平成15年5月18日
第85回全国算数・数学教育研究(愛知)大会
高等学校部会(9B.総合的な学習)
数学の面白さや便利さが体験できる総合的な学習の時間の活用
1.研究のねらい
学習指導要領の総則には、「総合的な学習の時間」のねらいとして、次の2点が挙げられている。
(1) 自ら課題を見つけ、主体的に判断し、よりよく問題を解決する資質や能力を育てること。
(2) 学び方やものの考え方を身につけ、問題の解決や探求活動に主体的、創造的に取り組む態度を育て、自己の在り方生き方を考えることができるようにすること。
また、学習活動の例示として、次の3点を挙げられている。
(1) 国際理解、情報、環境、福祉・健康などの横断的・総合的な課題についての学習活動
(2) 生徒が興味・関心、進路等に応じて設定した課題について、知識や技能の深化、総合化を図る学習活動
(3) 自己の在り方生き方や進路について考察する学習活動
さらに、配慮事項として、
(1) 自然体験やボランティア活動、就業体験などの社会体験、観察・実験・実習、調査・研究、発表や討論、ものづくりや生産活動など体験的な学習、問題解決的な学習を積極的に取り入れること。
(2) グループ学習や個人研究などの多様な学習形態、地域の人々の協力も得つつ全教師が一体となって指導に当たるなどの指導体制
上記のようなねらい・方法・配慮事項などを鑑み、本校では次のように計画した。
2.指導の内容
(1)指導の目標
数学は、自然界のさまざまな現象、社会や人間について学ぶための基礎学問とされている。ここで、「日常の社会生活と数学のかかわり」や「数学の発展と人間の活動とのかかわり」などを楽しく学び、数学のおもしろさや便利さを体験しながら、数学的なものの見方や考え方を身につけることを目標とする。
(2)指導の内容
上の目標を実現するために、生徒と対話形式をとりながら、特に操作的、体験的、発見的な学習を通して、生徒自身に自分でじっくりと考えさせて数学を体験させる。数学的活動を通して、これまであまり感じられなかった数学のおもしろさや便利さを実感させる。このような学習をすることによって、数学は楽しいものだと感じてもらえる内容とする。
(3)具体的な指導例
ア 数理的パズルから数の面白さを発見しよう
(4を4つ使って自然数を作ることから)
(小町算の発見から)
(曽呂利新左衛門の今日は米1粒)
イ 手紙を3つに折る方法を発見しよう
(身近にある折り紙の研究から)
ウ フィボナッチ数列を発見しよう
(大相撲の星取表から)
(パスカルの三角形から)
エ 源氏香と数学の関係を知ろう
(源氏香の図柄の数はベル数)
オ カタラン数を発見しよう
(多角形を三角形に分割する数から)
カ ピタゴラスの定理を知ろう
(いくつかの証明方法から)
キ 円周率の歩みを知ろう
(円周率の歴史と測り方を探る)
ク インターネットから課題を見つけよう
(YAHOOから検索し「水の流れ」を探る)
3.研究のまとめ
教科の枠を越えた横断的・総合的な学習を通して、自ら課題を見つけ、自ら学び、解決していく、いわゆる課題解決能力等の「生きる力」を育てること。社会体験、自然体験、生活体験等を通じて、課題を研究する過程で豊かな人間性や積極性、自主性、感受性等の人格特性を育てること。以上の認知的側面や人間形成の面において、有用な効果が期待できる。