「大学への数学8月号」を見ましたら、'02 愛知大の入試問題を発見できました。少し設問があり、変形してありますが、本質は変わっていません。また、02 芝浦工大・システム工の問題は知っていました。学校での補習のために、この問題を解いていましたから。
ただ、この種の問題は他の本にもありそうですよ。2つの違った大学の入試問題が同じような問題を作っていますから。
 さて、f(1)=2, f(n+1)=1/f(n) + 2/(n+1) に修正した問題ですが。「H7K」さんから解答が寄せられました。お知らせします。
『さて、中川氏の「帰納法を使わずに」のやつですが、一応なんとかなりそうなので、ここに書きます。ちょっと自分ではあまり良くないものと思っていますが.....
g(n)=f(n)-1/nとすると、
f(n+1)=1/f(n)+2/(n+1)はg(n+1)=1/(g(n)+1/n)+1/(n+1)と書き換えられる。
ここで、h(n)=g(n)*nとすると、これは
h(n+1)/(n+1)=n/(h(n)+1)+1/(n+1)
h(n+1)=n(n+1)/(h(n)+1)+1
ここで、f(n)>=2/nなので、g(n)>=1/n、よってh(n)>=1なので、両辺にh(n)+1を乗じて
(h(n)+1)h(n+1)=n(n+1)+h(n)+1
変形し、h(n)h(n+1)+h(n+1)-h(n)-1=n(n+1)を得る。
ここで、i(n)=h(n)-nとすると
{i(n)+n}{i(n+1)+n+1}+i(n+1)-i(n)+n+1-n-1=n(n+1)
i(n)i(n+1)+n(n+1)+(n+1)i(n)+n*i(n+1)+n+i(n+1)-i(n)=n(n+1)
よって、i(n)i(n+1)+(n+1)i(n+1)+n*i(n)=0
ここで、nは0ではないので、i(n)=0←→i(n+1)=0
よって、i(n)=0→i(n+1)=i(n-1)=0 (n>=2),i(1)=0→i(2)=0
ということは、「i(n)=0となるnが存在する」→「全ての自然数nについてi(n)=0」が成り立つが,明らかにi(1)=0なので、i(n)=0
よって、h(n)=n,g(n)=1,f(n)=(n+1)/n. //』

N01:2002年7月24日(水)22日に『質問をしたい問題があるのですが、よろしいでしょうか?本当は数列なのですがメールでは打ちづらいので関数方程式表記にします。f(1)=2, f(n+1)=1/f(n) + 2/(n+2) このとき、数列 f(n) を求めよ。  (但し、n∈N)』
と載せましたが、うまく解答に到達できそうにありません。そこで、f(1)=2, f(n+1)=1/f(n) + 2/(n+1) に修正すると 帰納法では到達できます。皆さんは、どうですか。
 さて、第102回の応募問題
「定積分」で「BossF (^o^)」さんから解答が寄せられていました。感謝します。

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